大豆をめぐる混乱。大豆は結局、身体に良いのか悪いのか?海外でも疑われ始めた大豆神話。私たち日本人にはどうなのか。
日本人の伝統的食文化、大豆製品
日本人の食卓には欠かせない大豆。豆腐、味噌、醤油、
それから豆乳、湯葉、油揚げ、煮豆などの豆料理。
もともと肉食をあまりしなかった日本人にとっては
古くからの貴重なタンパク源でもありました。
最近では研究が進みコレステロールの抑制に効く、
腸内の善玉菌のエサとなるオリゴ糖をたくさん含んでいる、
植物エストロゲンである中性脂肪やイソフラボンの効果で
更年期障害などにも効くなどなど、その健康促進への効果は数え切れないほどです。
日本での大豆の歴史
大豆の名前の由来は「大いなる豆」という、偉大な豆であるとして名付けられたとされています。日本では昔から、米・麦・粟・稗・豆を「五穀」として、とても大事にしていました。
諸説ある中、大豆は紀元前2000年以前から中国で作られ、
日本には約2000年前の弥生時代に中国から伝わったようです。
奈良時代に中国とよく交流するようになり、
仏教とともに味噌や醤油など大豆の加工品や加工方法も伝わってきました。
当時、大豆は特別な食物だったようで、一般には普及していませんでした。
鎌倉時代以降に一般的に栽培され、お肉を食べることを禁止されていた際は、
一番のたんぱく源だったそうです。
その後、加工技術が発達し、きな粉や湯葉やおからなどができたと言われています。
お正月では「今年もマメに暮せるように」と黒豆が入っていたり、
節分では春を迎える前に邪気を払いに「魔滅(まめ)」というように、災いや病気を守るために使われ、
年の数を食べるとされています。
旧暦の9月13日のお月さまのことを「豆名月(まめめいげつ)」と呼び、感謝の意を込めてお祝いします。
海外でも大豆は大人気の健康食品
海外でも健康に関心が高まるにつれ注目を浴びるようになり1999年に米国食品医薬品局がその効用を認めてからは
爆発的に大豆製品の生産と消費が増加しました。
ヘルスコンシャスな人は牛乳の代わりに豆乳を飲み
動物愛護主義のビーガン(菜食主義)たちは動物性蛋白質を一切摂らない代わりに
大豆を加工して作ったひき肉のようなものを食べます。
ミュージシャンのポールマッカートニーの妻リンダマッカートニーの名前のブランドの
ビーガン向けの大豆加工食品は定番です。
大豆が身体に悪い??外国で疑われ始めた大豆神話。
ところがここ何年か外国のメディアではアグリカルチャーサイエンスジャーナル誌などに掲載された
実験や研究結果に基づいた学術論文に刺激されて大豆の健康効果に対する疑問を投げかける傾向が見られ始めました。
「大豆製品を男の子に与えすぎると精子の数が減るらしいよ」
「大豆製品が癌を誘発するらしい」
などと実際に私も友人から聞かされたこともあります。
それを聞いた私は毎日煮豆やおからや味噌を食べながら
子沢山で長生きだった祖父と祖母を思い出して
ちょっと信じられないなあ、と思ったものです。
大豆が健康に与える害の数々???
欧米の健康問題を取り扱うメディアによると大豆製品に含まれるイソフラボンがエストロゲンの吸収を助長しすぎる結果
ホルモンバランスを崩し体重増加、気分の落ち込み、
慢性疲労の原因になりひいては乳癌の原因になる。
男性には前立腺癌と精子減少の原因になる。
甲状腺ホルモンの分泌を抑える作用があり甲状腺機能低下症を引き起こす可能性がある、などなど
大豆製品の害を挙げる健康に関する記事は続々と出ています。
もうひとつの大豆をめぐる混乱
もうひとつ大きな混乱があります。お店で売られている大豆製品のラベルを見ると
「有機大豆」「丸大豆」「脱脂加工大豆」
「国産大豆」「遺伝子組み換えでない」
(遺伝子組み換えである、とは決して表示していませんが)
などなど実に様々な表示があり、なにがなんだかわからないのです。
そこで整理してみましょう。
国産大豆は安全か?
