私たちの生活に必要な保安林が再生可能エネルギーに消される？近年森林保護のための法律が改正され、密かに特例が設けられている衝撃の事実

2020年から新型コロナウイルスが流行し、みなさん、3密（密閉・密集・密接）と呼ばれる環境を避けて生活されていることと思います。

そんな中で注目されたのが、キャンプやハイキングなどオープンエアで楽しめるレクリエーションです。

また、森林浴といったリラクゼーションも人気になっています。

豊かな自然の中で活動するのはとても気分が良いものです。

日常生活でのストレスや疲れを抱えた私たちをリラックスさせているのが、山に生えた多くの木々たちだと思います。

実は、これらの木々は法律によって守られているのです。

今回は、そんな森林を守る法律がひっそりと改正されていたことについてご紹介します。

保安林って何？

日本の国土の約70％は森林です。

その中で保安林という森林は49％の割合を占めます。

日本の森林の約半分が保安林ということになります。

では、この保安林とはどんな森林なのでしょうか。

保安林制度の歴史

江戸

日本の森林の管理制度は、古くは江戸時代にさかのぼります。

日本人は、古来より建物や家畜の飼料、燃料（薪）として木を使ってきました。

江戸時代になると、人口密集地ができたため、神社仏閣の建立や生活用の木材などの需要が高まり、多くの森林が伐採されました。

しかし、過度に伐採してしまったため、災害が発生する事態に。

これを防ぐため「留山」と呼ばれる、森林伐採を禁止する山が作られました。

この制度が現在の保安林の原型と言えるかもしれません。

明治

その後、1868年（明治元年）ごろから始まった明治維新によって、日本に近代化の波が訪れました。

流通や産業、経済、教育など様々な分野で改革が行われることになります。

この大きな変化は、社会に混乱をもたらしました。

この時もまた、各地で森林が伐採され、多くのはげ山ができてしまいます。

森林が無くなったことにより、洪水が発生し、数千人規模の被害が出る災害が発生。

そこで、政府は森林を守るための「森林法」という法律を制定することになったのです。

この法律により、守るべき森林が決められ「保安林」と呼ばれることになります。

昭和

森林法という法律ができたものの、第二次世界大戦という大きな戦争のため、木材が軍事物資として使われることになりました。

この時も過度な森林伐採が起き、洪水が発生することに。

しかし、戦争が終わっても、復興のために多くの木材が必要となり、多くの森林が伐採されてしまいます。

その後、森林の荒廃や災害の多発が問題視されたため、植樹が行われ、保安林の面積も拡大しました。

平成

昭和後期から平成になると、木材需要が減ったうえ、安い輸入木材が入ってきたことで、林業が停滞傾向にあります。

そのため、国内の森林の植樹が行われなかったり、森林の手入れがされなかったりと、整備されない森林が増えているのです。

昔は、国民が森林に求めるものは「木材の供給」でしたが、現在は「社会全般の利益（防災やレクリエーションの場の提供）の供給」に変化しています。

需要過多による伐採が問題でしたが、近年では森林への関心が薄れたことによる問題が発生しているのです。

保安林制度とは？

保安林とは、防災や生活環境の保全の観点から、守るべき森林として農林水産大臣や都道府県知事によって指定された森林のことです。

保安林に指定されると、伐採や土地の形質の変更などに制限がかかります。

保安林はそれぞれ指定される理由が異なり、以下のような17種に分けられます。

私たちの知らないところで保安林を守る法律が改正されている！

前述の通り、保安林は農林水産大臣や都道府県知事によって指定されています。

保安林の指定を解除するには、たとえその土地の所有者であっても解除することはできず、以下のような手続きをしなければなりません。


また、解除だけでなく伐採や土地の形状の変更も勝手にできないようになっています。

これまで、大規模な伐採を行い災害を経験してきた日本。

しかし、森林の大切さがわかっているはずなのに、その森林を守るための法律が改正され、ひっそりと特例が設けられているのです。

東日本大震災後に、以下の条件で特例が認められました。


ここで一番重要なのは、「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律」の計画に掲載されれば、保安林の解除や伐採などが許可されたものとみなされることです。

今までは時間をかけて協議されていたものが、計画に掲載されただけでできるようになるため、保安林の解除や伐採へのハードルがかなり下がっています。

再生可能エネルギーが保安林を消してしまう？！

太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーは現在注目されており、補助金も整備されています。

そんなことはないと願いたいですが、補助金目当てで再生可能エネルギーの事業を行っている企業もあるかもしれません。

そのような企業が行った事業の場合、補助金をもらうことが目的となり、設備の整備が行われずすぐに使えなくなる可能性だってあります。

森林が無くなっただけで使えない設備だけ残るという可能性もあるのです。

森林を伐採してまで作るのが再生可能エネルギーなのでしょうか。

保安林・森林保全のために私たちができることは？

環境問題が叫ばれている今、再生可能エネルギーはとても重要な役割があると思います。

しかし、環境を破壊してまで作るものが、本当に「再生可能」なのでしょうか？

この特例では、自分が住んでいる場所に再生可能エネルギーの計画が上がっており、知らない内に森林が伐採されている可能性も十分あるのです。

法律のことは個人ではどうにもできないという印象があるかもしれません。

ですが、以下のことはできると思います。


今回紹介した保安林制度や、法改正のことを知っている方は少ないかもしれません。

恥ずかしながら、私自身、最近まで保安林の存在すら知りませんでした。

みなさんもまず、身の回りの環境や法律、制度に興味を持ってみませんか？

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参考：『地域の未来・自伐林業で定住化を図る　―技術、経営、継承、仕事術を学ぶ旅』佐藤 宣子