ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」、日本のオーガニック料理とは?
はりまや佳子が教える、
「これさえ読めばあなたもオーガニック通」 Vol.3
オーガニック料理ソムリエ代表のはりまや佳子です。
あなたは「オーガニック料理」と聞いて、どんなお料理をイメージしますか?たぶんベジタリアンに近い、野菜づくしのお料理を思い浮かべる方が多いのでは?
オーガニック先進国のアメリカでは、料理のジャンルの一つとして「オーガニック料理」が確立されていていますが、オーガニック発展途上国の日本ではイメージのみが先行してしまってお料理の本質が認知されていないのが現状です。
そこで、今日は「日本のオーガニック料理」について、日本の食文化を紐解きながらご紹介したいと思います。
ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」
日本のオーガニック料理のベースは私たち日本人の伝統食である「和食」です。2013年12月「和食:日本の伝統的な食文化」はユネスコの無形文化遺産にも登録され、健康的な食事スタイルとして世界的脚光を浴び、以来、和食の健康増進の効果は世界中の人々に注目されています。
温帯に属し、南北に弓なりに長い国土をもち四季が明確な日本には、地域によって多様で豊かな自然があり、そこで生まれた食文化もまた、四季折々の自然に寄り添うように育まれてきました。「自然を尊ぶ」という日本人の気質に基づいた「食」に関する「習わし」、すなわち「季節の旬の食材を味わう」ことが、「和食:日本人の伝統的な食文化」と題して、ユネスコ無形文化遺産に登録されたのです。
「和食」の4つの特徴
それでは、ユネスコ無形文化遺産に登録された和食の特徴とは何でしょうか?
(1)多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重
日本の国土は南北に長く、海、山、里と表情豊かな自然が広がっているため、各地で地域に根差した多様な食材が用いられています。また、素材の味わいを活かす調理技術・調理道具が発達しています。
(2)健康的な食生活を支える栄養バランス
一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルは理想的な栄養バランスと言われています。また、「うま味」を上手に使うことによって動物性油脂の少ない食生活を実現しており、日本人の長寿や肥満防止に役立っています。
(3)自然の美しさや季節の移ろいの表現
食事の場で、自然の美しさや四季の移ろいを表現することも特徴のひとつです。季節の花や葉などで料理を飾りつけたり、季節に合った調度品や器を利用したりして、季節感を楽しみます。
(4)正月などの年中行事との密接な関わり
日本の食文化は、年中行事と密接に関わって育まれてきました。自然の恵みである「食」を分け合い、食の時間を共にすることで、家族や地域の絆を深めてきました。
(引用:農林水産省HP)
健康的な食生活を実践する上で、大切なのは(2)の「一汁三菜」を基本とする日本の食事スタイルですが、「一汁三菜」とは具体的にどういう食事スタイルなのでしょうか?
お米を食べると太る?
一汁三菜とは、ご飯に汁もの、三種のおかずで構成された献立のこと。主食のご飯でエネルギー源となる炭水化物、汁もので水分、主菜1品、副菜2品、合計三品のおかずでその他の栄養をバランスよくとることができるのが健康の秘訣です。また、多くの栄養素が交互に胃に入って混ざり合うことで、消化や吸収がよくなったり、余分な脂肪や糖分、塩分を排出したりといった効果も期待できます。
主食のご飯は米が基本。現代日本人が主食にしている白米には、たくさんの炭水化物が含まれていますが、食物繊維やビタミン、ミネラルなどの栄養素が含まれていません。ですから白米を主食にしているとカロリーはあるのに栄養素が少ないうえに、血糖値が急激に上がってインスリンが大量に分泌されるため、脂肪細胞に糖が運ばれる結果、太りやすくなります。
少し詳しく説明すると、インスリンの分泌量は血糖値の上がり具合によって変化します。血糖値が急激に上がると、その分インスリンも多く分泌されることになります。血液中に糖がたくさんある状態だと、体が「糖がたくさんあるから、体の中に溜めとこう」と反応します。溜めこまれた糖は、やがて脂肪となって、結果的に「太る」というわけです。また、血糖値が急に上がり、インスリンによって急に下がることで空腹を感じ、結果的に間食を摂り過ぎてしまい、さらに太りやすくなるのです。
GI値という言葉を聞いたことがあると思うのですが、GI値とはグリセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、その食品が体内で糖に変わり血糖値が上昇するスピードを計った値。ブドウ糖を摂取した時の血糖値の上昇率を100として、相対的に表されています。このGI値が低ければ低いほど血糖値の上昇が遅くなり、インスリンの分泌も抑えられるとされ、GI値は低いほど太りにくい食品と定義されています。
白いご飯は玄米と比べると100gあたりが同じカロリーでも、GI値が高いことからも、ダイエットには不向きな食材といわれています。
【GI値とカロリー(100g中)の比較】
