|第7回|佐々木 昭彦(ポアン) / あれから3年。「震災復興支援ディナープレート」でベジのつながりをつくりたい。
新宿区、若松河田にあるナチュラルオーガニックカフェ&バル『ポアン』はオープンから4年経った今でも挑戦し続けています。東日本震災の復興を支援する活動として2013年2月「Hug the Earth(ハグ・ジ・アース)」を立ち上げました。1,800円の特別なディナープレートを提供し、売り上げの10%を東北へ寄付するという活動です。2014年も3月3日より3月15日まで開催。緊急インタビューということでポアンの店主であり、 マクロビオティック コンシェルジュの佐々木 昭彦さんにお話を伺ってきました。
マクロビ大好きINTERVIEW Vol.7
佐々木 昭彦/ポアン店主 マクロビオティック コンシェルジュ
SASAKI “SALVATORE” AKIHIKO
営業案内 ランチ/カフェタイム 11:30~15:00 (ラストオーダー14:00)
夜のポアン 「野菜バル」 18:00~23:00 日曜祭日定休
東京都新宿区若松町28−20(大江戸線:「若松河田駅」徒歩3分)
Tel/Fax:03-6457-6605
http://organicpoint.blog83.fc2.com/
point@kir.biglobe.ne.jp
ベジという食の裾野を広げるにはもっと横のつながりができたらいいのではないか
トッティ:早速ですが、Hug the Earthとは一体何なのか、聞かせてください。
佐々木:名前は後付けなんですけどね。このプロジェクトをやろうと思ったきっかけというか、根幹にあるのはベジやオーガニックのカフェやレストランのネットワークづくりができたらいいなと思ったことなんです。
仕事で名古屋に行ったときに感じたことがありました。名古屋には食材メーカーがたくさんあるんです。東京で売ってるものでもラベルが張り替えられていますが、名古屋のものはとても多いんですね。名古屋のベジレストランやカフェってつながりを感じるんです。みんなが知り合いで、お互いに協力し合っている印象があります。
例えば八丁味噌(愛知県で生産されている豆味噌の一種。米麹や麦麹を用いず大豆のみから作られる豆味噌の一種であり、赤褐色の辛口味噌である。名古屋圏では「味噌汁」といえば八丁味噌を用いた赤い汁のものが一般的であり、米味噌を用いた味噌汁のことは「白味噌汁」と言って区別している。)の老舗のメーカーが大豆ミートで有名な「かるなぁ」とコラボレートしながら商品開発をしていたりします。
新旧のコラボですよね。こういう動きが私には衝撃的でとても興味深い。東京はメーカーが少ないかも知れないけど、そういうつながりや連携が生まれたらいいなといつも感じています。こういうことがまずきっかけでした。
各店舗でがんばることはもちろん大切です。しかし、ベジ系のレストランは出来ては消え、出来ては消えを繰り返している現状があります。ベジという食の裾野を広げるには、もっと店舗ごとの情報交換、例えば、「こんな集客方法を試したよ」とか「今度こんなイベントやるよ」とか「人が足りないんだけどヘルプできない?」とかそんなつながりが出来たら楽しいなと思うんです。
もちろん簡単なことではないのもわかります。そこで3.11なんですが、東北支援をきっかけにしたらどうかと思いました。3.11をネタにしているみたいで申し訳ないんですけれども、別に東北支援を利用しようとかそんなことではなくて。けれど風化させないためにも悪いことではないと思っているんです。ですので「ベジ店舗のつながり」と「東北支援」を2本柱にしたキャンペーンにしたいと考えました。
地球にやさしいこと「地球を抱きしめて=Hug the Earth」というネーミング
佐々木:昨年(2013年3月)から始めました。昨年は私の店(ポアン)だけです。今年はもう少し店舗に声をかけてみようと思いました。今回は今日現在で3店舗の参加表明をいただいています。全部で4店舗ですね。
もちろんここから発展させていって学校の給食への導入に関わる活動だったり、自然栽培の農家さんとのマクロビオティックの融合に関わる企画だったり、その他、地球環境に良い活動だったりと広がったりすようなものになったらいいと考えています。ちょっと壮大ですが、農業の底上げのイメージもあり、「地球を抱きしめて=Hug the Earth」と付けました。
トッティ:昨年の第一回目は振り返ってみてどうでしたか?
