貧血予防・改善のための食べ物と食事法|間違いやすいポイントを徹底解説
生活の質を著しく下げてしまう「貧血」は、「栄養の問題」、「遺伝性疾患」、「外傷」など様々な原因で起きます。貧血の中でも「鉄欠乏性貧血」は、食事を通じた鉄やビタミン類、乳酸菌の摂取などでケアが可能です。
ただし鉄分に関しては、動物性食品に含まれるヘム鉄と植物性食品の非ヘム鉄では吸収率が違い、植物性の非ヘム鉄は吸収率がよくありません。
今回は、貧血に良い食べ物と良くない食べ物、そして貧血の予防や改善のための食事のポイントについてご紹介しましょう。
「よくある症状」が貧血のサイン。貧血への対応法は原因によって違う
多くの種類がある貧血。食事で改善出来る貧血は「鉄欠乏性貧血」
貧血には「鉄欠乏性貧血」「脳貧血」「失血性貧血」「続発性貧血」「巨赤芽球性貧血」「悪性貧血」
「再生不良性貧血」、「溶血性貧血」といくつかの種類があります。
このうち、食事で改善が見込めるのは「鉄欠乏性貧血」です。
「鉄欠乏性貧血」は文字通り、鉄分が不足することで起こります。体の外部から食事やサプリメントとして鉄分を摂取することが改善法として有効です。
自分でケアすることによって改善が見込めるのは「鉄欠乏性貧血」です。もし、鉄分を摂っても症状がよくならない場合はセカンドオピニオンをとった方がよいでしょう。
「鉄欠乏性貧血」になると、どのような症状が出るのか
鉄欠乏性貧血の症状には、「顔面蒼白」「起立性低血圧」「頭痛」「めまい」「失神」「耳鳴り」「肩こり」
「疲れやすい」「倦怠感」などがあり、誰もが日常的に体験する症状が少なくません。
鉄欠乏性貧血がより重くなると「狭心症」の発作につながることもありますので、よくある症状だと放置せずにきちんと治療をすることが必要です。
また「爪が割れる」「髪が弱くなって切れる」「口内炎や口の中の痛みが頻発する」といったことも鉄欠乏性貧血の症状として見られることがあります。
また、それほどよく知られてはいませんが、鉄欠乏性貧血の症状のひとつに「氷食症」があります。
氷食症は「異食症」の一種。異食症とは、栄養価が全くないもものを無性に食べたくなってしまう状態です。
鉄欠乏性貧血の人がなぜ異食症になってしまうか良くは分かっていません。
他にも、歩くと下肢に痛みが出るが、立ち止まったりして少し休むと痛みがやむというような症状が出る人もいます。
鉄欠乏性貧血は、症状だけ見ると、「うつ病」や「神経疾患」と非常に紛らわしい部分があります。ここでご紹介した症状でもし気になるものがある場合には、専門医のもとで血液検査をしっかりと受けるようにして下さい。
食事で摂取出来る鉄分は「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類
鉄分を摂取すれば「鉄欠乏性貧血」の予防、改善がかなりの確率で期待出来ます。
冒頭に書いたように、鉄分は大きく分けて、赤身肉、魚、鶏肉などの動物性食品に含まれる「ヘム鉄」と、
野菜や穀類などの植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」があります。
そして「ヘム鉄」は、「非ヘム鉄」よりも数倍吸収されやすい鉄分、最も吸収率の高い鉄分となっています。
さらに細かく説明すると、2価の鉄と有機化合物ポルフィリンが結びついたのが「ヘム」と呼ばれる物質です。
「赤血球」中でヘムとたんぱく質が結びついたものが「ヘモグロビン」です。
ヘモグロビンは血液中で酸素を運ぶ役割を担っています。ヘムに含まれる「鉄(ヘム鉄)」は酸素と結合しやすい特性を持っているため、ヘモグロビンを持つ赤血球は大量の酸素を細胞に運ぶことが出来ます。
鉄分さえとっていれば「鉄欠乏性貧血」にはならないわけではない
実は「鉄欠乏性貧血」は「ビタミンC」や「ビタミンE」など鉄分の吸収を助けるビタミンの欠乏でも起こります。
