ちゃんと知っておきたい!妊娠・授乳期の飲酒はなぜ禁止なのか?
新年会のシーズンですが、妊娠中、授乳中のおかあさんは、お酒を我慢してちょっと寂しい思いをされている方もいるかもしれませんね。
アルコールは適量であれば、とても美味しい優れたコミュニケーションツールですから、楽しく仲良く付きあいたいものですね。
ところで、ビールなどのアルコール飲料の容器に、妊娠、授乳中のアルコールは控えましょうと書かれているのをご覧になったことはありますか?
妊娠、銃乳中の飲酒は、胎児や新生児に様々な影響を及ぼす危険があるため禁止されています。
少しくらい、とか、妊娠していることに気づかずに飲んでしまったということがないように、なぜ妊娠、授乳中の飲酒は厳に慎むべきなのかを解説し、妊娠、出産時の飲酒について、どうすればいいのかについて考えていきたいと思います。
妊娠、授乳期のお酒は禁忌!
妊娠中の飲酒が禁止されている理由
妊娠、授乳中のおかあさんの飲酒はなぜ禁止されているのでしょうか。
子どもに発生や成長に悪影響が出るから、です。
・具体的にどんな異常が出るのか。
・いつからいつまで飲んではいけないのか。
・お酒に強い人なら飲んでも大丈夫か
・どれくらいなら飲んでも良いのか。
正確な情報を知ることは、自分自身も、子供の健康も守ることにつながります。
妊娠、授乳期でも安全な飲酒量はあるのか?
妊娠、授乳期のアルコールは1日15ml以下であれば胎児への影響は少ないとされています。※1
※1日本産婦人科学会HP https://www.jaog.or.jp/sep2012/JAPANESE/jigyo/SENTEN/kouhou/insyu.htm
具体的にこの量は、
・ビールにすると350ml1缶
・ワインにするとグラス1杯
・日本酒にするとコップ1/2杯
となっています。
しかし、お母さんや子供の体質や体調、状況ではこの量でも影響が出る可能性は否定できません。
ですので、この量であっても『妊娠、授乳中は飲まない』という選択肢を持ってほしいのです。
いつからいつまで飲んではいけないのか?
後述しますが、アルコールは様々な過程で発生、発達中の子供たちに影響します。
つまり、妊娠した瞬間、受精した時から離乳するまで飲酒は避けるべきです。
よく聞かれるのが、「妊娠しているのに気づかずに飲んでしまった」という経験談です。
一般的な妊娠検査薬では生理予定日1週間後から検査が可能だとされています。
また、生理の遅れで妊娠の可能性に気付く人もいるかもしれません。
しかし、その1か月の間におなかの中であかちゃんは成長しているため、
アルコールによる影響を受ける可能性があります。
妊娠を希望している女性はセックスをした時点からアルコールは控えましょう。
出生後、授乳中の子供たちは環境から様々な刺激を受けて、脳神経系が著しく発達し、
日に日に成長していきます。
その時期にアルコールを摂取すると、神経系の発達に影響し、記憶・学習障害や発達障害に
関連する可能性があります。
そう考えると離乳するまではアルコールを飲まないほうが良いでしょう。
妊娠中の飲酒が引き起こす「胎児アルコール症候群」
胎児アルコール症候群とは
妊娠中にアルコールを摂取すると、子供が胎児アルコール症候群に罹患する可能性があります。胎児アルコール症候群とはどんな疾患なのでしょうか。
胎児アルコール症候群は、様々な奇形や発達障害を複合的に発症する先天性の症候群です。
・特徴的な顔貌
・中枢神経系の異常(発達遅延、学習障害)
・発育不全(低体重出生)
・下顎、外耳の奇形
上記のような症状を複数示している場合に胎児アルコール症候群だと診断されます。※2
※2ラングマン人体発生学、メディカルサイエンスインターナショナル)
胎児アルコール症候群の発症原因
1970年代から欧米では、アルコールの胎児期曝露(問題となる因子にさらされること)による子供への影響が懸念され、研究が進んでいました。アルコール依存症の女性からは通常より高い頻度で胎児アルコール症候群の子供が出生していることから、妊娠中の飲酒と胎児の発育への影響が報告されています。※3
※3Fetal Alcohol Spectrum Disorders (FASDs) Report. CDC
ただ、逆に言えば、アルコール依存症であったとしても、妊娠中に飲酒しなければ子供が胎児アルコール症候群に罹患することはありえません。
胎児アルコール症候群や妊娠中の飲酒がなぜこのように問題になるのかは、次のようなアルコール特有の性質によるものです。
アルコールの特徴:安全量が明確でない
妊娠中は食べものや薬など様々なものの摂取にお母さんたちは気を遣うことと思います。
特に薬の中には、妊娠中には禁忌のものと、服用量を制限して服用が可能なものがあります。
これらの薬物は厳密な安全性試験が行われていて、この量までは飲んでも大丈夫という「安全量」が確立されています。
これに対して、アルコールは個体による感受性の差が大きいため、その安全量が明確になっていません。
先ほどの日本産婦人科学会が報告している量であれば大丈夫だとされていますが、避けられるリスクは避けたほうが良いですから、少量であっても妊娠中の飲酒は避けるべきです。
アルコールの特徴:安全期が確立されていない
