日本の過去の公害に今なお苦しむ人が存在する悲しい現実。同じ過ちを犯さないために私たちが日々心掛けたいこと
日本の過去の公害に今なお苦しむ人が存在する悲しい現実。同じ過ちを犯さないために私たちが日々心掛けたいこと
皆さんも一度は聞いたことがあるであろう、イタイイタイ病、四日市ぜんそく、水俣病、新潟水俣病の四大公害病。
これらの病気はいずれも1960年代の高度経済成長期に発生した病気で60年も経過しているため、今となっては遠い昔のことと思われがちです。
しかし、現代でもこれらの公害の爪痕が残っており、苦しみ続けている方々が多くいらっしゃいます。
3.11の福島第一原発事故の記憶に新しいと思いますが、一旦起こったことはその後長きにわたって私たちの環境や暮らし、健康に大きな影響を及ぼします。
今回は、かつての深刻な公害の原因や今なお続く被害をお伝えすることで過去から学び、今後私たちが心掛けるべきことは何かを考察してみたいと思います。
日本の公害の歴史
まず、公害とはどのようなものを指すのでしょうか。公害は、環境基本法(2条3項)により、以下のように定義されています。
事業活動その他の人の活動に伴って生ずる
相当範囲にわたる
大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭によって
人の健康又は生活環境に係る被害が生ずること
相当範囲にわたる
大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭によって
人の健康又は生活環境に係る被害が生ずること
日本初の公害事件「足尾銅山鉱毒事件」
日本において、公害の存在が有名になったのは「足尾銅山鉱毒事件」でしょう。
この事件は、1890年代に栃木県と群馬県にまたがる渡良瀬川周辺で起きました。
足尾銅山はその名のとおり、銅を採掘する山です。
銅山が開かれると足尾では、銅を生成する際に発生する化学物質が川に流れ込み、魚の大量死や農作物が枯れるという被害が発生。
この状況に怒った住民が抗議運動を起こしましたが、根本的な解決ができないまま銅山は1973年に閉山しています。
これが日本で初の公害事件となりました。
しかし、戦後、日本各地でさらなる公害被害が発生してしまいます。
以下で紹介する公害は、4大公害と呼ばれ、大きな被害をもたらしたものです。
イタイイタイ病
イタイイタイ病は1910年代から1970年代にかけて、富山県を流れる神通川下流で起こった病気です。
原因は鉱山から排出されるカドミウムを含む排水。
この水を使って作られた農作物を食べたり飲んだりすることで、体内にカドミウムが蓄積され発症します。
筋力低下や骨折、手足のしびれなどの症状があり、患者が「痛い痛い」と叫んだことからイタイイタイ病と名付けられました。
症状が発生した当初は原因がわからず、被害が拡大する一因になったそうです。
四日市ぜんそく
1960年から1972年にかけて、三重県四日市市を中心に発生した病気です。
石油化学コンビナートから排出された排気ガスにより、大気が汚染され、汚染された空気を吸うことで気管支疾患が発生しました。
この当時、石油は石炭とは違いスモッグが発生せず、クリーンなエネルギーとされていました。
しかし実際は、排気ガスに含まれる硫黄酸化物が気管や肺にダメージを与えており、ぜんそくが発生したのです。
水俣病
水俣は熊本県最南部にある都市です。
元々は自然に恵まれた場所でした。
しかし、そんな美しい自然を持つ土地を公害の被害が襲います。
水俣病は、化学工場から排出されたメチル化水銀化合物を、魚介類を経由して摂取することで起こる神経疾患です。
運動障害や聴覚障害、手足の震えなど様々な症状があります。
1956年に初めて水俣病の患者が発生しましたが、こちらも当初は何が原因で起こっていたのかすぐにはわからなかったそうです。
新潟水俣病
新潟県の阿賀野川流域で発生した病気で、熊本と同じくメチル化水銀化合物による神経疾患です。
新潟水俣病も、化学工場からメチル化水銀化合物が排出され発生しました。
1965年に新潟水俣病の発生が報告されています。
それぞれの公害のその後
上記で紹介した公害は、足尾銅山鉱毒事件においては発生から約130年、4大公害は発生から約60年の時間が経過しています。これだけの時間がたっていれば、すでに終わったことと認識している方も多いでしょう。
