免疫細胞を活性化させるビタミンLPSが現代の野菜には少ない?「きれいすぎる」農業に潜む罠を現役農家が解説!
免疫細胞を活性化させるビタミンLPSが現代の野菜には少ない?「きれいすぎる」農業に潜む罠を現役農家が解説!
スーパーに売っている野菜は、見た目がきれいで栄養たっぷりに見えますね。
最近は、水耕栽培や植物工場で育った野菜も増えています。
そういった野菜は、土がない完全人工管理の施設で育つので、見た目がきれいなだけでなく、雑菌がほとんど付いていないのでサラダ用としても人気があります。
しかし、そのような”きれいすぎる野菜”は、ヒトが自然免疫を働かせる上で大切な「ビタミンLPS」の含有量が少ない可能性があるのです。
「水清ければ魚住まず」と古来から言われるように、衛生面を極端に気にしすぎると、思わぬ罠が待っているなんてことになりかねません。
今回は、このビタミンLPSと野菜との関係についてお伝えします。
あまり知られていない?「免疫ビタミンLPS」とは
ビタミンと言えば、ビタミンA、C、Eなどが有名ですよね。しかし、”ビタミンLPS”という名前は、まだ聞いたことがないという方も多いのではないでしょうか。
まずは、このマイナーなビタミンの特徴について解説致します。
免疫細胞を活性化する成分
ヒトの身体には、侵入してきた異物を排除する”自然免疫”が備わっています。
免疫細胞が細菌やウイルスを取り込み、病気が発症しないように頑張ってくれているおかげで、我々は健康な日々を過ごせているのですね。
その免疫細胞のひとつ「マクロファージ」は、ビタミンLPSと結合すると活性化されて、病原体をより積極的に排除してくれるようになると言われています。
このビタミンLPSは、正式には「リポポリサッカライド」と呼ばれる成分で、微生物の身体の外側に付着している成分です。
野菜などを食べると、この成分が身体の中に取り込まれます。
微生物由来の成分ですから、マクロファージはこれをキャッチすると、微生物の侵入を察知して、積極的に見つけて捕食するようになります。
「むむ!これは、敵が近くにいるかもしれないぞ!」と、張り切るわけですね。
喫緊の問題である新型コロナウイルスの発症と重症化を防ぐ意味でも、自然免疫力を正常に保っておくことは重要です。
土から生まれる成分
ビタミンLPSは「グラム陰性菌」と呼ばれるタイプの微生物にくっついている成分です。
そして、その微生物は、基本的に土の中や野菜の表面を住処にして生活しています。
ビタミンLPSはある意味で、「土から生まれてくる成分」だと言えます。
野菜は、この成分があろうとなかろうと関係なく育ちますが、人間にとっては役に立つ成分なので、野菜は健全な土で育ったものを食べるのが好ましいですね。
ビタミンLPSが多く含まれる食材は何?
土と常に接触している、
◆大根
◆ジャガイモ
◆レンコン
といった根菜類に多く含まれているようです。
特に、皮の部分に多く付着しているので、なるべく皮を食べるようにすれば、ビタミンLPSを摂取しやすくなります。
また、
◆米の糠や胚芽
◆ホウレンソウ
◆海藻類
にも豊富に含まれていると言われています。
ビタミンLPS不足になる原因
ビタミンLPSの不足は、免疫力の低下や、アレルギーなど、様々な症状の原因になると言われています。
日本では戦後、アレルギーに悩まされる人が増えてきました。
これは、農業の近代化と、都市化が進んで、微生物がヒトの周りから排除されてきたことと関連が深いのではないかと私は考えています。
特に、クリーンな農業志向により、土や野菜から微生物を排除すると、ビタミンLPSが産出されにくくなります。
原因がよくわからないけれど、病気になりやすかったりアレルギーになってしまうのは、ビタミンLPSの不足が疑われます。
現代のビタミンLPS不足は、江戸時代のビタミンB1不足で起こった脚気と似ている?
