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あなたはどう考える?アメリカでの「はしか」大流行とワクチンの是非

a vaccine with a drop

2019年、アメリカでは「はしか」が大流行した年で、1年を通して頻繁に報道されました。
なぜ流行したのか?
そして「はしか」関連の報道の中でよく見聞きした「Anti-vaccine(反ワクチン)」とは何か?
今回は多くの報道や研究で分かってきた情報、そこから垣間見れるアメリカ社会の闇を
お伝えします。

アメリカで「はしか」感染者が過去最高を記録


2019年、カリフォルニア州、ワシントン州、ニューヨーク州、テキサス州などをはじめとするアメリカ全土で、
「はしか」が大流行し、大規模な集団感染が見られました。
数年前から徐々に感染者が増えていたのですが、2019年の上昇率は専門家たちを驚かせました。

2019年11月7日の調査では、はしかの感染は1,261件とのことで、
前年の2018年と比べると、およそ2.4倍に増加したことが分かっています。
流行していない時の感染者の数は、年間100人以下なので、かなりの上昇率ということになります。

アメリカの人を悩ませる「はしか」とは?

はしか(麻しん)は、世界でも非常に感染力の強いウイルスのひとつです。
熱が続き、肺炎、中耳炎、脳炎などの深刻な合併症が出ることも多々あります。

専門家によると、「はしか」にかかった5人に1人は入院が必要
1,000人に1~3人は命を落とすとされています。

なぜ今、流行しているのか?

今、大規模な感染が勃発している理由のひとつとして、旅行者が「はしか」の流行している他の国から持ち込んだ(持ち帰った)事が挙げられています。

はしかの大流行している国(イスラエル、ウクライナ、フィリピンなど)でウイルスと何らかの形で接触し、ウイルスと共にアメリカに入国したと考えられているのです。

しかし、なぜ予防接種で防げる「はしか」が2019年に大流行してしまったのでしょうか。

それには「反ワクチン」という考え方の大きな影響があります。

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「ワクチンは身体に悪影響。」アメリカでのワクチン反対派の主張とは


他国から持ち込まれたウイルスをアメリカ全土に拡大させた最大の要因は、ワクチンを打っていない国民が多くいたことがそのひとつだったと言われています。

ある記事によると、2017年から2018年に調査した
2,680人のキンダーガーデン(日本の幼稚園に当たる)に通う子どもたち(5歳)の
76.5%しか予防接種を受けていなかったことが分かりました。

一見、この数字は十分に思えますが、
人口の92%~95%が受けていないと、集団感染の予防はできないと言われており、
4人の子どものうち1人でも受けていない子どもがいると、集団感染が始まる計算です。
76.5%というのは、集団感染を防ぐには不十分ということがわかります。

アメリカでは生後12ヶ月から15ヶ月の間に1回、4歳から6歳の間にもう1回ワクチンを打つように、
としています。
しかし、多くの母親が「子どもに予防接種を受けさせない」という選択をしていたのです。

では何故、「はしか」にかかるリスクを負ってまで、彼らはワクチンを拒否するのでしょうか。

親の選択に影響を与えるワクチン反対派の考え方とは?


ワクチン反対の意見を持つ人々の考え方は基本的に、
「ワクチンは様々な理由や観点から身体に悪影響を及ぼすので、ワクチンは拒否するべき」というものです。
日ごろから免疫力を高める生活をしていれば問題ない、万が一感染しても免疫がつくので、副作用が出てしまうことを心配しながらワクチンを打つのであれば拒否をするべきだ、と主張しています。

ある記事ではワクチンに換わる対処法として、
「ゼオライト(沸石と呼ばれる鉱物)を使い細胞にある毒性物質を取り去る」
「ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンKを摂ってはしかを治すという
(1920年代から1940年代に存在した)方法を使う」
「砂糖を摂取せず、身体をヘルシーに保つ」などの方法が紹介されていました。

確かに日ごろから免疫力を高めることは大切ですし、効果を得られることもあることでしょう。
しかし、「はしか」などの命を脅かす感染症となると、ただ頑なに反対するのが良いかどうかは
悩ましいところです。

IN YOU読者の皆様の中には、できる限りワクチンの摂取はしたくないという考えの方も多いと思います。
実際にワクチンによってはひどい副作用が発症してる方もいますから、当然の考えだとは思います。
とはいえ、自分が、あるいは大切な人が、防げることが出来たかもしれない病気になってから
考えを変える方もいますし、愛する子どもなどを前に、悩む方もいらっしゃるのが実情です。
その判断は、決して簡単なことではありません。

また、アメリカの場合、ワクチン反対派が恐れる副作用についても根拠のないもの、あるいは曖昧なものが目立ちます。
そのため、専門家たちは口をそろえて、「ワクチン反対派が発信する情報は間違っている」
と主張しています。

今回は数多くある反ワクチン派の意見の中から明らかに情報が誤っているにも関わらず、影響力が大きいとされているものを、いくつか参考までにご紹介します。

ワクチンは自閉症になるリスクを高める

これは専門家たちによると、誤情報です。
実際1990年代の終わりにそのような研究結果が発表されたのですが、
後に多くの間違いが見つかっただけでなく、
研究者が自分の利益の為に内容を変更するなどの疑いもあることが分かりました。

実験内容も信憑性に欠け、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は
ワクチンと自閉症との関係を示す証拠はない、としています。

ワクチンには安全ではない物質、有害物質が含まれている

確かに、大量に摂取した場合に有害とされる成分が含まれることがあります。
しかし、ワクチンに含まれる量はほんのわずか、身体に悪影響を及ぼすほどではないと考えられています。

