「よく、そんなことが言えますね」世界のリーダー達にひとり立ち向かった環境活動家の少女、グレタ・トゥーンベリ
こんにちは。昨年(2019年)9月23日にニューヨークで行われた国連気候行動サミットで、
世界のリーダー達の前で、時に怒りで身体を震わせながら、
熱意あるスピーチをされたスウェーデンの環境活動家、
グレタ・トゥーンベリさん(当時16歳)を覚えていらっしゃいますでしょうか。
このスピーチ後、世界からの反響はとても大きく、
私の住むカナダでも、そしてお隣のアメリカでも、かなりの話題となっています。
一体彼女はどんな人物なのか、何が彼女をここまで突き動かすのか…
今回は10代の活動家、グレタ・トゥーンベリさんについてご紹介します。
グレタさんってどんな人?|
彼女のプロフィールをご紹介
引用元:グレタ・トゥーンベリ本人インスタグラムより @gretathunberg
グレタ・トゥーンベリさんは2003年1月生まれ。
スウェーデン、ストックホルムで、俳優の父親、オペラ歌手の母親のもと、
2人姉妹の長女として育ちました。
また「温室効果」という概念を生み出し、ノーベル化学賞を受賞した
スウェーデンの科学者スヴァンテ・アレニウス(1859‐1927)は父方の遠縁に当たるといいます。
何もしない大人達への疑問|グレタさんの活動のきっかけ
初めて彼女が地球の気候変動について学んだのは、8歳のころ。その時は「なぜこのようなことが起きているにも関わらず、
人々は何もアクションを起こさないのか」と理解できなかったそうです。
そして2018年、15歳の時に気候変動に関するエッセイのコンテストで賞を獲り、
地元の新聞に掲載されました。
その3か月後、彼女は環境保護の為に活動することを決意。
学校を休んで、2週間、毎日ストックホルムの国会議事堂前に一人で座り込み、
単独での抗議デモをで行いました(その後も引き続き、金曜日のみの抗議活動を行いました)。
活動を始めた当初、彼女の両親は娘による抗議デモには全く熱心でなく、
「やるのであれば、親の手を借りずに、自分でやらなくてはいけないよ」
と娘に語ったほどだったといいます。
ところが同時に、プラカードを手に座り込みを行う彼女の姿は、
ソーシャルメディアを通じて人々に広く知られていくことになりました。
そして2019年9月、ニューヨークで開催された「国連・気候行動サミット」に出席するため、
「ゼロ・エミッション(環境を汚染したり、気候を混乱させる廃棄物を出さない)ボート」を使った、
約2週間の旅を敢行しました。
有名なあのスピーチ|「よくそんなことが言えますね!」と大人を一喝
引用元:グレタ・トゥーンベリ本人インスタグラムより @gretathunberg
そしてゼロ・エミッションボートを使って出席した、
ニューヨークでの「国連・気候行動サミット」でのスピーチが
彼女を世界的に有名にしたことは皆さんもきっとご存知でしょう。
(一部引用)
”「あなた方は、私達若者に希望を見出そうと集まっています。
よく、そんなことが言えますね。
あなた方は、その空虚なことばで私の子ども時代の夢を奪いました。」
「あなた方の話すことは、お金のことや、永遠に続く経済成長というおとぎ話ばかり。
よく、そんなことが言えますね」
「あなた方は私達を裏切っています。
しかし、若者達はあなた方の裏切りに気付き始めています。
未来の世代の目は、あなた方に向けられています。
もしあなた方が私達を裏切ることを選ぶなら、私は言います。
『あなた達を絶対許さない』と」”
引用:NHK政治マガジン グレタさん演説全文「裏切るなら許さない」
このようにグレタさんは、
危機が迫っているにも関わらず、積極的な行動をしない大人達に向かって
抑えきれないほどの大きな怒りをあらわにしました。
スピーチでは、迫りくる地球の危機についても詳しく説明
グレタさんは、スピーチの中で本当に危機が迫っていることを具体的に説明し、
大人達にのんびりしている暇はないことを訴えました。
国際的な合意として、今後10年間で温室効果ガスの排出量を半減させ、
世界の気温上昇を1.5度以内に抑えられるとされているものの、
実現する可能性は50%とも言われます。
しかもその数字には悪い変化がさらに悪い変化を呼ぶ負の連鎖や、
有毒性の高い大気汚染に潜む温暖化進行の可能性には触れず、全く無視しているのです。
(実際には地球環境がもっと悪化し、改善がより難しくなる可能性が考えられまています)
そして、このまま行くとあと8年半経たないうちに
許容できる二酸化炭素の放出量は超過してしまう。
今や、地球環境はこのような深刻な事態に晒されているのです。
それにも関わらず、のんびりと構えているかのような世界各国のリーダー達に、
単身で立ち向かったグレタさん。
それもそのはず。大人達の怠惰が、
グレタさんをはじめ若者の未来を今まさに奪いつつあるのですから。
世界中の若者達がグレタさんを支持
ところで皆さんは、♯Fridays for Future(フライデー・フォー・フューチャー/未来のための金曜日)
という活動をご存知ですか?
