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100年先の未来に向けて。大分県臼杵市の「有機農業の里」づくり

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あけましておめでとうございます。
年末年始は、帰省先でふるさとの食を堪能された方も多いと思います。私も義実家の静岡で、関東風のおせちやお雑煮をいただき、しっかりと日本のお正月を楽しみました。

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年の初めは、祖父母や甥・姪等、普段はあまり交流の無い異世代の親族と話をする機会も多く、過去から未来まで続く「家系」を意識することも増えますね。特に、いまを生きる大人たちには、これから長い人生を歩む子供たちに、より良い自然や食、社会を残していく責任が課せられていると感じます。

そんな100年先の未来を見据えて、人間が生きるためのベースとなる食・農業の抜本的な改革を行なっている地方自治体があることをご存知ですか?
映画『100年ごはん』(配給/TME)の舞台にもなった大分県臼杵市は、土地に暮らす人々が、安心安全な食べ物を手に入れられるよう農薬不使用・化学肥料不使用での野菜づくりを推進しています。

映画『100年ごはん』で描かれた、臼杵市の有機農業改革

2 (c)「100年ごはん」製作委員会・TME 2013

大分県の東南部に位置する臼杵市は、キリシタン大名としても有名な大友宗麟が築城した臼杵城の城下町として繁栄。国宝の臼杵石仏や、城下町の町並みが残っている歴史と文化の町として知られています。

味噌・醤油や地酒が盛んな醸造の町でもあり、豊後水道で獲れた日本有数の味を誇るトラフグをはじめ海の幸に恵まれ、有機農業の盛んな野津地域の野菜類やその他山の幸にも恵まれた町です。

映画『100年ごはん』は、大分県臼杵市の有機農業の取組みを、映画作家の大林宣彦さんの長女で、料理家としても活躍する大林千茱萸(ちぐみ)監督が4年間にわたり追いかけた65分のドキュメンタリー。120時間に及ぶ撮影素材の中から、臼杵の農家や市民たちの姿を通して、自然と共生し、未来に豊かな食文化を繋げていこうとする取組みが丁寧に紡がれています。

3 (c)「100年ごはん」製作委員会・TME 2013

臼杵市の有機農業への取組みの始まりは、2000年から始まった「給食畑の野菜」から。
これは、学校給食で使用する野菜などを地元の生産者が生産供給する体制を作り、地元で収穫した新鮮で安全な野菜(農産物)を、学校給食で使用することで、子どもたちの健全な育成を目指したものでした。

その後、有機農業推進室が発足し、農薬不使用、化学肥料不使用での野菜づくりを推進。その第一歩として「臼杵市つちづくりセンター」がオープン。健全な魂は、健康な食べ物から。健康な食べ物は、健全な土から、と根本を見つめた結果、まず土の改革から取り組んだのです。

4 (c)「100年ごはん」製作委員会・TME 2013

「臼杵市つちづくりセンター」では、剪定枝や山の間伐材などの草木が8割、豚糞2割という割合で約6ヶ月発酵熟成させた完熟堆肥「うすき夢堆肥」を年間2000トン生産しています。

一般的には、畜産糞尿主体の産業廃棄物を熟成させて作られる農業堆肥がほとんどですが、臼杵市の場合は、安全で美味しい野菜作りを追求した結果の堆肥作りが行なわれています。この堆肥を使うことにより、本来の微生物が住む土の力を取り戻していくことができるそうです。

この「うすき夢堆肥」などの完熟堆肥で土づくりを行い、農薬と化学肥料を使わずに栽培した農産物を、市長が「ほんまもん農産物」として認証し、付加価値の高いブランド商品として販売。2007年には市内に10戸しかなかった有機農家も、2013年には60戸に増加。日本でも有数の「有機の里」として成長しています。

映画の中で描かれた「持続可能な食」を目指す臼杵市の先駆的かつ普遍的な取組みに刺激を受けた人々の手により、日本全国だけでなくスリランカ、ホノルル、ロサンゼルス、ニューヨークまで『100年ごはん』上映会の開催が、すでに120箇所以上で行なわれています。

映画がこれだけ広がった背景には、大林監督が行う独特な上映会に秘密があります。それは参加者が「“映画を観て+同じ釜の飯を食べ+共に語り合う”ことで映画を五感で咀嚼し、その体験を未来へのバトンとしてつなげていく」というもの。

映画を観た人が「他人事ではなく自分事として」考え、臼杵市の取り組みに関心を寄せ、自分たちの暮らす土地で何ができるかを考える。手間はかかるけれど着実な上映方法により人々のご縁が結ばれ、いま、臼杵市を起点とした「食のバトン」の波が、世界に拡がっているのです。

「うすき野菜」ブランドを育てるひと

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映画の中にも登場した、臼杵市長が認証する「ほんまもん農産物」をはじめ、地域の特色を生かした農産物の価値を知ってもらいたいという考えから、地域限定農産物「うすき野菜」というブランドを育成・販売しているのが「うすきオーガニック・ラボラトリーズ」。代表理事の河崎憲二さんにもお話を伺いました。

