優良なオーガニック食品が広まらない本当の理由。複雑な流通経路が生んだ、非オーガニック大国への道。
産地を聞くだけで安心していませんか?
こんにちは、あゆゆです。
野菜の産地はどこですか?
肉は国産ですか?
私は普段、飲食店の厨房で勤務していますが
時折聞かれるのは「この野菜の産地はどちらですか?」、「このお肉は国産ですか?」です。
オーガニック食品の流通が増え、ネットやニュースで全国の食材が取り上げられ、消費者自ら選ぶ時代になってきたのだな、と考えさせられます。
もちろん私たち飲食店も食材を見極め、最高の味を引き出す工夫をし、日夜研究しております。
ところが、災害や被災にあった一部の地域の産地名を聞くと、食事をためらう消費者が多いのも現実です。
復興の影に、深い余波があることは現場である私たちには痛いほど伝わってきます。
確かに、リスクの高い食材も流通されていたり、海外産肉は危険なものが多いことも確かで、
すべての観点から安全性を重視して、食材を選ぶことが重要です。
ところで、皆さんは食品の産地以外に
どのような基準で野菜や食べ物を選んでいますか?
・生産工程
・オーガニックであるかどうか
・添加物が使われていないかどうか
などでしょうか。
しかし、それ以外にも私たちはもっと知るべき背景があります。
それは流通経路です。
生産者から食卓へ。
もちろん野菜が農家からあなたのお皿の上に届くわけではないことを、皆さんもご存知だと思います。
生産者により生産された「製品」を消費者のもとに届けるまでの一連の流れを流通経路といいます。
それぞれの業者が流通経路に介在する事により、
円滑に、また効率的に消費者のもとへと届けられるのです。
日本は独特な商習慣がある。
日本の流通経路が複雑な理由
日本の流通経路は、西洋先進国と比べて複雑だと言われています。
消費者の性向、長年に渡って積み重ねられた商習慣など、複雑な理由は多くあります。
細かい頻度で少しずつ買う日本人
消費者の性向
日本の消費者は、細かい頻度で少量づつ多品目買う傾向があります。
新鮮さを求め、野菜のキレイさにはこだわりがあるため、小売業者も中間業者も寡占化しなかったのです。なぜここまで複雑になってしまったのか?
商習慣と歴史
また、いろいろな介在者がいる流通業界。
なぜこんなにも複雑になってしまったのでしょうか。
江戸時代、労働力が過剰な状態が常態化しており、
どうにかして隙間に潜りこまなければならなかったからだという説もあります。
これが品質の高さ、徹底したアフターサービスなどのきめ細かさを生んだのだといいます。
小売産業から卸産業へ。
戦争が終結したあとに「大規模小売店舗法」(大店法、1974年)が施行され、中小商店の保護や振興を立場にしてきました。その後、1989年からの「日米構造協議」が発足された事によって、
商習慣や流通構造などの国のあり方や文化にまで範囲を広げる交渉が行われていました。
ですが、市場経済と小規模の商業との調和は出来ず、
「商店街の歯抜け現象」と言われ、商店などはどんどんとその数を減らしていきました。
現在の日本の流通経路が複雑な理由は、このような時代背景も関係しているのです。
日本の現在の流通経路と問題点
様々な意見がありますが、
この日本の複雑な流通経路は実際に、生産者と消費者を結びつける大切な役割を果たしています。
農家は国の基準に従うしかない・・?
