インド政府・AYUSH省が発表した「伝統医学を使ったコロナ対策」とは?インドと日本の医療事情の違いや日本でも実践できるホームケアをお伝えします
インド政府・AYUSH省が発表した「伝統医学を使ったコロナ対策」とは?インドと日本の医療事情の違いや日本でも実践できるホームケアをお伝えします
コロナウィルスが中国で発見されてから、既に1年以上が経ちました。
長引く自粛生活、家族や親しい友人に思うように会えないストレスなど、この1年で私たちの生活は様変わりしてしまいました。
日本でもワクチン接種が徐々に進んでいますが、ワクチンに不安を感じている方も多くいらっしゃることと思います。
IN YOU読者の皆様は、日頃からなるべく薬に頼らない生活をしている方も多いのではないでしょうか。
そんな中、伝統医学が根付くインドは、薬に頼らないコロナ対策を発表しました。
伝統医学に基づくコロナ対策とは?
インドや日本の統合医療とは?
インド滞在歴のある私の体験談も交えて、お伝えします。
インド・AYUSH省が発表したアーユルヴェーダに基づくコロナ対策
インド政府発表のコロナ対策とは、具体的にどのようなものでしょうか。
さっそく見ていきましょう。
インドには、伝統医学を推奨する政府機関がある
AYUSH省は2014年11月にインド政府保健家族福祉省(日本の厚生労働省に当たる)の一部だったAYUSH局が、省に格上げとなりました。「国際ヨガの日」を提唱したモディ首相の提言もあり、省への格上げが実現したそうです。
【Ayurveda】
アーユルヴェーダ(インドの伝統医学)
【Yoga & Naturopathy】
ヨガとナチュロパシー(自然療法)
【Unani】
ユナニ医学(イスラム圏の伝統医学、アーユルヴェーダ・中国医学と共に世界三大医学の1つ)
【Siddha】
シッダ医学(南インドの伝統医学)
【Homeopathy】
ホメオパシー(ドイツ発祥の同種療法)
この頭文字を取って「AYUSH」省です。
日本では、まだまだマイナーな伝統医学や代替医療ですが、インドには伝統医学を推進する省があるのです。
日本の現状と比べると、これだけでもすごいことだと思います。
インド政府・AYUSH省発表の具体的なコロナ対策
2020年1月、AYUSH省はアーユルヴェーダに基づく予防的治療法としてのコロナ対策を発表しました。
その中から、日本でも実践できそうなものに焦点を絞ってご紹介します。
1、一般的な健康法
・1日中、お湯を飲む。
・ヨガ(アーサナ)、呼吸法(プラナーヤマ)、瞑想を少なくとも1日30分行う。
・ターメリック、クミン、コリアンダー、ガーリックなどのスパイスを料理に使う。
2、アーユルヴェーダによる健康法
・ハーブティーを1日1,2回飲む。
・ゴールデンミルクを1日1,2回飲む。
【ハーブティーの作り方】
・無農薬トゥルシー(ホーリーバジル)
・有機シナモン
・有機黒コショウ
・有機ドライジンジャー
・有機レーズン
コップ1,2杯の水に材料全て入れて、煮出す。
好みに応じて、天然の砂糖やレモン汁を加えてもOK。
トゥルシーはリラックスできて、不眠対策にも良いとされているインドではポピュラーなハーブです。
【ゴールデンミルクの作り方】
・植物性ミルク(アーモンドミルクや豆乳など) 150ml
・ターメリック 小さじ半分
温めたミルクにターメリックを入れてよく混ぜる。
3、その他のアーユルヴェーダ健康法
◆ナスヤ(点鼻)朝と夕方、両方の鼻腔にごま油、またはココナッツオイルかギーを点鼻する。
ナスヤはオイルを鼻から入れて、頭全体の毒素などを排出させる方法です。
鼻腔の乾燥を防いでくれて、風邪予防や花粉症の改善も期待されます。
上を向いて鼻からオイルを入れ、口に降りてくるのを感じたら、口からペッと吐き出します。
◆オイルうがい(オイルプリング)
小さじ1杯分のごま油かココナッツオイルで口全体をすすぐ。
オイルを吐き出したら、お湯で口をすすぐ。1日に1,2回行う。
毒素排出や免疫力アップが期待できます。
ガラガラとうがいをするのではなく、口の中でぐちゅぐちゅとするようにしてください。
4、乾いた咳が出る、喉が痛いときに
◆ハーブの蒸気を吸うミントの葉またはキャラウェイシードを入れたお湯を沸かし、カップに入れて蒸気を吸う。1日1行う。
◆天然の砂糖またはハチミツと粉末クローブを混ぜたものを1日2,3回摂る。
注意:これらの健康法は、コロナウィルス感染症の治療法ではありません。個人のできる範囲で取り組んでください。
参考:Ministry of AYUSH
おもしろいのは、ハーブなどを取り入れる方法だけではなく、ヨガや瞑想も入っていることです。
これは、人間の心と体は繋がっているということを、インドの伝統医学はよく知っているからでしょうね。
これらの方法は単にコロナ対策だけではなく、古くからインドで使われてきた健康増進法です。
伝統医学の知識を使って、免疫力を高め、ウィルスに負けない体を作ろう!ということですね。
インドだけじゃない!世界中で進んでいる西洋医学×伝統医学の統合医療
インド政府がアーユルヴェーダに基づくコロナ対策を発表しているのは、インドでは西洋医学と伝統医学の両方を取り入れる「統合医療」の考えがあるからに他なりません。
では、統合医療とはどのようなものでしょうか?
