日本で野生化している桑の木は邪魔者ではなく宝の山だった!食べられる桑の葉の簡単な使い方とおすすめの食べ方レシピ4つ。
日本各地に野生化している桑の木。
昔の養蚕の名残で、たくさん残っています。
皆さんがお住まいの地域にも、案外多く存在しているかもしれません。
実は見落としているということも少なくありません。
赤黒い実がなっているのを見て初めてその木が桑だと知る場合が多いと思いますが、見慣れてくると、葉を見ただけで判断がつくようになります。
現在は放置されたり、伐採された後にひこばえだらけになっていたりしますが、実は捨てるところがないくらい素晴らしい植物なのです。
かつては生糸の生産量が世界一だった日本。
2014年には群馬県の富岡製糸場が世界遺産登録されて話題を呼びましたが、明治時代の日本は生糸の生産量で世界一を誇っていました。
養蚕業は外貨獲得に大いに貢献し、日本の近代化の礎を築いたと言われています。
小説「坂の上の雲」などで、日露戦争時に巨大な軍艦や大砲など近代兵器が多く使われたことは広く知られていますが、これは生糸を輸出して獲得した外貨によって購入されたのです。
1935年頃に生産のピークを迎えますが、第二次世界大戦、太平洋戦争で生糸の輸出は途絶え、安価なナイロンやレーヨンが発明されたために、日本の養蚕業は壊滅状態となりました。
養蚕が衰退し、取り残され放置され続けている桑畑。
日本で養蚕が盛んだった地域は、東北南部、北関東、甲信、南九州と言われていますが、奈良時代に全国的に広まったと言われていますので、今も日本のあちこちに放置された桑畑があり、山にも自生し、河川沿いにも多く見かけます。
私の住む地方もかつて養蚕が盛んなところだったようで、空き地にも河川沿いにも野生化した桑の木を見かけます。
しかし、このような荒れた桑の木も、見る人が見ればとてつもない宝の山なのです。
養蚕以外にも長い間さまざまに活用されてきた桑。
じつは、桑は捨てるところがないくらいさまざまな用途があります。漢方では桑のあらゆる部分を生薬として用いていました。
・桑葉(そうよう)…ビタミンB1やβカロチンなどを含む。風邪、百日咳、高血圧によい。
・桑枝(そうし)…桑の若い枝。リウマチや神経痛に用いる。昔はこれを用いて和紙も作られた。
・桑白皮(そうはくひ)…根っこの皮。高血圧などに用いる。
・桑椹子(そうじんし)…マルベリーとも呼ばれる実。
ブルーベリーより豊富なアントシアニン。滋養強壮、貧血にもよい。
中国で漢~三国時代にかけてできたと言われる最古の本草書「神農本草経」によれば、桑の葉のお茶を”神仙茶”と呼び、高血圧の予防や滋養強壮、中風(半身不随)などに効果のある不老長寿の妙薬とされています。このため、桑は神聖な木として大切にされてきました。
日本では鎌倉時代に臨済宗の高僧栄西が「喫茶養生記」の中で桑の効能について述べており、
飲水病(=糖尿病)
中風(脳出血などによる身体のしびれや半身不随など)
不食(食欲不振)
瘡(切り傷、腫物など皮膚の病気)
脚気
といった場合に桑を服用するとよいとしています。
桑がゆなどで摂取すれば病気の予防や治療になるとして、桑の煎じ方や桑を抹茶のように服用する方法などを説明しています。
桑の摂取によって、身体だけでなく心も清浄にし健康長寿を得ることを目指した栄西。
この喫茶養生記の書かれた時代は鎌倉時代の初期であり、ちょうど貴族の摂関政治の勢力が陰りを見せ、武士が台頭していく時期でした。
源平の争いが激しく死者は多数出て、鎌倉幕府が置かれても源三代将軍が次々に変わるという安定しない世の中で、飢饉や疫病も頻発し、誰もが死と隣り合わせでした。
そんな中、庶民の医療を担っていたのは仏教の僧侶たちであり(医僧と呼ばれたそうです)、医療は仏教信仰と結びついていました。
桑の葉は同じクワ科のインドボダイジュの葉の代替品としても使われ、禅と桑の葉は密接な関係があったようです。
栄西はこの喫茶養生記によって、
健康長寿のためには身体だけでなく心も大切であること。
確かに桑はさまざまな物理的症状に効果のあるものだが、実は「心」にも効き、暗く不安な心を清浄で安らかな悟りの境地に導いて人々に健康長寿をもたらすこと。
それを世に伝えたと言われています。
考えてみれば、我が家の近所にはコンクリートから生えている桑も存在します。
伸びてきて、誰かに枝を切られても、また横からひこばえが生えてきます。
まださほど伸びてもいないのに毎年小さな実を結んで、子孫を残そうとしています。
そのあまりにたくましすぎる生命力には、こちらも驚かされるやら、襟を正されるやら。
確かにこれだけ生きる力があふれるものを体内に取り入れれば、
どんな状況にあってもちっぽけな不安なんて吹き飛んで、ただひたすらまっすぐに自分が進むべき道を精進できるのかもしれないと感じるのです。
最近注目されている「糖尿病」への効果は?
