エシカルビーガニズムは環境に優しいのか?30年後の未来を見越して考えてみる
どうも、INYOU読者の皆さんこんにちは、
薬膳料理人のzezeと申します。どうぞよろしく。
つい先日のことです。
完全なビーガンの方とご一緒するご縁を頂きました。
ある禅宗のお寺で「精進料理の講話と試食の会」
をやった時のことです。
当然、出汁も動物性不使用という事でやりましたが、
そこに来てくださった方々の中に
完全ビーガンの方がいらっしゃいました。
その時、お互いにたくさんの話をしたのですが、
革製品さえも使わない
厳密なビーガニズムという考え方があると教えて頂きました。
また、肉食は菜食に比べ環境にかける負担が大きくて、
経済的なコストも何倍も大きいという話もありました。
実はいま私が1番気になっているのは、
「世界のこどもたちの飢餓」です。
そんなタイミングで食糧コストの話を聞いたので、
とても黙っていられません。
すぐに各方面の資料に当たってみました。
その中で薬膳料理人として、
飢餓をなくしたいと思う一人として、
感じたことを素直に書いていきたいと思います。
ビーガンとベジタリアンは…微妙に違います
ビーガニズムは厳密に動物性である卵や乳製品も食べません。
食べないだけでなく、
革や毛皮などの動物性の工業品を使わない
エシカルビーガニズムもあります。
また言葉が変わりますが、
ビーガンの中には、
植物からも搾取しないということで
果物や木の実だけを食べるフルタリアンという主義もあります。
普通にベジタリアンと言っても、
卵や乳製品は食べる方も居れば、
ビーガンの様に厳密に避ける場合もあります。
精進料理の場合は野菜のなかでもねぎ類を使いませんし、
厳密なアヒンサー(不殺生)では
微生物を殺さないよう水も布で濾過して飲みます。
アヒンサーはジャイナ教が有名でしょう。
ここまでいくとビーガンの方と近づく気もします。
美味しいけれど飢餓の原因に!?ハイコストすぎる工業的畜産
ビーガンの方が指摘されることで興味深かったのは肉の生産コストに関するものです。
環境NGOのグリーンピースの資料から少し計算してみましたが、
現代の工業的畜産業で生産される牛肉は、
オーガニックで生産される野菜と比較したとき、
10倍以上の環境負荷が掛かかります。
単純にカロリー/エネルギーベースで考えても、
牛を育てるための飼料のカロリーは、
牛一頭の可食部のカロリーの7倍です。
動物のいのちを大切にするという視点からだけではなく、
大規模な工業的畜産による肉製品は、
人類の中の貧富の差や、
飢餓や環境破壊にも関わっていることは明らかです。
特に牛肉はハイコストと言われ、
豚に代替するだけで飼料は半分に減らせます。
これを鶏肉代替すると飼料を1/5に削減でき、
穀物そのものを食べるのに比べ
1.5倍程度のコストで済むという試算もあります。
動物から搾取しない
革製品や乳製品、卵も含めて動物から一切搾取しないというのは、
エシカルビーガニズムに特徴的だと思います。
これは精進料理や或いはアヒンサーよりも
厳密といえます。
アヒンサーや仏教徒の殺生戒の場合は、
頂き物は拒まないようにしますので
革製品を使う場合もあります。
精進料理では動物性の材料は使いませんが、
南方の仏教僧は布施として頂いた肉を食べる場合もあります。
こうして見たときに、
良い悪いということではなく、
ベジタリアンのなかでも
ビーガニズムはかなり厳密に感じます。
次に比較対象として、
私が詳しく解説出来る精進料理と、
最近流行のローカーボン食を見ていきます。
精進とロカボと比較
精進料理の特徴
殺生は避け、頂き物は<ちゃんと使う考え方をします先に書いたように
実はインドやスリランカやタイの仏教で
は肉を食べる場合もあります。
托鉢や布施の文化が
根付いているためであり、
どんな職業の人からの布施も受け取り
それが布施をした人の徳になると考えるからです。
元々は苦肉の策だった料理
ところが中国に仏教が伝わった時に事情が変わりました。
まずお布施の文化がありませんでした。
そのため働かずに托鉢をする、
という修行僧の生活が保てなくなってきたのです。
修行僧も自殺するわけにはいきませんので、
食べ物を自分たちで作る必要が生まれました。
その時に農業をするだけでも、
元々の戒律では問題でしたが、
さらに料理もするということで、殺生をしないという戒律を守るために、
動物性のものを使わない調理技術が発展してできたのが
精進料理なんです。
糖質カットという食べ方
原始時代は狩猟採集が当たり前!
最近食のトレンドとして流行しているようですが、糖質は甘いものだけではなく炭水化物、
いわゆる穀物などにも含まれます。
ローカーボンとは、これら全般の摂取を制限する考え方です。
これは実感として体調管理には
色々な効果があるように感じています。基本としては
原始時代狩猟採集だった頃には肉のタンパク質が
主なカロリー源だったと考えます。
そのため穀物などの糖分の多い食べ物は副次的なものとして捉え、
穀物による糖質をおさえて、
動物性のたんぱく質や脂分でカロリー摂取するという考え方が根本にあります。
実は農業は人類最初の大規模自然破壊です
原始人食とも言われるローカーボン食の立場では、本当の自然の状態というのは有機農法よりも
以前に遡り原始的な狩猟採集生活にあると考えます。
すなわち農業とものそのものが
一番最初の自然破壊だったというように考えるわけです。
これは一面としては真実をついた考え方と言えます。
実際に自然に生きる部族や、
北海道でお馴染みのアイヌなどの文化では、
肉として食べる動物は神の使いであり
これを人がいただくのだから
一切無駄にしてはいけないという考えをします。
食べものを作るとは
近代農業は問題も多いけれど…
農薬も肥料ももともとは飢餓対策でした!しかし、どこへ向かっているのでしょう?
