誰も知らなかった工場排水処理のリアル。結局は地球の自浄作用に依存している現実を排水処理装置メーカー勤務の私がお伝えします
誰も知らなかった工場排水処理のリアル。結局は地球の自浄作用に依存している現実を排水処理装置メーカー勤務の私がお伝えします
皆さんは普段手にするスマートフォンや自動車、冷凍食品など様々な商品を作るために膨大な量の水が使われていることをご存じでしょうか。
「なんとなく多そう…」くらいには感じておられる方も多いと思いますが、実際のところ、例えば、
スマートフォン1台作るのに約910L(お風呂約4.5杯分)
自動車1台を作るのに約65,000L(25mプール約143杯分)の水が必要です。
すぐには信じられないような量ですが、日常的に大量の水が消費されているはまぎれもない事実なのです。
現在の日本では、従業員30人以上の事業所において年間で433億㎥もの水が工業用水として使われています。
そこで今回は、排水処理装置メーカーに勤める私が、ほとんど知られることのない「工場排水のリアル」についてお伝えします。
そもそも工場排水ってどんな水?
「工場排水」とは、言葉としてはよく知られているものですが、実際はどんな水なのでしょうか。
実は、思った以上に我々の生活と密接した水なのです。
ありとあらゆる商品の製造に必要な水。最終的には排水に
冒頭にお伝えした通り、スマートフォン1台製造するのに使われる水は約910リットル。
スマートフォンに水?と思われるかもしれませんが、
・部品の洗浄
・部品加工時の冷却
・加工する工作機械自体の洗浄
など、多くの場面で大量の水が使われています。
大きな工場(法律上は事業所という表記)になると、1日当たり数百トン以上の水が毎日使われているのです。
そしてこれらの水は事業所内で処理され、公共用水域、つまり海や河川に排出されています。
これが工場排水です。
我々の生活を豊かにする製品が作られているその裏側では、日々、大量の水が消費されています。
気になる!工場排水はどうやって処理されているの?
事業所から排出される水には、洗剤や薬品、油など、様々なものが含まれています。
電子部品であればシリコンの粉、
食品であれば食品のクズ、
事業所内で作られる製品によって排水の種類も様々です。
これらの物質がそのまま川や海に流れれば、もちろん環境負荷が増え生態系に影響を及ぼします。
そのため、わが国では工場排水は「水質汚濁防止法」という法律によって規制されています。
この法律では、事業所から排出される水の水質基準が決められており、企業はその基準を守らなければなりません。
では、水質基準はどうやって守られているか見ていきましょう。
薬品や微生物 様々な方法で処理される排水
排水処理の方法は様々な種類がありますが、主に「生物学的処理」と「物理学的処理」に分けられます。
生物学的処理では、微生物の力を借りて油や有機物を分解しています。
一見、環境に優しそうな処理方法ですが、微生物に働いてもらうためには環境を整えてあげなくてはなりません。
そのため多くの現場では、水中に空気を送っています。
この空気を送る作業には電気が使われており、大規模事業所では何十キロワット(ドライヤーに換算すると10~20台分)という出力で空気が送られることも珍しくありません。
物理学的処理では、ろ過や吸着、薬品を使った「凝集沈殿」という方法がとられます。
ろ過は砂を使ったり、膜と呼ばれる非常に目の細かい構造物に水を通したりしていらないものを除去する方法です。
薬品は凝集剤と呼ばれる薬品を使って水中の汚れを集める方法があります。
凝集剤は主にアルミニウム系や鉄系、高分子系の材料から作れれており、もちろん最終的に河川に放流される水には残っていません。
しかし、過剰投入すれば凝集剤の成分が残留する能性もあります。
このように、生物の力を借りて分解するにしても、物理的にいらないものを取り除くにしても、結局はエネルギーや資源を多く使ってしまっているのです。
排水は薄めるだけでOKなの?意外な抜け道「濃度規制」と「総量規制」
水質汚濁防止法では、以下の2点が規制されています。
◆人体に有害な有害物質による汚染状態(健康項目)
◆その他の汚染状態(生活環境項目)
それらは各項目ごとに排水中に含まれる濃度基準が決められており、基準値以下にして放流する必要があります。