すでに古くから糖尿病に効果があると言われてきた桑ですが、最近の研究で、葉には食後の血糖値上昇を緩やかにする効果が期待できることがわかってきました。葉に含まれる「1-デオキシノジリマイシン(DNJ)」という成分が発見され、食後の血糖値上昇を抑える効果があることや、
1ヶ月以上続けて摂取しても低血糖にならないということが明らかになったのです。
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/laboratory/tarc/012906.html
このDNJはブドウ糖によく似た物質で、水に溶けやすく、糖質の分解・吸収が抑えられることにより、体脂肪の代謝が促進される効果が期待できます。
ダイエットにもよく、糖質制限されている方や高血圧が気になる方にもよいとされています。
最近では、放置された桑畑を有効活用していこうと桑の葉茶を地元の特産にしようとしている地域も出てきています。
また、ケールや大麦若葉、明日葉とならんで桑の青汁も認知度が上がりつつあり、桑の葉や実のサプリメントまで出回っています。(わざわざ中国から材料を輸入していることも!)
しかし、もし身近に桑が豊富に自生しているとなれば、これは使わせていただきたいですね。
しかも不耕起、無農薬、無施肥です。
実を食べる、青汁にする、桑茶を作るなど、さまざまな方法がありますが、時期に応じて上手に利用していきましょう。
今回は新芽の出る季節ですので、他の野草同様に食べてみたいと思います。
初夏頃まではとても重宝します。(それ以降は葉が固くなってきますので注意。)
春はやわらかい新芽を食べてみよう!
枝先の新芽を摘み取りましょう。
生の状態で食べてみると、すでに大きく育った下の方の葉よりも柔らかく、味にクセもありません。若干ザラザラした舌触りです。
食べる分だけ摘み取るようにすれば、採り尽くしてしまうこともありません。
新芽を生で食べるサラダ。
さすがに桑の葉100%だと躊躇してしまう方も多いと思いますので、まずは何かの野菜と合わせてみてください。
写真は、桑の新芽とリーフレタスとスイスチャードを同量混ぜ合わせたものと刻みアーモンドを、
新玉ねぎ入りのバルサミコドレッシングで和えたサラダです。桑は先端以外は細かめに切ると食べやすいです。
刻みアーモンドや新玉ねぎの食感・風味がよく、バルサミコ酢入りのドレッシングが食欲をそそる楽しい春のサラダです。
【新玉ねぎ入りバルサミコドレッシング】(作りやすい分量)
・新玉ねぎ…1/8個
・有機バルサミコ酢…大さじ1
・塩…小さじ1
・無農薬甘酒…大さじ1
・有機しょうゆ…小さじ1
・にんにく…1/2かけ
・無農薬オリーブオイル…大さじ1
・こしょう…適量
玉ねぎはみじん切り、にんにくはおろしておきます。すべての材料をよく混ぜ合わせます。
※ドレッシングは何でもかまいません。濃いめの味にすると食べやすいです。
そして、ナッツなど何か食感のよいものを取り合わせると、桑の葉の食感が気にならなくなります。
ゆで桑の葉のナムル
昔は桑の葉の新芽をおひたしにして食べたという話もあるそうですが、
初めて食べる人にはおひたしよりもナムルの方が食べやすいかと思います。
【材料】
・桑の新芽…ざっとふたつかみほど
・塩…小さじ1/2
・有機しょうゆ…少々
・有機ごま油…小さじ1
・すりおろしにんにく…小さじ1/2
・有機ごま…適量
桑の新芽をさっと色よくゆでて食べやすい大きさに切り(小さい方がよい)、塩・しょうゆ・ごま油・にんにくをよく混ぜ合わせたもので和えて最後にごまを混ぜます。ごま油とおろしにんにくが桑の葉を食べやすくしてくれます。
普段の味噌汁にも。
普段の味噌汁にも刻んで入れてしまいます。切り方が大きいと食べた時に口の中でモソモソ感が気になる人もいますので、
