有機栽培、無農薬栽培でも野菜の品質は千差万別。実際に検証して見えた事実をお伝えします。自分の身体が本当に喜ぶ野菜は自分で主体的に選び取る時代へ!
皆さんは、普段食べる野菜はどのような判断基準で購入されていますか。
信頼できる宅配野菜を利用されている方や、店で有機JASマークがついているものを選ぶ方、
さまざまなケースがあると思います。
しかし、考えてみれば多くの場合は「野菜のよしあしの判断は人まかせ」になっていて、
自分で野菜を手にとって判断することは至難の技です。
以前の記事では、「いまだに有機栽培の野菜は安全で環境に優しいに違いないと思い込んでいる人が多いが、品質はさまざま」という内容をお伝えしましたが、まだまだ自分のこととして実感できないという方も多くいらっしゃると思います。
そこで、今回は一歩踏み込んで、
実際に継続的に硝酸塩値を測定し、
目で見て食べることで見えてきた事実をお伝えします。
「有機栽培の野菜はどれもおいしくて安全」と信じて疑わない人がまだまだ多い日本。
これまで、化成肥料か有機肥料に関係なく、
窒素成分を多く含む肥料の多用が作物の硝酸塩値に影響を与え、
環境問題を引き起こし、遠い将来にまで影響を与え続けるという内容をお伝えしてきました。
★日本は窒素で溢れかえっている!過剰な食糧輸入と肥料の投入で将来取り返しのつかない影響が出る?
★今なお有機栽培の野菜は安心・安全で環境にも優しいと思い込む人が大多数の日本。
私たちが本当に食べるべきものを見分ける力をつけるための2つのポイントとは?
(暫定URL https://macrobiotic-daisuki.jp/?p=155704&preview=true)
この件について、駆け足ではありますがおさらいをさせていただきます。
野菜の残留農薬について不安を感じている方は多いと思いますが、農薬を使うのは、主に病害虫から作物を守るためです。
そもそも病害虫に弱い作物が育ってしまうのは、
窒素成分を多く含む肥料を必要以上に畑に入れているからだと言われています。
それによって、野菜に含まれる硝酸塩の値が高くなります。
苦くておいしくない、栄養価が低い、
そして日持ちせずにすぐ腐敗しやすいという特徴があげられます。
また、環境に大きな悪影響を及ぼすことも知られています。
土壌に大量に入れられた窒素成分が雨で流れたり、地下に染み込んだりすることで
川や海、地下水を汚染し、大気中に放出された一酸化窒素は温室効果ガスの1つとしても知られ、
発生から消滅するまでに実に114年という長い年月がかかります。
このため、化学肥料を使った野菜はもちろんのこと、
有機栽培であっても発酵が完了していない未完熟の堆肥はよくないということが浸透しつつあり、
無施肥でいいという自然栽培の考え方もかなり知られるようになりました。
たとえ有機JASマークのついた野菜であっても実際生産者の姿勢はさまざまです。
本当に日々おいしい安全な野菜を栽培しようと奮闘されている方ももちろんたくさんいます。
その一方で、業者に「取得した方が売れるよ」と言われて取得したというケースもあります。
また、「有機JAS認証を受けた肥料や農薬」を売りたい農協から言われるがままに化成肥料をやめ、
グアノや焼成鶏糞などに置き換え、農薬はJAS認証で認められたものに切り替えて農場検査を受けて、
認証を取得したというケースもあり、実は「にわか有機農家」が存在するというのも確かなようです。
それでもやはり、今も根強く「有機栽培の野菜はおいしくて安全に決まっている」と
信じて疑わないという人は多いようです。
出典:「有機野菜はウソをつく」齋藤訓之著 SB新書
https://www.amazon.co.jp/dp/4797382147/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_izHeCbCAVBCFM
有機栽培・無農薬の野菜は本当においしくて安全なの?
実際に検証してみました。
これまでもIN YOUでは、慣行栽培の野菜の硝酸塩値、宅配野菜の硝酸塩値、家庭菜園の硝酸塩値など、さまざまな測定結果をお伝えしてきましたが、主に単発(1回限り)の測定結果でした。
たった1回の買い物の結果では、そこまで信憑性は得られませんよね。
そこで今回は、
「JASマーク付きの有機栽培野菜」
「直売所で販売されている無農薬・無化学肥料の野菜」
の2つに絞って、主に10月~現在までで私の購入した野菜の硝酸塩値を測定しました。
その結果をダイジェストでお伝えします。
今回の検証に使用したのは、INYOUでもすっかりおなじみになった
「有害物質チェックマシーン」です。
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とてもコンパクトであり、
食品にプローブをさしてボタンを押すだけですぐに硝酸塩値の測定結果が出ます。
今や我が家の生活には欠かせない機器です。
店で食品を手にとって選び、
家で硝酸塩値を測定して目で確認し、
実際に食べてみて、
「食品を選ぶ目」を鍛えるのに大いに役立ちます。
野菜を買うたび、帰宅してすぐに硝酸塩値を測定しました。
大根やにんじんなど長いものに関しては、
上部・中部・先端の3箇所を測定しました。
さて、どのようなことがわかったのでしょうか?
