2024年から徴税される「森林環境税」をご存知ですか?復興特別税に代わって始まる森林保護のための税金が、森林がない都市部に分配される?
2024年から徴税される「森林環境税」をご存知ですか?復興特別税に代わって始まる森林保護のための税金が、森林がない都市部に分配される?
2011年3月11日に発生した東日本大震災。
震災によって受けた被害への対策として、私たちには2013年から復興特別税、通称・復興税という税金が課税されています。
復興特別税は法人や給与所得者にも課せられていますが、都道府県内および市区町村に住所を持つ人に課せられる住民税にも課税されています。
多くの人が復興特別税を払っていることになりますね。
この税金は2023年まで課税される予定です。
あと2年で終了しますが、この復興特別税に代わって新しく2024年から課税される森林環境税をご存じでしょうか。
今回は、森林環境税と、その使われ方について解説します。
森林環境税とは?
森林環境税という名前を初めて聞く方もいらっしゃると思います。
まずは、森林環境税がどんなものかを解説していきます。
森林の役割
まずは森林の役割について簡単にお伝えします。
私は田舎に住んでいるので、山が近くにあり森は身近な存在でした。
子供のころは、森林と言えば、ただ木が沢山あるだけの場所で、それ以上の意味はないと思っていましたが、以下のように、森林には私たちの生活に密接にかかわる役割があるのです。
・土砂災害の予防・風水害、干害、雪害などから人間の暮らす場所を守る
・洪水を防ぐ
・魚の住処になる
・森林浴やキャンプなどレクリエーションの場になる
・CO2を固定して温室効果ガスの濃度を下げる(温暖化対策)
・洪水を防ぐ
・魚の住処になる
・森林浴やキャンプなどレクリエーションの場になる
・CO2を固定して温室効果ガスの濃度を下げる(温暖化対策)
このように、非常に重要な役割を持っていることがわかります。
森林環境税創設の背景
前述の通り、私たちの暮らしに非常に重要な役割を持っている森林ですが、近年、様々な問題を抱えています。
それが、
◆持ち主がわからない森林が増えている
◆森林の手入れをする人間が減っている
ということです。
日本では昔から家や神社仏閣などの建築物に木材を用いており、そのほかにも家畜の飼料や燃料としても木を用いていました。
しかし、近年では建物はコンクリートに変わり、燃料も石油が主になっています。
さらに、海外から安い木材が輸入されるようになり、国内産の木材の需要は低下してしまいました。
そのため、林業に従事する人が減り、加えて土地の管理者の高齢化も相まって、だんだんと森林の管理ができなくなったのです。
このような背景から、災害防止や温室効果削減に貢献するための森林整備に必要な地方財源を確保するために、森林環境税が作られました。
森林環境税はいつごろから始まり、いくら徴収されるの?
復興特別税は、2011年3月11日に発生した東日本大震災の復興を目指して創設された税金ですが、2023年で終了です。
森林環境税は、復興特別税に代わり2024年から徴収され、国税として、1人年額1,000円を自治体が徴収することになっています。
全国の納税者は約6,200万人ですので、1年間で約620億円の税収がある計算です。
これらの税金は
・林業にかかわる人材の育成
・木材利用の促進や啓もう活動
・森林整備
などに使われる予定です。
集められた税金は分配されて使われるのですが、実は、この分配方法が物議を醸しています。
森林が少ない都市部に多く税金が分配される矛盾
集められた税金は、都道府県や市区町村の森林関係の事業に使われる予定です。
既に分配方法は決まっており、市区町村:90%、都道府県10%の割合で譲与されます。
また、各市区町村、都道府県への分配方法も決まっており、下記の基準で譲与されます。
【私有林人工林面積】
市区町村:集められた税金のうち、50%が市区町村にある森林の面積に応じて譲与されます。
都道府県:市区町村と同じ基準
※私有林:個人や企業が所有する森林。国内の森林のうち7割が私有林です。
※人工林:木材の生産などの目的で、人が整備している森林。国内の森林のうち4割が人工林です。
【林業就業者数】
市区町村:集められた税金のうち、20%が市区町村の林業従事者の数に応じて譲与されます。
都道府県:市区町村と同じ基準
【人口】
市区町村:集められた税金のうち、30%が市区町村の人口に応じて譲与されます。
都道府県:市区町村と同じ基準
ここで問題になるのが、人口に応じた税金の分配です。
皆さんもご存じの通り、人口が多いのは東京や大阪などの都市部です。
市の単位で考えると、人口が多い順に横浜市、大阪市、名古屋市となります。
これらの都市では森林は多くありません。
森林が少ないところへ多くの税金が分配されるこの仕組みは、本当に森林環境のためになるのでしょうか。
このことは、林業に関わる人たちからも問題視されています。
実はほかにもある森林関係の税金
これまで森林環境税についてご紹介しましたが、実はほかにも森林に関係する税金が徴収されていることを知っていますか?