佐々木:「震災復興支援ディナープレート」として提供しました。名前が長いですね(笑。ポアンのアラカルトでしか注文出来ない人気メニューを一皿にまとめて1,800円でご用意しました。このキャンペーンのための「特別メニュー」を考えることももちろん出来るんですが、来年、再来年も続いていくことを考えると、負担にならないことは考えていかなければいけません。
なので同じ仕込みでできる範囲というのもポイントです。さらにそれが一皿でお得感を出せるようにしています。そこから10%だけ東北に寄付させていただければ、みなさんに喜んでもらえると思ってやり続けようと思っています。
開催期間は3.11の前後一週間、計2週間です。今年も同様ですね。金額は1,800円で180円を寄付にまわします。昨年は7,000円くらい集まるかなとおおよそ推測していたんですが、実際は15,000円ほど集まりました。これがたくさんの店舗で開催したら大きな数字になっていきますよね。1度だけではなく、2度3度来てくれた方もいます。合計で71名81食だったと記憶しています。
トッティ:これが100店舗だったら…。すごいことですよね。
佐々木:机上の空論というか単純計算かも知れませんが、想像してしまいますよね。私が気をつけているのは「店舗にまかせる」ということです。通常の業務に支障が出ない範囲というのが大切ですから。振込なども全て私が統括してやっていますが、店舗さんには「手数料は差し引いて」とお伝えしています。とにかく来年、再来年と続けていきたいですね。
トッティ:Hug the Earthは佐々木さんが全て呼びかけているんですか?
佐々木:応援してくださる若いボランティアさんも数人いらっしゃいます。なかなか私も忙しくしてしまい、ミーティングや指示だしなどもうまくできなかったんです。せっかくやる気があったのに、そこは少し反省しています。
キャンペーンのご提案は封書を各店舗にお送りさせていただきました。もっとも封書を読んだ形跡がなかったことにあとで気づきましたね。電話してお聞きすると、読んでる方はOKしてくれるんですが、大半の方は読んでいない、開けてもいない、責任者に手紙が渡っていないということもありました(笑。このあたりのやりとりは今後の課題ですね。
トッティ:お店を選ぶ基準はあるんですか?
佐々木:数年前に発売された『東京ダイエットグルメ』(室谷真由美・木下あおい共著)という本がありまして。山手線の内側にある厳選されたベジカフェ/レストランが40店舗掲載されています。ポアンも載っていますが、掲載店全てにお送りしました。もちろん移転したり、なくなってしまた店舗もあります。
トッティ:実際の反応をどう分析していますか?
佐々木:まずは中々読むところまでいかないなとは感じました。電話して確認したときに「あの件ね!」と反応があるお店はなかなかありませんでした。すぐにわかってくれた店舗はほんの数件です。10通以上は再送しているのでそういう意味でいうと負担をかけさせてしまっていますね(笑。
トッティ:今回から新たに加わった店舗を教えてください。
佐々木:今日現在ですが、赤坂の小鉢や、浅草の御清水庵 宮川、西荻窪の米の子、そしてポアンの全4店舗です。
東北の復興はまだまだ時間がかかる
トッティ:少し語弊がありますが、 3.11から丸3年経ち、風化されつつあることもたくさんあると思います。このキャンペーンをやることで佐々木さんは3.11をどう考えていますか?
佐々木:19年前の話ですが、阪神淡路大震災はちゃんと復興しましたよね?同じ3年でもスピードは明らかに違います。それは西の要所だからです。と考えならば、東北は完全に捨てられています。復興が進んでいないとかありえないと思います。このペースで考えると4年後でもまだまだだと思わざるを得ません。
政府やマスメディアは「なかったことにしたい」のではないでしょうか。2020年にはオリンピックが決定していますし、その他、秘密保護法や原発問題もあります。原発に至っては当時よりもひどいことになっています。とにかく「忘れさせようとしている。」と思います。
私が一番政府にやってもらいたいことは国会議事堂を福島に持っていってもらいたいですね。少しは変わるのではないかと思います。オリンピックが2020年に決定されたときに、この国の最高権力者はいいました。「完全にブロックされているから何の心配もない」と。しかし、海外メディアはわかっています。日本はヤバいと。しかし日本国民は中々本当のことを知ることができない。それはチェルノブイリのとき、日本には情報があったのに現地のウクライナに情報がなかったのと同じです。
東京のオリンピックなんてなくてもいいんじゃないかとも思います。例えばオリンピックをボイコットする国が現れて、それが波状効果になって次々に辞退する国が出て来たら政府は考えるでしょうね。建設産業はオリンピックに向けてシフトするでしょうし、するとさらに復興は後回しになるでしょう。
葛西の干潟を埋めてしまう環境破壊問題も気になります。これはもう、陰謀論みたいな話になってしまいますが(苦笑、コンパクト五輪って謳ってますよね?選手の負担を減らす為に会場移動は最小限にしようと言っています。選手村を近くに、とか。ですがこれって万が一、テロの標的になったら一網打尽ですよね。狙ってくださいっていってるようなもんじゃないですか。
迷ったときの判断基準は「自然」か「不自然」かで考える
トッティ:Hug the Earthはずっと続けていくのでしょうか?