めったに注意値・危険値は出ないが数値はバラバラ。
たとえば今が旬の大根です。いくつか測定結果をご紹介します。
●有機JASの大根
●直売所の無農薬・無化学肥料大根1
●直売所の無農薬・無化学肥料大根2
どれも安全圏内の数値ですが、当然どれ1つ同じ値は出ません。
土壌も千差万別なのだろうと思います。
また、測定する部位によっても数値は少し異なります。
このことは、スーパーの慣行栽培の野菜にも言えることです。
巷では「日本の野菜は農薬・化学肥料だらけ」と言われているようですが、
少なくとも私の住む地方では、
慣行栽培の野菜であっても驚くような値がバンバン出るということはありませんでした。
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有機・無農薬であっても、
ごくまれに注意値や危険値が出ることがある。
有機栽培・無農薬であっても、葉物野菜、ブロッコリー、カリフラワーなどで、
安全圏内ではあっても数値が全体的にやや高めの傾向があります。
●直売所の無農薬ブロッコリー
ただ、高めの値が出たとしても、上部を測っていくと値は下がります。
全体が同様の数値を示すわけではありません。
●上記のブロッコリーの茎中程
●上記のブロッコリーの蕾に近い部分
主に食べる部分の数値が高いままというケースはありませんでした。
全体的に葉物野菜が高めといっても、このような事例ももちろんあります。
しかもこの野菜には牛糞・鶏糞(動物性の有機肥料)が使われているとの記載がありました。
本当に千差万別としかいいようがなく、測ってみないとわからないものですね。
逆に、トマトやナスなどの果菜類、あるいは果物はたいがい100以下と全体的に低めであり、
それは慣行栽培の野菜であっても同様の数値を示します。
光合成によって、硝酸塩が分解されることが原因なのではないかと考えられます。
慣行栽培も含め、果物、そしてトマトやナスといった果菜類が
注意値・危険値を示したことは一度もありませんでした。
しかし残念なことに、数ヶ月の測定の結果、
直売所の無農薬キャベツで注意値・危険値が1回ずつ出ました。
(朝採りのものを買って帰宅後すぐに測定しましたので、新鮮でないということではありません。)
●直売所のキャベツ1
●直売所のキャベツ2
このうち2はいつも応援している農家さんの野菜だったので驚きました。
それ以前のその農家さんのキャベツの測定値は安全圏だったにもかかわらず、
「こういうこともあるんだなぁ…」と感じました。
以前の記事でお伝えした通り、硝酸塩によって血中酸素濃度が減少するという件については
調理後の衛生管理をすれば問題のないこと、また硝酸塩の発ガン性については
現在まではっきりした因果関係が示されていません。
食べたからといって早急にどうにかなるという不安はないようですが、
硝酸塩値の高い野菜はおいしくない、栄養価が落ちる、日持ちしないというデメリットは確実にあります。
底だけでなくさまざまな部位を測定すると低い部分もあるにはあったのですが、
実際にこれらのキャベツはどの部分についても、生でも茹でても炒めても苦くておいしくないものであり、
家族から敬遠されていました。
硝酸塩値は土壌からのメッセージだと私は受け取っています。
「肥料を変えたのかな?」
「新しい畑で栽培を始めて、そこに化成肥料か動物性肥料でも残留してたのかな?」
いろいろと要因が考えられそうです。
注意値・危険値は出ませんでしたが、にんじんでも面白い結果が出ました。
●スーパーAの有機JASにんじん
●スーパーBの有機JASにんじん
●直売所の無農薬・無化学肥料にんじん
もっとも数値の低いスーパーAのにんじんは、生でかじってみて非常に味が濃くて甘かったです。
レーズンと合わせてシュガーフリーのにんじんケーキにしましたが、そのくらい甘いんです!
