世界の投資マネーが動き出した。環境に悪影響を与える恐れのある企業には資金が集まらない時代へ
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世界の投資マネーが動き出した。環境に悪影響を与える恐れのある企業には資金が集まらない時代へ
ここ最近、ビジネスニュース欄を頻繁に騒がせている記事があります。
それは、ダイベストメント(Divestment:投資撤退)です。
9月に入り、世界中の900以上の投資家たちが保有する企業の株式や
債券を売却する決断を下したというニュースが入ってきました。
額にして、約700兆円にのぼる規模です。
次々と売却の決断へと投資家たちを走らせた理由とは何だったのでしょうか?
それは、彼らが保有する企業の事業内容にあったのです。
彼らが手放した企業は、
石油や石炭といった化石燃料に関連する事業を行っていたのです。
地球環境の破壊が世界規模で深刻化している中、
悪化を促すような事業を行っている企業を
支援することはしないという動きがさらに広まりを見せています。
株や投資を行っている方以外にとっては、
投資マネーの動きを逐一チェックすることはあまりないかもしれません。
けれど、今、世界中の企業が、未来のために良いアクションを起こすことが求められており、
環境負荷削減に対し、積極的な姿勢を取る企業へと、資金が流れていっているのです。
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個人レベルで環境問題を案じ、アクションを起こしている方は、
IN YOUを読まれているみなさんには多いかと思います。
今回は、消費者としての立場から、
自分たちが支援すべき企業を見定めていくという視点を持って、
変わりつつある社会の大きな動きを見てみて下さいね。
出典:日本経済新聞(2018年9月5日)『脱化石燃料へ株売り圧力 世界900超の投資家表明 事業転換促す』
投資家たちが予想する未来に環境負荷の大きな企業はいない
今回報じられている一斉売却の中には、これまでとは少し違った動きが見られました。
それは、投資家たちが「売り切ろう」としたところです。
これまでも何らかの不祥事や風評から、
投資家が撤退していくことはありました。
信用できない企業の株を買わないことは、
株や投資を行っていない人でも知っているであろう、当たり前のことですよね。
しかし、今回、投資家たちは「買い控える」のではなく、
「売り切る」ことで、環境負荷の大きい企業の事業転換を求め、圧力をかけたのです。
環境保全対策は各国のメンツがかかった一大政策
世界中の投資家たちが、化石燃料関連の企業への投資から一斉に撤退しました。
しかし、それは、その投資家たちが皆、環境保全活動家だったからというわけではありません。
そこにはきちんと企業の発展と成長を予測する、
投資家ならではの見方があるのです。
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地球環境の破壊を食い止めるために、
世界中の国々が一丸となって取り組まなければならないことは、
ここ数年で特に強調されるようになりました。
国連やEUといった組織が
舵を取りながら、各国で対策を講じ実践することを求めています。
そして、実践したことに対するフィードバックも頻繁に行わなければならず、
結果報告は国際会議できちんと報告されなければなりません。
政府が決めた対策法に則って、
国内企業が環境負荷を削減する取り組みを行わなければ、
国としての効果を示すことはできませんよね。
そのため、各国政府が様々な規制強化に乗り出す中で、
環境負荷の大きい経営を行っている企業は
おのずと経営維持にムリがかかってきます。
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石油や石炭燃料に頼っている企業は、
一朝一夕で再生可能エネルギーに転換することはできません。
そうなってくると、規制強化により業績も悪化し、
経営存続が難しくなります。
こうして、これからの未来予想図には、
そういった企業は残らないという結論に至ったのです。
環境悪化を食い止めるための脱・化石燃料の動きは投資にも広がっている
2016年に発行された「パリ協定」。
地球温暖化の進行を食い止めるために、
各国が温室効果ガス排出量削減に取り組むために結ばれたこの約束。
この協定が結ばれた時、金融界では大きな懸念が広がりました。
それは、世界中の化石燃料関連の株が一斉に売りたたかれ、
市場が大混乱に陥るのではないかという不安です。
また、2017年には、金融市場の監査役である、金融安定理事会(以下FSB)が、
温暖化に伴うリスクに関する企業情報を積極的に開示することを
求めたことも、投資家にとっては大きく影響しました。
FSBは、温室効果ガスを大量に排出する化石燃料に依存した企業や、
温暖化による異常気象からの大きなダメージが予想される企業などが
有するリスクを事前に開示することによって、
金融市場の混乱を未然に防ごうと考えたのです。
そういった動きから、企業からは積極的な開示が相次ぎ、
リスクの少ない=環境配慮型経営の企業が、振り分けられるようになり、
少しずつ、投資が広がっていきました。
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このように数年をかけて広がってきた、投資家と企業の脱・化石燃料の動きがあったため、
今回の一斉撤退も、多少の混乱はあったものの、「来るべくして来た」といった印象で受け止められているのです。
環境配慮型経営の波はやっと日本市場にも。機関投資家たちが相次いで融資撤退を発表。
先の投資家たちの一斉撤退が発表されてから、
日本の機関投資家が矢継ぎ早に投資撤退や融資の停止を発表しています。
・三井住友信託銀行/ 日本生命保険
国内外の石炭火力発電所への新たな投融資は今後行わない。
・第一生命保険
今後海外の石炭火力発電所への投融資は行わない。
