【有機農家直筆】“有機農家”は“勇気農家”!消費者が知らない、有機JAS認証農家の実態。
【有機農家直筆】
“有機農家”は“勇気農家”!
消費者が知らない、有機JAS認証農家の実態。
「有機JAS認証野菜は、国のオーガニック基準に則って作られるので信頼できる」という考え方があります。
一方で、「いや、有機JAS認証野菜の認められた肥料や農薬を使えるから意味がない」
という意見もあります。
このように有機JAS認証制度には賛否両論があり、消費者も一体どちらが正しいのかの
判断に迷うところでしょう。
世間でそのような議論がされている隣で、JAS認証を受ける農家は淡々と日々の業務に取り組んでいます。
ただし、この記事は有機JAS認証の安全性を解説するものでなく、
有機JAS認証を取得する(した)農家にフォーカスを当てるものです。
一般の消費者は決して知ることができない有機JAS認証農家の日常を、
認証農家である私が解説します。
私流に一言で言えば、有機JAS認証農家は、普通の農家がしない苦労にお金を支払う変人です。
この記事を読めば有機農産物の生産現場の裏側を、誰よりも深く知ることができるでしょう。
正規の有機(オーガニック)野菜は、
有機JASマークで判断できる
「有機(オーガニック)野菜とは、○年以上□□した・・・・」
もあなたが消費者であるならば、このような、小難しいことを覚える必要はありません。
上画像のような有機JASマークがついている野菜を有機(オーガニック)野菜と覚えておけば十分です。
有機JASマークを貼るには、有機JAS認証を取得する必要がある
スーパーに行って有機野菜コーナーにJASマークがない野菜が置いてあれば、その野菜は国が認めた正規の有機野菜とはいえません。
なぜなら、「有機○○など表示をして販売できるのは、有機JAS認証を取得した事業者」
と法律で決まっているからです。
この法律を通称「JAS法」といい、違反者には懲役や罰金などの罰則が課せられます。
【豆知識】有機JAS認証を受けないと有機表示できなくなった理由
有機の表示に関してこのような厳しいルールが設けられたのは、かつて、一部の農家が消費者にある誤解を与えていたからです。
たとえば極端な話、ただ有機肥料を使っただけで有機トマトなどと
表示したりする農家が散在していたのです。
つまり、自分の農産物に付加価値を付けるためだけに
「有機」についてのいい加減な表示をしていたんですね。
このような事態を重く見た国は、平成11年のJAS法改正で認証を受けた者のみが、
JASマークの表示と「有機」の名称表示をすることとしました。
このように、有機JAS認証制度は、消費者が正しい有機製品を選ぶために作られたのです。
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¥ 5,596 (税抜)有機JAS認証を取得するのは大変!
多くの農家が認証取得を諦める現実
正直、有機JAS認証を取得するのはかなり大変です。
ですから、有機農業が取り組まれている面積の割合は、
日本全体の耕地面積のわずか0.5%です
参考:有機農業をめぐる事情
多くの農家が、有機の基準にしたがって自分の作った野菜を有機野菜として売りたいのですが、
認証の取得が壁になります。
認証を取得する上で必要な大変な苦労と有機JAS認証を天秤にかけた上で、
有機表示をやめることを選択するのです。
以下、どのくらい厳しいなかを解説しますね。
なお、私自身は、有機JAS申請で一度不合格になりました。
興味のある方は、こちらの記事もご覧ください。
>>有機JAS認証取得は難しい!【不合格した】僕が語る失敗しない方法
数年分の生産記録がなければ、申請すらできない
有機JAS認証を受けたいと思っても、すぐに申請できる訳ではありません。まずは前提として認証を受けようとしているほ場(田畑)で、
今までどんな作業をしてきたかの記録を付ける必要があります。
農林水産省のホームページに具体的な雛形が掲載されていますので、
ご興味のある方はぜひ一度ご覧になってみてください。
>>有機農産物の生産行程管理記録等の様式例
具体的には、毎日、以下のような記録を付けることが求められています。
・いつ、どのほ場で、どんな作業内容をしたか
・使用した種や資材は何を使い、どのくらいの量だったか?
・どのような施設や機械を使って生産したか?
もう一度言いますね。上記の内容を数年間、毎日、記録する必要があります。・使用した種や資材は何を使い、どのくらいの量だったか?
・どのような施設や機械を使って生産したか?
