猛威を振るうインフルエンザ。去年発売話題の新薬は従来の薬と何が違うのか? 理学療法士が考える「安易に飲んではいけない2つの理由」とは
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今冬、インフルエンザが猛威を振るっています。
2019年1月第3週の時点でインフルエンザの推定患者数は過去最多の207万人を突破、
さらに翌第4週には推定228万人に達したと報告されています。
第5週は減少に転じると予想されているものの、しばらくはインフルエンザの流行に警戒が必要です。
これまで、インフルエンザに対する薬としては、
タミフルやリレンザを含む4種類が主に使われてきました。
そして去年、新たに「Z薬」という経口薬が発売され、
今シーズンから本格的に使用されています。
従来の薬と比べ、服用回数が少ないなどのメリットがあり、
売上が急激に伸びているこの薬ですが、
実は安全性を裏付けるデータに乏しく、副作用を懸念する声が広がっています。
インフルエンザに対する従来の治療
インフルエンザの治療は、抗ウイルス薬の投与が中心となります。これまで主に使用されていたのは、
・リレンザ(2000年発売)
・タミフル(2001年発売)
・ラピアクタ(2010年発売)
・イナビル(2010年発売)
の4種類。
この他に、シンメトレル、アビガンという薬も承認されていますが、販売はされていません。
抗インフルエンザ薬のシェアは、長年に渡りイナビルがトップを走り続けており、2017年シーズンの売上高は
・イナビル 253億円
・タミフル 169億円
・ラピアクタ 33億円
・リレンザ 非開示
となっています。
インフルエンザウイルスは、まず鼻や喉の粘膜の細胞に侵入し、細胞の中で増殖します。
その後、細胞の外に出て近くの細胞に次々と侵入、増殖していき、
24時間で100万倍にまで増えるといわれています。
上記4つの薬は、「ノイラミニダーゼ阻害剤」という種類で、
細胞内で増殖したウイルスが細胞から外に出るプロセスを阻害することで、
隣接する細胞に感染が広がるのを阻止します。
新薬の特徴
ウイルスの増殖自体をおさえる
2018年3月、新たな抗インフルエンザ薬として、S製薬から新しい薬が発売されました。
シーズン終盤に発売されたにも関わらず、わずか2週間で24億を売り上げたことで一気に注目を浴び、
抗インフル薬市場における2018年4~9月のシェアはすでに約65%。
医療機関では、今シーズンから本格的に処方されており、従来の薬よりも患者負担は約500円高いものの、
患者本人が新薬の処方を希望するケースも多いようです。
具体的に、今までの抗インフル薬とは何が違うのかというと、一つはその作用機序にあります。
この薬は、「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤」という種類に属し、
インフルエンザウイルス特有の酵素である、キャップ依存性エンドヌクレアーゼに作用します。
通常、インフルエンザウイルスは、転写(自分のコピー)と合成を繰り返して増殖しますが、
この新薬は、この酵素に働きかけることでウイルスの合成を阻害し、増殖を抑えることができるのです。
つまり、従来の薬が増殖したウイルスが細胞の中から出てくるのを阻害するのに対し、
この新薬は細胞内での増殖自体を抑制するということです。
作用機序という観点からすれば、既存薬とは明らかに異なる薬であり、
ウイルスを殺す力は新薬の方が100倍強いともいわれています。
一回の服用でOK
もう一つの大きな特徴として、服用回数が挙げられます。タミフルやリレンザが1日2回×5日間の服用が必要なのに対し、
この新薬は錠剤を1回服用するだけで治療が終わります。
飲み忘れの心配もなく、リレンザやイナビルのような吸入薬と違って服用の失敗もないため、
利便性の高い薬といえるでしょう。
服用量は体重によって異なりますが、10kg以上の子どもであれば服用することができます。
さらに、既存薬と比べてウイルスが体からより早く消失するということも新薬の特徴です。
臨床試験を行なった結果、症状がなくなるまでの期間はタミフルとほぼ同じでしたが、
ウイルスが消えるまでの時間は、タミフルが72.0時間であったのに対し、
新薬は24.0時間と、圧倒的な違いがあることがわかりました。
また、新薬を服用した翌日には、鼻水のなかに含まれる感染性ウイルスが、
10万分の1に減少したという報告もされています。
ウイルスの消失が早いということは、他者に感染するリスクを抑える働きもあるということであり、