1つずつ見ていきましょう。
統合医療の定義
一般社団法人日本統合医療学会では、統合医療を以下のように定義しています。
・患者中心の医療
・身体・精神(心理)、社会(環境)、霊性(魂)を含めた全体医療
・治療のみならず、疾病予防、健康維持、長寿の医療(抗加齢)
・生まれて、死ぬまでの包括医療(生病老死)
引用:一般社団法人日本統合医療学会・身体・精神(心理)、社会(環境)、霊性(魂)を含めた全体医療
・治療のみならず、疾病予防、健康維持、長寿の医療(抗加齢)
・生まれて、死ぬまでの包括医療(生病老死)
最先端医療である西洋医学と、伝統医学・代替医療をかけ合わせ、結果的に患者自身が最もその利益を受けることができるのが統合医療です。
伝統医学には、国や地域によっていろいろあります。
日本では、漢方や鍼灸。
インドでは、アーユルヴェーダ。
中国では、中医学、といったように。
西洋医学と伝統医学をバランスよく取り入れ、心と体両方の健康を促進することが目的です。
おもしろいのは、統合医療の中には、ヨガ、瞑想、催眠療法、ダンス療法まで!
多岐に渡る療法が存在します。
これらを使って、病気を予防すること、心身の健康を保つことを目指しています。
世界の統合医療の状況
アメリカでは、1999年に国立相補・代替医療センター(NCCAM)が設立されました。以来、伝統医学や代替医療の研究が行われています。
また、1992年には、アメリカ国民が代替医療に費やした年間の金額が、初めて通常医療を上回ったそうです。(※)
ドイツをはじめとするヨーロッパ諸国では、人々はホメオパシーやアロマテラピーなどの代替医療に馴染みがあるといいます。
ドイツでは薬局でもホメオパシーのレメディーが売られているそうです。
中国・インドは、共に国土が広く人口の多い国で、経済成長と共に、医療への需要が高まってきました。
共に古くからの伝統医学が根付いたこの2か国では、西洋医学だけでは間に合わない部分を、伝統医学で補うという側面もあるようです。
遅れている?日本の統合医療
このような統合医療の世界的な状況に比べ、日本は立ち遅れていると、国際統合医学教育協会理事長の陰山先生は述べています。(※)
日本では、2011年の東日本大震災の時に、電気、水、ガスなどのライフラインが断たれ、西洋医学では十分に対応することができませんでした。
そんな時に、漢方、鍼灸、アロマテラピーなどの代替医療が被災者の健康管理に貢献したと言われています。
これをきっかけに、日本でも統合医療を呼びかける声が高まり、2012-13年には厚生労働省で「統合医療の在り方に関する検討会」が開催されました。
とは言え、日本の統合医療はまだまだ十分とは言えません。
鍼灸やあん摩マッサージは国が認めた国家資格ではありますが、健康保険の適用には病状が限られていたり、同意書が必要だったりなど、ハードルがあります。
通常医療は保険適用で気軽に受けることができるのに、伝統医学はそうではない、と差があるのが現状です。
これでは統合医療の環境が整っているとは言えません。
そもそも「病気になった=病院」という考えの人がほとんどで、代替医療という考えすらない人も多いと思います。
代替医療が選択肢にすら入っていない日本は、国民への教育が足りていないとも言われています。
他国では、医学を学ぶ際に、西洋医学と伝統医学の両方を学んでから、自分はどちらの医師になるのか選択をする国もあるそうです。
このように、日本では統合医療は世界に遅れを取っています。
インドの医療現場・実際にアーユルヴェーダドクターにかかった私の体験談
さて、世界と日本の統合医療の状況を見てきましたが、インドに話を戻しましょう。
2018年の冬、インド北部の街バラナシにいた私は、長距離移動の疲れもあったのか、熱を出してしまいました。
日頃からなるべく薬を飲みたくない私は、アーユルヴェーダのドクターに見てもらうことに。
宿の人に病院を尋ね、さっそく行ってみると、そこには西洋医とアーユルヴェーダ医の両方がいました。
患者は、自分でどちらのドクターがいいか選ぶことができるのです。
これは、日本の病院の中に普通のお医者さんと、鍼灸師の両方がいて、自分で好きな方を選ぶことができるということです。
日本では、こんなことありえないですよね?
インドでは、以前にもアーユルヴェーダドクターに診てもらったことがありましたが、それはアーユルヴェーダ単独の医院でした。
バラナシという大きな街だったからなのかもしれませんが、西洋医とアーユルヴェーダ医が共存している病院の姿に、私は衝撃を受けました。
診察では、自分の症状を伝え、脈診をしてもらい、薬草でできた苦い薬を処方してもらいました。
西洋医学の診察と料金は対して変わらなかったように思いますし、アーユルヴェーダドクターの診察を受けようと地元のインド人がたくさん待っていました。
このように、西洋医学と伝統医学の両方を取り入れているインド。
国を挙げて、伝統医学に基づく健康法を発信していることは、統合医療が進んでいない日本の現状から考えると本当にすごいことだと思います。
「代替医療は科学的な証拠がない」と批判する人もいますが、アーユルヴェーダや中医学は数千年という長い歴史の中で培ってきた知識と実績があります。
長い歴史の中で、人々を癒してきた伝統医学や代替医療を、「科学的ではない」の一言で片づけられるものでしょうか?
日本では、まだまだ浸透していない統合医療ですが、それを望む人が増えてきているのも事実です。
インドや世界に見習い、ここ日本でも私たち1人1人が取り入れられることをしていきたいですね。
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