ヒトの発生は、妊娠の時期に応じて段階的に進行します。
特に、妊娠3か月までを器官形成期といい、脳をはじめ様々な器官が形成される大切な時期です。※3
特にこの時期は子供の発生にとって大切な時期であり、薬物や化学物質にも高感受性(刺激に対して通常よりも
敏感に反応すること)です。
この時期にアルコールを摂取すると、顔面や頭部、脳の形成に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、器官形成期を過ぎても身体はどんどん成長します。
アルコールはどの時期にも悪影響を及ぼす可能性があることから、妊娠から授乳期の全期間にわたって安全期が確立できていない化学物質なのです。
つまり、摂取した時期に応じた症状や奇形が出る可能性があります。
アルコールの特徴:日常性が高い
アルコールは「薬」のように特別なものではなく、スーパーやコンビニに行けば簡単に手に入ります。
そして、20歳以上の多くの人が日常的に飲酒をしており、コミュニケーション、リラックス、単純に美味しくて大好き、という理由でアルコールを飲んでいます。
こういった飲み物を、「妊娠」というタイミングで完全に切り離すことは非常に難しいでしょう。
身近にあるがゆえに気軽に飲めてしまうことが、胎児アルコール症候群を防ぐうえで最も難しい点の一つかもしれません。
アルコールが子供の発生、発達に害を及ぼすメカニズム
アルコールが体内に取り込まれると、身体の各所で様々なはたらきをします。今回は特に子供の発生、発達の過程で害を為すと考えられるメカニズムについてまとめたいと思います。
細胞を傷害し、死に追いやる
ヒトの生命活動とは、様々な種類の細胞の生命活動の集合体です。
細胞が元気にそれぞれの役割を果たすことで、一つの個体として生きていくことができます。
ところがアルコールの持つ細胞毒性によって、
細胞を死なせてしまう働きがあります。※4
※4 Molecular regulation of acute ethanol-induced neuron apootoisis, 2005, J Neuropathol Exp Neurol
遺伝子発現を抑制する
近年の研究により、ヒトの発生や発達には様々な遺伝子が働いていることがわかっています。その遺伝子はとても重要で、機能や発現に異常があると胎生致死(母体内で胎児が死んでしまうこと)や先天奇形の原因になります。
アルコールの摂取によって、その重要な遺伝子のひとつであるソニックヘッジホッグという
遺伝子の発現に異常が起きていることがわかりました。※4
※4 Sequential developmental changes in holoprosencephalic mouse embyors exposed to ethanol during the gastrulation period, 2007, Birth Defects Res
※ヘッジホッグとは「ハリネズミ」のことで、最初にこの遺伝子が見つかったハエでは、
この遺伝子に異常があると全身が針だらけになることから名づけられました。
この遺伝子は、脳や顔面の形態形成に重要ですので、
この遺伝子の異常が胎児アルコール症候群の脳や顔面の異常の一因であると考えられます。
慢性的な脳内炎症を起こす
炎症とは、傷を負ったり病原体に感染したりした時に働く身体の防御機構です。
リンパ球などの免疫細胞やサイトカイン(免疫細胞の活動に影響するタンパク質)などによる炎症は
身体を守る上ではとても大切な機構ですが、これが感染時以外あるいは慢性的に起こると
健康に障害が起きることがあります。
特に、胎児期のアルコール摂取では胎児の脳内で炎症性サイトカインの発現や、免疫細胞の活動が活性化し、
慢性的な炎症状態が起きることがわかっています。※5
※5 Mechanisms underlying neuro-inflammation and neurodevelopmental toxicity in the mouse neocortex following prenatal exposure to ethanol, 2017, Sci Rep
これらの異常は、脳の形態形成に影響して発達障害の原因となります。
このようにアルコールは様々な経路を介して、細胞や組織を傷害し、
子供たちの発生や発達に害を為しているのです。
妊娠中の禁酒で得られる安心は大きい
胎児アルコール症候群は、妊娠期の飲酒が原因で起こる先天異常です。発達障害の子供たちの中には、胎児アルコール症候群が原因である子達が潜在的に含まれていると考えられます。
発達障害の原因は多岐にわたる多因子疾患のため、原因を特定することは困難ですし、やむを得ない環境要因や遺伝的背景の場合は避けることができません。
しかし、逆の見方をすれば、胎児アルコール症候群は禁酒することで確実に予防することが可能です。
妊娠、授乳中という限られた時間のお酒を我慢することで、確実に守ることのできる子供たちの幸せな未来とおかあさんの大きな安心があるのであれば、それに越したことはないのではないかと思います。
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