また、妊娠時などは造血ビタミンと呼ばれ、赤血球を作るのに欠かせない「葉酸」や「ビタミンB12」が欠乏しないように注意を払う必要があります。
貧血予防に摂った鉄分があだになる「鉄過剰症」について知っておこう
鉄分が不足していそうだからと、鉄剤を安易に摂取することはおすすめしません。
通常の食事ではまず起こりませんが、鉄剤や鉄サプリメントを継続的に摂取する場合、「鉄過剰症」の恐れが生じます。
まずは、病院で「血清フェリチン値」を測ってもらいましょう。血清フェリチン値とは、鉄をため込むたんぱく質の量のことで、血清フェリチン値が標準より低いと鉄欠乏性貧血の恐れがあります。
「鉄過剰症」の要因は、鉄剤(鉄サプリメントント)服用のほか、難治性の貧血の治療のための輸血などです。
通常であれば、過剰な鉄分は体の外に排出されていきますが、遺伝などにより、人によってはその代謝が上手くいかないことがあります。
参考:「生体内の鉄の量を調節するたんぱく質の機能を解明 (鉄過剰症による神経変性疾患やがんの病態解明に期待)」
そして長期の「鉄過剰症」には、
・活性酸素の発生による発がん
・肝臓への鉄沈着
・糖尿病への関与
など多くの悪影響をもたらすことが疑われています。
もちろん鉄剤(鉄サプリメント)自体は、安全性が高いもので貧血の予防や治療には有効です。
しかし、病院で処方されたもの以外に、鉄剤を自分で買って必要量以上に飲むことは避けましょう。「鉄過剰症」以外に「胃腸障害」の心配もあります。
貧血に良い食べ物と良くない食べ物。鉄分豊富な食材の思わぬ落とし穴にも注意
ヴィーガンやマクロビオティック実践者は特に貧血に注意。体質にあった食事が重要
栄養士が貧血の人に推奨する食事とは次のようなものです。
*食事は栄養のバランスを考え、毎日3食をきちんと食べる。
*鉄分を多く含む食品を十分に取る。
(鉄分はレバ-や赤身の肉類、あさり、かき、血合いの多い魚、大豆製品、緑黄色野菜、海藻などに多く含まれています。特に、ヘム鉄の多いレバーや血合い肉は有効です)
*たんぱく質を十分に取る
(魚、肉、卵、大豆製品、乳製品などのたんぱく質を多く含む食品を使った料理を毎食バランス良く食べるように心掛けましょう)
*鉄の吸収利用を良くする。
①酢、柑橘類、梅干しなど酸味のあるものや香辛料を使って胃液の分泌を良くする。
②ビタミンCの多い野菜、いも、果物などと一緒に取って吸収を促進させる。
③造血成分といわれるビタミンB12(レバ-、魚の血合い、納豆など)、葉酸(緑黄色野菜など)ビタミンB6(いわし、かれい、卵黄など)、銅(貝類、レバ-、ごまなど)などと一緒に取る。
*食事中の緑茶や紅茶、コ-ヒ-などは控える。
(これらに多く含まれるタンニンが鉄と結合して鉄の吸収を悪くします)
*料理は手作りを心掛ける
(インスタント食品や調理済み食品、出前の料理などは使用されている材料が分かりにくいだけでなく、栄養のバランスの偏りが生じやすくなります)
引用元:「鉄欠乏性貧血の予防と食事」
しかし、このような食事はすべての貧血患者に向く食事とは言えません。菜食(ヴィーガン)の方、食物アレルギーがあるなどの理由で、栄養バランスが崩れやすい方は栄養食品を適度に利用して鉄分の吸収を助ける物質を摂取しましょう。
吸収率の高い「ヘム鉄」を多く含む食べ物は動物性のものが多いので、菜食(ヴィーガン)の方はサプリメントなどで栄養バランスを整える必要があります。植物性食品では、(吸収の良い)非ヘム鉄は摂取できますが、(吸収の悪い)ヘム鉄はあまり摂れないので注意が必要なのです。
また、食肉アレルギーや魚のアレルギー、乳糖不耐症の人は、鉄分や鉄分の吸収率を上げる成分を多く含む食品を食べても、消化不良で逆効果になってしまうことがあります。
★完全オーガニックの植物性ヴィーガンプロテインパウダー
プルーンは鉄分が豊富だから、貧血に良いというのは本当?
