なぜ日本人はオーガニックへの意識が低いのか。オーガニックが広まるために日本人に必要な意識改革とは?
ほとんどの方が毎日欠かさずに行っている「食事」。
あなたは、その食材が安全なものであるかどうかを、気にして食事をしているでしょうか?
食事とは、言うならば異物を自分の体に同化させていく行為です。
その食材の安全性について、気にしないという事は、
「自分の体に何を同化させているのか気にしない」極論でいうと「自分のことを気にしない」ということに繋がるのではないでしょうか。
食の安全性を気にする上で欠かせないのがオーガニック食材です。
世界ではオーガニック食材に関心が高まっている一方で、日本ではそれほどでもないというのが現実です。
なぜ、日本人はオーガニック食材への意識が低いのでしょうか?
今回は、日本でオーガニック食材を広めるために必要な意識改革とは?について考えていきたいと思います。なぜ、日本人のオーガニック食品への意識が低いのか?
まず、最初に考えたいのは日本人はなぜオーガニック食材への意識が低いのか、についてです。
第一に言えることは、オーガニックの知名度が低いことだと言えます。
もちろん、「オーガニック」という言葉の認知はあるけれど、それが何なのかをしっかり理解している人は少ないのではないでしょうか。
そもそも『オーガニック』ってなんのこと?
ここで、オーガニックとはなんなのかについて一旦、おさらいをしてみましょう。オーガニックというと、一般的には「農薬や化学肥料を使わない」など生産する過程だけに注目されがちです。
ざっくり言ってしまえばそうなのですが、実際にはそれだけではありません。
農林水産省によると、オーガニック農業(有機農業)とは、化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本とする農業。農業の自然循環機能を大きく増進させるとともに、環境への負荷を大きく低減するものと明記されています。
引用:農林水産省「有機農業」
オーガニックの4原則とは
さらに、国際的にオーガニックの推進を行っているIFOAM( 国際有機農業運動連盟) では、
オーガニックの4原則として以下の4つを挙げています。
①生態系
自然環境や、自然の生き物にやさしく、その関係性を大事にする
②健康
食す人々の健康に配慮する
③公正
そこに関わる人達にとってフェアであるようにする
④配慮
人や自然に対する思いやりを持つ
出典:日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会
以上の4つを持ってオーガニックと言えるわけです。
なので、一概に「オーガニックとは無農薬、化学肥料を使わない生産方法です」というだけでなく、地球や環境、動物や植物、人間などすべてのことを考えた生産方法であると言えます。
このように、オーガニック農法とは、地球や人に配慮したやさしい農法だと言えます。
それなのに、残念ながら日本ではオーガニック食材への意識が低く、普及していません。
それはこのことが知られていないという根本的な問題があると思うのです。
オーガニック食品は高級品?
次にあげる問題としては、「オーガニック食品は高級品」だと思われているという点です。
極端に言えば、「お金持ちが食べる食材」「一般人のわたしには手が届かない」など、オーガニック食材に関して特別なモノという認識を持っている人が、
とても多いのです。たしかに、わたしの近所でもオーガニック食品を扱っているスーパーはほんの一部です。
それも、全体的にやや高価な食品を置いているようなスーパーにしかありません。
手が届きにくいイメージは否めないのかもしれません。
オーガニック食品は、そもそもなぜ高価?
なぜ、オーガニック食品は高価になってしまうのでしょうか。
その理由は色々ありますが、主には3つあります。
①オーガニック食品は生産コストがかかる
まず、1つ目の理由として、生産コストがかかるという点が挙げられます。農薬、化学肥料などを使用しないオーガニック農法では、大量生産が難しい上、手間がかかります。
そのことから、生産コストがかかるため、価格が高くなるわけです。
②オーガニック農家が少ない
2つ目の理由は、農家さんの高齢化、後継者不足です。有機農業への取組面積は緩やかに上昇傾向にあります。
しかし、現状としては全体のたったの0.5%程度しかありません。
新農業人に対するアンケートによりますと、有機農業に興味があると答えた人は全体の65%程度いますが、
実際にやりたいという人は、全体の約30%程度しかいなかったという結果があります。
有機農業に関して、ほかの先進国の中でも日本は大幅な遅れをとっています。
オーガニック食品の市場規模は各国年々増加傾向にあり、その金額は以下のようになっています。
アメリカ 4.7兆円
ドイツ 1.1兆円
フランス 8,100億円
イタリア 3,200億円
中国 7,100億円
ちなみに、日本は1,300億円となっていて金額を見るだけで、
オーガニック食品に関して遅れていることが一目瞭然ですよね。
③日本における自給率の低さ⇒輸入品に頼っている現状
3つ目のオーガニック食品が高価になってしまう理由は、日本は自給率が極めて低いという事も要因の一つです。
農林水産省が発表している2013年度の穀物自給率によりますと、日本は173か国のうち124番目で、たったの28%しかありません。
穀物に絞ったデータであるために極端に低くなっていますが、穀物以外を含めたデータでも68%であり、自給率はそこまで高くありません。
自給率が低いという事は、外国からの輸入に頼っているということになります。
オーガニック食品はただでさえ、手間がかかり高価になりがちだというお話は先にしました。
それなのに、海を渡り、輸入税を払い、色んな手間をかけることで、さらに高価になってしまうわけですね。
このように、オーガニック食品が高価になってしまうのには、理由があるのです。
では、どうしたらよいかについて見ていきましょう。
日本でオーガニック食材を広めるために必要な意識改革とは?