学校や職場での集団感染を防ぐ効果も期待されています。
参考「日本感染症学会」
URL:http://www.kansensho.or.jp/guidelines/1810_endonuclease.html
新薬を安易に飲んではいけない理由
耐性ウイルスが発現する可能性がある
ここまでみてきた限りでは、「新薬は既存薬よりも効果が高く画期的な薬だ」と思われる方も多いかもしれません。
しかし、すべての薬には効果と同時に副作用やデメリットも存在し、
特に新薬については、安全性を証明するデータが十分でないことも多く、
この新薬についても専門家からの懸念の声が広がっています。
その一つが、耐性ウイルスに関する問題です。
耐性ウイルスとは、抗インフルエンザ薬の効果に耐える力を持つウイルスのことであり、
これが増えると薬の効き目が悪くなるのですが、
新薬の臨床試験において、耐性ウイルスが1割発現したと報告されています。
その他の試験においても、
新薬を服用した子どもの23%に耐性ウイルスが検出されたことが明らかになっています。
新薬が有効に効いた場合、服用から5日後のウイルス検出率はわずか5%であるのに対し、
耐性ウイルスが発現した場合は91%と、薬はほとんど効果を持ちません。
日本小児科学会は、新薬に関して、「同薬の使用については当委員会では十分なデータを持たず、
現時点では検討中である」として推奨はしていません。
参考「日本小児科学会」
URL:http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/2018_2019_influenza_all.pdf
副作用に関するデータが乏しい
タミフル服用後の異常行動など、抗インフルエンザ薬の副作用については数年前から議論が交わされています。どのような薬であっても副作用は必ずあるものですが、こと抗インフルエンザ薬においては、
高所からの飛び降りや道路への飛び出しなど、
死亡事故に直結するような重大な副作用を起こす可能性があります。
S製薬による新薬の臨床試験では、成人及び12 歳以上の小児の場合、
異常変動を含む副作用の出現率は5.4%、12歳未満の小児では3.8%という結果になりました。
添付文書にも、副作用として「下痢、頭痛、ALT増加、AST増加、異常行動」と明記されています。
参考「塩野義製薬~ゾフルーザのよくあるお問い合せ~」
URL:https://www.shionogi.co.jp/med/products/drug_sa/qdv9fu000001a7n6-att/WEB-0004-V02.pdf
発売から初めての本格的シーズンを迎えた今冬ですが、
新薬服用後に「2階の窓から下のプレハブの屋根に飛び降りた(10代男性)」
「号泣しながら部屋から脱出しようとした(10代男性)」といったケースがすでに報告されています。
去年発売されたばかりなので、副作用に関するデータが圧倒的に少ないという現状に加え、
日本で承認された薬であるために世界での研究例もほとんどなく、
その安全性は十分と言い切ることはできません。
インフルエンザは怖くない!薬に頼らなくても自然に治る
インフルエンザの新薬は、既存薬とは全く異なる作用機序によってウイルスを撃退することから、その期待値は非常に高くなっています。
初めてシーズンを通して販売される今年度は、130億円の売り上げが計画されており、
シェア数はイナビルに次ぐ2番手と、一気に拡大する見込みです。
しかし、既に述べたように耐性ウイルスの問題や安全性の保証という点においては、
疑問視する声も多いというのが現状です。
実際に、このような事実を危険視し、
この新薬の処方を取りやめる医療機関も出てきているといわれています。
この薬に限った話ではありませんが、安易に薬を服用するのではなく、
一番身体に害のない治し方は何かを考える必要があるでしょう。
インフルエンザは、広い意味では普通の風邪と何も変わりません。
ということは、身体を温めて安静にしていれば自然と治癒していくのです。
本来、必要な薬はすべて身体の中に備わっています。
切り傷ができても自然とかさぶたができて治癒していくように、
何か問題が起きたときには身体の自己治癒力が発動し、治癒に向かうような仕組みになっています。
自己治癒力を妨げないよう、水分やビタミン、ミネラルを十分に摂り、安静に過ごすことが、最も根本的な治療になるのです。
薬に頼らず、自己治癒力を高めるために
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