「プルーンは(鉄分が多く)貧血に良いから食べなさい」とよく言われます。しかし、安易な推奨は実は危険なのです。プルーンは植物性食品であり、確かに「非ヘム鉄」を持っています。ただ非ヘム鉄の含有量がほかの食材に比べて飛びぬけて高いというわけではありません。また、非ヘム鉄は吸収があまりよくありません。しかも、リンゴなどバラ科のアレルギーがある方や過敏性腸症候群を持つ人には向かない食材だということはあまり知られていません。
またプルーンに「短鎖炭水化物」という消化されにくい発酵した糖の仲間が含まれています。消化器官が未発達な小児や過敏性腸症候群の方は、短鎖炭水化物の多い食品を避けるように指導されます。
貧血のほかに、アトピー性皮膚炎の民間治療に「プルーンエキス」を使いますが、過剰摂取による下痢という小児の健康被害がいくつか報告されています。子供の貧血が気になる方も多いでしょうが、食品に寄って自力で改善しようとするのではなく、まずは医師に相談しましょう。
ただし、プルーンにはビタミンCやビタミンB、食物繊維など貧血予防に有効な栄養素が含まれているので、アレルギーがない方であれば、1日数粒摂取することはよいことです。
貧血の人にはハーブティーがおすすめ。
タンニンは鉄分の吸収を悪くする
貧血の人は食事中に、タンニンを多く含む紅茶やコーヒー、緑茶などは摂取しない方がよいでしょう。
タンニンは体内で鉄分と結びついて、その吸収を阻害します。そこで食事中は、常温の「白湯(さゆ)」やタンニン分が少ない「ハーブティー」を飲むようにしましょう。ハーブティーには健康効果も高く、自分のコンディションに合わせて種類豊富に選ぶことが出来るメリットがあります。
ハーブティーには様々なものがありますが、貧血予防によく使われるのは、ダンディライオン、タンポポ茶です。特に「タンポポ茶」には鉄吸収を助けるビタミンが豊富で、鉄分が多いという特徴があります。
他に「ルイボスティー」もよくすすめられます。
またハーブティーを貧血予防のために摂取する場合、薬を飲んでいる方は医師、薬剤師に相談してください。飲もうとしているハーブティーと同じ系統の栄養を持ったサプリメントを飲んでいる方も過剰摂取には要注意です。
お子さんに飲ませる場合はカモミール等の刺激の少ないものを、薄目に淹れて飲ませるようにしましょう。ハーブの中にはアレルギー性のものもあります。
そもそもハーブティーは、「天然のものだから安全」と思われていますが、もとは西洋の修道院などで使われてきた薬草です。他の薬の作用を弱めたりするものもありますので過剰摂取はしないでください。
★ハーブティー(ファシネーションティー)|農薬不使用!女性の魅力を最大限にアップ!
★アフリカ産の無農薬【プレミアムルイボスティー】
腸内細菌が「鉄欠乏性貧血」の予防につながる
また貧血の方は、ぬか漬けなどの乳酸菌や食物繊維を含んだ食品を摂取すると良いでしょう。
一見、腸で働く乳酸菌と、貧血とのつながりはないように見えます。
しかし、腸の炎症を抑え、鉄分の吸収を助ける働きを乳酸菌やビフィズス菌が持っていることが分かったのです。
小腸内に存在する4種の腸内細菌について、鉄の還元能力を調べた結果、大腸菌、酪酸菌、乳酸菌、ビフィズス菌のいずれにおいても、腸内のような酸素のない条件で3価の鉄を還元し2価の鉄とし、微生物の増殖が促進されることが判明しました。これは鉄の吸収を助けていることを示しています。
「「腸内細菌」が「鉄分」の吸収を助けていることを発見」
人間の腸で吸収できる形の鉄は二価の鉄です。3価の鉄は2価の鉄に形を変えないと便として体外に排出されてしまうのです。
乳酸菌やビフィズス菌などの腸内細菌は、私たちの腸内で吸収できる形の鉄(2価の鉄)を増やしてくれるのです。
貧血に良いとされる食べ物だとしても大量摂取は避けよう
貧血予防の第一は、医学的根拠に基づいた栄養摂取をすることです。
