親子の絆は産まれる前から始まっている!性交や授乳に不可欠な愛情ホルモン「オキシトシン」が子どもの発達に及ぼす影響とは。
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女性の身体では、月経、妊娠、出産、閉経と、
それぞれのステージを進む中でホルモンバランスが大きく変化します。
いくつものホルモンが連携し複雑に作用することで、子宮の中では新しい生命を宿す準備が行われ、妊娠が成立するとお腹の中で赤ちゃんが元気に育つよう、環境整備がなされています。
また、出産後は自然と栄養価満点のおっぱいが分泌されるように調整されていますが、
これもホルモンの働きかけによるものです。
そしてもう一つ、子どもの健康な心身を育むために欠かせない役割があります。
それは、「親子の絆の形成」あるいは「愛情形成」です。
母性を宿し、親子間の絆を深めるのに作用するのがオキシトシンというホルモンであり、
別名「愛情ホルモン」「幸せホルモン」とも呼ばれています。
オキシトシンが健康な子どもを育む
オキシトシンの作用
オキシトシン(Oxytocin)は、ギリシャ語で「早く産まれる」という意味の言葉が語源となっているように、昔から出産や子育てに関するホルモンとして知られていました。脳の視床下部で合成され、下垂体後葉という部分から分泌されるこのホルモンは、
初めは女性特有のホルモンと考えられていましたが、
その後、男性の身体でも分泌されることがわかっています。
オキシトシンの機械的な作用は、以下のように性交や出産と深く関わっています。
女性
・分娩を促すために子宮を収縮させる
・産後の乳汁分泌
・性交時にオーガズムで子宮を収縮させる
・性交時に膣から分泌液を出す
男性
・勃起
・射精
女性では特に出産時に大量に分泌され、陣痛を促進し、赤ちゃんを押し出すように作用します。
出産直後は最も分泌量が多く、
健康な女性であれば授乳や性交時とは比べものにならないほどの量を分泌するといわれています。
また、分娩がスムーズに進行しない場合は、
陣痛促進剤や子宮収縮剤として人工的に合成されたオキシトシンを注入されることも多く、
医学的にも大きな役割を果たしているといえます。
そして、オキシトシンには上記のようなメカニカルな作用だけでなく、
行動面に関する作用もあると結論付けられた興味深い研究があります。
「処女のネズミにオキシトシンを注入すると、子ネズミの世話をし始める」
ということが研究結果で明らかになったのです。
しかも、注入後2時間以内に半数近くのネズミが完全に「母親化」すると報告されており、オキシトシンと母性行動の密接な関係を物語っています。
参考 「Oxytocin Love by Michel Odent」
URL: https://www.youtube.com/watch?v=EyHb4ezgqoU
オキシトシンと子どもの発達の関係
オキシトシンは出産直後に最も分泌量が多くなるということを述べましたが、この反応は産後すぐに赤ちゃんを抱くことによってさらに高まります。
そして、オキシトシンの高まりが乳汁分泌を促進し、
赤ちゃんが乳首を吸う刺激によってさらにオキシトシンが分泌される。
このサイクルによって母性や絆が形成されていくのです。
つまり、オキシトシンの分泌には出産直後に赤ちゃんと触れ合う、
いわゆる「カンガルーケア」が非常に重要な意味を持つということ、
そして、母乳育児が親子の愛情形成に大きく関与しているということです。
また、親子の絆が形成されるのには特定の時期があり、
その時期を過ぎても絆が深まっていないと、
その後の母子関係に、大きな影響が及ぶともいわれています。
その具体的な時期については諸説ありますが、
母子の絆に関する研究者として有名な、ジョン・ケネル博士によれ、ば「生後12時間以内」とされています。
参考『胎児は見ている』T・バーニー(著)
URL: https://www.amazon.co.jp/dp/4396650051/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_QTApCbBDM8Z6G
それでは、オキシトシンは子どもの発育にとってはどのような影響があるのでしょうか。
哺乳類は生物の中でもスキンシップが多いといわれていますが、
肌を触れ合うことで母親だけでなく、
子どもの脳内からもオキシトシンが分泌されることが明らかになっています。
特に、脳が最も発達する生後一年までの間に十分なスキンシップをしていると、
脳がオキシトシンを分泌しやすい状態に変化し、
記憶力アップや知能指数の向上につながるといわれています。
「抱きグセがつく」というような批判的な意見もありますが、
本能的に抱っこを要求しない子どもはいません。
子どもが親との触れ合いを求めるのは健全に育っている証拠であり、
特に乳児期までの間は、親子のスキンシップを意識して子育てをすることがとても大切なのです。
妊娠中のスキンシップが母性を生み出す
オキシトシンによって生じる母性は、いつから現れるのでしょうか。実は、妊娠中からお腹の赤ちゃんとスキンシップをとることで、
オキシトシンが分泌されることがわかっています。
当然ながら直接的に触れることはできませんが、
お腹をさすったり撫でたりすることで、母親の脳内からはたっぷりとオキシトシンが分泌されるのです。
「親子の絆は妊娠中からすでに始まっている」
このことを意識しながら妊娠生活を送ることで、将来のその家族の在り方は大きく変わってくるでしょう。
最近では、「胎教」という言葉も広く認知されるようになってきましたが、
お腹の赤ちゃんとのコミュニケーションを楽しみ、リラックスして妊娠期間を過ごすことで、
母親としての自覚が深まり、子育てにも良い影響が生じると考えられています。
現代のお産はオキシトシンの分泌を減らす!
