スターバックスのストロー廃止はプラスチック海洋汚染解決への大きな一歩となるか?最前線の研究と今ここで始められるエコ「自然素材のストロー」の作り方
1 環境問題が「身近な問題」として大きく取り上げられた日
今月9日、コーヒーチェーン大手のスターバックスが、プラスチック製ストローの使用を全廃すると発表。
2020年までに、世界に28000か所あるスターバックス店舗で、飲み口付きのふたへ切り替え、現在毎年スタバで廃棄される10億本のストローがなくなる試算です。これまでにも、海洋プラスチックごみの問題は、デジタルニュースやエコ関連のサイトなどで幾度となく取り上げられてきました。
ダイバーが撮影した浮遊するプラスチックごみのかたまりや、それらが原因でケガや命を落とすアザラシやクジラなどの写真や動画は、
臨場感をもって訴えかけてきます。けれど「海」という、多くの人にとって日常からは少し距離のある場所では、その問題にも距離感があったのではないでしょうか。
今回の「普段暮らしている街で、普段利用している店」が世界規模で取り組むというニュースは、
環境問題への関心有無にかかわらず、賛否も含め、広範囲の人々の話題に上るという大きな一日でした。
2 プラスチックの誕生とマイクロ化
19世紀後半に発明されたプラスチックは、1950年頃生産が本格化すると、日用品や医療から宇宙ロケットまで、あらゆる分野の革新・発展に貢献してきました。
そして、安価で利便性高く、大量生産可能な素材という視点ら、環境面の視点に移っています。
これまでの累計生産量は63億トン、廃棄された中でリサイクルされていないプラスチックは57億トン(2017年発表)。
現在世界の海には、年間800万トンのプラスチックごみが流出しており、海洋ゴミ専門家ハビブ・エル・ハバル氏は、
海洋プラスチックごみの総重量は、2050年までにすべての魚の重量を上回ると推測しています。
原形のまま漂うゴミは、多くの海洋生物や鳥類の脅威となり、例えばタイでは、毎年300頭以上が命を落としているそう。
今年5月、タイの運河で救助され、5日後に死亡したクジラの胃からは、80枚のレジを含む約8キロのプラスチックごみが発見されました。
さらに、それらが劣化して直径5ミリ以下になったプラスチック粒子や、洗顔剤、合成洗剤、歯磨き粉に含まれるスクラブは
「マイクロプラスチック」と呼ばれ、いまや深海の堆積物から北極の氷の中まであらゆる場所から発見されています。
日本の沿岸のマイクロプラスチックの濃度は、世界平均の27倍。動物プランクトンからクジラまでさまざまな大きさの海洋生物の体内に取り込まれ、
食物連鎖によって人へと戻ってくるのは、自然な流れでしょう。
3 世界中の取り組み
プラスチックごみ対策を行っている国は、世界で約50か国。
国や州によって、方策や強制力はさまざまです。
最も対策が早かったのは「レジ袋」。全面的に禁止している国は、バングラディシュ(2002) ブータン(2007) ルワンダ、エリトリア、ソマリランド(2008) エチオピア、イタリア(2011年) フランス(2016・プラスチック製食器類の禁止は2020~) ケニア(2017)などです。
州や都市を入れればもっとあります。
「ストロー」などへの対策でいえば、今年5/24大手ファーストフードチェーン、マクドナルドは、
株式総会で株主がプラスチック製ストローの禁止を求めましたが8%の賛成しか得られず、全店の実施は叶わずも、英国とアイルランド1361店で9月から紙製ストローに順次切り替えが決定。
5/28欧州連合(EU)は、使い捨てプラスチック製品の使用を禁止する法案を提出。2025年までに、
プラスチックの食器、ストロー、ファーストフードの容器、マドラー、綿棒などが禁止で、より環境に優しい代替品に置き換えられるというもの。
6/1アメリカ、カリフォルニア州マリブ市は、飲食店での使い捨てプラスチック製ストローを全面的に禁止。
違反すると、一回目100ドル、2回目200ドル、3回目500ドルの罰金を伴います。
7/1アメリカ、ワシントン州シアトル市は、プラスチック製の使い捨て食器の提供を禁止する条例を、世界ではじめて制定しています。
スターバックスが使用をやめるのは、ストローのみ。
賛否の対象となっているのは、ストローの代わりに提供する、飲み口のついたプラスチックふた。
ちなみに、障害などにより飲むときにストローが必要な方には、紙製のストローが用意されるとのこと。
マイカップを利用したり、「ふたなし」で直接飲んだりすることで、さらにごみを減らすことができそうです。
4 「PETは自然界での分解はされない?」通説を覆す2つの最新研究
