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【特集/信州の伝統野菜を知る、食す、守る】70種以上の伝統野菜がある長野は奇跡の県!

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日本には固有の伝統野菜が全国各地に存在しています。伝統野菜とは、各地で古くから栽培・利用されてきた野菜の在来品種を指し、地方野菜とも呼ばれています。近年は、農家の自家需要などで生存していた品種を、産地の「地域おこし」として取り入れ、近郊の都市向けには地産地消商品、大都市圏向けにはスローフード商品とする戦略などがみられるなど、地域独特の食文化や環境下においてそれぞれに発展してきました。

しかし、1970年代以降、生産・流通・販売におけるコスト要素から、大消費地向けにはほとんど消滅し、存在自体も急速に衰退しています。真っ先に考えられる大きな理由は大量生産や大量供給を可能にした容易なF1品種などの普及です。しかし、この伝統野菜が地域経済の重要な担い手として見直され、育種材料としても注目を浴びているというのです。

私のまわりでも在来種を守る運動・活動をしている方がいますが、私たち消費者も伝統野菜について知り、興味があれば食し、守るということについて意識を向けてもいいかも知れません。私自身、興味をもったこともあり、数回に渡り、伝統野菜についての連載をしていこうと考えました。


「京野菜」から伝統野菜を学ぶ

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私が伝統野菜と聞いて何となく思い起こしたのは「京野菜(きょうやさい)」でした。京野菜は、京都の伝統料理に使われる野菜で「聖護院かぶ」「堀川ごぼう」「賀茂なす」が代表的なものです。

ご存知のとおり、京都は古くから文化の中心として栄えていましたが、何せ地理的に海から遠く、魚介類の入手が困難でした。また多くの寺社による精進料理が発達したこともあって、独特な土着の野菜品種が育成され、発展してきたとされています。まさに「山の幸」です。

しかし、戦後普及した西洋野菜に比べると、栽培や収穫に手間がかかることから農家が敬遠し、一部の品種は絶滅しました。京都府はその状況を危惧し、1987年に「京の伝統野菜」の指定制度を設け、明治以前から京都府内で生産されていた34品種を「京の伝統野菜」として選定し、保存育成を図ります。その後も数品種が追加選定され、現在は41品目を認定しています。現在では、地産地消の観点から国内のフランス料理やイタリア料理が食材に導入されていますし、私の知り合いのレストランオーナーは「本物の野菜を求めて」東京から京都に移店しました。それくらい京都の野菜は価値があるのです。

郷土色の濃い野菜品種群には、大阪のなにわ野菜、奈良の大和野菜、石川の加賀野菜などが有名です。先にお伝えしたとおり「地域経済の担い手」として各地で保存と伝承の試みが行なわれています。F1品種が主流になり、伝統野菜の衰退に警笛を鳴らした京都府は1974(昭和49)年に「伝統野菜原種ほ設置事業」を立ち上げ、1987(昭和62)年には「京の伝統野菜」として現在までに絶滅種を含む41品目を認定しています。伝統を重んじる日本、特に京都はその意識が強い表れか、行政が積極的に動いている傾向があります。細かくいえば「京都府内全域で栽培されるもの」などと定義しているほどです。

京都の伝統野菜のブランド推進事業が開始され、その甲斐があって京都の伝統野菜は一躍有名になり、40年前からのこの試みによって「地域産物のブランド化」の先駆けとも言えるでしょう。

さて、この伝統野菜、京都、大阪、奈良、石川が有名ですが、これに加えて信州(長野)を忘れてはいけません。私はこの「信州の伝統野菜」に注目しています。


豊かな緑に囲まれた山と高原の国、信州には71種類もの伝統野菜が存在する

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長野県は日本の中心に位置し、きれいな空気と、清らかな水、そして豊かな緑に恵まれた地域です。(余談ですが、私は小さい頃から雪山スポーツをしており、長野には頻繁に行った記憶があり、思い入れのある場所です。)平均して標高が高く、冷涼で昼夜の寒暖差が大きい気候で、複雑な地形が織り成す、微細な変化に富んだ風土が特徴です。広い耕地が確保しにくい山がちの地形は、効率を求める大規模農業には不向きかもしれませんが、そのかわり、地域の特性を生かした小規模で多様な農業生産を可能にしてきました。