佐々木:私が発起人なので当然続けていきます。ですが、ポアン主催ではありません。私はただの言い出しっぺで、ポアンを離れて1人歩きしてもいいと思いますし、その方がいいと思っています。だから代表とは言いません。将来的にNPO化されたり、全く別の大きな組織になるかもしれない。ただ、地球環境にやさしい組織になればいいと思いますね。
トッティ:これをソーシャルビジネスにしたいとか、体系化したいという社会起業家が現れたら?
佐々木:いいと思います。当面は私を相談役においてくれれば(笑。1人歩きにせよ、違う方向に行ってもらっても困ってしまうので(笑。慈善事業団体でも疑問を感じるところもありますしね。私は理論も大事ですが、それよりも大事にしている基準があるんです。何だと思いますか?
トッティ:何だろう、わかりません(笑。
佐々木:それが「自然」か「不自然か」です。わからなくなったときには必ずそこに立ち返るようにしています。例えば電子レンジ。内側から熱くなる?これは不自然だと言えますよね。
トッティ:テクノロジーは否定していますか?
佐々木:否定はしません。ただ根本的なところを考えたいなと思っているんです。使い方が大事だと思うんです。ロボットにしても「人間の意思」が反映されたらいいと思う。それが発展です。世界は発展していますが、一部の利潤や格差が生まれているだけです。本当の発展とはみんなが幸せになることだと思うんです。
西洋医学か東洋医学のどちらかがいいのではなく、ホリスティック的に考えていければいいと思います。まったく一緒ですね。そういう考え方が可能なのが人間というものでしょう。
与えること、シェアすること、感謝をすること、これがマクロビオティック
トッティ:今、「つながり」ってとてもポジティブワードですよね。Hug the Earthもつながりを大切にしています。一方で、つながりを促す情報が毎日入って来ることで、お腹いっぱいになる人もいます。もちろんまだまだ欲しい人もいます。まわりを見ていて感じることはありますか?佐々木:情報過多なのは間違いないですよね。まさに溢れ返っています。受け取った情報をみんながシェアしているかといえば、必ずしもそうではない。お腹いっぱいになるという人というのは自分の中に溜め込んでいるからではないでしょうか。情報を消化するのはどんどん人にシェアしたり、教えてあげることだと思います。そうすれば空っぽになるからまた入ってくる。その繰り返しでしか情報は裁けないですよね。
これはとてもマクロビオティック的であるとも言えます。「与える、与える、与える、シェアする」を繰り返すことでまた戻ってくる、入ってくるというサイクルです。そして、「ありがとう」と感謝の気持ちを伝える。いい感情の連鎖がはじまります。これによって「人を憎む」という感情がなくなってきます。人は抱え込み過ぎるといい状態ではいられません。だからシェアしていく。
「あの人は懐が深い」という言葉がありますよね。ですが、これはその人だけではなく、本来は実は皆一緒だと思います。シェアできるかできないか。シェアできる人だからまた新しいモノや情報が入ってくる、そして受け入れるキャパが常にある。それを端から見ると「懐が大きく」見えるんです。
トッティ:では最後にHug the Earthの開催内容をお聞きして終わりたいと思います。ありがとうございました!
佐々木:こちらこそ、ありがとうございました!
(▲取材時に提供いただいた’試作品’。ここからブラシュアップされる。男性でもお腹いっぱいになるボリューム!)
【ポアン Hug the Earth】3/3日(月)~15日(土)まで開催。
18:00-23:00(ラストオーダーは22:00)
震災復興支援ディナープレート 1,800円/人
※定休日や貸し切りイベントのときは復興支援ディナープレートはありません。必ずポアンのブログかお電話で事前確認をしてください。(9日は定休日、15日は貸し切りとのこと。)
このキャンペーンを機にもう一度3.11について語り合ってみてはいかがでしょうか。そしてベジカフェやレストランの関係者の方で興味のある方はぜひ2015年、ご一緒されてみてはいかがでしょうか。
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