これはグレタさんが始めた環境保護のための(抗議)活動で、
彼女が2018年8月に学校を休み、国会議事堂前で抗議活動をしたのがそもそもの始まり。
2週間の座り込みによる抗議活動の後、金曜日だけ学校を休み、抗議活動を続けたことに由来しています。
そこから、♯Fridays for Future(フライデー・フォー・フューチャー/未来のための金曜日)は、
金曜日に学校を休み、環境保護のための抗議活動を行うことを趣旨とするようになりました。
2019年3月15日には、1300件以上のストライキが100か国以上で行われ、
多くのティーンエージャーが抗議活動に参加。
今もなお多くのティーンエージャー達が行動を続けています。
グレタさんが企画し、
全世界の若者に広がった活動“Friday for Future” 。
その実行のために必要なステップとは
読者の皆さんの中には、もしかすると「子ども達が学校を休むなんて…」と
思われた方もいらっしゃったかもしれません。
「子どもは学校で勉強するもの」という考え方は確かに一理あるかもしれません。
そのため、一部の国では、以下のようなステップが推薦されており(UK Student Climate Networkの記事より)、
ティーンエージャーが学生としての本分と抗議活動を両立できるような枠組みが作られました。
ステップ1:グレタさん、また、この抗議活動自体についてを学ぶ
まずはグレタさんがどのような考えを持っているのか、この抗議活動にどう意義があるのかを学ぶ必要があるとしています。
彼女はサミットや世界の会議など様々な場所でスピーチしており、そこから多くを学ぶことができます。
ステップ2:親の許可を取る
やはり学校を休んでの抗議活動には賛否両論があります。そこで、抗議活動をする前に保護者に許可を取ることをすすめています。
(法律的に学校を休んでストライキに参加する権利は認められていますが、
やはり家族の理解を得た方が良い、としています)
ステップ3:アクションを起こす
学校を休んだら、その日の行動が有意義かつインパクトのあるようなストライキになるようにアクションを起こします。
グレタさんが提案、
大切な地球を守るための4つの実践策
グレタさんは、多くのスピーチの中で地球の危機を訴えると同時に、
地球のために私達が今何ができるかについても提案しています。
その代表的な内容をご紹介しましょう。
実践策1.飛行機を使わない
飛行機は他の交通機関に比べて最も多くの排気ガスを出す乗り物です。気温を上昇させるきっかけとなる可能性が大いにあり、
地球環境に非常な悪影響を与えるとされています。
実践策2.肉の消費量を減らす、もしくはヴィーガンに転向する
肉を飼育するのは、野菜を育てるよりも環境に負荷がかかる、という研究結果が出ています。2017年の研究結果では、アメリカの温室効果ガス排出量の9%が食肉用動物の飼育に由来し、
農畜産業から排出される成分の中には、地球温暖化を加速させるメタンが、
世界全体の全メタン排出量の1/3も含まれていることが分かりました。
ただし、肉食をやめることはなかなか難しいもの。
個人の自由であり、好みや文化の違いもあります。
専門家達によれば、完全に肉食をやめるだけでなく、
肉料理を減らし、野菜や穀物中心の食生活に変えていくだけでも、
効果が期待できると考えています。
実践策3.抗議デモなどの活動に参加する
先ほどご紹介した”Fridays for Future”のような活動に積極的に参加することをグレタさんはすすめています。
これは既に結果が出始めており、気候変動についてのトピックスを世界各地の
日々のニュースに組み入れることに成功しました。
加えて、世界各国のリーダー達に「地球環境のため、やるべきことをやるように」と
プレッシャーをかけることにも繋がっています。
実践策4.選挙で投票する
自分達の投票する権利を活用し、地球環境問題に対して、最優先かつ継続的に取り組んでくれる候補者に投票することをすすめています。
これも既に世界各地で効果が出ているようです。
