「無農薬野菜は寄生虫の危険性がある」は本当なのか|無農薬栽培初心者がやりがちな失敗と、安心して食べられる野菜とは?
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何故「無農薬野菜や有機野菜は寄生虫がいるから危険」といわれるのか
意外と寄生虫が野菜や果物にいることは知られていない
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自然のベリーを食べたら、
カタツムリの小さいのが付いていてその中に寄生虫がいて、感染した。
二重の意味の「ムシ責め」笑い事ではありませんね。
無農薬野菜を作っていると農薬と、化学肥料の知識は身に付きます。
ナメクジやら、青虫やらには慣れてきて指でつまんで捨てることが出来るようになります。
でも、虫や土の中に大変な症状を引き起こす寄生虫がいることは知っていますか?
うっかり野菜についたままにした虫や土が感染症の原因になることがある、
知らないでいると自分が被害を食らうだけではなく、他の人にもムシをうつすことになってしまいますよ。
無農薬野菜に「寄生虫」は過去のもの?
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よくオーガニック好きの人に、農薬を使わない、または、
有機肥料を使った野菜は寄生虫がいるから危ないという批判がされます。
理論上、発酵の過程で摂氏80度ぐらいまで堆肥の中の温度が上がるので、
正しい作り方をした肥料の場合は心配ないことになります。
有機野菜が危ないといわれる理由は、排せつ物を汚水の中に流すしていた、
人間の排泄物を使って野菜を作っていた昔のイメージが強いためです。
水道設備が整って以来、衛生環境が良くなったので、寄生虫が国民病ではなくなっています。
農業と生態系と寄生虫のバランスが崩れている
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どちらかというと、肥料より注意していただきたいのが野生動物です。
タヌキやアライグマ、サル、イノシシなどが人家近くに出ることが多くなってきました。
彼らは人畜共通感染症、人間にうつる細菌や、寄生虫を持っていて、土壌が汚染されることがあります。
今あげた中では、アライグマは本来は日本にいない種、特定外来生物です。
アニメなどの影響でペットとして持ち込まれたものが増えています。
鋭い爪で床を掘ってあっさり逃げ出すので、神奈川の都市部でも多く野良アライグマがいます。
アライグマ回虫という失明などを起こす危険のある寄生虫を持っていますので、
生息域ではフンの混ざった土に注意しないといけません。
アライグマの糞に含まれている可能性があるアライグマ回虫卵が唯一の感染源であるので、
アライグマの糞で汚染された土壌その他を口に入れるのを避けるこ とが重要である。
わが国でのアライグマは、(1)動物園その他で展示用に飼育されているもの、
(2)施設や家庭でペットとして飼育されているか、動物業者 の元にいるもの、
(3)「野生化」して野外で生活しているもの、などのいずれかである
引用:「国立感染症研究所 アライグマ回虫による幼虫移行症とは」
人間が餌付けをしてしまった野生動物は、脅しても逃げてくれなくなります。
かわいいなと思っても、その土地にいてはいけない生き物がそこに居つくきっかけは作らないでください。
寄生虫を海外から持ち込んでしまう可能性がある
日本では、気候や衛生環境が整っていることからめったに寄生虫による感染症が広がることはまだ多くありませんが、海外では寄生虫のシストやオーシストといった成体ではないものに
汚染された水で野菜や果物を洗ってしまうことで寄生虫による食中毒が起きることが報告されています。
日本でもいくつかの事例が報告され問題視されているのです。
サイクロスポーラ症は,腸管寄生原虫による下痢症の一つであることが
1993年に判明した新しい感染症である。
旅行者下痢症,AIDSの日和見感染症の一つとして注目されている。
感染は成熟オーシストの経口摂取で起こり,汚染された飲料水や,
それで洗った生野菜,果物などが感染源になる。
わが国では寄生虫症,特に原虫症の検査・診断がおろそかにされている。
免疫不全患者に下痢の発症をみたときや,
健常人でも頑固な下痢がある場合には本症も念頭において
的確な検査を実施しなければならない。
引用:「国立感染症研究所サイクロスポーラ症の本邦第1例」
現代のように様々な国と食品や人員のやり取りをしていると、
日本ではもう発生しないと思われていた寄生虫病または新しい寄生虫が発見される可能性があります。
日本では検疫で寄生虫が含まれている
肉や生の野菜を持ち込まないように水際で税関職員がせき止めてくれています。
でも、人間は何時間もかけて検疫するわけにはいきません。
何か野菜を育てるときには、
体調管理をしないと自分が虫を運んでしまう可能性があるということは考えてください。
無農薬野菜と寄生虫は切っても切れない関係?
