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日本の水道水からも検出される有機フッ素化合物の実態|後世に残さないために私たちが取るべき姿勢

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有機フッ素化合物、と聞いて何のことだかわかりますか?

数千種類あるとも言われていますが、そのうちのとても有名なものがフッ素樹脂加工です。
撥水・撥油性が高く、テフロン加工のフライパンで一躍有名になったと言ってもいいでしょう。

フライパンなどの調理器具だけに使用されているわけではありません。
その加工は消火剤からデンタルフロスなどにまで幅広く活用されています。

ですが、この物質によって世界的な環境汚染が今なお続いています。

そしてそれは、あまりにも身の回りに多くあるために、
私たちの体にも大きく影響し続けていること、ご存じですか?

有機フッ素化合物PFOSの制限に続き、
2019年に全世界でPFOAが製造・使用禁止へ



有機フッ素化合物の有名な2トップであるPFOSやPFOAは、
撥水・撥油剤やフッ素樹脂の製造等で広く使用されていますが、
環境中で分解されにくく、蓄積性があると言われています。

使用例:
防水スプレー、家具やカーペットなどの防汚処理、
塗料やインク、消火剤、
フライドポテトやハンバーガーの包装用紙、
消火剤、ランチョンマットやレインコート、
紙皿へのコーティング、スキーやスノボのワックスなど


どれか一つは家にあったり、今まで使ったことがあるものではないでしょうか?

これらはアメリカ人の98%の体内から検出されるという報告もあり、健康影響が懸念されていました。

そんな中で2019年5月、PFOAが国連会議で製造・使用の禁止が決議されました。

大きな発端となったのはデュポン社(テフロン製造)の裁判でしょう。

20年ほど前からテフロン加工製品が増え、
工場排水によるPFOA汚染が続き、
工場周辺の住民のPFOA濃度は一般市民の20倍に。

中でも血中濃度が高い人は、
高コレステロール、妊娠性高血圧、甲状腺疾患、
精巣がん、腎臓がん、
潰瘍性大腸炎(難病指定)の発症率が上昇
していました。

これにより2005年にデュポン社は、
PFOAに関する健康リスクへの報告義務違反として
EPA(米国環境保護局)へ約18億円という異例の額の罰金を払う事で民事和解しています。

過去の調査では、テフロン加工の調理器具は、直接的かつ主要な暴露源ではなく、
フッ素コーティングされた包装用紙の方が、暴露量が多いことも分かっています。

つまり、フライパンの使用をやめても、他の撥水・撥油加工製品を使い続けていれば、
あまり解決にはならないという事です。



PFOSは、2009年に既に「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)」で製造・使用・輸出入が制限されています。

国内では2010年に、
「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」において、
第一種特定化学物質に指定され、
ある特定の用途以外での製造・使用・輸入が禁止されました。

しかしPFOS等の毒性は、
人体への影響等を数値化するのに十分な根拠がないとして、水質基準値は定められていません。

またPFOSはPOPRC(残留性有機汚染物質検討委員会:183の国と地域が締約)の附属書B(除外すべき化学物質リスト:製造・輸出入・使用の制限)に記載されましたが、
PFOAのように『禁止』ではなく『制限』です。
液体燃料消化のための泡消火剤やハキリアリの防虫は使用が認められています。

ですが、PFOSもPFOAと同様に制限ではなく禁止にすべきではないかとの意見もあります。
 

有機フッ素化合物の水・土壌・地下水汚染と気になる体内残存



有機フッ素化合物の一番の懸念は血液中に長く蓄積して残る事です。

これによりEPA(米国環境保護庁)では、2016年5月にこれまでの暫定健康勧告値200ng/L(PFOS)以下を生涯健康勧告値として70ng/L(PFOSとPFOAの合計値)以下に改正(この数値内であれば1日2リットル、70年は大丈夫だろうという数値)しています。

PFOAやPFOSが使用され始め、
自然界で分解されない物質であること、また蓄積性があることから、
長期間に渡って汚染された飲料水を飲む事で健康被害を訴える人が増加し、世界的な問題となりました。

