安全な水が消える日。次々と多国籍企業の格好の餌食にされる日本。水面下で進められる水道民営化と水ビジネスがもし実現されたら日本人の生活はどう変わるのか。
こんにちは。最近、暑い日が増えてきましたね。
4月下旬にも関わらず、最近は気温が27.7℃まで上昇する日も出てきました。
気温の高い日は、ハウスで育てている苗を外に出して、枯れないようにしておく必要があります。
それでも2、3時間で土が乾いてしまう時があるので、朝の水やりは多めにするように心がけています。
こんな猛暑日は、熱中症対策の水分補給が欠かせませんよね。
私たちが体を維持するためには、1日あたり最低2300mlの水が必要となります。
また、もし1日水を一滴も飲まずに過ごすと体内の約2.5パーセントの水分が失われます。
大人の場合、約2%~4%の水分が不足すると脱水症状で発熱し、限界を超えると死に至る恐れもあるのです。
今日は、そんな私たちの生活に欠かせない貴重な水のお話しです。
私たちの生活に欠かせない水道が深刻な事態になっていることをご存知ですか??
水道設備が行き届いた日本では、誰もが気軽に蛇口から水を飲むことができます。
IN YOU読者の皆さんには、塩素が気になり浄水器などを利用している方も多いのではないでしょうか。
電子レンジのマイクロ波が気になる方は、ウォーターオーブンでお料理をされている方もいらっしゃるかもしれません。
皆さんはご自宅の水道から、1分間にどのくらいの水が出ているかご存知ですか?
その量は、約12Lにも上ります。わたしたちの水道使用量は平均240L。飲み水にしているのは、ほんの数リットルで、大半は洗い物や掃除に使われています。
古い我が家は、水道設備も老朽化が進み、きちんと蛇口が閉まらずに水が滴り落ちている時があります。
もし蛇口をきちんと締めずに水滴が滴り落ちた場合、その量は一日で30Lにもなります。非常にもったいないですね。
世界には1日に使える水が一人30リットル以内の国が40カ国ある。
実は世界には、一日に1人が使える水が30L以内の国が約40か国もあるのです。
また世界の半分以上の世帯は水道がなく、安全な水を利用できない人は、世界に11億人います。
水道設備が行きわたる数少ない国に住む私たち。
このままライフラインに困ることなく生活していけるようにも思えますよね。
ところが現在、私たちのライフラインである水道に危機が迫っています。
近年はTPPや種子法など、多国籍企業により農業や食の安全性が脅かされていますよね。
その多国籍企業が次に狙っているのは、私たちの生活に欠かせない「水道」です。
その実状を今日はお伝えしたいと思います。
日本の水道は、高度経済成長期から平成にかけて整備さました。
その水道事業、赤字が膨れ上がり、多額の負債を抱えていることはご存知ですか?
日本の水道事業は大型浄水場やダム建設による借入れ、
減価償却費などで費用が圧迫されたことにより上下水道併せて42兆円もの負債を抱えています。
更に50年以上使用してきた水道管や浄水場は老朽化により更新が必要なのです。
厚労省の試算では、水道設備更新にかかる費用は2025年までに上水道で40兆円、下水道で80兆円。
合計120兆円と見込まれます。
負債を抱えた上に、多額の更新費用に迫られたことで、私たちの水道料金の値上げは避けられない事態となっています。
現在、政府はこの困難な状況の解決策として、水道の民営化を推し進めています。
2013年、麻生副総理は「日本の水道をすべて民営化します」と宣言。
昨年3月には水道の民営化を念頭に置いた水道法の改正案が閣議決定され、国会に提出されました。
水道民営化により死者が発生したボリビア
この水道民営化、すでに世界各国で行われ、以下のような問題が起きています。
・水道料金の高騰による支払い不能(供給停止)。
・不衛生な水を飲んだことによる健康被害
・水道事業の労働者削減と、非正規へ置き換え。
・税金投入によるコスト補てん。
1990年代に、ボリビアでは、IMF(国際通貨基金)が政府にコチャンバンバ市の水道民営化と引き換えに、
600万ドル(日本円で7億円)の多国間債務を免除すると申し出ました。
これによりボリビアの水道は民営化され、アメリカの大手建設会社ベクテル社の子会社が運営を担った結果、次のような問題が発生しました。
民営化により、適切な料金で水道管の敷設や供給が行われるという条件が提示されていましたが、
実際には水道料金は倍以上に高騰し、多くの家庭が支払不能と供給停止に追い込まれました。
また水道水が飲めないことにより汚れた水や腐敗した水を飲まざるを得ない人が続出し、死者が相次ぎました。
その後、市民のデモなどにより40年に及ぶ時間を経て水道民営化の契約は破棄され、
再公営化が実現しましたが、後には開発費や、水道配管設備の工事代など膨大な借金が残りました。
多国籍企業と手を結んだIMFや世界銀行は、世界各国で水道の民営化を進めてきました。
1989年から水道の民営化を行ったイギリスは、水道料金の値上げに加え、水質検査合格率が85%まで低下しています。
また世界各地で民営化された水道事業の8割を担っている企業がフランスのヴェオリア・ウォーター社、スエズ社(フランス)、テムズウォーター社(イギリス)です。
1985年ヴェオリア社とスエズ社と水道事業の受託契約を行い、
水道料金が265%増加したパリ市は、2009年に2社との契約を終了し、再公営化へと舵をきりました。
このフランス多国籍企業2社はIMFとの関係が深い会社です。
多額の負債を抱えた日本の水道事業は今、これらの多国籍企業の利益拡大を狙う恰好のターゲットとなっているのです。
水道事業の運営を多国籍企業に丸投げ!?