一番最初に述べましたように、オーガニックは地球や環境、動物や植物、人間などすべてのことを考えた生産方法であり、とても素晴らしいものです。
しかし、わたしたち消費者は、「高価なものである」などの意識からなかなか手を出せない。
すると生産者さんは、「売れないから作らない」というように負のループにはまっているのが現状です。
みんなが買えば、生産者さんも増えると言うのがシンプルな理想の構図です。
でも、そう簡単にはいきません。
日本でオーガニック食材を広めていくために必要なのは、意識を変えていくことです。
そのためのポイントは2つあります。
①明日から100パーセントは難しい、1ヶ月に10パーセントずつでもいいからオーガニックにシフトしよう。
まず1つ目は、明日から100パーセント完全オーガニックにしなくても大丈夫ということです。
オーガニック食品は手間ひまかけている分、確かに割高です。
しかし、その分安全性も高くなるし、美味しいものも多いという事実があります。
でも、経済的な理由などで今ある調味料や食材を明日から全て切り替えることはハードルが高いと思います。
ですので1ヶ月あたり10パーセントでも20パーセントでもオーガニック比率を上げていきましょう。
手軽に買えるもので、毎日欠かさず食べるもの。
例えばお米や野菜。
次に日々のリラックスタイムで飲む紅茶やコーヒー。
そして最終的には日用品や身の回りのものをどんどんオーガニックに変えていくことで最終的にはいつのまにかあなたの周りはオーガニックであることが当たり前の状態になるはずです。
まずは身近でいつも使うものをオーガニックなものに変えてみる。
明日から完璧にしなければいけない!という訳ではなく、あなたが心地よいやり方で、変えていけばいいのです。
②食の安全だけでなく、地球を守るために選ぶ
2つ目のポイントは、地球環境を守るためにオーガニックを選ぶ、という点です。
オーガニック食品を選ぶことがなぜ、地球環境を守ることになるのか。
いまいちピンと来ない…という方も多いですよね。
オーガニック農法では、農薬や化学肥料を使用しませんが、既存の農法では化学肥料などを使用しています。
ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、化学肥料には石油などの化石燃料も一部含まれています。
化石燃料は、大気中の二酸化炭素濃度を上昇させるため、地球の温暖化の主な原因になっているのです。
オーガニック農法では、化学肥料を使いませんから、地球温暖化を防ぐことに貢献できているといえます。
また、化学肥料や農薬を使わないことは水質保全にも役立っています。
化学肥料などを使用した近隣の農地から、川や湖に流入する場合があり、そこから水質が汚染されているからです。
オーガニック農法で化学肥料などを使用しないことで水質保全に役立つこともわかります。
ただ、農林水産省が行ったアンケート調査によりますと、消費者が有機農作物を購入したいと思う理由として、
一番に挙げられるのは「安全だから」であり、「環境保全に役に立ちたい」とお答えた人は全体の1割にも満たなかったそうです。
このように、オーガニック食品を選ぶことが環境に役立つことは、多くの方に知られていないことが現状です。
未来の子どもたちのために、美しく、住みやすい地球を守りたいという気持ちは多くの人が持っています。
オーガニック食品を選ぶことは環境保全に役に立つという意識を持つことで、何を選ぶべきかは見えてきます。
そして、1人でも多くの人に伝えていきましょう。
今回は日本でオーガニックを広めるために必要な意識改革について考えてきました。
世界的に見ても、日本のオーガニックに対する意識が低く他の先進国よりも大幅に遅れをとっている現状です。
ただ、日本のオーガニック市場が停滞している中でも、実は希望の兆しがないわけではありません。
それは、若者がモノを購入するときの基準は以前とは変わってきているという点です。
以前は「安けりゃいい!」でしたが、現在の若者は「本当に良いもの」を選ぶようになりました。
多少割高だとしても、本当に良いもの選ぶ若者が今後も増えていくことに比例して、オーガニック市場の拡大にも期待が出来るのです。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう