9割健康意識があるタイ人と6割しか健康に興味のない日本人。タイの最新オーガニック事情を取材!オーガニックブーム最前線のタイから学びたいこと。
本物のオーガニックが見つかるオーガニックショップ
まだまだオーガニックにおいては発展途上だと言われる日本。
しかしそのほかアジアでは急速に経済的にもオーガニック的にも成長を遂げていると言われる近年。
日本以外のアジア諸国では今何が起きているのでしょうか?
今日はタイにフォーカスをあててお伝えしていきます。
12月中旬に取材を兼ねて訪れたタイの首都・バンコク。
経済発展に伴って健康志向の人が増えた影響もありオーガニックやベジタリアン、ヴィーガンブームで、スーパーでもカフェでも、
オーガニック食材や製品が安価な値段で手に入ることに驚きました。
オーガニックとは無縁の農薬まみれの食材が満映していたタイで、オーガニックを広めたのはタイの故国王が指導した「ロイヤル・プロジェクト」でした。
タイにオーガニックを広めた「ロイヤル・プロジェクト」
オーガニック先進国である、タイの「ロイヤル・プロジェクト」とは?
タイは実はオーガニック先進国。首都バンコクだけでもオーガニックスーパーは数十店舗以上あり、タイ人から在住外国人まで幅広い利用者がいます。
タイ国民や在住者にとって、オーガニックは今やとても身近なものとして浸透しています。
そのオーガニックをタイに広めた先駆けとなるプロジェクトが、「ロイヤル・プロジェクト」です。
「ロイヤル・プロジェクト」は、2016年に死去されたプミポン国王をはじめとするタイ王室が推進する農民支援プロジェクトです。
ロイヤル・プロジェクトはサステナブルな農業を実践と、タイ北部原産の農作物を普及させることを第1の目標として掲げていましたが、
最近では更に有機栽培にも力を入れ、国民の健康的な食生活を応援しようという試みでもあります。
出典: 「Royal Project Foundation」 http://www.royalprojectthailand.com/about
サステイナブルな農業の実現を目指すロイヤル・プロジェクトって?
焼き畑農業による環境問題
ロイヤル・プロジェクトの一つの目標がサステイナブル(持続可能)な農業の実践。
タイだけではなく東南アジアの農業では焼き畑農業を実践している国も多く、焼き畑による大気汚染はとても深刻なレベル。
焼き畑農業とは、土地に生えている草木や原木をを焼き払い農業をする方法。焼き払った草木を土と混ぜることで土壌が改良、また灰は肥料代わりになるのです。発展途上国の農民の多くは、肥料を購入するための充分な現金がありませんが、焼畑農業であれば灰が肥料代わりとなるので、購入する必要もないというわけです。
日本にはあまり馴染みのないように思えるこの焼き畑農業ですが、東南アジアを中心にこの焼き畑農業からの環境と健康被害は深刻です。
焼き畑は、大気中に拡散される二酸化炭素の量を増大させ、また大気中に形成される煙霧層は温暖化の過程に影響すると言われています。タイ北部の人気の観光地であるチェンマイでは、毎年3月から4月の時期にヘイズという煙害の被害が増大しています。
このヘイズの中には、微小粒子状物質であるPM2.5やPM10、SO2、NO2、CO、O3などの有害物質が含まれ、中でも粒子の細かいPM2.5による健康被害の影響が大きいと言われています。目、鼻、喉などの粘膜や、皮膚のかゆみ、気管から肺などの呼吸器系や循環器系への健康被害が報告さている他、特にぜんそくや心臓疾患がある場合は注意が必要です。
農薬による健康被害
タイの消費団体が2017年8月に、市場、スーパーなどで販売されていた野菜、果物の残留農薬の調査を実施し、サンプルの多くから基準値を超える農薬が検出されたと発表しました。
タイ国内でも農薬を大量散布して栽培されているエリアがあるのですが、タイのスーパーマーケットでは、産地表示がされていません。また、中国野菜が多く輸入されていることも