今回ご紹介したのは「国税としての」森林環境税でした。
しかし、県単位で森林に関係する税金はすでに徴収されているところが多いのです。
例えば、静岡県では森づくり県民税として、個人には年400円、法人などには年1,000円~40,000円の課税がされていますし、富山県では水と緑の森づくり税として、個人には年500円、法人などには年1,000~100,000円の課税がされています。
他の多くの県でも、森林関係の税金は取り入れられているのです。
今回、同じように森林の税金課税させることに「二重課税ではないか」という議論が起こっています。
これでは、同様の目的の森林環境税が創設されたのは、ただ、今の税収を維持したいだけでは?と勘ぐってしまいます。
税金は本当に森林のために使われるのか?
今回ご紹介した通り、森林には非常に重要な役割があります。森林があるおかげで、私たちの生活の安全が守られているのです。
そんな森林の整備や、林業に関わる人の育成を行うために使われるのであれば、納税者である私もまったく不満はありません。
自分が林業に対してできないことを、国が代わりにやってくれるのですから、ありがたいことです。
しかし、本当に当初の目的で使われるのでしょうか。
復興特別税の場合、復興とは関係のない事業に税金が使われているという報道もありました。
今回の森林環境税も同じことが起こる可能性もゼロではありません。
参考:「被災地復興予算、なぜ1.4兆円が無関係事業に流用?一部は東電救済に充当の可能性も」ビジネスジャーナル
私たちにできること
税金は、私たちの生活を維持する大切な財源です。
道路や医療費にも税金が使われています。
日本において税金の恩恵を受けていない人はいないでしょう。
これを機に自分でできることを考え、以下のように税金の在り方や、自分にできる林業支援について考えてみてはいかがでしょうか。
◆税金の使い道をチェック
税金の使い道は、インターネットなどを通じて公表されます。
ぜひ自分が納税したお金がどのようなことに使われているのかチェックしてみましょう。
その他にも、議会の見学ができるところもありますので、直接足を運んでみるのもよいかもしれません。
やはり、一般市民がみていれば議員の人も一定の緊張感を持てると思いますし、見学することによって政治への関心を示すことができます。
◆プラスチックを避け、木材を使った製品を購入する
家具や雑貨など、木を使ったものを購入してみましょう。
製品を購入することによって林業に携わる人を応援できます。
購入するときは、材料が海外からの輸入木材ではなく、国産の木材であることをチェックできればよいですね。
今回の森林環境税のように、私たちの知らないうちに重要事項が決まっていることは多々あります。
しかし「私たちの知らないところで…」といっても、自分たちの生活がどのようにして成り立っているのか、興味を持っていない人が増えているのが問題ではないでしょうか。
私たちの生活がどのようなルールで成立しているのか。
そしてそのルールはどうやってできているのか。
興味を持つことから始めてみましょう。
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