古代小麦からエコ・ストローを作る方法|ストロー廃止はプラスチックごみ問題の解決につながるのか、考えてみました
1 「麦秋至(ばくしゅういたる)」麦の秋
こんにちは。『いつもがわくわく☆こどもてらこや・おとなてらこや』主宰の柳原里実です。
『麦の秋 あからあからと 日は暮れぬ』 正岡子規
この俳句の季節は、二十四節気七十二候でいうところの「麦秋至(むぎのときいたる)」の頃。
初夏の明るく美しい夕刻の様子が描かれています。
ちいさなてらこやはたけのスペルト小麦も、黄金色。
植物はいつも「自分の時」を知っていますね。
いよいよ刈り取りです。
梅雨前の晴れの続く日をねらいます。茎が乾いていると、刈り取りや束ねる作業、
そして干す作業がしやすいのです。
また、倒れたり、穂のまま根が出たり、
また乾燥時のカビなど、雨による弊害を減らすこともできます。
使う道具は鎌です。
一見危なそうですが、昔の道具は、きちんと使えばケガできないようになっています。
「なぜこの角度で持つのか」
「どうしてこちらの方向に動かすのか」
「そうしなければどんなケガをするのか」…。
ひとつひとつの動作の意味を知り、落ち着いて作業を始めれば、
ちいさいひとたちも上手に使うことができます。
ザクッ。ザクッ。刈ってみると、以前体験した稲刈りとの違いが明らかに。
それは「麦の茎はとても固くてしっかりしているということ」。
そして「茎の中心にきれいに空洞があること」。
ストローにぴったりです。
天然のストローをつくって季節のドリンクを飲んでみましょう。
その前に「ストロー」の意外な誕生秘話とその素材について少し想いを馳せてみましょう。
2 誕生は5000年以上前あの有名な文明で
「食文化の発達を経て生まれた嗜好性の高いアイテム」というイメージがあるかもしれませんが、
その起源は実はずいぶん昔。
紀元前4000年~3000年頃、西アジア・中近東に存在したメソポタミア文明といわれています。
メソポタミア文明といえば、陶板に刻まれた楔形(くさびがた)文字が有名。
その中には、シュメール人がビールを製造する様子が描写されているものもあるそう。
しかし当時はまだビール液を濾過(ろか)する技術がなかったため、
できあがったビールを飲む際には製造過程でできる不純物も口に入らざるを得なかったのだそうです。
そこで、液体だけを飲めるように『葦(あし)』の茎をさして、
そこから吸うという工夫が生まれたといわれています。
ストローとビールに関わりがあったとは意外ですね。
その地域の言語、ペルシャ語でストローは『neyネイ(ストロー)』。
『neyネイ(葦)』と同じつづりと発音です。
古代の『neyネイ(ストロー・葦)』のアイディアが西に伝わると、材料として、
その地で手に入りやすい『麦わら』が使われるようになりました。
各言語で「ストロー」は、ラテン語『paleasパリース(麦わら)』、
ドイツ語『strohhalmストロハン(麦わら)』、オランダ語『rietjeリーチェ(麦わら)』、英語『strawストロー(麦わら)』。
原材料そのものが、そのモノの名前になっているのですね。
日本ではどうでしょう。
国内でストローの生産がはじまったのは1901年(明治34年)、
太くて丈夫な麦を収穫できた岡山県が発祥の地とされています。
ちなみに現在、国内シェアの半分以上を担うトップメーカーも岡山県にあります。
1950年頃までは、喫茶店やカフェでも麦わらのストローが使われていましたが、
稲の裏作として麦が栽培されなくなるにつれ、原材料は、より安価で、
汎用性と耐久性の高いプラスチックに移行。経済や技術の発展とともに、
形状も種類も豊富になり、世界中のドリンクの場面を席巻したのでした。
3 小麦の刈り方・麦わらのストローのつくり方
以前こどもてらこやで、竹ストロー、葦(アシ・ヨシ)ストローを作りました。
一番使いやすいと感じたのは、今回の麦です。自宅用にストローをつくる分だけでしたら、
庭の隅やプランターでできます。
<小麦の刈り方>
①右手にのこぎり鎌を持ち、左手で小麦の根元から少し上をつかみます。
*小麦の茎は稲より固いので稲刈りの時より少なくつかむと刈りやすい*地面から5~10cmくらい
*茎を長めに切ると麦わらとして利用しやすく無駄がない
②つかんだ左手より下の部分を鎌で刈ります。
