コレステロールは本当に健康に悪いのか|その真実と食事での対処法
あなたの中に「コレステロール=健康に良くない脂質」というイメージはありませんか?
ただ20代後半や30代前半の方だと、あまり“ピンッ”と来ないかもしれませんね。
実は、女性の方は男性にはない理由で、コレステロールの問題に直面する時があります。
そこで今回は、今すぐ知っておきたいコレステロールのお話とコレステロールと上手に付き合って行くための食事のプチポイントをお伝えしていきます。
コレステロールの正体と、悪者扱いをされる理由とは?
コレステロールの正体は、
皆さんもご存知の通り脂質です。
脂質にもいろいろな種類がありますが、
どうしてコレステロールが、健康に関するテレビ番組や雑誌、SNSなどで何かと話題に上がるのでしょうか?
まず、コレステロールが私たちの身体にどんな影響を与えているのかをお話をます。
コレステロールは、私たちの身体になくてはならないもの
何かと悪者扱いをされているコレステロールですが、
・細胞膜
・ミエリン鞘(神経細胞の一部)
・女性ホルモンなどのステロイドホルモン
・胆汁酸
など、コレステロールは私たちの身体をつくるために必要不可欠な材料です。
それにも関わらず、どうして「コレステロール=健康に良くない」というイメージがついたのでしょうか?
それは、身体の中でのコレステロールの運ばれ方に関係しています。
「善玉」、「悪玉」という名前が、
コレステロールへの誤解を産んでいる
身体の中でのコレステロールの運ばれ方について詳しく見ていきましょう。
例えばあなたの身体の中で、細胞膜やホルモンを作るために「コレステロールが必要だ!!」と訴えている場所があったとします。そうするとあなたの身体は、肝臓で合成したコレステロールを必要としている場所(細胞)まで運びます。
ところが、ここである問題が発生します。
脂質であるコレステロールは本来、ほとんどが水分で出来ている血液に溶け込むことが出来ません。
そのため、たんぱく質に包まれた状態になることで血液中に溶け込み、運ばれます。
このような状態になったコレステロールのことを「LDLコレステロール」と呼びます。
LDLコレステロールをもう少し馴染みのある言い方に変えると、悪玉コレステロールです。おそらく健康に興味のある方なら、この呼び名を聞いたことはあるのではないでしょうか?
ちなみに身体中の細胞から余ったコレステロールを回収して、肝臓に届けてくれるのが善玉コレステロール(HDLコレステロール)です。
つまり、余ったコレステロールを回収するから「善玉」、身体中にコレステロールを運ぶから「悪玉」と呼ばれているだけです。つまり“悪”と名前がついているものの、悪玉コレステロールも本来は私たちの身体に必要な存在です。
では、悪玉コレステロールのいったい何が問題なのでしょうか?
動脈硬化などの病気は、活性酸素が原因だった
動脈硬化などを引き起こす原因は悪玉コレステロールではなく、正しくは酸化された悪玉コレステロールです。
どういうことなのか、説明をしていきます。
活性酸素によって、本来の仕事ができなくなる悪玉コレステロール
IN YOUの読者の方だとご存知の方が多いかもしれませんが、身体の中に入った酸素は化学変化により、活性酸素というとても不安定な酸素になります。
不安定な活性酸素は安定するために悪玉コレステロールにくっつき、
悪玉コレステロールを酸化させてしまいます。
このことの何が問題かというと、悪玉コレステロールは酸化すると細胞の中に入れなくなり、細胞に届かなくなることです。このままでは、酸化された悪玉コレステロールが血液中にどんどん増えてしまい、まるでお祭りの時の人混み状態になってしまいます。
そして、酸化された悪玉コレステロールが原因で様々な炎症が引き起こされるのです。
それを解決する上で活躍するのが、マクロファージです。
マクロファージは、白血球の一種で掃除屋さんの役目をしてくれる存在(※1)。酸化された悪玉コレステロールを食べることで、血液の中を掃除してくれます。
「ふう、これ安心!!」かと思いきや、実はそうでもないのです。
掃除屋だったマクロファージが、トラブルの原因になる
酸化した悪玉コレステロールを食べたマクロファージを「泡沫細胞」と呼びます。泡沫細胞と呼ばれる理由は、悪玉コレステロールを食べたマクロファージはお腹がいっぱいになり、「泡立った」ように見えるからです。
もともと泡沫細胞自体はとても小さいので、通常であれば問題にはなりません。
ただ、「塵もつもれば山となる」ということわざがあるように、泡沫細胞が増えすぎると、
・動脈硬化
・脳血管疾患
・心疾患
などの循環器の病気に繋がりやすくなります。
そして、その状況を防ぐためには、
・血液中の悪玉コレステロールの濃度を適正に保つ
・過剰な活性酸素が体内に蓄積しないようにする