まず「国産大豆」であれば安全か?というとそうでもないらしい。国産大豆で化学肥料や農薬を使わなくなって3年経った土壌で
生産された有機JASお墨付きの大豆はわずか0、43%。
生産地によって農薬を散布する回数は異なりますが、かなりの農薬と除草剤を使う地域もあるようです。
外国で栽培された有機大豆の製品も市場に出回っています。
国産の有機大豆よりも値段が安くなっています。
そうなるとその生産国の政治背景なども考慮に入れて
信用のおけそうな国を選んでいくしかなさそうです。
「脱脂加工大豆」とは?
醤油の原材料名によく見られる「脱脂加工大豆」というのは醤油作りに必要なタンバク質のみを取り出し油分を取り除いた
フレーク状に加工した大豆のことです。
流通している醤油の原材料の80パーセント以上を占めています。
対して「丸大豆」とは加工していないそのままの大豆。
「脱脂加工大豆」は「搾りかす」というイメージがつきまといますが
「脱脂加工大豆」使用の醤油の方が深い旨味が出やすいという
醤油業者さんもいます。
扱いやすいのでコストを抑えて醤油を作れるという利点もあります。
ただし「脱脂加工大豆」は加工の過程で薬品を使うため
その安全性を疑問視する人もいるようですし
脱脂加工大豆は輸入されたものがほとんどですから
その生産の過程まで遡るのが難しいという問題があります。
植物版ブレードランナー「遺伝子組み換え」
海外で大豆の安全性について一番問題視されているのがこの「遺伝子組み換え」大豆についてのようです。
「遺伝子組み換え」とは主に大豆やコーンなどの作物を
大量生産しやすいように除草剤や殺虫剤を使用しても
枯れない作物に遺伝子レベルから作り替えた作物のこと。
ベトナム戦争に使用された悪名高き「枯れ葉剤」を製造した
モンサント社をはじめとする世界的大企業が
食産業に展開し始めた大ビジネスです。
この遺伝子組み換えは
来たるべき食糧危機から人類を救うとも謳われていますが
何しろほとんど人工的に作った作物。
いわば「ブレードランナー」の植物版です。
その生産過程で使用されるニューロトクシンと呼ばれる農薬は
脳や神経に障害を及ぼす危険な物質であることが知られていますし
世界中でさまざまな実験や研究の結果ガンやアレルギーなどの健康被害を人体に及ぼす恐れが高いとの報告が相次いでいます。
また飛行機で広範囲にわたって撒く除草剤が
地下水や土壌を汚染し、遺伝子組み換え作物の農場のある地域の住民にも
健康被害の報告が見られます。
日本にも流入している遺伝子組み換えの原材料
日本では遺伝子組み換えの作物生産は行われていませんが輸入品として多く市場に出回っているのが現実です。
しかも醤油と大豆油の原材料として使用されている場合
「遺伝子組み換えを使用している」という表示は義務付けられていません。
それで「遺伝子組み換えではない」という表示のみを見かけるのですね。
消費者の声がメーカーを変えていく
この「遺伝子組み換え」作物への疑問は国内の有志の活動家の方々も盛んに訴えています。
その成果が消費者の声として届いたのか
大手醤油製造メーカーのキッコーマンは
2003年には全ての醤油製品に使用する小麦と大豆を
遺伝子組み換えではない原材料に切り替えると発表しましたし
他社の大手メーカーも努力を重ねているようです。
果たして大豆製品は健康に良いのか?