*鎌の刃の向きは少し下向きにする*刃に勢いがついても、地面にささるだけでけがしない
<麦わらのストローの作り方>
①太い茎を選び、両端の節を切り落としたらできあがり。
*無農薬、無化学肥料のものを選びたい*使い終わったら、洗って、風通しのよいところで乾かしましょう
*何度も使って弱くなってきたら土に還しましょう
4 「技術の発展」が海洋生物に与えた影響
さて今月海の日に掲載された天声人語(朝日新聞のコラム)でも触れられたように、
「海洋プラスチックごみ」は数年前から世界的な関心を集めています。
ご存知の通り、鼻にプラスチックストローが刺さったウミガメの動画や、
体内から大量のプラスチック製品が発見された海洋生物の写真などが、
SNSの発達により世界的に拡散されたことがきっかけです。
実はこの問題自体は新しいことではありません。
1960年代には学術論文で、海洋生物によるプラスチック片の摂取が発表されており、
つまり少なくとも1950年代には問題が発生していたと考えられています。
しかしその後プラスチックの生産量は爆発的な増加し、
1950年約200万トンが2015年には約3.8億トンと約20倍に。
海洋生物のプラスチックの摂食による影響は、物理的に体内に詰まらせる「摂食阻害」、
もうひとつはプラスチック由来の化学物質や付着した有害物質が引き起こす「毒性」の2種類。
UNEP(国連環境計画)によると、
年間10万頭以上の海洋哺乳類と100万羽以上の海鳥が犠牲になっていると報告されています。
それを受け、欧州連合による、プラスチック製品の素材を代替品への切り替えを義務付ける規制法案の提案や、
スターバックス全店舗でプラスチック製ストローの全廃計画が話題になったのは、ご存知の通りです。
日本ではガスト(ファミリーレストラン)がストロー廃止に続きましたが、
その他は全体的にスローである印象がぬぐえません。
はたして「ストロー廃止」の動きは、プラスチックごみ問題の解決につながるのでしょうか?
実際、全体のプラスチックごみの中で、ストローが占めるのはわずかに過ぎず、
同じ飲食の場面ではるかに大きな重量を占めているのは、カップやふたであることは自明です。
それにもかかわらずストローがプラスチック問題の「アイコン」のように使用されるのはなぜでしょうか。
それについては、次のような見方もあります。
〇ストローなしで飲める顧客に対しては、
代替品を用意する必要がなく提供をやめることで済むため、「実施する企業側に影響が少ない」
〇海洋生物・環境に配慮しているという「企業イメージのアップにつながりやすい」
そもそも海洋に流出しているストローは、正規のごみ回収ルートから外れているもの。
提供する企業だけでなく、商品を受け取った顧客は、
その後の最低限の責任を負う必要があると感じます。
5 「ストロー廃止」を取り巻く思惑を超えて
そうは思いません。
ストローは、私たちが日常の場面で、直接行動を選べるアイテム。
はるか遠い海でのできごとは、自分の日常につながっていると感じられるモノ。
店先での行動の度に、他にできることはなんだろうと考える機会となるモノ。
医療的になくてはならないプラスチック製品もあり、
「プラスチック製品すべてを排除する」という考えは、いまのところ非現実的でしょう。
よかれと追加され、いつしか当たり前になっているモノが、
本当に必要なのかひとつひとつ見直す新たな目が必要な時かもしれません。
(参考:National Geographic August 17,2015 / EPA『Advancing Sustainable Materials Management:2015 Fact Sheet』July 2018 / 日本生体学会誌『海洋プラスチック汚染:海洋生態系におけるプラスチックの胴体と生物への影響』山下麗・田中厚資・高田秀重 / 第129回海洋フォーラム要旨『海洋マイクロプラスチックの分布と生物への影響』高田秀重 / 縮小社会研究誌『海洋プラスチックごみが生物多様性に及ぼす影響について』五十嵐敏郎 / 朝日新聞2019.7.15 / 朝日新聞デジタル2018.10.23 / 産経新聞デジタル2018.9.23 / ビール酒造組合HP )
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