様々な流通経路が登場する現代社会
さて昔は、農家が作った生産物はその周辺地域だけで消費され、遠くの場所に届くことはほとんどありませんでした。
これが身土不二であり、本来の在り方でした。
ですが時代が進むとともに交通システムが発達し、
生産物は国内、国外から広く届けられるようになりました。
ここで生産者と消費者の間に大きな壁ができることになります。
農家が、作っても作っても、報われない悲惨なシステム
優良なオーガニック食品が広まらない本当の理由。
野菜の流通経路
私たちが普段小売店で見かける野菜はどこから来るかご存知でしょうか。
ネット販売や独自ルートを除けば
野菜の生産農家→
JA(農業協同組合)→
卸売市場→
仲卸業者→
スーパーなどの小売店→
そして最後に消費者の元に届きます。
野菜の値段は、農協で等級(A.B.C)と等級ごとのサイズ(2L.L.M.S)に分けられ、卸売市場に運ばれます。
そこで、セリや相対取引によって値段が決まります。
ここで何が問題なのか考えてみましょう。
現在の流通の問題点
>規格に合わない(形の悪い)野菜は処分される
>国の定めた農薬を使わないなど、基準に従わない自然栽培などの優良な農家の野菜はJAの基準と合わないため、一般的な小売店に卸せない
(結果として安全な野菜が市場に出回らない。消費者の元に届きにくい)
>介在者が多すぎるため、農家の手元に残る売り上げがほとんどない
(したがって現状のやり方を変えるといった投資ができない・生産に必死になって売ることに対して時間をさけないため、結局既存の体制に依存する
>基準に従った農薬や肥料を使わなければならない
上記でお伝えした通り、
農家や消費者だけが頑張ってもどうにもならない背景もあります。
流通経路の課題と私たちが知るべきこと
消費者が綺麗さや、新鮮さにこだわるあまり、食品の廃棄ロスが多く、廃棄大国と呼ばれている日本。一方で農林水産省の報告書によると、女性の社会進出や単身世帯の増加など、生活スタイルの変化に伴う食の外部化によって生産者のシェア拡大が課題とされています。
こうなると、さらに廃棄率は高まっていくでしょう。
近年の気象災害の多発と、担い手の高齢化によって、適正な栽培管理ができていない地域があるのも事実です。
気象によって野菜の値段もコロコロ変わるため、消費者もムダな買いだめをしたり、お財布に痛い時期もあるでしょう。
安い野菜を求める消費者の影で、
化学肥料、農薬や科学技術に頼る、植物工場をつくるといった対策が実際に実施されているのです。
忘れてはならない事実、
それは、農薬を使う理由、科学技術に頼る理由、安定出荷のための工場をつくるのは、消費者が「安くて大量にきれいなものを欲しい」と求める浅はかな声がきっかけだということです。
その状況を少しでも変えるためには消費者がまず、動き出さねばなりません。
私たちにできることは何か
あきらめるのではなく私たちに今すぐにでもできることはたくさんあります。
例えばおいしい安心できる野菜が欲しいのであれば以下のような活動は効果的なはずです。
>農家と消費者が直接結びつくコミュニティを形成する。
>地元のスーパーではなく、優良なネット販売業者などできるだけ中間介在者が少ない販売ルートからオーガニック商品を購入する。
>自然栽培の野菜や善良なオーガニック野菜をマルシェやネット等を通じて購入し生産者を応援する。
>素晴らしい活動をSNSでシェアしてみたり、知人に教える。
>地元の小売店にオーガニック野菜を扱ってほしいと根気よく伝える。
自然栽培、有機野菜を流通させるためには
私たち消費者が動かなければ、生産者も動けないことを知ってほしいのです。
批判だけでは何も変わりません。
私たちも生産者に協力すべきなのです。
新しい流通の形
この複雑な流通経路を打開するために、最近は全国どこへでも野菜を届けるというネット販売や地産マルシェといった、新しい流通の形も増えてきました。産地から直接家庭へ届けてくれますし、生産者の顔や安全性が見えるのでとても便利です。流通という名のコミュニティ。
作ったものを食べる。生産者と消費者を繋ぐ流通という名のコミュニケーションは複雑ではありますが、
日本人の気質と時代背景が作った文化なのですね。
この流通経路が生産者と消費者間の様々な問題(時間、場所、所有権、情報、金銭、質など)を解消し、円滑にしています。
しかし、より安心安全なものを食べたいと願う私たちが今すべきことは
毎日ルーティンのように地元のスーパーで買い物をすることではありません。
多くの主婦がそうしているように、あなたもそのような行動を続けてしまえば
「安全なものが出回る日」は遠いのです。
その野菜がどのような経路でどのようにして仕入れられたものなのか。
どういった生産者が作っているのか、そうした背景を把握して、本当に応援すべき人や団体を応援することが未来へつながります。
終わりに
生産者から私たちの食卓へ届くまでの過程をお話してきましたが、便利な時代の影に解決しなければならない課題があることも忘れてはいけません。
無駄な買い物をなくす
食べ物は必要なぶんだけ
食材は丸ごと頂く
応援したい業者から食品を買う
など、私たちが出来ることから始めていくことが、次世代へ食を紡ぐことに繋がるのでしょう。
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