これは日本も例外ではなく、関東の河川や関西、沖縄でも汚染が報告されています。

2016年には京都大学のグループが大阪市の寺の井戸を調査し、アメリカの勧告値の21倍を検出しました。
それからたった3年で最大125倍へとあがり、地下水汚染も懸念されています。

この近辺にはPFOAを使用していた工場があり、禁止以降も汚染物質が残り拡大していると見られています。

同じく、全国80箇所にも及ぶ調査では全国の河川から数ng~10数ngの汚染が見つかりましたが、いずれも勧告値以下です。

しかし兵庫県の猪名川(456ng)や大阪市の淀川(140ng)などでは高濃度な数値が見られ、
さらなる周辺調査では淀川支流域にある下水処理場周辺で採取したものから67000-87000ngと、
世界的にも最高レベルの汚染が確認されています。

こうした民間の調査に対し、
国は環境中の有機フッ素化合物に対しての水質調査を継続して行っているのは47都道府県中6県。

環境省の行う調査は1都道府県に対し1-3か所。
飲料水を管轄する厚生労働省では全国の浄水施設6400箇所に対し122箇所の調査です。

たった1/10にも満たない箇所の調査だけで、
私たちの飲む飲料水は安全であると言えるのでしょうか?


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2019年10月には、世界中でPFOSの代替物質も禁止勧告へ



WHOによる基準がない、どこの河川でもアメリカの勧告値以下なので問題はないとして
日本の水道水に対する基準値はPFOA、PFOS共に設定されていません。

北海道大学の調査では、母親のPFOS濃度が高いグループでは、
低いグループに比べて赤ちゃんの出生体重が軽かったり、
精子形成に関わるホルモン濃度が40%低い結果に。

海外調査においても、水道水のフッ化汚染は生まれてくる子供への知的発達障害になりうるとの研究報告もあります。
参考 BMJ journal

沖縄では米軍基地周辺でPFOA,PFOS共に高濃度の検出があり、
活性炭による吸着など対策を行う自治体もあります。

また、住民に対する調査を行ったところ、PFOA、PFOS共に日本人のほぼ2倍。
これはさほど問題がない一方でPFHxS65倍という数字が明らかになりました。

PFHxSとは、10年前に制限付きで禁止になったPFOSの代替物質です。

このPFHxSは、PFOSやPFOAよりも分子が小さく残留性があり、生物分解は難しいと見られています。
そのうえ、活性炭などで除去するのが難しいため、
廃水処理施設ではほとんど除去されていないというデータがある事を考えると、当然の結果の数字ではないでしょうか。

PFHxSもPFOS同様に泡消火剤に使用されています。
AFFF(泡消火剤)を使用している消防士はPFHxSとPFOSの両方で許容をはるかに超えるレベルでの血中残存が見られたり、
PETEを使ったデンタルフロス(テフロン系樹脂)の使用は不使用のグループに比べて血中濃度が25%高いという研究報告もあります。

PFHxSは、PFOSよりも河川の汚染度合いが酷いことや、
成人の場合には肝臓や甲状腺の異常、
前立腺がんに加え免疫や生殖機能に影響を及ぼし、
血中濃度の濃い子供では免疫機能障害や神経行動学に問題が見られるとも。



また、このPFHxSは、PFOSの1.5倍の半減期(代謝や排泄により、その物質や濃度が半分に減るまでの時間)を必要とします。

中国で行われた小規模研究では、男性と高齢女性の半減期は平均35年。
最低でも5.3年というデータが出ており、
残留性と半減期の長さを考えると、
PFHxSを代替物質として使用していくことに懸念を感じます。

最新の国連の報告書では、
肝機能への悪影響や、コレステロールの値を上昇させるなどの健康への影響を指摘。

次の国連会議で、使用・製造を禁止すべきか議論が始まっていました。

この流れを受け、2019年9月、POPs条約の下部組織にあたるPOPRCではリスク管理評価を行い、
PFHxSを免除なしでストックホルム条約の附属書A(製造・輸出入・使用は原則禁止とするリスト)に追加する事を決定しました。
これを受け、2021年春に行われる締約国会議ではPFHxSの世界的な製造・輸出入・使用禁止が決定される事が予想されます。