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寄生虫とは何か
寄生虫とは、他の生き物に住み着いて自分では餌の採取をせずに栄養を奪う生き物のことです。普通、寄生虫というと目ではっきり見えるぜん虫、
肉眼では見えない原虫のことを指しますが、昆虫類による被害もあります。
体の内部にとりつく内部寄生虫と体表にとりつく外部寄生虫があり、
寄生虫が引き起こす病気を寄生虫症といいます。
ダニやシラミがなじみの深い存在でしょう。
寄生虫というと、有名なのはうねうねと動くサナダムシのようなものですが、
ごくごく小さい仮死状態になったシストという形状や、
オーシストという卵にあたるもので体に入り込む種もあります。
目にはうつらず、土に混ざりやすいので少々厄介です。
現代でも野菜から起きうる寄生虫感染症の種類
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無農薬栽培の初心者がやりがちなことは、
農薬さえ除去すれば安全だと思い込んで、自分で作った野菜を生食してしまうことです。
作った場所や肥料によってはこんな生き物が混ざっていることがあります。
トキソプラズマ
通常は、牛や馬、ヒツジ、ヤギなどの肉や乳を加熱せずに食べると感染します。
ただし、猫が持っていることもあり、
糞便を含んだ土がついた野菜を食べることで感染する恐れがあります。
妊婦がこのトキソプラズマに感染すると、
水頭症、精神運動障害、視覚障害などが胎児に発生する可能性があるため、
国立感染症研究所などから注意喚起がされています。
クリプトスポリジウム
家畜からも感染しますが、日本では過去に水道水による感染が話題になった寄生虫です。
加熱していないジュース、沢や井戸などで洗った果物や野菜に含まれる可能性があります。
症状は、主に胃腸症状で、激しい下痢や嘔吐、発熱が起きます。
肝蛭(かんてつ)
本来は牛の糞などに含まれ貝につく寄生虫です。
その貝から水中に虫が出て水辺に生えるクレソンやミョウガなどにくっつきます。
人間を含め哺乳類はほぼ感染する寄生虫です。
症状は寄生虫の大きさに伴って変化し、若い虫が大量に寄生した場合はやせる、
白血球数が急に増える、熱が出るなどの急性肝蛭症が起き、
成虫が寄生した場合、肝臓や胆管などに問題が起きます。
広東住血線虫
カタツムリや、ナメクジ、貝類などにいる寄生虫です。
感染したネズミのフンを食べた貝類経由して、人間に入ってきます。
カタツムリやナメクジは無農薬野菜によくいる生き物ですが寄生虫を多く持っています。
沖縄などに感染例が多いです。
現在では沖縄のみならず北海道,東京,神奈川,静岡,島根,
高知,徳島,鹿児島県などを含めて34例の患者が報告されている。
ヒトが感染した後発症するまでの期間は16.5(12~28)日と報告されている。
感冒様症状をもって始まり,幼虫が脊髄から脳に侵入するので,
臨床所見は①頭蓋内圧上昇に伴う髄膜刺激症状の見られる髄膜炎型と,
②脳障害症状を伴う麻痺型があり,いずれも神経障害が現れるのが特徴である。
引用:「国立感染症研究所情報センター日本における広東住血線虫ならびにその感染者の発生状況」
寄生虫症の中にはトキソプラズマ症や、この広東住血線虫症のように脳に虫が到達するものもあります。
最初は風邪程度の症状しか出ないので、おかしいなと思ったら受診しましょう。
「無農薬野菜や有機野菜は寄生虫がいるから危険」といわれる理由
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無農薬野菜を寄生虫リスクを気にしないでおいしく食べるには
洗う、加熱するが基本原則
どうしたら安全な野菜が手に入るのでしょうか。簡単にできることは、洗う、加熱するのふたつです。
