西麻布のイタリアン・チャオベッラが、メニューに「マクロビオティック」を取り入れたワケ。
今回は西麻布「自然な料理」をコンセプトにナチュラルイタリアンレストラン「チャオベッラ」を営む、島田シェフにお話を伺ってきました。
チャオベッラは既に何度もお邪魔しているのですが、実は数年前からずっと気になっていたお店でした。
メニューには通常コースの他にマクロビオティックコースや糖質制限コース、野菜コースなど様々なヘルシーコースから注文可能です。
その他グルテンフリー対応など、様々なニーズに合わせた柔軟な対応のできるナチュラルイタリアンとして注目を浴びています。
巷にイタリアンレストランは沢山ありますが、こだわりぬいたオーガニック食材を使い、公式メニューにマクロビオティックコースがあるイタリアンはなかなか見かけません。
2001年に開店した、西麻布という都会の中にひっそりと佇むこのレストラン。
なぜメニューの中にマクロビオティックを取り入れることになったのでしょうか。
そのこだわりと秘密について早速のぞいてみましょう。
「畑で無農薬の人参をかじったことがオーガニックに目覚めたきっかけ。」
松浦:こんにちは。本日はよろしくお願いいたします。
早速ですが、まず島田シェフのバックグランドについて教えていただけますか?
島田:はい。僕は元栄養士で、その後フレンチを4年ほど学んでいました。
でもすぐにその後、友人と13年ほど前にカポペリカーノというイタリアンを開店することになったんです。
そして後に2001年、チャオベッラを開店するため、独立に至りました。
松浦:フレンチからイタリアンというと随分異なる分野への移行に思えますが、何か理由があったんですか?
島田:フレンチという食事が、自分にとって重く感じるようになったんです。
もちろん美味しいとは思うのですが、日常的に食べるには、体質的に合わないと感じてしまいまして。
松浦:なるほど。ところで以前からオーガニックにこだわられていたのですか?
島田:いいえ、実は違うんです。
実は開店当初、あるきっかけがあって有機の農家に出向いたことがあったんです。
その時、畑で人参を齧ったらびっくりするほど甘くて。
こんなに美味しい野菜に出会ったのは初めてで感動して、そこから食材をオーガニックに切り替えはじめ、今では調味料や野菜を含め、食材全般をオーガニックで揃えています。
オーガニックをうたうようになってから、お客様から「マクロビオティック」に関する問い合わせが増えた。
松浦:それによって客層は変わりましたか?
島田:健康に気を遣う人が本当に多くなりましたね。料理が変わったことでベジタリアンのお客様が増えたり、マクロビオティックを実践するお客様が増えていきました。
松浦:それは面白いですね、「オーガニック」というひとつのキーワードをもとに、類似するヘルシー志向の人たちが集まってくる。
ところで、チャオベッラにはマクロビオティックのコースがありますが、島田さんはもともとマクロビオティックにも知見があったのでしょうか。
島田:いいえ、もともと特に僕はマクロビオティック専門だったというわけではないんです。
オーガニックを全面的に打ち出すようになってから、自然と「マクロビオティック対応の料理はないんですか?」といったお問い合わせが増えるようになっていきました。
お客様のニーズがあるということが分かって、正式にメニューとして取り入れるようになりました。
松浦:お客様の要望を反映した結果、今のスタイルになったということですね。
大体いつからマクロビオティックメニューが正式に取り入れられたんですか?
島田:10年前くらいです。
松浦:10年前!
意外と昔から東京ではマクロビオティックを実践する方がいらっしゃったんですね。
驚きです。ここ数年で何か変化はありましたか?
島田:5年前と現在を比べると確実にオーガニックやマクロビオティックに知見があるお客様の来店が増えています。5年前にはまだマクロビオティックというと、マドンナのようなセレブやモデルなど、特別な人たちがやるものだと思われていた節があると思うんですが、最近は一般の方でもしっかりとした思想をもってマクロビオティックを実践する方がどんどん増えていらっしゃるように感じます。
松浦:確かに、オーガニックやマクロビオティックはなんだか敷居が高いというか、お金がないと実践できないと思われてきたところは少なからずありますよね。
でも本当は、自分の意志さえあれば、誰でも実践することは可能なんですけどね。
「素材を超える料理はない。」
松浦:島田さんはチャオベッラに対してどのような想いで運営されているんですか?