そして信州には、地域固有の食文化とともに育まれてきたいわゆる「伝統野菜」が、地域の努力により、今日まで各地で生産されています。長野県は、山谷に各村が囲まれているため町村合併が全国で一番進んでいない県でもあります。しかしそれにより、植物の「種」自体も、他の土地と交わりにくく、生粋の種が 保存されていることが特徴的です。 それが加賀野菜で15品種程度、京野菜でも41品種ほどのところ、信州の伝統野菜では何と71品種が残っているというのです。これが私が注目する理由です。これは言ってみれば長野特有の地形が生み出したもので、種の保存がもっともされている優良エリアであり、この南北に広がった県は緯度や温度・降水量の違いから、各地域で様々な品種が存続しているという奇跡の県と呼べるでしょう。ちなみに長野県民の平均寿命は男女ともに日本一なんですね。(厚生労働省・平成25年2月発表)


信州伝統野菜認定制度をつくり、風土や歴史を守る

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長野県では、平成19年度から信州伝統野菜認定制度を創設し、風土や歴史を大切にした生産を推進するとともに、地域の人たちに育まれてきた味覚や食文化をより多くの人に提供・発信することで、伝統野菜の継承と地域振興を図っています。

「信州の伝統野菜」として選定される品種は、県が設置する信州伝統野菜認定委員会によって認定されており、以下のような条件をクリアすることが義務付けられています。

【信州の伝統野菜の選定基準】

*来歴…地域の気候風土に育まれ、昭和30年代以前から栽培されている品種であること。
*食文化…当該品種に関した信州の食文化を支える行事食・郷土食が伝承されていること。
*品種特性…当該野菜固有の品種特性が明確になっていること。

【伝承地栽培認定基準】

*地域基準…当該品種及び当該品種に関した信州の食文化を支える行事食・郷土食が伝承されてきた地域として。委員会が確認した範囲とする。
*生産基準…[ 種子 ]当該品種、または当該品種内で改良された品種であること。
[ 栽培方法 ]環境と調和した伝統的な栽培を踏まえつつ、当該品種固有の特性が発揮される方法により栽培され、安全安心を担保するため生産履歴が明確となっていること。
[ 生産体制 ]継続的な生産体制が整っていること。個々の品質規格に基づく出荷が行われること。

さらに詳しく知りたい方はこちらからどうぞ。
長野県ウェブサイト「信州伝統野菜認定制度の取り組みについて 」


信州の伝統野菜に選定されている野菜(平成26年1月現在)

image-02 (出典:長野県発行「おいしい信州ふーど(風土)」パンフレット)


長野県農政部農産物マーケティング室企画幹 長谷川 正之 氏に聞く

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認定制度については、先ほど触れたとおりです。平成19年度に認定制度を設け、認定基準は大きく分けて三つあります。

1.その地域固有の伝統野菜であること
2.昭和30年以前に作られた品種であること 
3.類似性がなく食として食べられていること

直近で71種類の野菜がこの基準をクリアし、認定されています。認定制度を実施した経緯については信州の伝統野菜を継承して引き継ぐ保存維持の制度を県として作る必要性を感じたことが第一の理由です。販路を拡大して売っていこうとするのは次の目的とも。この認定基準をクリアすると伝承地栽培認定基準として生産者は認定されます。また、伝統野菜を伝統的な製法で調理した加工品に対して伝承地栽培認定票を許可し、加工品の流通に際してシールを貼る事ができます。これは責任を明確にできるメリットがあります。)

