中世ヨーロッパの ‘ 超高齢者(スーパーおじいちゃん)’ に学ぶ、超高齢社会の健康法
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超高齢社会のおとずれ
世界でも類を見ないと言われるほどの ‘ 超高齢社会 ’ を迎えつつある日本。
私の祖母も今年で90歳になるのですが、体も徐々に弱り、弱気になることも増えたものの、戦争中のことなどを聞くと、まだまだ元気に色々と話をしてくれます。
また親戚のおばあさんにいたっては、95歳になった今でも山奥で畑仕事にいそしんでいます。
こうした ‘ 元気なおじいさん、おばあさんで溢れる超高齢社会 ’ という輝かしい未来像。
政府も、その現状を受け、歳出を減らすために、高齢者になっても年金をもらうのではなく元気なうちは働こう、と推奨します。
そう、超高齢社会の一つのネックは、この「社会保障費」にあります。
国民皆保険の影響もあって、「すぐに病院に行く」という習慣がついたことが災いし、たくさんの薬を常用したり、ちょっとしたことでも病院に通い続ける。
その結果、国の医療費は莫大な額に上ります。
また、この「元気な高齢者」というのは、あくまで戦前の慎ましやかな生活観を重んじてきた世代の話です。
戦後の、食生活の乱れや破壊された自然環境のもとで生きた世代、その煽りを受けて生まれつきアレルギーを抱えたり若くして自律神経失調症になる若者世代は、このままだと決して「元気な高齢者」にはなれません。
平均寿命自体、60歳程度に落ち込んでいくという声も、あるいは40歳近くまで下がる、という恐ろしい説を提唱する声さえあります。
すぐにここまで極端な数字が現実化することはないでしょうが、しかし、このままの生活や考え方を続けていれば、いずれはそういった悪夢も現実となる日がおとずれるかもしれません。
少なくとも、今よりも慢性的な病気に悩む高齢者が増えることは間違いないでしょう(そして医療費もますます増加の一途をたどるでしょう)。
実際、自分の両親の介護をしながら、自身の健康問題として、そうした不安を抱えるようになった中高年の方も多いのではないでしょうか。
そこで、この暗雲立ち込める「超高齢社会」で、元気よく老年を過ごすための参考事例として、ある一人の ‘ 超高齢者(スーパーおじいちゃん) ’ を紹介したいと思います。
中世の ‘スーパーおじいちゃん’
ときは遡ること500年以上前、中世ルネサンス期のイタリア人貴族に、西欧では伝説の長寿として有名な ご長寿老人、ルイジ・コルナロ(1464〜1566)という人物がいます。
子供の頃から病弱で、30代半ばには死の宣告も受けていたコルナロですが、ある健康法を実践し、その後、102歳という奇跡的な長生きを果たしました。
また、ただ長生きというだけでなく、最晩年までかくしゃくとし、目も耳もしっかりと働き、足腰も強く、声の張りもよかったと言います。
そして、長く活躍を続け、公共事業や趣味の造園など、数々の事業を達成し、ヴィネチア共和国の行政に多大な貢献を果たすことになります。
コルナロは言います。
わたしはこれまで、老年というものがこれほど素晴らしいものとは知らなかった。
彼は、高齢になってから、自身の健康や生活に関する哲学を書き残した幾つかの本を出しています。
そんな彼の言葉から、ルイジ・コルナロという中世の超高齢者の生涯と、その健康法を覗いてみたいと思います。
きっと老いていくことの不安も、ほんの少し和らぐことでしょう。
ヴェロネーゼ《カナの饗宴》1562-1563
生活習慣のひどかった若かりし頃の余命宣告
只でさえ派手な印象のある中世ヨーロッパ、ルネサンス期の貴族の食生活。
そんな豪奢な貴族仲間とともに、自身の性格も相まってコルナロは特に暴飲暴食の激しい生活を送っていた一人でした。
ところが、案の定と言うべきか、もともとの胃弱も祟って、30代の半ば頃にはすっかり体はボロボロ。激しい胃痛の発作にしばしば襲われ、痛風の悪化や、微熱、怒りっぽさ、喉の渇きなど、今で言う自律神経失調症や生活習慣病といった病に苦しみ、次第に精神も蝕まれていきました。
そうして地獄のような苦痛の日々が35歳から45歳まで続いたある日のこと。
彼が自分の病状を医師に相談すると、‘あること’を厳格に守らなければ、数ヶ月以内に死を受け入れざるをえない、と医師はコルナロに宣告します。
その ‘あること’ というのが、「極少食」でした。
具体的にまもるべき規則について尋ねたところ、かれらがいうには、「食べ物にしても飲み物にしても、通常病気のときにしか摂らない物をとり、しかもこれらをごく少量にかぎって摂るべきである」、というものであった。
実際、コルナロにとって、こうした指示は目新しいものではありませんでした。