島田:僕は素材を超える料理はないと思うんです。例えば良い塩と良いオリーブオイルがあれば、もうそれだけでも美味しい料理になる。
ですから、できれば食材はすべてオーガニックでやりたいと考えています。
オーガニックって、食材だけじゃなくて一つの思想のようなものなんです。
ですが、これまでにも市場では色々な健康ブームやオーガニックブームのようなものが一時的に流行してきましたが、そうしたブームが巻き起こる中で、矛盾も非常に多いと思っているんです。
松浦:確かに・・。矛盾はありますよね。
外から見ると、一見ヘルシー志向でも、本質を見ると実は矛盾だらけで「なんちゃってオーガニック」「なんちゃってヘルシー志向」なプロダクトやお店で市場はあふれていたり。
そして、よく知らない人はそれらの謳い文句を信じて、購入してしまったりする。
島田:そうですね。
実際、今オーガニックカフェなるものは増えてきていると思うんですが、食材をちゃんと揃えて運営するオーガニックレストランはまだまだ少ない。
だから自分がそれを普及させていきたいと思っているんです。
あとは、お客様にレストランに実際に来て食べていただくことで、オーガニックを知っていただきたい。そして自分の手でも購入して良さを分かってもらえたら。
実は最近、有機栽培をする農家さんが少しずつ増えてきているんですよ。
でも手間がかかるわりには売れていないところもある。
そんな農家への手助けもしたいと考えています。
何より、オーガニックを真面目にやっていきたいですね。
松浦:こうしたレストランが増えることで、有機農家の活性化にも繋がっていきそうですね。
島田さん一押しのチャオべッラで食べられる、マクロビオティックメニュー
松浦:マクロビオティックの料理のために何か特別な食材を取り入れていますか?
島田:白砂糖を使わないことは勿論ですが、特にこれを使っている、というものはないですね。
もともとオーガニックの料理をずっとやってきて、オーガニックもマクロビオティックも「自然な料理」という点で共通点がありますし、根本的にはそんなに大きなギャップはないと思っています。
例えばマクロビオティックでは乳製品は使いませんが、野菜の本来の味を活かすためにはあえて生クリームや牛乳を使わない方がいいこともあるんです。
豆乳を使うことによって人参の本来の風味が残ったりする。
デザートには多少工夫が必要ですけどね。
ですが基本的には、僕はマクロビオティックの料理を作る上で、あまり違和感を感じたことはないですね。
松浦:マクロビオティックやオーガニックってフレンチや中華のように、それそのものの料理があるわけではなくて、あくまで思想ですからね。
ところで島田さんのお勧めのマクロビオティックを取り入れたメニューはなんですか?
島田:一番は前菜の「野菜のメリメロ」です。
フランス語で「ごちゃまぜ」という意味で、取引している5か所の有機農家の生産元から野菜を取り寄せているんですが、このメニューは色々な厳選野菜をピックアップして盛り付けたもので。
一見とてもシンプルに見えますが、個人ではなかなか揃えられないような貴重な野菜を使っています。
オイルや、ビネガーにもこだわっている点がポイントです。
もう一つは「たかきびのガレット」。
玉ねぎや野菜などを細かくしたものをカレー粉などと一緒にハンバーク状にたかきびと練りこんだものです。
たかきびも安いものではなく、良質なものを使用しています。これも一般的に出回っているものとは全然味が違うんですよ。
松浦:ありがとうございます、いずれのメニューも実は以前食べたことがありますが、食材の本来の味が楽しめて、とても美味しかったです。
たかきびのガレットはなかなか家庭で作ることが難しそうなメニューなので私からもお勧めしたいです笑
98%をオーガニックで作る。これからは限りなく100%オーガニックを目指していきたい。
松浦:島田さんは今後どんなことをやっていきたいとお考えですか?
