医療用漢方薬10年で市場1.5倍?!今後ますます東洋医学が脚光を浴びる可能性も。ゆっくり効く?とっつきにくい?漢方の効果と副作用に関して解説します。
毎日新聞に「医療用漢方製剤の市場がこの10年で1.5倍に拡大」という記事が掲載され、
NHKクローズアップ現代でも特集されました。
10年で1.5倍の市場拡大、かなりのスピードです。
日本では1967年から漢方エキス製剤が保険診療適用となり、近年、医師の漢方薬の取り扱いが増加。
2011年の調査では(日本漢方生薬製剤協会実施)89%の医師が「漢方製剤を処方した」と回答。
「西洋薬では効果がなかった症例で漢方が有効と認められた(56.6%)」
「患者からの要望(42.8%)」「学会でエビデンスが報告された(34.1%)」と理由を挙げています。
ここ数年で漢方はかなりメジャーになり、特に医療従事者や薬剤師じゃなくても漢方の知識がある方が多いと実感しています。
しかし「漢方って副作用ないから安全」「ゆっくり効くからずっと飲み続けなきゃ」という話を聞くこともまだまだ多いです。
漢方を初めて飲んだのは10代。
10代の頃の私。
婦人科で漢方を処方されたのが、物心ついてからの初漢方体験でした。
何の疑いもなく、むしろ期待もなく服用していましたね。
そして効果が意外に早くあらわれ、怖くなって勝手に服用をやめました。無知の極みです…。
私自身が漢方について誤識していた自戒の念もこめて、漢方の3大思い込みをピックアップしました。
その漢方のイメージ、間違いです!
その1。漢方は副作用がないですよね?
→×
漢方も副作用があらわれることがあります。
軽度の副作用
皮膚のかゆみや発疹、胃もたれ、軟便などがあらわれたりします。
またその時の体調や、その人に合う合わないなどがあります。
重篤な副作用
肝機能障害や間質性肺炎、偽性アルドステロン症など、まれに重篤化することもあるので注意が必要。
例えば「小柴胡湯(しょうさいことう)」
慢性肝炎や風邪に処方されることが多い漢方です。
C型肝炎の治療薬として有効とされていたインターフェロンと、この小柴胡湯の同時処方により死亡例が発生。
回復例も報告されましたが、
1994年、政府によりインターフェロンと小柴胡湯の併用は禁止されました。
(この事件は医薬品登録販売者試験でも頻出問題で、医薬品を取り扱う上での基本知識です)
漢方だからといって100%安全なわけではないのです。
うちの場合は・・・
私の夫はなぜか五苓散を飲むと喉がかゆくなることがあります。
本人の何かに合わなくて成分の一部にアレルギー反応を起こしているのでしょう。
ちなみにお酒好きな私は二日酔いのときに助かる漢方です。
合う、合わないや体調によって違いがあるのです。
効果もあれば副作用もあるのがくすり
「漢方はやさしくて副作用がないから発疹が出たけど大丈夫」というのは間違い。
ただ飲んで待つだけではなく、違和感があれば医師の診察が必要です。
その2。漢方はゆっくり効きますよね?
→×
長期的な体質改善補佐として処方することもあれば、早急な効果を期待して処方されることもあります。
よって効果がすみやかにあらわれることもあります。
風邪の症状に処方される「葛根湯(かっこんとう)」は、つらい症状に早く効くことが期待されていますよね。
西洋医学の到来する前の日本。
漢方が治療の主として使用されていた時代は、応急処置的な早急な治癒を目的としても漢方処方が使われていました。
体質や見立てが合えば早く効くことがあるのです。
「竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)」
という漢方は、バルトリン腺炎に処方されることがあります。
バルトリン腺炎は、女性の膣の入り口の後方にある組織である「バルトリン腺」に細菌感染などが起こり炎症が生じ、
しこりのようなできものができて膿がたまったような状態になること。
私も疲れて免疫が落ちた時の婦人科系トラブルが起きて悩まされており、職場でもバルトリン腺炎の同僚がいました。
デリケートゾーンのため、あまり人には言わないけど辛くて悩んでて…という人が実は多いトラブルです。
私はこのトラブル時に「竜胆瀉肝湯」を服用します。
今では、デリケートゾーンがぴりぴりする感覚があったり、疲れて免疫が落ちていたりして「トラブル来そう!」と感じたら
早めに「竜胆瀉肝湯」を飲むようにしています。トラブルが起きにくくなりそのスピード感を実感。体質に合っているのでしょう。
「竜胆瀉肝湯」の効果の一つとして、下焦(※1)の湿熱(※2)へのアプローチが考えられています。
※1 東洋医学で、人の胃の下口~陰部までの部分および機能のこと
※2 体内の余分な水やこもった熱が気や血の流れを滞らせたりして不調を起こしている状態のこと
しかし湿熱を瀉す目的で作られた方剤である「竜胆瀉肝湯」は、長期的服用が適正かどうかは見極める必要があるでしょう。
各社のエキス剤の効能記載では「比較的体力があり~」という文章から始まることが多いです。
それだけの効果があるため、体力状態を含めて合っているかどうかを見極めることが必要なのです。
その3。漢方ってとっつきにくくない?