古来、お産は女性だけのものだった
オキシトシンが十分に分泌されるかどうかは、環境によって左右されます。適切な温度(寒くない場所)、静かな場所、人気(ひとけ)がない場所をオキシトシンは好みます。
人以外の哺乳類は、分娩時、誰にも見られない場所を選んで子どもを産みますが、
人類も昔は人目につかない所に隠れて出産していました。
オキシトシンは、非常に「シャイな」ホルモンなのです。
しかし、時を経て出産の場に産婆や助産師が介入するようになり、
妊婦のお腹を押したり、膣を拡げたりと、外的な力を用いて産むようになりました。
20世紀の後半になると、さらに男性の医師が介入するようになりましたが、
それでも、当初は緊急時のみの出番であり、基本的には女性しか分娩の場にはいませんでした。
オキシトシンの分泌という観点からみると、
その性質はとてもシャイなため、女性だけの場の方が心身ともにリラックスすることができ、
十分な量を分泌することができるのです。
今では、正常分娩でも男性医師が介入し、夫の立ち合い出産も当たり前になっていますが、
それによって、オキシトシンは本来よりも分泌されにくくなってしまう可能性があります。
夫の立ち合いに関しては、それによって父親としての自覚が芽生えたり、
妻への感謝の気持ちが生じたりと、様々なメリットもあるので一概にはいえませんが、
同時に目に見えないデメリットも起きているということを忘れてはなりません。
帝王切開や陣痛促進剤の使用による影響
日本の周産期死亡率(妊娠22週以後の死産と早期新生児死亡の割合)の低さは世界トップクラスです。しかし、帝王切開で分娩する人の割合は2000年以降増え続けており、
現在は5人に1人が何らかの理由で帝王切開にて出産しています。
帝王切開は、陣痛が来る前に行う場合と、陣痛が始まってから行う場合がありますが、
オキシトシンがより正常に近い形で分泌されるのは後者です。
陣痛開始とともにオキシトシンの他にもエンドルフィンなど出産に関わるホルモンが大量に分泌されるため、
母親にとっても生まれてくる子どもにとってもよりよい環境になります。
また、産後はおっぱいもスムーズに出やすくなるというメリットがあります。
反対に、陣痛が来る前に帝王切開をした場合は、
これらのホルモンの変化が生じる前に分娩となるので、
言い換えれば、まだ産まれる準備が整っていない状態での娩出となってしまいます。
また、陣痛促進剤にオキシトシンが使われることは既に述べましたが、
外部から人工的に注入されることによって、
本来出されるはずの脳内からのオキシトシンはさらに減少してしまうリスクがあります。
最近では、安易に陣痛促進剤を使用する病院もあるようですが、
このようなリスクをしっかり理解しておく必要があるでしょう。
子どもの安全を優先しての医療処置ではありますが、
妊婦さんはそのリスクについても十分に理解しておかなければなりません。
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出産の主役は母親と産まれてくる赤ちゃん
昔と今のお産の在り方についてみてきましたが、現代の分娩スタイルが悪いと言うつもりはありません。それによって助かる命が増えたことは紛れもない事実です。
ただ、異常がないのにも関わらず、
医療者側が過度に介入しすぎている件については違和感を感じざるをえません。
一昔前のように、自然の力に任せて、
自分の好きな体勢で自分の好きなように産むことができても良いのではないでしょうか。
満足なお産ができると、より子どもへの愛情が沸き、母性本能も芽生えやすくなるといわれています。
そのためには、妊娠中から「出産の主役は母親と産まれてくる赤ちゃん」という意識を持つことが大切です。
妊婦の好きな体勢で産むフリースタイル分娩を推奨している病院もありますし、
できるだけ自然に産むことをコンセプトとしている助産院もあるので、
そういう場所を探してみるのも良いでしょう。
健康とは、自然の力に委ねることから始まります。
受精した瞬間から生命は始まっている
一般的には、赤ちゃんがお腹から出てきた瞬間を「誕生」といいますが、生物学的には精子と卵子が受精した瞬間からその生命はスタートしています。
妊娠中の母親の栄養状態や健康状況はもちろん、思考や感情もお腹の子どもに影響を与えます。
母親がリラックスしている、悲しんでいる、怒っている、ということを胎児はわかっているのです。
そういう意味では、産まれた年を1歳とする数え年には納得がいきませんか?
お腹の中にいる10か月の間にも、胎児は成長し様々な経験を積んでいるからです。
妊娠中の方はお腹の赤ちゃんを一人の人間として捉え、
話しかけたりお腹を撫でたり絵本を読んだり、積極的にコミュニケーションをとるようにしましょう。
親子の絆はそこから始まります。
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