鉄やビタミンばかり摂取しても、貧血の予防にはつながりません。体全体の機能が整わないと、吸収や造血の作用は向上しません。炭水化物、たんぱく質、脂質を軸にミネラル、ビタミンをまんべんなく摂取してください。
参考:「マスメディアや宣伝広告に惑わされない食生活教育 ―― フードファディズムと健康に関連する食情報 ――」
この記事では、プルーンの健康被害について書きましたが、「海苔」など鉄を多く含むほかの食品でも、大量摂取による健康被害の可能性が考えられます。
特にサプリメントを使用する場合は、糖尿病等、鉄過剰症による疾患に繋がらないように注意することが必要です。
貧血予防は食事だけではなく、根本となる疾患を改善することが不可欠
そもそもなのですが、「貧血かな」と思ったら、まずは病院を受診して検査をする、このことを心がけてください。
特に、女性の「過多月経」など経血量が多い状態が続いて貧血になっている時は、「子宮筋腫」などの何らかの病気が関わっている場合があります。
このような場合は、貧血を予防する食品や鉄分を大量に摂っても出血の量が減らないことには症状の軽快は見られないことが多くなっています。
鉄分を摂っても、吸収できなければ意味がない。
腸に負担を掛けない食事を心がけて
さらに、貧血の人は、「冷たいもの」「熱すぎるもの」「辛いもの」「油脂分が多いもの」「カフェイン」など、胃腸に負担をかける食品の大量摂取は控え、食べ物をよく噛んで唾液を十分に出すことを心がけてください。温かく消化によい食事を通してビタミンおよび鉄分を摂るようにしましょう。
なぜ、辛いもの(カプサイシン)の大量摂取がよくないかというと、少量ならば唾液が出て、食欲が増進されるものの、大量摂取で胃腸の粘膜が傷つき、炎症を起こすからです。
貧血の人は、体が冷えるという理由で、トウガラシを使った貧血改善メニューがすすめられることがくあります。しかし、胃腸が弱くて吐き気が出るなど問題がある場合には、トウガラシは抜いて調理してください。
また、強壮に良いとされる食事は油脂や香辛料が使われてていることが多く、消化によくないこともあるので、注意が必要です。
鉄分や(鉄分の吸収を助けてくれる)ビタミンを食事でせっかく摂っても吸収できなければまったく無意味なことなのです。
食生活で上手に鉄分を取り込み、貧血の予防と改善に役立てよう
世界的に多くの女性が悩んでいる「鉄欠乏性貧血」。適切な食事法と生活習慣によって予防や改善が見込めますが、知識や情報が足りないまま、自己流で解決しようとすることには健康上のリスクを伴います。
科学的に根拠のある情報に基づき、医師や栄養士などにもきちんと相談をしながら、それぞれの体質や体調、ライフスタイルに合わせた最適な方法で、しっかりと改善に向けたアプローチをするようにしたいものですね。
オーガニック食品やコスメをお得に買えるオーガニックストアIN YOU Market
IN YOU Market貧血に悩む方におすすめ!IN YOU Marketのオーガニック商品
こちらの記事もおすすめです!
日本は世界一の貧血大国!?日本人の約6割が隠れ貧血。あなたはいくつ当てはまる?貧血チェック!貧血を改善するための食べ物と対策方法。その不調、もしかしたら「隠れ鉄不足」?|薬膳アドバイザーが教える貧血予防や生理不順にも向いている薬膳食材17選
女性だけでない!男性にもある隠れ貧血。繰り返す貧血に潜む原因は放っておくと危険!
参考
「民間療法としてのプルーンジュース過剰摂取の乳児にみられた低蛋白血症を伴うアトピー性皮膚炎の2症例」
「鉄欠乏性貧血における氷食症 – J-Stage」
「過敏性腸症候群に関するメタ解析論文のオーバービュー」
「( 2 )微量ミネラル ①鉄(Fe)」
「カプサイシンに関する情報」
「貧血の概念と考え方」
消化管スパイスセンサーとその機能辛味は胃腸でも味わう
第1章 食物アレルギーについて
この記事が気に入ったら
いいね!しよう