人や動物の糞をそのまま使って肥料にしていた戦後すぐなどは、
食器用中性洗剤で洗ったりしていたのですが、
それでは今度は洗剤残りが気になりますし、環境にもやさしくありません。
野菜を洗う時には、土や汚れが付きやすい根やへたを落としてから洗いましょう。
勿論、調理前に手をしっかり洗いましょう。
肘まで石鹸で洗浄して具合が悪い人と同じタオルは使わない、
農作業で体に土がついた時は、流してから調理に入ることを徹底しましょう。
寄生虫は食材の中心温度80度近くで加熱すると、大半の種が死滅します。
スープなどは心配ないということですね。
自分で有機野菜を作るときの注意点
・畑に動物が立ち入らないことを確認する
畑の近くに野生動物や猫が出現していないか注意しましょう。
猫に関しては柑橘系や薄荷の匂いを嫌うので、スプレーなどを噴霧しておくと効果があります。
野生動物に関しては市町村に届け出て捕獲をすることが大切です。
可哀想だからと放置してしまう人がいますが、そうしますと、
捕食されたり、食べ物を奪われたりしてもともといる生き物や植物が生存できなくなってしまいます。
・自分のペットの健康状態を確認する
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犬や猫が寄生虫を媒介してしまうことは多いです。
完全室内飼育の場合は、寄生されることは少ないですが、外に出る場合はもらってくることがあります。
野菜を作っている場所で粗相をするほか、
糞便の乾燥したものが調理器具についたりした場合、感染することがあります。
野良猫に餌をあげている人は、畑がない場所であげるようにし、
避妊手術をして地域猫として保護するなどしましょう。
寄生虫の駆除などを誰が責任をもって行うかはっきりさせないと、
周囲の農業関係者や子供を持つ人に迷惑が掛かります。
人畜共通感染症は、人間が動物への接し方を間違えるから起きるのです。
動物が悪いわけではありません。
・近くに畜産農家がないか注意
有機野菜を自分で作る近くに牛舎などが無いかを確認しましょう。
近くに畜舎がある場合は、乾燥した排泄物が土に含まれる可能性があります。
・まな板を調理ごとに煮沸する
魚や肉用の調理器具と、野菜用の調理器具を分けることが寄生虫の防除には重要なことですが、
そのうえで使用するたびに調理器具を熱湯消毒することがすすめられます。
寄生虫の心配がない畑というのは、媒介する人間や動物が立ち入らない畑です。
ただ、加熱すれば寄生虫は除去できますので、肥料や動物のことをあまり気に病むのはよろしくありません。
苦しむための有機農法ではありませんからね。
寄生虫は人間が自分で防げるリスク、農薬は動物たちにとってどうだろう?
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以前から「無農薬野菜は寄生虫の危険性がある」ということで警鐘を鳴らす人がネット上などでいました。
こういう記事を書いていますが、私は寄生虫を回避するためには農薬が必要だという意見には賛同できません。
生産者の孫なので、農薬や化学肥料を使うとトンボ等も減ってしまうという光景を見てきているからです。
農薬に侵されたネズミはまずいのか危ないと思うのか、猫も食べないそうです。
今までご紹介してきたように、野菜を洗ったり、加熱したりすれば寄生虫は防げます。
原始的な生物である寄生虫が一発で死ぬ農薬があるとしたら、逆に怖いなあと私は思うのです。
あなたは、寄生虫と農薬、どちらが怖いですか?
参考:「東京都福祉保健局 食品の寄生虫予防メモ」
「国立感染症研究所」
「有害鳥獣を捕獲するには 神奈川県」
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