クリスパーの登場で急拡大する遺伝子組み換えの次に来る恐ろしい「技術ゲノム編集研究・食品」。科学が進んでも忘れてなはらないこと。一人ひとりが足下から取り組めることは?
本物のオーガニックが見つかるオーガニックショップ
腐りにくいトマト。
筋肉量が倍増し、身が厚く育った鯛。
2倍のスピードで成長するフグ。
アレルギーになりにくい卵。
常識をくつがえすようなこういった動植物が、ゲノム編集技術によって世界中で次々と生み出されています。
以前も別の記事で紹介したおそるべしゲノム編集食材。
もう「知らなかった」では生きていけない世の中へ。遺伝子組み換えの進化版、世にも恐ろしい「ゲノム編集食品」が急速に研究され間も無く日本に上陸するかも。食の安全を守り、いのちを繋いでいくために私達ができること。
現在はまだ実験研究段階ではありますが、もう遺伝子組み換えすら、過去のものになりつつあるようです。
クリスパーの登場でゲノム編集が加速されることに。
この技術の中でも、21世紀の人類の生活を劇的に変えるとまで言われている「クリスパー」の登場によって、
先にお伝えしたようなあらゆる作物が誕生し、農業以外でも、畜産業、医療などあらゆる分野で研究が進んでいるのです。
クリスパーとは、古細菌(地球に古くから存在する最近)の原始的な免疫システムを司る部分の特殊な遺伝子配列のことで、
1986年に日本人研究者らによって発見されました。
そもそも高温という過酷な環境で、どうやって自らの遺伝情報を維持、複製して生存しているのかという疑問からゲノムを解析している途中で、
偶然「きれいな繰り返しのある遺伝子配列(クリスパー)」が発見され、それが古細菌の原始的な免疫システムであることがわかったのです。
ウイルスが古細菌を攻撃してくると、その古細菌はクリスパーのシステムを使ってウイルスのDNAを取り込み、記憶します。
その後、同じウイルスが再度攻撃してくると、古細菌は以前攻撃された時に取り込んだDNAとのマッチングを行い、同じと認識するとウイルスのDNAを切り刻んで撃退するのです。
古細菌の原始的免疫システムを別の用途に使う。
クリスパーの発見から30年近くたって、アメリカとフランスの共同研究グループによって別の目的でそれが使えることが明らかになりました。遺伝子編集技術に応用されたのです。
様々な動植物のDNAをある特定の場所で切り取り、そこに好きな遺伝子配列を貼り付けて編集することができるようになりました。
たとえば、筋肉量を抑制するミオスタチンという物質が働かないように受精卵の段階でその部分を司る遺伝子を切断すれば、筋肉が過剰に発達して肉付きのよくなった牛や豚や魚などが生まれます。
クリスパーを使った遺伝子編集の手法は2012年の発表からわずか数年の間に急速に発展して広がりを見せ、
今ではほぼすべての生物のDNAを、驚くほど高い精度で編集することが可能になっています。
特別な機材が不要で費用も安くあがり、特殊技能がなくても実験が可能だと言われています。
遺伝子組み換え技術は、組み込みたい遺伝子がゲノム内のどこにいくつ入るかは予想がつかず、重要な遺伝子まで壊したり、途中から細胞が成長しなかったりと失敗の量も相当多く、望んだ通りの性質を持った品種が誕生するまでの労力や時間、費用は膨大なものでした。
しかし、クリスパーの場合、狙った場所に正確に効率よく遺伝子を入れることができます。望み通りの農作物や家畜を、遺伝子組換え技術よりもはるかに短い時間で、しかも低コストで作れるようになったのです。5年以上かかるものでも、半分程度に短縮されると言われています。
世界中でますます加速する実験。問題点や危険性は?