愛媛県松山市は2012年から上水道を民営化。また静岡県浜松市では、今年4月から下水道の民営化を開始しました。水道設備を自治体が所有したまま、管理・運営を企業に丸投げする「コンセッション契約」により運営されています。水道の開栓から、検針、設備の保守点検、料金収納まで全てが担っているのがヴェオリア社です。また大阪市では橋本市長時代に市議会で否決された水道民営化が、水道法改正により再び検討され始めています。
更に宮城県でも水道民営化に向けた具体的な動きが出始めています。
私たちの市町村の水道事業にも多国籍企業が進出してくる恐れがあるのです。
多国籍企業が乗り込んでくると・・・・
多国籍企業がのりこんでくると、一体日本ではどのようなことが起こりうるのでしょうか?
考えられることをまとめておきます。
● いつでも好きなように蛇口の水を使えなくなる恐れがある
● 水道の品質、安全性にに変化がもたらされる可能性がある
● 水道に病気リスクに悪影響をもたらす有害物質が添加される恐れがある
● 経済的に困難な家庭は支払いが滞納し、水を飲めなくなる可能性がある
● 最悪のケースには、死者が出る可能性がある
● 水道代の高騰化により、多くの家庭の家計を圧迫する
水は命も左右する大事なものです。
それを多国籍企業に握らせるのは恐ろしいとは思いませんか?
では、私たちはこのような水道民営化の動きに対して、何ができるのでしょうか。
国内や海外の例を参考に考えてみましょう。
全国で進められる水道民営化に私たちが出来ること
水道設備の仕組みを知ろう!
水道民営化により多国籍企業に水道の運営が丸投げされれば、安全な水道水が私たちに供給されなくなる恐れが高い・・・。
絶望的にも思えるこの状況で、私たちが出来ることは何でしょうか?まずは既に水道民営化が実施された自治体については、私たちの目でその運営が適切に行われているかチェックしてみることから始めてみませんか。
イギリスでは民営化スタートと同時に、政府から独立した水道料金やサービスが健全に維持される為の監視機関が設立されました。
企業を請け負った水道運営に問題が発生すれば、ペナルティが課せられます。
それでも様々な問題が発生しているのがイギリスの水道民営化。
私たちは、更に注意深く、多国籍企業の動向を見ていく必要があるのです。
そのためには、日本の水道設備や運営について知る必要があります。
水道の未来が気になる人たちで集まって、上下水道について調べてみましょう。
以下の本が分かりやすくおススメです。
「しくみ図解 上下水道が一番わかる-浄水から循環利用まで。最重要インフラの上下水道を理解する」 長澤靖之監修・著
「今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい水処理の本」 オルガノ(株)開発センター編
地下水を利用・保全しよう。
人口約7000人の秋田県旧六郷町(現・美郷町)では、独自の水政策を行っています。各家庭から商店、旅館、公共施設まで全ての生活用水が井戸水。
標高50mの土地の地下水脈にそれぞれが井戸を掘り、ポンプで汲み上げて利用。
井戸が掘られる前は、それぞれの家庭で、清水が利用され、生活排水は下流の清水に混じらないよう水路が備えられ、
地層でろ過された化学物質や塩素が混じっていない水が保全されています。
また熊本市は、水道水源を全て地下水で賄っています。
最低限の塩素を加えてはいますが、カルシウムやカリウムなどのミネラル成分などが含まれている、体に優しい水です。
こういった地下水、水資源が豊富な日本では全国に点在しています。またかつては地下水と上下水道を混ぜた簡易水道が普及していた地方もありました。こうした貴重な水源を汚染から守り、保全していくことが、私たちのライフラインを守ることにつながります。
貴重なライフラインは、私たちの手で守っていこう!
私たちの生活に必要なガス、電気、水道。
どれも大切なライフラインですが、特に水は生き残るために絶対に必要となるものですよね。
水道がライフラインとして普及していない国が沢山あるなか、蛇口の水を捻れば、簡単に水が使える生活。
その幸運を、当たりまえのように享受してきた私たち。その当たりまえの生活が今、脅かされています。
いままで行政に運営を任せてきた結果、日本の水道事業は多額の負債を抱えることになりました。2010年に再び水道を公営化したフランスでは、市民が組織を立ち上げ、水道事業者のマネジャーや技術担当者たちと水道事業や水問題について議論する場を作りました。その結果、徹底した事業の情報公開を勝ち取り、45億円ものコストを削減し、水道料金を8%値下げに成功したのです。
わたしたちもフランスを見習い、自分たちの手で大切な「水道」を守っていきましょう。
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参照:
週刊「水」ニュース・レポート 2016年2月10日号
橋下淳司著:67億人の水 「争奪」から「持続可能」へ
ビッグイシューオンライン:
水道「民営化」から「再公営化」へ。パリ、市民参加で45億円のコスト削減、ウェールズ、非営利法人による運営
日本政策投資銀行:
フランス・英国の水道分野における官民連携制度と事例の最新動向について
保屋野初子・瀬野守史著:
水道はどうなるのか? 安くておいしい地域水道ビジネス
服部聡之著
「水ビジネスの現状と展望 水メジャーの戦略・日本としての課題」
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