その後ファンになり、何度か買いに行きました。
値が最も高い直売所のもの(それでも安全圏内ですが)は、びっくりするくらい苦く、
しかしよく噛んでみると甘みのある、クセのやたら強いにんじんでした。
このにんじんについては、
上部と先端部では測定値にけっこうな開きがありました。
先端はこんなに低いんです。
生育途中で、肥料の効き方が違ったのでしょうか。
素人判断ではありますが、土壌に何も変化がなければ、
ここまで変わってくることはないようにも思えます。
何度か購入した結果、無農薬・無化学肥料と書いてあってもこの生産者のにんじんは敬遠するようになりました。
そして、蛇足ですが、これは私が無農薬で肥料もなしで育てたラディッシュです。
本当は小粒タイプのラディッシュなのですが、
好奇心が災いし、
「このまま植えっぱなしにしていたら、どこまで大きく丸く育つんだろう?」
と思って、やたら大きくなるまで放っておいたものです。
もういいかなと思ってある日ついに収穫し、数値を測ってみたらこのザマです。
通常の大きさのものは低い値を示していましたので、育ちすぎが原因だろうと思われます。
半分に切ってみると大きな「す」が入っており、食べられたものではありませんでした。
大根やかぶなどを選ぶ際、「大きい方が得に決まっている」と思われる方が
いらっしゃるかもしれませんが、大きな野菜だからといって購入してしまうと、
ハズレくじをひいてしまうような結果になりかねませんので、ご注意ください。
硝酸塩値や味などを記録していくと、何が見える?
私は、野菜を買ってくるたびに硝酸塩値を測定して、日にちと数値を記録するようにしています。
あまりに味がひどかったものや、逆においしかったものについても簡単にメモしています。
そうすると、時間がたつにつれて、
「どこで、どんな(誰の)野菜を買えばいいか」がはっきりしてきます。
たとえば葉物野菜については、
緑の濃いものは硝酸塩値が高い場合が多く、
「緑が薄いものを選ぶとよい」と言われます。
しかし、単に生命力のない薄さの野菜だって存在するわけです。
そこで、実際に硝酸塩値を測りながら、野菜の色や形状、味など確認し続けた結果、
「単に薄い」というよりも、「爽やかでいきいきとした緑」という方が表現として適切ではないか、
というように、自分なりの判断基準も持てるようになりました。
また、有機JASの野菜にしても、直売所の野菜にしても、生産者(団体)が誰なのかが明らかですので、
「この生産者(団体)だったら大丈夫!おいしい。」という信頼感が生まれます。
直売所は地元のたくさんの農家が野菜を持ち込むので品質はピンからキリまでありますが、
無農薬のものに限って測定値を測り、味を確かめていけば、
どんなに多くの生産者が野菜を出していても、どれを買うべきかは相当絞り込まれていきます。
スーパーマーケットなどは、扱う野菜の品質によって店の姿勢が非常によくわかります。
複数のスーパーマーケットで検証してみましたが、
全体としてあまり品質にこだわらず、ただ有機野菜コーナーを申し訳程度に設けて
ちょこっと置いているだけという店もあれば、
農家はしっかり選定していますという姿勢を前面に打ち出した店もあります。
やはり、店の姿勢は野菜のおいしさや測定値にも表れてくるものだなと感じました。
有機JASであって、数値が安全圏内であっても、
食べても特に味に何も感じない、可も不可もない野菜だってたくさんあるんです。
野菜選びは他人任せにせず、日々の積み重ねで「自分で選び取る力」をつけていこう!
これまでお伝えしてきたとおり、
有機栽培・無農薬栽培に絞っても野菜の品質はさまざまなんです。
「有機JASのシールが貼ってあるから」
「無農薬・無化学肥料と書いてあるから」
「特別栽培だから」
そういう理由だけで野菜を選ぶのはもうやめにしませんか?
実はそれは他力本願で、安易な選択です。
表示だけを頼りにしないで、自分から進んで「本当に自分の身体によい、おいしい野菜」を選ぼうという姿勢が大切です。
表示はあくまで表示でしかありません。
その野菜の品質は実際にどうなのか、生産者の栽培技術は確かなのか、そこまでは示してくれません。
あまり疑うことはしたくないですが、中にはウソや品質のよくないものも隠れているかもしれません。
野菜選びのポイントを前回の記事で書かせていただきましたが、
いくら頭でわかったつもりでも、実際にそんなにすぐに目利きができるかといえば、
そんな簡単なものではありません。
私も、無農薬・有機栽培のはずなのに、
「しまった!買わなきゃよかった!」という失敗を何度となく繰り返しています。
見た目や持ってみた感じはどうか。硝酸塩値はどうか。
おいしいと感じられるかどうか。日持ち具合はどうか。
こうして多くの経験を積み重ねることで、長い時間をかけて見る目が培われるものだろうと思います。
もしかしたらゴールなんてなく、一生涯かかるものかもしれません。
野菜に限らず、星の数ほどモノが溢れている現代、
健康で本当に幸せに暮らすためには、
「自分の目で本物を見抜く力」を鍛えていくことが重要なんです。
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