ワクチンに頼らず、自然に免疫力を上げていく方がいい

時々、自然の免疫力の方がワクチンより強くなることがあります。
ただ、「はしか」など深刻な感染病の場合はリスクが大きすぎます。
WHOは2000年~2017年の調査で、ワクチンによって「はしか」の死亡率を80%下げたとし、
ワクチンの効果と重要性を主張しています。

インターネット、SNSが間違った情報の拡散を加速


アメリカの有名人たちが反ワクチンを唱えるなどして、
予防接種対象の子どもを持つ母親に影響を与えたことも話題になりましたが、
それ以上に影響を与えていたのは実はインターネットやSNSでした。

ネットで「Vaccination(ワクチン)」「Immunization(予防接種)」などのワードで検索すると
100件以上もの反ワクチン派のサイトがヒットするようになり、
全体の43%を占めていたと云われています。
また、Twitterでは、ワクチンに関するツイートの
50%が反ワクチンに関する内容を含んでいたことが報告されています。

2017年に、Pintarestは、「Vaccine(ワクチン)」という検索ワードをブロック
YouTubeは「反ワクチン」に関するチャンネルや動画は広告を載せられず、
広告料金などの収入を受け取れないようにするなどの措置を取っています。

また、Facebookでは、ワクチンに関するデマを拡散させるような
グループやページがおすすめ欄に出ないように変更し、
Instagramでは
#vaccinescauseautism(ワクチンが自閉症の原因)
#Vaccinesarepoisn(ワクチンは毒)
などの反ワクチン派のハッシュタグをブロックしています。

子を守りたい母親の思いと様々な情報の間で…

ABCニュースの記事によると、実際に「反ワクチン派」という母親は1~2%と少数。
専門家は、ワクチンを拒否した母親の多くが「自分の子どもにとって良いこと、正しいこと」をしようとして、このような結果を招いてしまった、と言っています。

先ほどご紹介したように、インターネットやSNSでは、多くの反ワクチンを含む誤った情報が
正しい情報と混在しています。

子どもにベストな選択をしたい母親は、様々な情報を収集する中で、ワクチン反対派の情報を信じ、
予防接種を拒否する選択をしてしまったようなのです。

実際、反ワクチンの情報を載せているウェブサイトは、
信頼できる公共の医療機関の名前と似せていたり、
いかにも信頼できそうな見た目にしているなど、ややこしく、
情報も医療関係者以外で間違いを見つけるのは大変なようです。

純粋な母親の優しさが、誤った情報によって
皮肉にも結果的に子どもを傷つけることになってしまった、と言えます。

今の時代、SNSでは様々な情報に溢れ、誤ったものや信憑性にかけるものも多くあります。
専門知識のない人が、それらの情報を吟味し判断するには非常に困難です。
しかし、一度冷静になって情報を見直したりすることで、見えてくることがあるのではないでしょうか。
特に命に関わることには慎重になるべきなのではないでしょうか。

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アメリカでワクチンを打たない人たちの、もうひとつの理由


流行の大きな原因「ワクチンを打たない」理由として
主に誤った情報を信じてしまったことですが、実はもうひとつ考えられる理由があり、
医療関係者を悩ませています。

アメリカには、2回目の予防接種(4歳~6歳にもう一度ワクチンを打つことになっています)
を受けない子どもたちが少なくありません。
その理由は、ワクチンを親が嫌悪しているというよりも、
ワクチンを受ける金銭的余裕がないからだと言われています。

裕福な家庭では、医療保険に加入しており、ワクチンを受けやすくなりますが、
貧困層は保険に入ることができずワクチンを受けることが難しくなります。

アメリカの医療費は一般的に全て高額で、
ワクチン1つにも高い料金をを払わなければいけません。
産まれてから1歳になるまでにかかる予防接種のコストは、
保険に入っていない人で、平均620ドル(およそ62,820円)
保険に入っている人で、平均242ドル(およそ26,470円
と言われています。

また、裕福な家庭は住居が安定しており、かかりつけの医者も持ち、
忘れずにワクチン摂取を受けることができます。
しかし、生活が不安定で一つの地域に定住できずに移動を繰り返す家庭は、
ワクチン摂取や定期検診は怠りがちです。

専門家は、アメリカにはそのような子どもたちの為のサポート団体
(1990年代に始まり、保険のない子どもたちなどに無料で提供しています)
があるにもかかわらず、なかなか機能していないことを指摘しています。

これが改善されると、もっと多くの子どもたちが平等に予防接種を受けることができるでしょう。
それが、2019年のような大規模な集団感染の予防につながっていきます。

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はしか、ワクチン問題から透けて見えるアメリカが抱える闇


いかがでしたでしょうか。

今回はアメリカで大流行している「はしか」、その原因をご紹介しました。

インターネットやSNSで拡散された誤った情報によりワクチンを拒否した結果、
はしかに感染、時には命も落としてしまったという悲しい出来事は、とても胸が痛みます。

今アメリカでは、何を信じていいのか、誰を信じていいのか、
という点に関して、かなり混乱しているように見えます。
アメリカのトランプ大統領も以前予防接種を受けるよう言っていたにも関わらず、
反ワクチン派の情報をSNSを使ってシェアをしていました。
これでは、アメリカ国民は何を信用していいのか分からなくなってしまいますよね。

加えて、いまだアメリカには貧富の差が存在し、
子どもたちは平等に医療サービスが受けられない状態です。

しかしこの問題は現代において、
どこの国でも陥りがちな問題なのかもしれません。

日本では大丈夫、と思われがちですが、
誤った情報の拡散や、それに伴う不信感などを含め、
このようなことが起きる可能性が日本にもあることを
心に留めておいて頂けたら幸いです。

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