2016年3月10日アメリカの科学誌“Science”に、日本の共同研究チームの研究結果が掲載されました。それは、プラスチックをエネルギー元とする細菌が見つかったというものです。
自然環境の下では、分解に数百年かかるペットボトルの原料PET(ポリエチレンテレフタラート)を、
数日で分解する細菌は、大阪府堺市のリサイクル施設のごみの山から発見ことにちなんで、イデオネラ・サカイエンシスと名づけられました。
今年4月、英ポーツマス大学教授と米国立再生可能エネルギー研究所が、
より強力な分解力をもつ細菌を発見したと報告、実用化を目指し研究を重ねているとのことです。
2016年スペインのカンタブリア大学発生生物学者フェデリカ・ベルトチーニ氏が、趣味の養蜂で巣箱を掃除している際、
ビニール袋を溶かす虫を発見しました。巣に寄生するハチノスツヅリガ(Galleria meonella)の幼虫です。
釣りをする人にはエサのブドウムシの代替品としてなじみがあるものです。
幼虫をビニール袋に入れた一時間後、穴が開いていたことが発端で、共同研究者、英国ケンブリッジ大学のチームが実験を行った結果、
100匹の幼虫で92mgのビニール袋を分解できることが判明。みつろうとプラスチックは原子構造が似ているのだそう。
けれども、上記の研究者の方々が触れているのは、生物的分解の可能性が見えたことは、プラスチックゴミの廃棄を容認するものではないということです。
いま太平洋に浮かんでいる79000トンもの「太平洋ゴミベルト」など、大規模な問題を前にすると、はたして自分にできることなどあるのかと感じてしまいます。
誰もが、海洋のゴミ拾いに参加できるわけではありません。
日常を送りながら、いま、ここでできることを続ける。
以前から取り組まれている、エコバッグ、マイボトル、保存容器の素材選び、エコラップ、合成洗剤などからの移行などをこつこつ続けつつ、
こどもたちと暮らしのなかでそれらを使うことで、海や地球とつながっていることを感じる。
こどもたちと、自然素材のストローを使ったり、作ってみることで、プラスチックの便利さと環境のことに思いを馳せてみられるのはいかがでしょうか。
4 手作りで簡単!自然素材ストローの作り方
滋賀県の琵琶湖から、京都、大阪を流れ、大阪湾にそそぐ淀川。
高槻市のある左岸には、詩(うた)にも詠(よ)まれている「鵜殿(うどの)のヨシ原」があります。
すだれの材料として重宝され、また上質なため雅楽器「篳篥(ひちりき)」の拭き口に欠かせないものとして、現在も宮内庁楽部では鵜殿産のヨシが使われているそう。
今回のストローは、鵜殿の保存会の方から分けていただいたヨシを使います。
もし、細い竹が入るなら、より丈夫なストローができます。数えきれないほどの道具に使われてきている竹は、
旺盛な成長力ゆえに、手入れしなければ、さまざまな雑木の働きで強い地盤や保水力に富む雑木林を覆ってしまうこともあります。
優れた材として、地域で活用していきたいものです。
[材料] ・細い竹または葦
[作り方] ①好みの長さに切ります。
*竹用のこぎりのように、目の細かい刃できると、断面がきれいです。
*ヨシはとてもさけやすいので、特にゆっくり切りましょう。
②紙やすりで磨き、洗ったらできあがり。
*葦の中のワタが気になれば、細いはぎれを針金に巻いて、中をごしごしこすると取れます。
*使い終わったら重曹水で洗い、時々、酢を加えたお湯で10分くらい煮沸消毒、風通しのよいところで保管するとよいです。
その他、竹に加えて、ステンレス製、ガラス製のマイストローも販売されています。
アメリカ、マリブのカフェでは、穴のあいたパスタをストローとして提供しているそう。
冷たい飲み物の中では4時間形を保てるそうです。今度、子どもたちとスペルト麦を栽培したら、
本当のストロー(straw)で、ストロー体験もしてみようと思います。
5 感謝しつつ
プラスチックは、日常の身近な道具から、医療現場、飛行機まで、画期的な素材として長らく発展に役立ってきました。感謝しつつ、よりよい方向へ舵を切っていけますように。
(参考:環境省報道発表資料平成30年1月23日「海洋ごみ調査の結果について」/京都工芸繊維大学HP /NHK online / CNN HP / NATIONAL GEOGRAPHICニュース / Newsweek Japan HP/ GREENPEACE Japan Mobile Site / プラスチックの海HP)
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