小さめに切って煮て下さい。大根葉など通常の葉野菜よりも長めに煮ると柔らかくて食べやすくなります。
桑の葉ペーストを作って、子供のおやつに桑団子。
春のよもぎ団子は定番ですが、同じ要領で桑団子もできます。
ミキサーに桑の葉を入れ、ひたひたより若干少なめの水を入れてペースト状にします。
個人的には桑はペースト状にするのが使い勝手がいいと感じています。
蒸しパンやパウンドケーキなどさまざまに使い回せます。
上の写真は、白玉粉150gに対してペースト50g、塩ふたつまみ入れて作った桑団子です。
うちの子どもたち曰く、ヨモギより断然クセがなくて普通の団子感覚で食べられるとのこと。
私は「ヨモギや抹茶みたいな風味もないし、つまらないかな」と思ったのですが、逆にクセがないからこそ食べやすい!という意見もあるようです。
ちなみにあんこはデーツ使用のシュガーフリーあんこです。
ちゃんと甘いですが市販のあんこのようなしつこさはなし。ほんのり塩気のきいたお団子によく合います。
各種材料のシュガーフリーあんこはこちらをごらんください。
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私が野草や野生化した植物について取り上げる理由。
今回は桑についてお伝えしましたが、現状ではその多くがまったく顧みられずに放置され、
邪魔になれば無残に伐採される存在となっています。「宝物が生えている」とは誰も思わないのです。
最近私がお隣に住むおばあちゃんと話をすると、よく聞かされる話があります。
「いま、多くの人が生活に困っている」という話です。
たくさんの人が相談に来るらしいのです。
年金が足りない。どんどん減らされている。
身体が悪くても、病院に行くのをためらってしまう。
今もまだ野菜が高く、食べるものを満足に買えない人が増えている。
畑をしていても、野菜が盗まれる人が増えている。
知り合いからは、野菜を分けてと頻繁に言われるようになった。
こういう類の話は、もはや日本でも珍しくない状況になってしまいました。
「あんた、今でさえこんなに大変な世の中になってきたんだから、この先はもっと大変だよ」といつも言われるのです。
そのおばあちゃんは、悩みを相談してきた知り合いには「摘み草でもしたらいい」とアドバイスをするらしいのですが、
年輩の方ですら野菜を買って食べるのが当たり前になってしまい、今さら野草なんて食べない、ノビルやたんぽぽの葉、ヨモギ以外には何を摘んだらよいのかわからないという状況になっているようです。
昔ながらの知恵はどこへ行ってしまったのでしょうか。
私たちは、自分の足下に生息している動植物にあまりにも無関心になりすぎてしまいました。
雑草はあくまで雑草であり、何の使いみちもない邪魔なものなのです。しかし、そこにこそ大切なものが存在することに気づく必要があります。
植物の持つ栄養や効能も気になるかもしれませんが、それ以前に、踏まれても刈られても風雨にさらされても、たくましく伸びる生命力を持つ植物は、
F1や化学肥料・農薬を使って育てられた野菜よりもずっと人を健康にする力があるのです。
多くの人が「お金がない」と言いますが、お金があっても必ずしも健康になれるわけではありません。
また、たとえお金がなくても知恵の蓄積によって乗り切れることが多々あります。
人間がこれ以上自然の流れを乱す存在にならないよう、身近な自然から謙虚に学び、植物からたくましい生命力を分けてもらうこと。
それがこの先かならず大切になってきます。どうか、身の回りの自然を当たり前と思わずに、じっくり見つめてみてください。
思ってもみなかった宝物がたくさんあることに気づくはずです。
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