さて海外で近年盛んに論じられるようになった「大豆製品が健康に良いのか?悪いのか?」という
主題に戻りましょう。
「遺伝子組み換え」の大豆製品に関しては
まさに国内外を問わず論じられており
しかも誰一人答えを見つけてはいない問題です。
個人的には実験段階のものを口に入れたくはない、
というのが正直な気持ちです。
バランスの良い食事の大切さー過激な健康食に走ることの危険性
その他の「ホルモンバランス」が云々、乳癌や前立腺癌の原因になる、などなどの実験報告などを
調べていてふと思い浮かべたのは
欧米の極端なベジタリアンの食生活です。
ベジタリアンとは言うもののその野菜のバリエーションと量は
普通に肉や魚を食べる日本人の食生活の野菜摂取より劣ったりしています。
伝統的に肉料理と付け合せとしての野菜を摂ってきた欧米の文化では
せいぜいサラダや茹で野菜を摂るだけなのです。
そこに肉の代わりのタンパク質として
しかも加工された大豆製品を大量に摂ることが
とてもバランスの良い食生活とは思えないのです。
日本の伝統的な食生活では大豆製品は
主に納豆、醤油、味噌などの発酵食品であること、
根菜や葉もの野菜をふんだんに使った野菜料理と共にバランスよを食事に取り込んでいることを
見落としているのではないか?と思われます。
さらに陰陽のバランスから見れば
発酵食品ではない豆腐や大豆製品は陰に偏った食品です。
食べ過ぎに注意したり生姜や味噌と食べ合わせることは
マクロビオティックの立場からは普通に言われていることですし
特に甲状腺機能低下症には注意が促されています。
加工食品、健康食品の落とし穴
また大豆ブームで欧米でも日本でも大豆由来のイソフラボンを錠剤にした製品が出回っています。
そもそも加工食品には安価な大豆が
乳化剤もしくはレシチンなどと呼ばれる食品添加物として使用されていることも多く
食事のメニューで大豆を楽しむのではなく不自然な形での大豆を過剰に摂取してしまう危険性も高いと思います。
地産地消が一番。
大豆はアジアでは2000年以上食べられてきた歴史がある、でも、欧米では?
そもそも大豆は中国南部やタイで栽培されていたものが弥生時代に朝鮮半島を通って日本に伝わったものとされています。
アジアではじつに2000年以上食べられてきたものなのです。
対してアメリカに大豆が初めて持ち込まれたのは1758年。
黒船に乗ってきたペリー総督国も本国に持ち帰って
栽培しようと試みたとかみなかったとか。
そのアメリカが中国を抜いて
世界で最大の大豆生産国になったのは1954年。
そもそもは大豆油からクレヨンや石鹸を生産したり畜産用の飼料にするために生産し始めたものです。
つまり欧米人が大豆製品を食事に取り入れ始めたのは
ほんのここ半世紀にもならない浅い歴史というわけです。
欧米人が何百年もの長い時間をかけて
乳製品を分解消化する酵素を身体に作り上げたのと同じく
我々の身体も大豆を分解消化するために
長い時間をかけて適応してきたに違いないと私は思います。
私の体験:日本人には日本人にあった食生活がある
実際私自身もイギリス在住時代に
月経困難症でハーブ療法士に診察を受けた時に
「日本人である貴女の体質に欧米の食事が合うはずはない」と言われ
それまでイギリスでは全く食べなかった日本食に切り替えてから体調が改善した経験があります。
ある中国系の友人は健康に良いと評判のキヌアがお気に入りでしたが
キヌアサラダを食べるたびに手の関節がほんの少しですが腫れるのです。
「やっぱり私は中国大陸で採れるヒエや粟を食べるべきで
南米原産のキヌアなんて身体に合わないんだわ」と好物をあきらめました。
今や流通が発達して世界中のいろんな珍しい食べ物が手に入り
毎日の食卓もバラエティーに富んで楽しいですが
やはり遺伝子レベルの体質というものは多かれ少なかれ存在するものだと感じます。
自分の生まれた土地で伝統的に食べられてきたものを
バランスよくいただきつつ珍しい食べ物もほどほどに楽しむというのが一番中庸で健康な食事の基本姿勢ではないでしょうか。
身土不二。
これを考えれば、大豆という食材への向き合い方は自ずと見えてくるのではないかと思います。IN YOU Marketオススメ商品
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