これまでもずっと彼は医師からそう指示を受けていたのです。しかし、どうしても欲望に負けて派手な飲み食いを繰り返し、結局、ここまで事態が深刻化してしまったのでした。
コルナロは、人生の盛りに死を迎えなければいけない悔しさや、あまりの病状の苦痛から、その忠告に従って、新しい生活習慣に取り組むことを決断しました。
コルナロの健康習慣
重病や余命宣告に慄えながら、コルナロは「極少食」の食生活を始めました。
コルナロ自身、最初は抵抗感があると思っていたのですが、数日もすると、この生活に馴染んでくる自分を発見しました。そして、一年も経たないうちに、こうした病状の数々がすっかり回復していたのです。
そんな奇跡みたいなこと、と疑う声も当時から少なくはありませんでした。しかし、コルナロは、こうした声にも穏やかな語り口で反論していくのでした。
また、コルナロは、この「極少食」の量だけでなく、質にもこだわりました。
自分の体に合うものを、経験や感性から判断(彼の場合は、パンと卵の黄身、少しの肉、スープ、ほんの少しのワイン)し、「極少食」を実践しました。
この食事の習慣以外に、コルナロが気をつけたことは、働きすぎを避けること。また異常な寒さや暑さ、あるいは空気の悪い場所を避けること。憂鬱や憎悪など、否定的な感情を持たないようにすることなどでした。
こうした習慣の結果、肉体的な健康だけでなく、精神的なタフさも身についていきました。
そして、80歳を過ぎても乗馬や山登りを楽しみ、日々の疲労感や不穏な気持ちにも無縁で、多くの読書や執筆に精を注ぎました。
95歳になっても、穏やかに、かつ活力豊富で、精神的にも落ち着いた日々を送ります。
その頃書かれた文章を読んでも、死に対する不安はなく、「100歳まで生きることは確信している」とあります。
その彼の言葉どおり、102歳のとき、彼はいつもの昼寝のように安らかに息を引き取ったのでした。
科学的な観点
コルナロのこうした健康法は、古今東西の偉人賢人が触れてきた内容とも一致します。
たとえば、釈迦は「五体いずこなりとも愁いあらば、まず食を断つべし」と言い、医学の父ヒポクラテスは「病のときの食は病を養う」と言います。
また、現代の科学でも、たとえば以下の点から、少食が健康にとって重要であるという指摘がなされます。
活性酸素
一定数の活性酸素は細菌の処理など役立つが、過食や、今では添加物、残留農薬などが原因で活性酸素が大量に発生し、体の「サビ」につながる。
量や素材にこだわった食事によって、この活性酸素の増加を抑えられる。
体内酵素
体には、食物の消化や分解をつかさどる酵素をつかう機能がそなわっている(代表的なものは、唾液に含まれる炭水化物の分解酵素アミラーゼ)。
少食だと、こうした酵素の浪費を抑えることができる(一説によると、一生のあいだに生産される体内酵素には限りがある)。
消化器の疲労
消化そのものが内臓にとっては大きなストレスになる。それにも関わらず毎度満腹になるまで食べることで、一向に休息できず、すっかり疲弊してしまう。特に年齢を重ねるほど、その疲労はつのっていく。
少食に抑えることで、その疲労の回復(修復)に体が集中できる。
食べ物の消化と体内の代謝(修復)とは反対の関係にあり、一方が休んだときに、他方が働きだす。だから、空腹なときには、血液がいま自分の体を修復してくれているな、と思うとよい。(解説 中倉玄喜)
出典 : 『無病法』|ルイジ・コルナロ、中倉玄喜訳
その他様々な点で、今日の科学と照らし合わせても、その有効性は指摘できます。
そして、何よりも、病弱で、人一倍荒れた生活を送っていたコルナロが、こうして長寿であったという歴史そのものが説得力のある証人となるでしょう。
老いること
とかくマイナスの側面から語られることの多い高齢化社会であり、また老いですが、こうしたコルナロのような人生や、コルナロのようなおじいちゃん、おばあちゃんで溢れれば、きっと世界でも類を見ない、そしてまた範となるような、優しくしなやかで力強い「超高齢社会」を実現することができるかもしれません。
まずは、このコルナロの本をご両親の本棚にそっと置いてみてはいかがでしょうか(この記事を ‘ まちがえて ’ LINEしてみるのもいいでしょう)。
すぐに完璧には実行できなくても、ふとした拍子に「そういう人物がいた」と思い出すだけでも心の支えになるかもしれません。
老いることは、多くの悲しみを背負うことでもあるでしょうが、しかし、決して不幸なことばかりではないと、‘ 超高齢者(スーパーおじいちゃん) ’ は、後年に生きる我々に語りかけるように言います。
私は、老年にいたるまで、世界がこれほど美しいものだとは知らなかった、と。
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