信州の伝統野菜は圧倒的に木曽や南信地方に種類が多く、南信は日本で一番村が多い地域としても有名で、フォッサマグナの影響で3000m級のアルプスなど隆起しています。活断層の影響で小さな盆地がいくつもあり、トンネルを掘る事も容易ではなく、このことが合併できなかった理由でもあります。そういった地域の種は他の地域の品種と交雑しないので、結果、伝統野菜の名称が地域・村ごとに異なり種類が多くなるのです。

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加賀野菜は15種、京野菜40種程度ですが、信州は70種以上で日本最多です。中でも「ぼたん胡椒」や「ていざ茄子」はニーズがあり、量産されていると言います。

販売に関しては県としても工夫していると言います。野菜は季節品だけに単品に依存し過ぎるには限界があるため、ヘリテージー(伝統野菜・郷土食)プレミアム(牛肉・日本酒・ワイン)、オリジナル(長野県オリジナル品種、野菜・果物)をそれぞれ認定し、バリエーションを増やすことで相乗効果を狙います。さらに販路を拡大するための施策として、地元のレストランや野菜ソムリエと連携して普及を押し進めたり、マーケティング方法については多様な流通チャンネルを重視しているといいます。「消費者向けに伝統野菜を積極的に売っていく施策は?」との問いには「そもそも伝統野菜を地域の手法で食べないと伝統野菜・料理とはいえない。」という答えが返ってきました。ただ野菜を売るのではなく、伝統野菜の「ストーリー」も売る必要があるんですね。


信州の伝統野菜のひとつ、ねずみ大根で作る伝統食「おしぼりうどん」

ねずみ大根という聞いたこともないような名前の大根があります。信州の伝統野菜の代表的なもののひとつです。

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ねずみ大根は古くから坂城町の一部地域(中之条・南条地区)で栽培された地大根です。辛味大根とも呼ばれるだけにたしかに辛いのが特徴です。一説には江戸時代に長崎から伝来し、薬として献上していたとも云われているそうで、言われて盛ればデトックス効果にも期待ができそうな味でした。

平成11年には「坂城町ねずみ大根振興協議会」が組織され、地域を挙げて生産振興に取り組むことになります。結果は坂城町の特産品として位置付けられるようになり、その役割を十分に果たす商品となっています。

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ねずみ大根の特徴としては、形状は下膨れで短形。尻のつまりが良く「ねずみ」によく似た形からそう呼ばれています。根長 15cm、根茎7cm、根重 250g~300g が標準的なサイズで、細い切れ葉の葉形が特徴です。肉質は緻密で固く、粉質性が強く、辛味のなかに適度な甘味がある。これを「あまもっくら」と言うそうです。

ねずみ大根のおろしを布巾やガーゼなどでしぼるところから「おしぼり」の名が由来し、「おしぼりうどん」という伝統食が生まれたそうです。調理法は至ってシンプルです。早速作ってみました。


おしぼりうどん

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ねずみ大根を擦り、ガーゼでしぼります。このしぼり汁に味噌、ネギ などの薬味をお好みで入れます。辛さが心地よく、汗が出るほど体の芯から温まりました。

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伝統野菜は「伝統食」でいただくのが礼儀ということもあり、「自家用の漬け大根」や「おしぼりうどん」のつけ汁として味わうのがいいそうです。かつては多くの家庭でも栽培されていたそうですが、自家採種を繰り返すうちに、 ねずみ大根本来の形質が損なわれ、栽培面積も僅かとなったといいます。

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伝統野菜も種も「守らなければ」衰退していく兆候は他の地域と同様です。他県がそうであるように信州の資源であり財産でもあることは間違いありません。「知る」「食す」「守る」という視点でこの信州の伝統野菜の魅力に迫ってみたいと思います。

次回は野菜ソムリエ、薬膳コーディネーターの増田朱美さんのお話をお伝えします。

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