ところで江戸時代に、脚気が流行ったというのは有名ですよね。
精米技術が発達して、美味い美味いと白米ばかり食べるようになり、ビタミンB1不足となったことで脚気が増加してしまいました。
どうも、ビタミンLPS不足は、この脚気と似たようなパターンじゃないかと私は思います。
米からビタミンB1を含む米糠を剥がしすぎてはいけないように、野菜からビタミンLPSを含む微生物を剥がしすぎてもいけないのではないでしょうか。
さて、この章では、野菜のLPS含有量が減ってしまう、具体的な原因にクローズアップしてみましょう。
1、農薬で微生物が死んでしまう
多くの農家は、農作物に農薬を使用しています。
この農薬の中でも、病原体となる微生物を殺す「殺菌剤」は、野菜の表面や、土に住むあらゆる微生物に大ダメージを与えます。
ということは、つまり、ビタミンLPSを生み出す微生物も殺菌剤で死んでいるわけですから、成分の産出は減少してしまいます。
野菜を食べても、ビタミンLPSの摂取が期待できなくなってしまうのです。
2、化学肥料は微生物が住みにくい土になる
化学肥料だけで野菜を育てると、野菜は見かけ上、とりあえずは育ちます。
しかし、土の中に目を向けるとどうでしょう。
土の中の微生物は、植物の葉や根、虫の死骸といった有機物を餌にして暮らしています。
畑の場合だと、堆肥や有機質肥料なども餌にして生活しています。
ところが、化学肥料だけを使う近代農法だと、畑の土に含まれる有機物は枯渇してきます。
微生物は食べるものがないわけですから、あまり住み着いてくれません。
したがって、微生物が少ないので、ビタミンLPSもあまり作られなくなってしまうのですね。
農薬と化学肥料はたいていセットで使用されますから、微生物にとっては非常に厳しい環境と言えます。
そのような、微生物の少ない畑で育った野菜を食べても、ビタミンLPSはあまり期待できません。
3、水耕栽培や植物工場は土がない
農薬と化学肥料を使用しても、微生物はたくましいので、野菜の残渣や、土の中に残った根などを餌にして、生きながらえています。
ところが、究極的に「きれいな農業」である、水耕栽培や植物工場だとどうでしょう。
餌となる有機物がないとかそういう問題以前に、土すらありません。
野菜を育てることだけにスポットを当てた、そういった施設では、微生物の住む余地はありません。
ビタミンLPSの産出は絶望的でしょう。
有機野菜で免疫を正常に
それでは、ビタミンLPSが豊富に含まれる野菜を育てるにはどうしたらいいのでしょうか?
実に簡単なことで、農業が近代化される前の、人類がずっとやってきた農業に立ち帰ればいいだけのことです。
王道復古です。
現在、農薬と化学肥料を使う農業は「慣行農業」と呼ばれます。
その一方、農薬と化学肥料を使わない有機農業は、特殊なものという扱いをされている印象があります。
しかし、歴史的観点から見ると、有機農業こそが「慣行農業」だと思うのです。
逆に、農薬と化学肥料を使う農業は、経済第一主義に傾いた、ぽっと出の異端のはずなのですが、世間では逆の扱いを受けていて、まったくもって不思議です。
さて、話が少し逸れてしまいましたが、有機農業がビタミンLPSを増やすメカニズムに迫っていきましょう。
1、堆肥で微生物の豊富な土に
ビタミンLPSを産出するには、土の中の微生物が、継続的に暮らせる環境づくりをすることが大切です。堆肥や有機物肥料を適度に土に入れて、微生物を育ててやります。
私は、発酵鶏糞と雑草堆肥をバランス良く使っています。
コスト的にも安く、化学肥料と比較して性能面で特に劣るところはありません
。強いて言えば、発酵鶏糞が臭いという点と、散布してすぐに種まきできない点ぐらいですかね。
畑の土に、微生物が住み着いてくれるためには、ゆっくり分解される有機物が土の中に一定量あることが大切なので、”雑草堆肥”を重要視しています。
野菜を育てていると、雑草もまわりに生えてきます。
これが15〜30㎝くらいになったら鎌で刈り、雑草マルチとして活用します。
根を残して刈ると、何回か伸びてくれるので、その都度刈って敷いていきます。
野菜を収穫する頃にはボロボロに朽ちているので、次の作付けのために耕すと、今度は土の中で堆肥として活躍してくれます。
有機農業を続けて、微生物の豊富な畑に育てると、結果的にビタミンLPSの豊富な野菜が育ちやすくなります。
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2、農薬を使わない
堆肥で土の微生物を育てても、農薬でわざわざ壊滅させてしまっては元も子もありません。農薬に頼らないためには、
◆病害虫に強い野菜を選ぶこと
◆旬を厳守すること、
◆肥料をやりすぎないこと
という3原則を守ることが経験上、重要です。
そうすれば、農薬がないと虫食いだらけになって収穫できないということにはなりませんし、栽培にかかるコストも抑えることができます。
3原則を守れば、農薬を使わなくてもよく育つので、自動的に多様な微生物が畑に住み着き、ビタミンLPSも野菜に付いてきます。
根菜は病害虫に強い
ダイコン、ニンジン、サトイモといった、ビタミンLPSが豊富に含まれる根菜類は、基本的に病害虫に強く、有機農業向きの野菜です。台風や寒さなど厳しい気候変動にも強く、日本の気候風土に適した野菜とも言えます。
販売されている有機農産物は根菜類が多いですし、家庭菜園で育てる際も、農薬や化学肥料に頼ることなく育てるのが簡単です。
普段の食事に根菜類を取り入れてみると、ビタミンLPSを摂取しやすくなるでしょう。
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ベジブロスでビタミンLPSを摂る
ビタミンLPSは、根菜の皮に多く含まれていると先にお伝えしましたが、実際に野菜の皮を食べるとなるとちょっと抵抗があるという方も多いかもしれません。
そこで、野菜の皮やヘタ、種といった”野菜クズ”を利用して作るベジブロス(野菜ダシ)をオススメします!