学校で習う教科書にもこれらの公害は掲載されていますが、歴史上の出来事でどこか他人事と思われているかもしれません。
しかし、130年、60年と時間がたった今でも苦しんでいる方々がいるのです。
足尾銅山鉱毒事件その後
足尾銅山は1973年に閉山しましたが、汚染された土壌がすべて浄化されたわけではありません。そのむかし足尾銅山を経営していた企業は、今なお旧銅山の負の遺産である堆積場を管理していることをご存知でしょうか。(※)
有害な金属成分を含んだ水はそのまま流すことはできず、町内の浄水場で処理をしなければなりません。
また、2011年の東北地方太平洋沖地震によって堆積場が決壊、汚染物質が川に流れだし、下流では基準値を超える鉛が検出されたというニュースをご存知の方も少なくないと思います。(※)
鉱山の閉山は1973年のことですが、そこから40年以上たった今でも終わりが見えることはないということがおわかりいただけると思います。
一度起こった公害は恒久的に管理を続けていく必要があるということを私たちは忘れてはいけないのです。
イタイイタイ病
イタイイタイ病の患者となった人々は、原因物質を排出した企業を相手取り、訴訟を起こしています。初めの訴訟は1968年に起こされ、長い月日をかけて2013年に被害者と原因企業との間で全面解決の合意が交わされました。
被害者には土壌回復や賠償金の救済がとられたわけですが、被害者認定の基準が厳しく、前段症状と言われる「カドミウム腎症」の発症では一時金のみの救済にしかなりません。
公害の風化とともにこの腎症とイタイイタイ病との関連性を疑わない人が増えているなど、今なお問題は残されています。(※)
四日市ぜんそく
現在は排気ガスに含まれる有害物質濃度は低くなり、大気の状態は良好な状態を保っています。しかし、四日市市の統計によると2018年の段階で被害者認定されているのは358人で、現在でも公害の被害者として苦しんでいる人がいるのです。
水俣病
水俣病の被害者は一時金や医療費の保証を受けました。しかし、決められた基準に満たないために被害者として認定されない方もおり、損害賠償の裁判がおこなわれています。
また、胎児のときにメチル化水銀化合物の影響を受けてしまい脳性小児マヒを患っている方もいらっしゃいます。
新潟水俣病
他の公害と同じく、被害者には救済措置が取られています。しかし、すべての被害者が救済されたとはいえず、現在でも裁判が行われています。
公害は健康被害だけではなく、特に原因がわからない段階では伝染病と思われ差別され、辛い思いをしてきた方がたくさんいます。
訴訟を起こしたことで「金目当て」と言われることもあったそうです。
さらに、被害者救済が行われると言ってもすべての被害者が救済される訳ではありません。
症状が軽微である、あるいは症状と公害の因果関係が立証されないといった理由で、被害者として認められないこともあるのです。
公害は人間だけではなく家畜や農作物、周辺の自然環境にも大きな被害を与えました。
一度発生してしまうと人も動物も環境も長い間苦しむ。
それが公害です。
私たちも公害発生の真っ只中で生活している?
今回ご紹介した公害は、局所的に大きな被害が出るものでした。
しかし、現在は日本全体、いえ、世界全体が公害の被害を被っている状態ではないでしょうか。
近年、地球温暖化により地球の平均気温はじわじわと上昇しており、地球規模の気候変動や感染症の拡大が懸念されています。
今回取り上げた公害が起こった原因は、高度経済成長期において国や産業の発展を優先したことです。
現在はSDGsや脱炭素社会という言葉は市民権を得ていますが、社会の在り方は変わっているでしょうか?
環境を大切にと言いつつ、あらゆる産業はその歩みを止めていません。
公害は一度発生すると、本当に長い間多くの人が苦しむことになります。
公害としての爪痕を残さないために、問題意識を持つべきではないでしょうか。
現在の地球環境は確実に悪い方向に変わっていますが、そのスピードは今回ご紹介した公害に比べるとゆっくりです。
それゆえ危機感を持ちにくく、公害はどこか関係のないことだと思っていませんか?
不要な電気を消す、これからの季節はエアコンの設定温度を体調に支障のない範囲で上げるなど、ぜひ、小さなことから始めてみてください。
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