この記録がないと、申請すら受け付けてもらえません。
申請には膨大な書類が必要となる
上記の生産記録以外にも、ほ場の図面や、使用する機械や肥料や種の様式、生産計画書、資材証明、収穫後の工程など、提出する書類は多岐に渡り、
申請する生産者を悩ませます。
具体的にどのような申請書類を提出するかは、以下のページをご参考下さい。
あまりの多さにきっと驚くはずです。
>>有機農産物の生産行程管理者の申請書
検査官による、実地でのほ場検査もある
上記の書類審査に合格すると、有機JASの検査官が自分のほ場にやってきて、ほ場のチェックや書類の保管状況などを検査します。
書類からは読み取れない、実際のほ場の管理状況や使用する資材、機械等を
検査官の目でチェックするのです。
以下の写真は、私が検査官から検査を受けている写真です。
白いシャツを着た私が、検査官(青いシャツ)に自家製の「ぼかし肥料」について
説明しているところです。
検査官に聞かれたことには全て、正直に答える必要があります。
いかがですか?通常の農家であれば(有機認証の必要とする有機農家でなければ)、
これらのあれこれを全くする必要はありません。
有機JASマークを貼って有機●●と表示するだけで、生産者たちは
裏でこんな苦労を強いられているのです。
有機JAS認証を取得した後も、農家の試練は続く
ここまで書いてきた、全ての審査をクリアして無事に有機JAS認証を取得できたとします。
しかし、本当の試練はここから始まります。
・栽培記録は認証を受ける前と同様に毎日付ける必要がある。
・しかも、記録するべき内容に有機JASマークの管理や出荷に関するものが加わり、
さらに作業が複雑になる
・年に1回必ず(継続的に)、第三者である検査員からチェックを受ける必要がある
認証を継続をするための農家の苦労は続きます。
全てが農家の自腹!お金を払ってまで苦労を買う生産者たち
驚く方が多いと思いますが、有機JAS認証を受けるためにはお金がかかります。新規で認証を受けるにもお金が必要ですし、認証を継続するにもお金が必要です。
これらは全て、認証を受ける農家の負担になります。要するに自腹ですね。
さらに、検査官がほ場にくる交通費も認証を受けた農家が負担します。
そうなんです。有機JAS認証を受ける農家は、ここまで書いてきた苦労に対し、
¥自らお金を払っているのです。
まさに、変人としか言いようがありません。
そして、ここまでして、有機JAS認証を取得している理由は、
・取引先が有機JAS認証取得を求めている(消極的取得理由)
・自身の農産物の差別化を図りたい(積極的取得理由)
など、生産者によって様々です。
しかし同時に、どの生産者もJAS法という法律に基づき、
国の定めたオーガニック基準を満たすために必死です。
有機農家は法律違反で処罰されるリスクも背負っている
JAS法第七十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、
一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
つまり、有機JAS認証を取得してJAS規格に違反する栽培を行った場合、
法に基づいて処罰されるリスクを背負っているのです。
この辺りも、一般の農家とは全く性質が異なりますよね。
もし、一般の通常の農家のように有機JAS認証を取得しなければ、
ここまで書いてきた苦労もお金も必要ないし、
処罰を恐れることもありません。
そして私が、この記事で伝えたかったのは、
「こんなに苦労が多いので有機JAS認証の野菜を選んで下さい」ではありません。
純粋に、消費者の見えないところで、認証を受けた農家は様々な苦労がある事実を
皆さんに知って欲しかったのです。
もっと言えば、有機JASについて批判の矛先を農家に向ける方がいらっしゃいますが、
そんな方こそ、有機JAS認証を受けている農家の本当の姿を知って欲しいと思っています。
お金を出して購入した「苦労」が「喜び」に変わる瞬間がある
ここまで書いてきたとおり、有機農業は一般の農業とは明らかに異なる農業で、農家は生産や出荷などの日々の管理ついて法律の縛られます。
有機野菜は価格が高いためか、一般の野菜と比較して売りにくく、
売り上げが落ち込む日が多いのも事実です。
そんな時、
・一体何のために有機JAS認証を取得したのか?と自問自答を繰り返す農家さんもいます。
・認証をせっかく取得した農家さんが、苦労に耐えきれず認証を継続しないこともあります。
それでも、有機農家には苦労が報われる瞬間が必ずあります。
それは、お客様が、自分が育てた有機野菜を「美味しかった!」と言ってくれた時です。
この一言は、私達、有機JAS認証農家の苦労が喜びに変わる魔法の言葉です。
ですから、もし、あなたが有機JAS認証の作物を購入して好印象を持たれたら、
メールでも電話でも構いませんので感想を伝えてあげて下さい。
たった、その一言だけで、私達認証農家は厳しいJASにも立ち向かうことができるのですから。
有機JAS認証農家は、JASマークを付けて自分の農産物を有機○○と販売するために、
他の農家が通らない道を選んだ勇気のある農家です。
そう、有機農業は勇気農業であることを是非、知っておいて下さいね。
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