日々の料理で出てくる野菜の皮など、野菜クズをじっくり煮込んで濾せば、ビタミンLPSがたっぷり含まれた美味しい出汁になります。
実質、材料費ゼロで、誰でも簡単にできるので、ぜひやってみてください1
1、ベジブロスの作り方
・ダイコンやニンジンの皮、・ナスのヘタ
・カボチャの種
・キノコの石づき
・ブロッコリーの茎
このような野菜クズが出たら、その都度よく洗ってチャック付きのビニール袋に入れて冷凍庫に貯めていきます。
一般家庭で野菜クズが一度に大量に貯まることは少ないと思われるので、この「随時冷蔵ストック方式」が良いかと思います。
冷凍することによって野菜クズの細胞が破壊されるので、煮込んだ時に出汁成分が出やすくなるというオマケ機能付きです。
ただ、素材によってはあまり向いていないものもあるので注意が必要です。
ブロッコリーの茎など、アブラナ科野菜の素材は独特の香りが強いので、割合が多いと出汁の臭いが強くなってしまいます。
ほどほどにしておいた方が無難です。
シソ、ニンニク、ショウガといった香りの強い野菜も同様に強烈なので、スパイス程度に使うぐらいが良いかと思います。
パクチーの茎なんか入れたら、すごいことになりそうです!
(逆に、その香りが好きだという人は、あえて割合を増やしてみるのもアリかもしれません。)
野菜クズが400g程度貯まったら、ベジブロスを作ってみましょう!
1:まず鍋に野菜クズを入れます。凍ったままでOKです。
2:水1300cc、塩少々、酒小さじ1を入れて、火にかけます。
3:沸騰しそうになってきたら、トロ火にしてグツグツ煮えない状態を保ちます。
4:そのまま30分ほど煮込んだら完成です!
2:水1300cc、塩少々、酒小さじ1を入れて、火にかけます。
3:沸騰しそうになってきたら、トロ火にしてグツグツ煮えない状態を保ちます。
4:そのまま30分ほど煮込んだら完成です!
あとは、ザルで濾して、麦茶ボトルなどに入れておけば便利です。
消費期限の目安は、冷蔵で約3日程度、冷凍すれば3週間は持つようです。
2、ベジブロスの使い方
味噌汁、中華スープなど、スープの出汁として使うのが基本となります。
ベジブロスを鍋に入れて、具材と調味料を入れて煮たら、野菜の深くて優しい旨味が感じられると思います。
市販の出汁は「尖った」旨味という印象ですが、手作りベジブロスは「マイルド」な旨味を楽しめます。
スープだけでなく、炊き込みご飯を炊く際に使ったり、お好み焼きの生地を溶く水代わりに使ってもいいですね。
一品料理になりがちなカレーやラーメンを作る際に使えば、野菜不足を補うこともできます。
様々な料理のベースとして使うことで、旨味が加わって美味しくなるだけでなく、ビタミンLPSをはじめ、野菜の溶け出した栄養成分を摂取できるスグレモノです。
最近のビタミンLPS不足から見える、今後のライフスタイルのあり方
人類は、これまで何万年も土で育った野菜を食べて、微生物と「適当に」付き合いながら暮らしてきました。
身の回りの環境や食べ物がきれい(微生物がいない)になったのは、ここ数世代の話です。
ヒトの身体は、現在の都市のように、きれいすぎる環境で生きるようには設計されていません。
また、わずか数世代では、きれいすぎる環境に適応できないでしょう。
ビタミンLPS不足は最近になって指摘されてきたことですが、複雑な栄養や免疫機能に関しては、まだまだ未知の部分が多いと考えられます。
遺伝子組換え技術をはじめ、「科学的に問題ない」と言われたことが、後になって欠点が判明する、などということはよくあることです。
食に関しては、保守的な方がいいのではないかと思うのです。
だからといって、下肥を使う江戸時代の農業や不衛生な生活に戻れというわけではなく、ほどほどに微生物と付き合う「中庸」のライフスタイルが、健康維持において大切なのではないでしょうか。
土と共に生きる有機農業は、そのようなバランスのとれたライフスタイルを提案できる農業だと、私は確信しています。
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