出典: 「野菜・果物から基準値超の残留農薬 タイ消費者団体調査」 http://www.newsclip.be/article/2017/11/29/34818.html
タイにオーガニックがここまで浸透した理由
タイの国民のリーダー主導
故プミポン国王は、タイ北部で山岳地帯に住む農民たちが違法なアヘン製造につながる“ケシ栽培“で生計を立てている様子を見て、
国民が農業によって自立したより良い暮らしが出来るようにとこのロイヤル・プロジェクトを発足しました。
貧しい農民を助け、国の発展に尽くしたプロジェクトは故王が国民から愛され支持される大きな要因の一つです。
そんな国民のためのプロジェクトを国民は、王が亡くなった今でも指示し続けているというわけです。
タイのオーガニック認証は無料取得できる。タイのオーガニック商品が、リーズナブルな価格で手に入るその理由。
日本の場合、有機JAS認証を受けた野菜の価格は、通常の野菜に比べると2倍から3倍以上します。
日本では、有機栽培の場合には少量の栽培で、更に手間がかかってしまうということが起因します。また、有機JAS認証を受けるにも年会費がかかります。
一方でタイのオーガニック商品の価格は通常のものと比べても、価格差はほぼなくリーズナブル。
それもそのはず、タイのオーガニック認証「Organic Thailand」は、認証を受けるだけならコストはかかりません。
タイが国を挙げてオーガニック農業を広げようと取り組んでいることの表れではないでしょうか。
タイには日本人が経営しているオーガニックファームがあります。
バンコク在住の日本人は、毎朝オーガニックファーマーから来るLINEで今日採れた野菜を確認します。
食べたい場合は、そのままLINEで注文することができるそう。
また、このオーガニックファームではオーガニック弁当の販売も日本円500円からとリーズナブルなお値段で行っているようです。
タイは、国民の健康意識が高い。日本はたったの6割程度しか健康に興味がないが、タイ人は9割が興味あり。
2014年に株式会社日本能率協会総合研究所が、タイ・インドネシア・日本を対象に健康意識についてとても興味深い調査結果があります。
「健康への配慮をしているか、否かについて」の回答では、タイ人は日本を大きく上回る9割近くが「積極的に気づかっている」「まあ気づかっている」と回答。
一方、日本人は6割程度に収まりました。
経済成長著しいタイでは、所得の向上に伴い、伝統的な食生活よりも欧米式な食生活を送る若者が増え
糖尿病などの生活習慣病の拡大が大きな問題となっています。
2012年のタイ人の主な死因は、動脈硬化に由来する虚血性心疾患が 13.7%で 1 位、脳卒中が 10.3%で2位、 また7位に4.1%で糖尿病と生活習慣病に起因するものが上位を占めています。タイ政府は年々増加する肥満人口、高血圧、糖尿病等の生活習慣病を防ぐため、国民の健康増進や疾病予防に関する活動を推進しています。
また、日本より速いスピードで高齢化が進んでいることも懸念されているタイ。
早ければ2022年に高齢社会を迎えることが予想されており、国民の間では健康・長寿に関する意識が高まっている模様。
そいうった時代的背景も起因して、国民がより安全で安心した食生活を送れるように工夫することは必然的なのです。
出典:
「バンコク消費者の健康ニーズに関する調査」http://www.jmar.biz/report/2014/06/16.html
「ヘルシーライフスタイル:バンコク版」https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/29fa266c97bc4316/hls-bgk.pdf
日本のオーガニック市場の実態。今後伸びる可能性はあるの?