「うすきオーガニック・ラボラトリーズ」は、最初はグループで土壌検査をするために立ち上げられた別名の会社でした。その後、臼杵市が有機農業や「ほんまもん農産物」を推進するとのことで、地域の野菜を広める販売会社として現在の形態になりました。

臼杵市が、有機農業に取り組むにあたって「つちづくり」に取り組んだのは、土の力が失われていることへの危惧があったのだと思います。日本の高度経済成長と共に、生産効率を上げるため農薬や化成肥料を使う事が農業の主流になっていきましたが、適切な使用量を見誤り、過剰に使用することによる土壌や環境への影響については見過ごされてきたと思います。

しかし、それらを長年使用した結果、本来土が持っていた力が失われ、河川や地下水にも影響を及ぼすことがだんだんと明るみになってきました。

そこで、もともと臼杵市で有機農業を行なっていた赤峰勝人氏と前市長の後藤國利氏が、そういった状況を憂い、100年、200年後も同じ場所で作物を育てる環境を作らなければ、と考えたのではないでしょうか。

市の有機農業への取組みが広がると同時に、消費者にもオーガニックという言葉が浸透し、うすきの取り組みに賛同して頂ける方が増えています。特にお子さんを持つ主婦層からのお問い合わせが多いですね。また、循環農業に興味がある若者の見学も増えているようです。

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現在、栽培も行なっており、夏場はルッコラ、人参、ベビーリーフ、ハーブ、生姜、ラディッシュ、茄子などを作っていました。僕らの畑も、農薬不使用・化学肥料不使用です。今まで販売を中心に、栽培を少しずつ行ってきましたが、来年は栽培量を増やして行く予定です。

販売や栽培以外では「ほんまもん農産物」が食べられるレストランのような場所を作りたいです。
その先には臼杵にくれば身体にいいことが出来る施設作りを目指したいですね。

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「うすきオーガニック・ラボラトリーズ」は県内外のファーマーズマーケットなどでの出店のほか、オンラインでの農産物、加工品の販売も行なっています。

河崎さんによると、今の季節のおすすめは、身体を芯から温めてくれる「しょうがシロップ」。
スパイスが入っているので、ホットミルクで割るとチャイのようになり、とても身体が温まるのだそう。

元々、臼杵市を代表する名産品だった生姜に、再び脚光を当てようと、地元農家とともに栽培に取り組み、有機栽培のきび砂糖を加えて加工した安心安全の一品です。
元々グラフィックデザイナーをしていた河崎さんが手がけるパッケージデザインもおしゃれで、健康志向の女性へのギフトに喜ばれそうですね。臼杵市の取組みに興味を持ったなら、ぜひこの土地で作られた「食」も味わってみてはいかがでしょうか。

人口4万人の小さな町、臼杵市が始めた、壮大な有機農業への転換プロジェクト。土が変わり、食べ物が変わると、そこに暮らす人々の意識や生活が変わり、社会が変わります。消費に明け暮れ、消耗してきた20世紀的な価値観からいち早く脱却し、持続可能で幸せな未来を考える臼杵市は、地産地消の21世紀型コンパクトシティのお手本と言えそうです。

臼杵市が蒔いた、この小さな改革の種が、日本のあらゆる町で花開くことを願いつつ、2016年もさまざまな地域で行なわれている面白い食の取組みをご紹介していきますので、ご愛読のほどよろしくお願いいたします!

関連リンク

映画『100年ごはん』
http://100nengohan.com

映画『100年ごはん』の独特な上映活動や内容がよくわかる本。
「未来へつなぐ食のバトン—映画『100年ごはん』が伝える農業のいま」(ちくまプリマー新書刊)
http://www.junkudo.co.jp/mj/products/detail.php?isbn=9784480689412

『100年ごはん』1月~2月上映会予定
▲1月18日(月)@北海道札幌市「北海道大学」
▲1月23日(土)@山形県鶴岡市「鶴岡まちなかシネマ」
▲1月30日(土)@沖縄県石垣市@(場所準備中)
※当日の料理は歌手マドンナのプライベートシェフを10年務めた西邨マユミさん。
▲1月31日(日)@大阪府岸和田市「岸和田市立産業会館」
▲2月3日(水)@徳島県「ダイネガーデン」
問い合わせ:TEL&FAX 088-694-3298
▲2月7日(日)@東京都中央区「キレイレストランg&v」
▲2月10日(水)@東京都江東区「東京国際展示場」

オーガニックエキスポ2016
http://organic-expo.jp/
▲2月28日(日)@佐賀県唐津市「神集島の小学校跡」

うすきオーガニック・ラボラトリーズ
http://usukiorganic.thebase.in

>>>G-veggieでは、100年ごはん上映会を行います。


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宮崎麻実/Mami Miyazaki
音楽専門誌、ファッション誌を経て現在はWEBメディアを中心にフード、ライフスタイル領域の編集者として活動中。食やアートを通じた街づくりに興味があり、国内・海外の生産者を取材しています。
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