近代農業において、
本当に残念ながら肥料も農薬も欠かすことができないものです。
実は一概に悪いのかと言われると私には単純には肯定できません。
どこかで化学調味料についても書こうとは思いますが、
戦中戦後において日本の場合は、飢餓対策、
食料問題対策として
これらの技術が進んできたという面が否定できないからです。
もちろん近現代の不自然な形の農業というのは
どんどんいい方向に変わって行って欲しいと願っています。
だからといって飢餓対策として始められたというところまでは
私には否定できません。
実際本当に少しづつですが、
世界の飢餓率は下がっています。
日本の農業でも農家の方々の高齢化が
大変な問題として言われています。
この日本の農業のシステムの中で、
日本の国営に準ずるの公の団体である農協に
所属せずに農業をやっていくことは
不可能に近いと言えます。
また長年既存農法で農業を続けてきた高齢者の方々に、
今更勉強して有機農法に変えろというのも、酷な話です。
何より既存の方の中でも
真面目に一生懸命にやって来られた農家の方々の仕事を否定することは、
長年食に携わってきた身として簡単にはできません。
しかしオーガニックの良さを知っている身としては、
本当に心苦しいところではあります。
命の循環
ビーガニズムだけを推進しても…
さて、そんななかで、完全菜食主義が成立したとして、
環境に対する負荷がどれだけ軽減されるのでしょう?
もちろん何もしないより遥かによいでしょう。
しかし、
それは本当に全ての生き物にとって
優しい道なのでしょうか?
もちろん今のままでは良くありません!
工業製品のように無機的に育てられることは
間違いなく残酷だと思います。
巨大な機械式の船で一辺に確保する漁法もおなじです。
海洋資源はさておき、
商品価値のなくなった畜産動物たちはどうなるのでしょう。
世界中でひとりひとりが食べる事や命についての向き合って、
考えていかなければどうにもなりません。
今のシステムが変わらなければ、
畜産動物たちは経済的な意味で不用品になってしまいます。
そうなれば、野生にも帰れず飼ってももらえず
子孫を残せなくなってしまいます。
原始生活は無理でも、
共生し人間を含めた大きな命のサイクルで循環
根本的な問題は都市生活を基準にした、大規模な生産システムが生み出す歪みです。
大豆を食べようと、肉を食べようと、
労働集約的な既存農法で作られる限り、
この歪みは大きいままです。
貧しさを強いられている国の資源が、
一部の国に流れる仕組みも変わらないでしょう。
オーガニック、自然農法……
呼び方や方法論が違ってもいいんです!
同じ菜食を通すのでも、自然界の循環の中で活きたやさいを食べるのと、
工業的に作られたやさいを食べるのでは命に対する意味が変わってきます。
これは動物性の食材でもおなじなのです。
先にアイヌの狩り話をしてたろ出しましたが、
ヨーロッパのジビエも同じことです。
牧畜の民は家畜を家族同然に大切に扱います。
財産ではありますが、命ある財産なので、
ほとんど肉を食べることはありません。
ここぞ、というときに、
家長みずから手を下してみんなで分けて食べるだけです。
日本の里山文化やヨーロッパの森文化も
同じように共生する世界です。
この世界では、
逆に人間も猛獣の餌になることもある世界です。
でも、70億の人類すべてが生きていくためには、
もう昔には戻れません
オーガニックな、命の循環する生活に向かって行くことが、
解決に一番近いでしょう。
特に先進国の都市生活を基盤にした経済システムは、
早急にそちらにシフトするべきです。
しかし現状、今現在も貧しさを強いられている人々、
食べ物すらなく命さえ危うい人々が暮らすところでは話が違います。
残念ですが現在ままの自然農法では70億人を賄い切れないのです。
結果としてまた、飢餓を生みかねません。
現在の世界のシステムを維持しながら、
環境負荷を下げて、しかも飢餓はなく暮らすには
人口をせめて30億人程度まで減らす必要がある、
という試算もあります。
いくらなんでもそれは、
乱暴な話だとは思いますが。
AIやロボットは環境破壊を進めるのか!?
最近世界的にロボット産業が延びています。人間の仕事を奪われると心配する声もありますが、
私は世界的に辛いだけの労働から解放される可能性も高いと感じます。
ある程度の複雑さがある、
しかしルーチンワークであるような仕事は、
機械化に向かうでしょう。
のでしょう?
実はここにカギがあると思います。
一般的な有機農法は気温や季節、
湿度や天気の予想、
害虫駆除を人間が物理的にする必要があります。
データを総合的に判断できる人的スキルも必要です。
しかしこれは、やはり生産性はあがりません。
発想を転換すると、
データの総合的判断はAIの得意分野です。
物理的機械的な作業は、下手をするとロボットの方が上手くやります。
むしろオーガニックファームやエコシティに使わなければ
ロボット分野は無駄とさえ感じます。
まとめ
ビーガニズムも素晴らしい考え方のひとつです。しかし、
オーガニックでなければあまり意味がないでしょう。
かといって狩猟文化も命を粗末に扱う訳ではありません。
様々な考えの人が、互いに手は繋がなくとも、
お互い笑顔で生きていける輪を広げていくような選択をしていきたいものです。
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