この会議では、日本では早ければ2022年には国内における製造・輸入・使用の禁止法案を起草していると明言。

日本を含む複数国がCAS登録番号(化学物質を特定するための番号)の規制上の必要性を強調し、
既知のPFHxS関連物質のリストをCAS登録番号へ追加するよう求めました。

また、こうした意見の背景には、PFHxSの生産と使用および消費者製品のPFASのより広いカテゴリーに関する利用可能な情報の欠如、
代替品が利用できない物への免除、使用に関しての情報の共有が不十分であることがうかがえます。

物質を特定し、リストへ追加するためには産業界からのインプットが必要であることも強調されました。

参考 POPRC 第15回会議議事録

水道水の懸念事項はPFHxSだけじゃない!
懸念が残るその他の代替物質



PFHxA

PFOSに似たPFHxSが規制を受けるのならば、
PFHxAにも同じ事があてはまるのではないかとの意見もあります。

平成24年度に行われた水質検査では、
大阪湾内にPFHxAの汚染が広がっていると見られるとの報告がありました。

PFOAよりは環境へのリスクは低いと見られながらも、
分解性は低く、水生生物への毒性が確認されています。

また、湾という閉鎖された場所において分解しづらいPFHxAが蓄積していくことが懸念されています。

参考 兵庫県環境研究センター

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このPFHxAはC6として知られる緑色の泡消火剤にも使用されます。
生産業界は「分解の可能性がある製品」とし、

完全に分解するとは明言しておらず、
またアメリカのEPA(環境保護庁)の安全レベルの5000倍の化学物質が水中から発見されています。

業界では「生体内の残存性は見受けられない」としつつも、
デュポン社の報告ではアメリカのある工場内で行われた検査では9人中8人に残存が見られています。

PFBS

防水加工スプレーなどで有名な3Mでは、
2003年から一部の製品のPFOSの代替物質としてPFBSを使用し始めました。

PFBSはPFOSやPFOAに比べてより早い体外排出が見られるとしていましたが、
使用し始めて2年後の調査では36人中33人に残存が見られました。

また2008年の調査報告ではラットの血液と肝臓に蓄積し、
コレステロールや脂肪レベルにも影響を与えていたことが報告されました。

他の物質同様に、PFBSは胎盤細胞や神経発達にも影響を及ぼします。

体外排出がPFOAやPFOSより早い一方で、
肺など他臓器での残存を人体の検視で見つけたケースもあります。

また、喘息症状がある子供はない子供よりもPFBSの血中濃度が高いことも判明しています。

身近に溢れる有機フッ素化合物。
後世に残さない為に私たちが持ちたい姿勢



人の体内に生まれる前から死んだあとまで残存する有機フッ素化合物。

撥水加工の家具、撥油加工の商品や食品包装、汚染された飲料水…
こうしたものに囲まれた生活をしていたら、
いつまでも体外排出どころか残存し続けることになります。

環境汚染の懸念からも続々と規制・禁止の流れになり、その代替物質が使用されますが、
その代替物質が同じような危険性を持つものであれば、この負のループはいつまでも続きます。

国際会議でも言われたように、
安全性を導き出すためにも今後は企業側と国の情報共有などの連携は必須でしょう。

もしかするとあなたの周りの土壌、地下水、井戸水も
汚染されていないとは言いきれません。

どんなものが有機フッ素化合物に汚染されているかを知ることで、
可能な限り避ける努力は一個人として続けていくべきでしょう。

私たちに出来る事は限られていますが、
「知らない」「知ろうとしない」という姿勢こそが実は最も危険なのです。

自分の体や子供たちに残存を残さない為にはどうすべきか。
子供たちが安全して暮らせる未来を残すには、どうすべきか。


こうした問題に目を向けることから、その一歩は始まります。

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