→「検査結果異常なし」でもケアしてくれる漢方は身近なものでもあります!
私自身も・・・
私自身も昔は漢方ってさっぱり理解せず、ただ「苦くて飲みにくくてヤだな~」としか思ってませんでした…。
しかし合うものを見つけることができ、漢方は面白くて奥が深く、人にやさしいのだと気づいたのです。
そのきっかけは、胃カメラ。
もともと油や冷たいものを食べ過ぎると猛烈な胃痛に襲われていた私。
梅雨時期や夏は慢性的な胃痛に悩まされていました。
泣く思いで胃カメラ検査を受けて「さあどこだ!私の悪いとこはどこだ!」の勢いで検査結果を聞きに行ったところ
「どこも異常なし」
・・・え?ほんとに? まあ、異常がないならいいか。
でも胃が痛い!胃が重い!!
そこで薬剤師に「合うかも」と処方されたのが、漢方でした。
東洋医学的に、私は脾(胃腸)が弱く水はけが悪く脾が動きにくい体質。
健胃作用のある生薬と消化を助ける牛胆汁エキスが配合されたその漢方を飲むと、スーッと胃が落ち着き、
自分に合う漢方っていうものは本当にあるんだ!
「検査結果 異常なし」と言われても症状が続いて苦しんでいる人を、漢方は見捨てないんだ!
と実感した出来事でした。
昔の人は胃カメラなんて飲みませんでしたし、CTもMRIも血液検査も無かったわけです。
胃痛は胃痛であり、潰瘍の有無に関わらず、痛みを緩和や治癒することが大切だった。
そして成分検査などができなかった昔こそ、実例の積み重ね、エビデンスをもって効果効能のある生薬を処方吟味してきたといえます。
現在の日本はまだまだ西洋医学が医療の中心であり、東洋医学と漢方は「とっつきにくい」「あやしい」というイメージを持っている人も少なくないでしょう。
しかしすでに東洋医学専門クリニックは認知されてきており、人気なところだと、予約が1ヶ月以上取れないところもあり、興味を持つ人が増えているのが事実です。
漢方専門医がいるクリニックが増えたり、医療機関での漢方取り扱いが増える中で、処方される機会は、今後増えることが考えられます。
医療機関、医師、患者、それぞれの治療例や実感。
エビデンスの報告や実例の蓄積、そして研究がこれから一層進めば、とっつきにくい漢方のイメージはまた変わるのでは?と期待しています。
生活の中で感じる細かい不調やトラブルも取りこぼさない漢方。
実はとても身近でとっつきやすいものだと思いませんか?
西洋医学だけに頼らず、東洋医学も含めた双方からのアプローチが、今後の理想的な体のケアとなっていくことは間違いありません。
正しい知識を持って漢方を心強いパートナーに
皮膚科、産婦人科、内科やメンタルの不調などでも漢方処方の機会が増えています。
普段の病院ではなく、東洋医学専門クリニックに足を運ぶのも学びが深まりますよ。
残念ながら、漢方に詳しい患者さんのほうが医療従事者より漢方知識がある、なんてことも少なくありません。
また身近な人が、誤った知識や先入観で漢方を遠ざけたり服用していたり、そんなこともあるかと思います。
リスクをおさえて服用すればとても心強いパートナーになってくれるのが漢方。
ぜひ今こそ基本的知識を持って、その不調にアプローチしてみてはどうでしょうか?
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