これを「濃度基準」と言いますが、実は濃度だけ規制した場合、排水をきれいな水で薄めて濃度を下げれば何も処理しなくても放流してよいことになってしまうのです。
しかも、希釈さえすれば、いくらでも汚染物質を排出してOKということになってしまいます。
これが問題となり「総量規制」という考え方が取り入れられました。
総量規制は排出される汚染物質の量を一定量以下にする制度です。
これにより、希釈して濃度を下げても、含まれている汚染物質の積算量がある一定値を超えるとNGということになりました。
ただし、この総量規制は東京湾、伊勢湾、瀬戸内海でしか適応されていません。
さらに、水質汚濁防止法で規定されている項目のうち一部にしか適応されていないという現状があります。
総量規制の対象外の地域や対象外の項目については、汚染物質の積算量が多いところもあれば、処理を行わず希釈して排水しているところもあるでしょう。
各企業、環境負荷の軽減に努めているものの、
実際には、地球の自浄作用に依存しているにすぎないのです。
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なんと未処理の排水がそのまま排出されている場合も!
工場排水は、水質汚濁防止法により規制されています。
規制項目は、
◆有害物質による汚染状態(健康項目)
◆その他の汚染状態(生活環境項目)
の二つに分かれています。
有害物質は人体に影響があるため、全ての事業所において規制されていますが、実は生活環境項目については、排水量が1日当たり50㎥以上の大規模事業所のみ規制対象なのです。
それ以下の小規模事業所は、規制されていない現状があるのです。
私たちの完璧主義が排水を無駄に増やし続けている?
近年、生産品目の増加、精密製品の増加、消費者の衛生意識の向上など企業に求められるものは多くなりました。
特に、出来上がった製品のチェックはかなり厳しく行われています。
消費者からのクレームを避けるために、少しパッケージの印刷がずれていたら破棄、少しシワがよっていたら破棄、少し傷が入っていたら破棄・・・
さらに、賞味期限のある食品は店頭での在庫切れを防ぐために過剰に商品を作る傾向にあります。
しかし結局は余ってしまい、日々大量の食品ロスが生まれているのが現状です。
その破棄される製品にも多くの水が使われています。
少しの傷でクレームを入れる、パッケージにシワが寄っているだけでその商品を買わない、たまたま買いたかった商品の在庫がなくて文句を言うなど、我々消費者の過剰な要求も環境負荷を増大させる一因です。
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排水を少しでも減らしたい!私たち一人ひとりができることは?
たしかに事業所から出る排水は、各企業の責任で法律に基づき処理されています。
排水処理に関しては企業が行うもので、我々消費者にできることはないと思っていませんか?
そんなことはありません。
私たち消費者にも、微力ながら貢献できることはたくさんあるのです。
・賞味期限の残りが少ない商品を買う
・使用上問題ない傷であれば許容する
・環境負荷軽減に努めている会社の製品を買う
・使用上問題ない傷であれば許容する
・環境負荷軽減に努めている会社の製品を買う
例えば、食品であれば見た目がきれいなもの、賞味期限が短いものを選ぶ人も多いでしょう。
しかしその食品も、材料を育てる工程や加工工程で多くの水を使っています。
すぐに使うのであれば、品質になんの問題ありませんので、賞味期限が短いものから購入しましょう。
また、少し見た目に不具合があっても、安全性や使用に問題なければ使い続けることでも環境負荷軽減に貢献することができるのです。
もちろんすべてのことにおいて我慢する必要はないと思います。
一つひとつは小さなことですが、消費者が行動を変えることで、企業も必ず取り組み姿勢が変わってくるはずです。
製品が自分の手元に届くまでにどのくらいの資源が使われてるか想像を巡らせ、我々ができることを一人ひとりが心がけていきたいですね。
出典:『水がなくなる日』橋本淳司
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