白米:GI値 81 / カロリー168kcal
玄米:GI値 55 / カロリー165kcal
「お米は太る」とよく聞きますが、それはGI値が高く、栄養素の含まれていない「白米は太る」ということだったのです。
一方、玄米にはお米の健康の源である「糠(ぬか)」の部分に、たっぷりと栄養素が含まれている「完全食」。米糠の中には、玄米の持つ栄養分の90%以上が含まれていますが、精米された白米は、玄米の栄養素の5%しか残されていません。
米糠に含まれている栄養素は
●ビタミンB1は、白米の約20倍
●食物繊維は、ほうれん草の約10倍
●米全体の7割以上ものミネラル分
しかも、玄米は良く噛む必要があるので満腹感も得やすいので、ダイエットや美容、健康に最適な食材です。
玄米は低カロリーで栄養素をたっぷり含んだ「ホールフーズ(全粒食品)」、
白米は高カロリーで低栄養素の「エンプティーフーズ(空洞食品)」。
世界のスーパーフードは「玄米」
さらに玄米の素晴らしさを実感していただくために、漢字テストをしてみましょう。
Q1.米偏に「白」と書いてみてください。右から左に読むと白米です。
答えは「粕(かす)」。そうなのです、白米は漢字ができたときからお米のカス、栄養学がなかった時代から、私たち日本人は、「白米=栄養がない食べ物」だと知っていたのです。
Q2.米偏に健康の「康」と書いてみてください。
答えは「糠」ですね。このように漢字からも米の栄養の元は「糠」にあり、ということがわかります。
白米と玄米の差は、その生命力。玄米は水につけておくと数日後には芽がでてきますが、白米は水につけておくと数日で腐ってしまいます。
玄米は自然の命が宿っている、いわば「生きているお米」。「一粒万倍」といって、一粒の籾(もみ)が万倍にも実る稲穂になるといわれるほど、生命エネルギーの高い食べ物です。それでは、玄米にはどんな栄養と健康効果があるのでしょうか?
《玄米の栄養素とその効果》
ビタミンB1
糖質や脂肪の代謝を促す働き。
・ビタミンE
体をさびつかせる活性酸素を中和して、老化を防止する効果。
・カリウム
体内の余計な塩分を排出して利尿作用をもたらすことから「むくみ解消」に効果を発揮。
・たんぱく質
細胞を生成するのに必要な栄養素。
・食物繊維
整腸作用により、便通を良くする効果。
(出典:大塚製薬・食物繊維を摂ろう!〜意外と知らない食物繊維〜)
食物繊維を摂取すると便通が良くなることで老廃物が効率よく体外に排出され、血液の質を高めることができること、そして体の内側からお肌を綺麗にするという効果が明らかにされてからは、積極的に摂取するよう推進されています。
この食物繊維を含む豊富な栄養素を美味しく食べながら摂取するには、オーガニック玄米が必須!その理由は、農薬を使用してつくられたお米の残留農薬は、栄養素が90%以上も含まれている糠の部分に魏凝縮されているので、健康の元である「糠」を食べることで、残念ながら農薬も一緒に食べてしまうことに。玄米食が身体に良いことをご存じの方が増えてきていますが、オーガニック玄米を選ばないと諸刃の刃(もろはのつるぎ)になってしまうのです。
注:諸刃の剣とは、一方では非常に役立つが、他方では大きな損害をもたらす危険もあるというたとえ。
(引用:故事ことわざ辞典)
オーガニック料理はじめの一歩
主食である米の摂取量の目安は、一日の食事の総重量の50~60%。白米をオーガニック玄米に変えただけで、あなたの食生活は半分以上オーガニック料理に変身します!
私は12年前にマクロビオティックと出会いましたが、自己流でマクロビオティックを実践していたときには、野菜のオーガニックにばかり気を取られていて、玄米は農薬をつかった慣行農法のものを食べ続けていました。でも今からちょうど10年前にアメリカのクシ・インスティテュートに留学し、食事の中で一番大切なのは、「主食である玄米」だということを教えていただいてからは、無肥料・無農薬、そして無耕作というこだわりの自然農法「自然耕の玄米」を食べ続けています。
農薬や化学肥料で汚染された田んぼでは、元気の無い弱いお米が育ちます。でも無肥料・無農薬、しかも田んぼを耕さないでいると、元気で強い米ができるのです。「人は食べた物のようになる」とよく言いますが、大いなる自然に育まれた生命エネルギーの高いお米を主食として食べれば、人はだれでも元気になれるものです。
私たち日本人にとって一番大切な食べ物はお米。米という字は八十八と書きますが、お米をつくるのに88工程もある、とても手間暇のかかる農作物という意味と、その一粒一粒に「八百万(やおよろず)の神が宿っている」という意味があります。お米を食べることは、自然の神様を毎日体の中にとりいれるということ。お米を玄米で食べること、そしてその玄米がオーガニックであることが、オーガニック料理で一番大切なことなのです。
野菜は鮮度が命なので近所に自然食品店がないと、なかなかオーガニック料理生活が楽しめませんが、お米は常温で長期保存が可能な食品ですので買い置きをしておけば、いつでもオーガニック料理をつくることができます。
オーガニックライフを実践したい方はぜひ、玄米のオーガニックからスタートしてみてはいかがでしょうか?
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