40代以降の女性に多発する手指の変形には、水や血の異常が関係していた！｜女性鍼灸師が教える、自分でカンタン！指の変形予防とケア方法

40代以降に多発する指の変形

お母さんやおばあさん世代の手の指が
大きく曲がっていたり、
関節がこぶのように
太くなっているのを
見たことはありませんか。

これらはヘバーデン結節、
ブシャール結節という病気が
原因となっていることが多いのです。

パーツモデルとして活躍する金子エミさん、
キルト作家のキャシー中島さんらも、
これらの病気であることを公表しており、
病名を耳にしたことがあるかもしれません。

原因不明の病気ですが、
40代以降の女性に多発することから、
女性ホルモンと関係が深いと考えられています。

実際、私の鍼灸院でも
この症状で受診されるのは、
ほとんどが40代、50代の
更年期世代の方です。

西洋医学では治療法がなく、
対症療法が中心になりますが、
痛み、炎症が続くと、
関節が徐々に曲がってきてしまいます。

東洋医学では、変形性関節症は
気・血・水のうち
「水」と「血」の異常が原因と考えます。
関節の症状はお灸をよく用います。

痛みや腫れは放っておいても
ある程度の時期で消えますが、
一度変形した関節は
手術以外に治すことができません。

少しでも症状を軽減し、
悪化を防げるよう
ヘバーデン結節、ブシャール結節の知識を身につけ、
正しいケアで関節を守りましょう。

ヘバーデン結節、ブシャール結節とは

変形性関節症の一種で、
「指曲がり症」と言われることがあります。

指の関節の背面の
伸筋腱が着いているところを挟んで、
二つの結節(こぶ)ができるのが特徴です。

手指の第一関節(遠位指節間関節)に起きるものを
ヘバーデン結節と言います。

約200年前、イギリスの医者
ヘバーデンによって報告され、
その名がつけられました。

第二関節(近位指節間関節)に起きるものは、
ブシャール結節と呼ばれます。
機序や治療法はヘバーデン結節と同じです。

どちらか一方のこともありますが、
併発し、第一関節第二関節ともに
変形が起きることもあります。

症状

・関節の痛み
・発赤、腫れ
・関節の変形
・関節が曲がりにくくなる
・ミューカスシスト(粘液嚢腫)


ミューカスシストは
関節近くにできる水泡です。
大きくなると爪の変形に
つながることもあります。

痛みや腫れが少ないまま、
ゆっくり変形が進むケースや
急激に痛みや変形が進むケースなど、
実際は、症状の出方には個人差があります。

原因

はっきりした原因は分かっていませんが、
妊娠中、産後、更年期の女性に
多発することから、
女性ホルモンとの関係が
深いとも考えられています。

女性ホルモンの一種エストロゲンは、
腱や関節を包む膜(滑膜)の
腫れを抑える働きがあります。

なので、ホルモンが変化するこの時期に
変形性関節症が増えると考えられています。

先述の金子エミさんが
ヘバーデン結節を発症したのは48歳。

キャシー中島さんも40代から
徐々に症状が出始め、
ヘバーデン結節、ブシャール結節
両方を患っています。

細かい作業や楽器演奏、
PC作業など指をよく使う方に多いこと、
また、遺伝的傾向があることも
原因にあげられます。

実際、キャシー中島さんは
キルト作家として針仕事をされていますし、
母親、叔母もヘバーデン結節だと告白しています。

診断と鑑別

・関節の痛み、変形
・レントゲン診断
・関節の隙間が狭い
・関節の破壊
・骨棘（こつきょく）形成


これらが診断の基準となります。

関節の腫れや痛みが主症状のため、
関節リウマチとの鑑別が必要です。

リウマチは自己免疫疾患ですので、
機序も治療法も異なりますが、
自身での判断は難しいので、
病院への受診をお勧めします。

西洋医学の治療法

西洋医学では以下の保存療法が中心となります。

・局所の安静
・テーピング、添え木による固定
・消炎鎮痛薬の外用、服薬
・ステロイド注射(急性時)

これらで効果が薄く、
痛みや変形で生活に支障をきたす場合は、
関節にできた骨棘や嚢腫を取り除く
手術を選択することもあります。

東洋医学的考え

東洋医学では以下の３つが
関節症の原因と捉えています。

・湿病
・歴節症
・水気病

湿病

東洋医学の「脾」の働きが弱く、
水が溜まりやすい体質の人が、
「風」や「寒」にあたったため
関節の炎症が起こります。

歴節症

「肝」の働きに負担がかかり、
血が減り、関節が熱を持ちます。

手の使いすぎ、過労などで
血を消耗しすぎることも原因です。

水気病

体表の水はけが悪く、
陽気が発散できずに
熱が発生することにより起きる関節痛。
「腎」の働きが弱い体質にみられます。

これらの病状は
「風」や「寒」などの
外邪が加わることで
悪化につながります。

東洋医学は表に出ている症状だけに
アプローチするものではなく、
根本から治癒を目指す医学です。

つまり、内面の養生と
冷やさない、風に直接当たらないなど
外気の影響から身を守る
養生が必要ということです。

関節に限局する症状のため、
そこだけに意識が集中しがちですが、
過労を避ける、十分な睡眠、
バランスの良い食事など、
丁寧な生活が欠かせないことも忘れずに。

お灸をやってみましょう

関節の症状は水や血が原因となるため、
お灸が向いています。

熱を加えることで、
炎症が悪化するように思えますが、
熱で熱を取り去ることができる。
これが東洋医学の不思議なところでもあるのです。



鍼灸院では小さく捻ったもぐさを据えます。
できるようでしたら、
糸状から半米粒大の大きさを２〜３壮
直接据えてみましょう。

直接のお灸が難しい時は、
誰でも簡単にできる台座灸でも効果があります。



関節の真上に一つでも構いません。
症状が気になる関節の上に据えます。



症状が強い時は、
関節の両脇に２つやってみましょう。

すぐに効果が感じられなくても、
気長に続けてみてください。
少しずつ症状が緩和してきます。

ただし、炎症や痛みが強い場合、
お灸に不安がある場合、
水疱がある場合などは
一度専門家に相談されることをお勧めします。

また、女性の方は「三陰交」にも
お灸を一緒に据えることで、
女性ホルモンを整える助けになります。



「三陰交」は内くるぶしから指４本分、
骨の内側のくぼんだところです。

まとめ

症状の出方は様々ですが、
痛みで手が握れなくなったり、
瓶の蓋が開けられなくなったりと、
生活上で困ることもあります。

また、炎症を繰り返すと、
変形が起こり、
細かい作業が苦手になったり、
美容的にも気になりますね。

原因不明なこともあり、
治療法も迷われることが多いと思います。

お灸もすぐに効果が
現れるものではありませんが、
古くから伝わる
先人たちの知恵が詰まった施術です。

現代医学では
画期的な治療がないものだからこそ、
伝統医学をぜひ取り入れていただきたいと思います。

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参考：
公益社団法人 日本整形外科学会HP
池田政一『臨床家のための症状別伝統鍼灸治療法』