また、同時期に経営戦略の転換を発表した企業も多くありました。
・丸紅
石炭火力開発事業から撤退。再生可能エネルギー開発事業へ転換。
・旭化成
自社の繊維生産工場に天然ガス火力発電所を建設。既存の石炭火力発電所からの切り替え。
・ソニー
自社工場や事業所で使用する電力を2040年度までにすべて再生可能エネルギーへの切り替え。
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欧米ではここ一年くらいの間で、各国の大手銀行をはじめとする機関投資家の大型ダイベストメントが相次いで報じられていましたが、
今回のニュースを受け、日本企業も大急ぎで打ち出した感は否めませんね。
ちなみに、各国の銀行が化石燃料関連事業への投融資から撤退する中、日本の銀行はというと…
残念なことに、メガバンクと呼ばれる日本の大手3銀は、
国内外の環境NGOが調査する「地球環境に無責任な銀行」のワーストランキング上位に入るほど、
化石燃料関連の事業へ多額の投融資を続けています。
その流れから、個人預金口座を解約する人が続出しているのです。
メガバンクの口座を解約した人たちの乗り換え先で多いのは、ソニー銀行や楽天銀行。
楽天銀行は化石燃料関連事業への投融資を行わない企業として、
環境NGOの350.orgによる「クール・バンク・アワード」を受賞していますし、
ソニー銀行も、母体となるソニーの環境への取り組みが広く認知された結果でしょう。
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地球環境にも社会にも有益な投資を。ESG投資の広まり。
世界中で広がる、脱・化石燃料の流れですが、撤退した投資家たちは、明るい未来を予測できる企業へと移っています。
それが、ESG投資。
ESG投資とは、以下3点を満たした企業に対し投資することを意味します。
E=Environment(環境)
事業活動や経営スタイルにおいて、環境破壊・汚染を回避し、
CO2削減を目指した取り組みを行っている。
環境を配慮したビジネスモデルを構築し、展開している。
S=Social(社会)
働く人材のダイバーシティの推進や労働環境の改善、
また、社会貢献活動を積極的に行っている。
G=Governance(企業統治)
法令を順守し、透明性の高く公平な統治体制を有し、
企業活動において積極的な情報開示を行っている。
これら3つの要素をバランスよく満たしている企業こそ、
投資家たちが「将来が明るい、優れた企業」とみなし、
積極的に投資を行う相手とされるのです。
ESG投資の広がりが示す、
環境負荷が少ない企業こそ長期的に持続して成長する企業。
これまで、企業の価値=業績でした。
投資家たちは、四半期ごとに発表される決算に一喜一憂して、
株を売ったり買ったりしていました。
しかし、ある時を境に、そのような目先の業績だけでは、
企業の価値は判断できないと思うようになったのです。
そのある時というのが、10年前に起こったリーマンショックです。
毎日モニターに映し出される景気の良い数字を妄信したが故、
まさか裏側があそこまで破綻していたなんてことに、気付くこともできなかったのです。
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世界的な金融危機を乗り越え、世界はより確実に企業が成長していくための指針を求めました。
その結果導き出されたのが、「ESG」を満たす企業だったのです。
2006年に国連が「責任投資原則」(以下PRI)を発表しました。
ESG要因をもとにした企業の持続可能性
という視点を金融市場に持ち込むことで、
株主や機関投資家、また企業の顧客から
社会全体、地球環境へと広くその利益がもたらされることを目的に定められました。
このPRIが発表されてから、ESG投資は瞬く間に世界中に広まりました。
残念なことに、未だに石炭火力発電所の建設計画を次々と
打ち出している日本には、まだまだESG投資は広まっていません。
PRI署名機関も、世界中で2000社を超えている中、
日本で署名している機関は62。
上位のアメリカ・イギリスの約1/5ほどの少なさです。
PRI署名機関の多くが、PRIを経営にとっても
有益なプラットフォームとして位置づけ、
社内意識の向上や、価値ある投資ポートフォリオの
構築に欠かせない存在となっていると言います。
今年に入り、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、
日本企業への1兆円のESG投資を開始しました。
その評価指数を満たす企業はまだまだ少ないものの、
ESGの観点から経営戦略を積極的に
再構築している企業が増えていることはとても頼もしいことです。
出典:国連『責任投資原則』
出典:QuickESG研究所『国連責任投資原則の署名機関 2000社を超える』
株主や投資家じゃなくても、環境や社会に配慮した企業を応援できる。
スタートは遅れながらも、日本の投資家の中でもESG投資は広がり、
定着しつつあります。
ESGに配慮した日本企業がどんどん発展していくことは、
私たちの個人レベルでの幸せにもつながってきます。
いつも新聞の金融欄を飛ばして読む方や、
ビジネス雑誌の前をスルーして通っている方も、
たまには金融の世界をのぞいてみることをおすすめします。
今まで知らず知らずにお世話になっていた企業の存在やその取り組みを知ることで、
私たちはその企業価値を吟味し、サービスを受けるか受けないかを決めるのことができるのですから。
消費者は企業にとっては、末端の支援者です。
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環境的にも社会的にも良いインパクトをもたらす企業を応援するためには、
そのような取り組みを行っている企業を知り、製品やサービスを利用することです。
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