日本ではこれまで、一部の消費者の需要を満たすため、限られた生産者や小売業者がオーガニック農作物や商品を生産・販売してきました。
有機農業の生産面積は農業全体の1%にも満たないのが現状。
一般的な農作物や商品に比べ高価であることや、購入できる小売業者が限られていることもあり、オーガニック先進国に比べてのオーガニック浸透率は低いものでした。
1ヶ月あたりの購入金額が上がれば上がるほど、健康のためだけではなく、環境のためや他者のために貢献する意識でオーガニックを買う傾向にあり。
日本のオーガニック市場の実態とは
2016年10月に電通CDCは、オーガニックヴェレッジジャパンと共に日本人消費者1万人を対象に消費者の実態やオーガニックに対しての意識調査を実施しました。
アンケートでは、消費者をH層(月間購入金額1万5000円以上)、M層(月間購入金額5000円以上~1万5000円未満)、L層(月間購入金額5000円未満)と月間のオーガニック商品購入金額に応じて分類。
オーガニック商品を購入する動機が、H層、M層、L層の全ての層でオーガニック商品を購入は
「健康のため」、「食の安全のため」としている人が大多数を占めていることが分かりました。
それに加え、H層は「環境保全」(32.5%)、M層は「生産者サポート」(17.1%)、
L層は「美容」(26.3%)と「ダイエット」(10.5%)等、その他の層に比べて割合が高いことが明らかになっています。
購入金額が上がれば上がるほど、「環境のため」や「他者のため」と意識している人が多いということです。
収入格差によるオーガニックの浸透率は拭えないという現状であることは否めません。
また、その割合は決して過半数にも満たないもので、まだまだ日本のオーガニックへの意識の低さが顕著と言えます。
出典:「日本のオーガニック食品購入者層、その意外な実態とは?」https://dentsu-ho.com/articles/5783
ミレニアム世代のオーガニックへの意識を高める
電通CDCの調査結果では、実は女性よりも男性、しかも60代の方が最もオーガニック商品を購入していることが明らかになりました。
前述してきた通り、タイでは現在健康ブーム。
故国王は高齢の方だけでなく若い世代からも厚い支持を得ていたため環境のため・健康のためにと故王が発足したロイヤル・プロジェクトは、若者にも浸透しています。
また、インスタグラム先進国でもあるタイ。
ちょっとしたお出かけにも一眼レフカメラを持ってお出かけします。
そんなインスタユーザーの若者は海外のトレンドをいち早くキャッチする傾向に。
タイでもおしゃれな人はどんどんナチュラル志向に変わっています。
タイのビジネス中心地や住居エリアにはタイ産のオーガニック野菜を使ったヴィーガンカフェやベジタリアンカフェ、
オーガニックカフェなどがたくさんあり、ファッション感覚でオーガニックを取り入れているというミレニアム世代も多いのが今回の取材でよく伺えました。
そして実は日本でもまた、このミレニアム世代に対しての希望があると言われています。
1980年代から2000年代生まれ、新しい価値観を持つこのミレニアル世代は、同時にインターネット利用率の高い、
ソーシャルメディアを駆使するデジタルネイティブ世代でもあります。
SNSなどで積極的に情報発信することがまた、今後、次世代のオーガニック消費に良い影響を及ぼすのではないかと期待されます。
引用: 「日本のオーガニック市場は伸びている!「オーガニック白書 2017+2016 近未来予測」出版記念セミナー」https://www.organic-press.com/feature/japan_report25/
2018年にオーガニックヴィレッジジャパンが実施、オーガニック白書2017+2016 近未来予測 出版記念セミナーにて発表された調査結果では、
日本でもミレニアム世代がオーガニックの購買意欲があることが明らかに。
ミレニアム世代は、価値観が合うものに関しては価格に関係なく内容や質を重視することも分かっています。
サステイナブルなライフスタイルの実現のために
タイ同様、日本のミレニアム世代もまた良い意味で海外の価値観を柔軟に吸収することのできる世代だからこそ、
今後オーガニック市場を引っ張っていくことが期待できるのではないでしょうか。
私たち日本人もぜひ、国内だけでなく世界で起こっていることに目を向けることが重要になるはず。
今後は、健康のことそして、環境のことを配慮し、よりサステイナブルなライフスタイルの実現が日本でも必要です。
一人一人が今できることを最大限意識して生活をしていきましょう。
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