ことが大切になってきます。
また特に、女性の方にお伝えしたいことがあります。
何かといえば、女性は閉経を迎えると女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が減るので、血液中の悪玉コレステロールが増えやすくなるということです。
悪玉コレステロールが増えやすいということは、活性酸素によって酸化される悪玉コレステロールが増えるということなので、動脈硬化などのリスクが高まります。
そこで女性の方は、次にご紹介する食事のポイントを実践されることをおすすめします。
悪玉コレステロールの増加と酸化防止のための食事方法
血液中の悪玉コレステロールを減らし、また酸化しにくくするためには、毎日の食事を通じた日常的ケアが大切になってきます。
ここではそのうち、特にポイントとなる食事でのケア法を2つご紹介します(※2)。
食事を通じたケアの方法①:水溶性食物繊維で摂り過ぎたコレステロールを排出しよう
野菜や果物に含まれる食物繊維のうち、水に溶ける水溶性食物繊維にはコレステロールの吸収を抑えてくれる力があります。現代の日本人は「食の欧米化」により肉中心の生活に偏りやすいため、野菜や果物の水溶性食物繊維はしっかり摂りたいところです。
基本的に野菜や果物には、水溶性と不溶性両方の食物繊維が含まれています。
そして不溶性食物繊維には有害金属などを吸着して、排出してくれるデトックス効果があるといわれています。ですから、水溶性食物繊維だけにこだわらず、いろいろな種類の野菜や果物などを食べることがおすすめです。
そうなると次に気になるのが、食物繊維の摂取量です。
厚生労働省では、18~29歳の女性の場合、1日18g以上の食物繊維の摂取が必要だと呼びかけています(※3)。
1日18gの食物繊維を分かりやすく例えるなら、中くらいのさつまいも3本分(皮付き)くらいです。
ここで注意してもらいたいことは、
一部のネットの記事などでは、食物繊維の摂取量について「1日に25g以上の食物繊維の摂取が必要」と記載している場合があることです。しかし実は、食物繊維が25g以上も必要になるのは脂質異常症と診断され、食事療法が必要な方の場合です。
厚生労働省は、食物繊維の摂り過ぎで生活習慣病のリスクが上がることはないとしていますが、摂取量のハードルが高いと続けることが大変になります。
健康に問題のない方の場合は、まず、いろいろな食材から1日18g以上の食物繊維を摂ることを目標にしましょう。
食事方法②:野菜や果物が持つ抗酸化力で、悪玉コレステロールの酸化を防ごう
野菜や果物などの植物は紫外線から自分を守るために、様々な種類の抗酸化物質を備えています。
代表的な抗酸化物質としては、
ビタミンEやカロテノイド、ビタミンC、ポリフェノールなどが挙げられます。
悪玉コレステロールが活性酸素によって酸化されないためには、野菜や果物に含まれる抗酸化物質の力を借りることがおすすめです。
ところが残念なことに抗酸化物質の力は、身体の中で長く続きません。
よく、「野菜や果物を毎日、食べよう!!」と勧められるのは、抗酸化作用を身体の中で持続させるために、継続的にチャージする必要があるからです。
1食当たりの理想的な野菜の摂取量は、
・加熱してかさが減った野菜だと片手に一杯
・生のままの野菜なら両手に一杯
だといわれています。ぜひ、毎日の食事の参考にしてみてくださいね。
野菜や果物の力でコレステロールと仲良く付き合おう
呼び方のせいで誤解を生みやすい善玉コレステロールと悪玉コレステロールですが、実際は両方とも私たちの身体に必要な存在です。
それでは、最後に今回の記事についておさらいをしておきましょう。
■活性酸素によって酸化された悪玉コレステロールは、マクロファージが食べて掃除をしてくれます。
■酸化された悪玉コレステロールを食べたマクロファージ(泡沫細胞)が増えすぎると動脈硬化などの病気に繋がりやすくなります。
■悪玉コレステロールを酸化させないためには、水溶性食物繊維と抗酸化物質の摂取がおすすめです。
活性酸素は、悪玉コレステロールを酸化させ、あなたの身体を病気に導こうとします。あなたの身体を守るために、野菜や果物の力を積極的に借りるようにすることが何よりも大切です。
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<出展>
・※1:基礎栄養学 第4版 (新食品・栄養科学シリーズ―ガイドライン準拠)
・※2:臨床病態学 (新ガイドライン準拠エキスパート管理栄養士養成シリーズ)
・※3:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」炭水化物
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