島田:そうですね。新鮮で美味しい食材は常に探しているので引き続き探求していきたいです。料理って食材を選ぶところからが料理だと思っていて。
今でもすでに自分の店の98%はオーガニック(一部減農薬を含む)で揃えているのでこの比率を限りなく100%に近づけていきたいですね。
それから以前も行っていたんですが、料理教室をやっていこうかなと。
松浦:料理教室はお店でされるということですか?
島田:そうです。少人数制でカジュアルにやろうかなと。
生産者の方にも直接来ていただいて、想いを語ってもらったり。
それから、最近カフェを東京大学の医科学研究所内にオープンさせたので、美味しいオーガニックの料理をカフェを通じて広めていきたいですね。
松浦:このカフェは一般の方も入られるんですか?
島田:はい。大丈夫です。
カフェではチャオベッラの料理をよりカジュアルに気軽に楽しめるようになっています。ランチメニューにマクロビオティック対応のメニューもありますし、今後どんどんこうしたメニューを充実させていく予定です。
このほかにも今後は医療機関とか学校にカフェをオープンさせて、更に普及できたらいいなと。
東大のカフェではオーガニックのパンやフルーツなども販売しているので是非いらしてください。
松浦:興味深いですね、白金台にはよく行くので是非私も一度遊びに行かせてください。
最後になりますが、INYOUの読者に伝えたいメッセージをお願いします。
島田:僕は、体に入れるもので身体はつくられていると思っています。
INYOUを見ている方の中には子育て中の方もいると思うのですが、子供は食べさせるもので成長していきます。
現代では良くないものであふれていますが、食材を選ぶときにはなるべく有機や無農薬のものを選ぶことが大事です。
最近コンビニ弁当やファミレス、ファストフードが増えて、幼い頃からこうしたものを食べられているお子さんもいらっしゃいますが、このような食事に慣れてしまい、本当の美味しさを知らずにいると、だんだん味覚がおかしくなってしまうんです。
例えばナチュラルな野菜料理を食べても普段から化学的な味に慣れていると、「味が薄い」と感じてしまって不味いと思うようになったり。
僕から伝えたいことはなるべく皆さんには普段から良質なものを食べるように心がけていただきたいということですね。
松浦:ありがとうございました。
人が多く集まる一つの場を通じて、生産者と消費者をつなぐばかりではなく、来店するお客様に食に関する大切なメッセージをわかりやすく伝えるレストランが一つでもあるということは現代社会にとって非常に貴重なことであり、常にメッセージを与え続けることはメディアやレストランなどの「提供側」の役目でもあると感じました。
最後に店内の風景をご紹介します。
エントランスは木のぬくもりが。
店内は光が差し込んでいて開放的な空間です。店内のアートも際立っています。
個室も落ち着けそうです。
最後に
今回は島田シェフに貴重なお話を伺いましたが、
私自身もっとも興味深く感じたのは、もともとはマクロビオティックのメニューがなかったにも関わらず、お客様のニーズがあって、マクロビオティックのメニューが誕生したということ。
何度かリピートしていましたが、このような背景があるとは全く知りませんでした。
まだまだ健康志向の人の割合は少ないように感じており、私個人としては食や健康への知見を持つ方が増えているという認識は薄かったものの、事実このような意識の高いお客様が年々増えていることで、とても嬉しく感じました。
さて島田シェフと、イタリア有機農業のパイオニアであるジーノ・ジロロモーニのコラボレーションカフェ「オーガニックラボカフェチャオベッラウィズジロロモーニ」は2015年1月21日よりグランドオープン。
チャオベッラの味をそのままに、カジュアルに楽しめるカフェなので是非遊びに行ってみてくださいね。
チャオベッラ本店
<OPEN>
[火~日] 18:00~23:00(L.O.21:00)
[木~日] 12:00~14:30(L.O.13:30)
ランチ営業、日曜営業
<ADDRESS>
東京都港区西麻布1-11-10
<PHONE>
03-3479-0046
オーガニックラボカフェチャオベッラウィズジロロモーニ
<OPEN>
12:00-20:00
<ADDRESS>
東京都港区白金台4-6-1東京大学医科学研究所 近代医科学記念館内
白金台駅から徒歩1分
<PHONE>
03-6450-4828
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