ドイツでは、2019年の選挙で、環境主義を掲げる緑の党が全体の20.5%の票を獲得。
そのうちの33%が30歳以下の若い層による票でした。
これはグレタさんの活動の影響と言われ、環境問題に危機感を抱く若者達が、
「投票」という形を通して、自分達の意思を示し始めた証だといえるでしょう。
子どもは黙っていろ!|
グレタさんらの活動を批判する大人達
残念なことに、グレタさんをはじめとする若者達による、
このような活動を良く思わない人達がいることも事実で、
世界の首脳の中にはそれを強い口調で批判するもいます。
アメリカのトランプ大統領は、「すごくお気楽な女の子だ。明るくて素晴らしい未来を夢見ている」
ロシアのプーチン大統領は、「優しい。でも知識がないティーンエージャー」
アメリカ合衆国財務省代表も「出ていけ、投資家に意見する前に経済を勉強しろ」
と、驚くほど強烈な批判の言葉を投げかけました。
これには「『世界的いじめ』なのでは?」との意見も出てきているほどです。
一方で、
「彼女(グレタさん)は幼く見えるが、大人の見方が既に出来、
今の世の中が問題だらけなことをよく知っている。
大人達とは違い、この悲惨な状況に対してよくないと、はっきり非難した」
という、あるメデイアによる分析もあります。
また、ある心理学者は、
「年のいった大人達は、地球環境に対する態度を変える気はない、
その代わりに、グレタさんを『彼女は病気だ、若すぎる』などと言って攻撃している」
と指摘。
さらに、「これらの大人達からの容赦のない攻撃は悪いことだけではなく、
“グレタさんやその他の若者の活動が、彼ら(政治家や大人達)の痛い所を突いている”という意味で、
いい傾向なのかもしれない」とも述べています。
地球の危機を救えるのは、わたし達自身に他ならない
いかがでしたでしょうか。
私が住むここカナダでもグレタさんについての報道は頻繁に行われ、
彼女のスピーチや活動内容を聞いて、私自身、大変勉強になりました。
お金の問題や、その他のしがらみによって、
大人達が、地球環境問題への対策を後回しにしてきてしまったことは事実でしょう。
私達大人がそこまでの危機感をもっていなかったのも事実でしょう。
ようやくここへきて、グレタさんが、そのことに気が付かせてくれたのです。
多くのメディアが彼女の行動力と勇気を称え、世界中の多くの人が心を打たれました。
しかし、それと同時に強い批判も報道され、激しい論争が繰り広げられました。
彼女を煙たがる大人達は酷いコメントを残すだけではなく、
「形勢逆転:彼女は両親にヴィーガンを強要し、飛行機を使うからとして母親のキャリアを諦めさせた」
などとも書きたてました。
確かに、グレタさんは両親にヴィーガンへの転向を依頼したそうです。
また、オペラ歌手の母親に飛行機に乗らないでほしいと頼み、
結局母親は海外での公演に行くことをあきらめたとも言われています。
しかしそれは、そのくらい深刻な危機が地球に迫っているということの証明にほかならないのかもしれません。
賛否両論はありますが、これは私達がもっとしっかりと考えていかなければいけない問題なのです。
グレタさんの登場を、その大きなきっかけとしなければならないのではないだろうか、私はそう思います。
参考:
Who is Greta Thunberg, the Teenage Climate Change Activities by BBC News
Why Greta Makes Adults Uncomfortable by The Atlantic
Who’s Afraid of Greta Thunberg? by Open Democracy
オーガニック食品やコスメをお得に買えるオーガニックストアIN YOU Market
IN YOU Market
グレタさんが生まれ育った世界最大規模のエコ大国、
スウェーデンのおすすめオーガニックアイテム
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