世界中でクリスパー技術を用いたあらゆる実験が行われていますが、特に中国では国を挙げて遺伝子編集技術の応用研究を進め、
農業や畜産業、医療などのあらゆる分野に広がっています。
★中国で加速する遺伝子編集、米農業セクターに焦り(ウォールストリート・ジャーナル)
一見夢のように見える技術ですが、人体への安全性も、環境に与える影響も未知数です。
意図しない突然変異があらわれるという問題(オフターゲット効果)の存在や、改変された遺伝子が気づかないうちに広まってしまう可能性も指摘されています。
また、世界で共通するルールが存在せず、国レベルでルールを設ける動きがあるものの、遺伝子組み換え同様に厳しい規制をするのか、別物と捉えてさほど厳しい規制を設けないのか、国によっても温度差があります。
技術というものは、どんなに素晴らしいように見えても、使う人間によって善にも悪にも作用する諸刃の剣です。
一歩間違えば、農業テロの道具、大量破壊兵器にもなりかねません。
どんな技術が生まれようと、生物の多様性を守る重要性は変わりません。
遺伝子組換え作物にしてもゲノム編集作物にしても、変わることのない明らかなリスクが存在します。
単一品種を大規模に栽培することへのリスクです。
過去の記事でも少しお伝えしました。
遺伝子組み換え単一品種大豆の大規模栽培はいずれ世界を飢餓に巻き込こむ。消費者が低コストで長く続けられる有効な方法「手作り納豆」のすすめ。
同じ場所に密集して植えた野菜が、みんな害虫にやられてしまったという経験はないでしょうか。
大規模な農業もこれと同じで、栽培する品種が少なければ少ないほど壊滅状態になるリスクは高まるのです。
多様な生物が存在するというのは、いわゆるリスクヘッジの役割をしているのです。
しかし、これらの技術によってひとたび魅力的な品種が開発されれば、広い場所で大量に栽培して、最大限の利益をあげたいと思うのが人間です。
ブラジルのカカオ産業壊滅から学ぶべきことは?
1989年、ブラジルのカカオ生産量は世界第2位となっており、主要輸出品目の1つでした。
ところが、たくさん収穫がある品種を選んで植えていたためにどの畑のカカオもクローン(遺伝的に同じ)であり、
天狗巣病が発生したことによってほぼ壊滅状態に追い込まれたのです。これは今でも回復していません。
作物に病気が発生した場合、その病気に耐性のある他品種を用いて対処するのが最も適切な方法なのですが、
見つけることができないままに病気のカカオの木は全て薬を撒かれて焼かれ、その周辺の木も全て切り倒し、生産量は激減し、農民は大打撃を受けました。
今でも完全に天狗巣病への耐性を持った品種は発見されていません。
当時、多くの農場経営者や農民は自殺に追い込まれ、労働者は職を失い都市へ流れ、仕事が見つからずに犯罪や薬物乱用が増えました。
また日々の糧を得るために残っていた木を片っ端から伐採して換金した人々も存在し、ただでさえカカオの大規模栽培で種の多様性が失われつつあった場所で、さらに多くの生物が希少になってしまいました。
人間は過去から学ばなければなりません。
そもそも遺伝子組換えであれゲノム編集であれ、野生種や固定種、在来種が豊富に存在しなければ危うい技術です。
また、クリスパー技術は古細菌の研究が始まりであり、遺伝子組み換えでよく話題にのぼるBt作物も、小麦粉につく蛾を攻撃する毒素を生成する細菌(Bacillus thuringiensis)の発見が始まりだったということを心に留めておく必要があります。人為的に作られた作物に依存しすぎると、人間の持つ能力や受け継がれてきた知恵も失われます。
新しい特質を持った作物が登場すれば、これまでと同じように畑に単一の作物が植えられ、生物の多様性はますます低下していきます。
こうして人為的に作られた作物に依存すればするほど、栽培に携わる人間は自分で考えることをやめ、伝統的な農業の知恵は失われ、海を渡って移動してきた病害虫、あるいは進化した病害虫、気候変動など環境の変化に人間は対応できなくなってきます。
そうなると、少数のアグリビジネス企業に依存せざるを得ず、自分たちの食べるものを自分で生み出す力を失ってしまうのです。
言い方はよくないですが、これはある種の奴隷と言えます。
確実に利益の見込める少数の品種に集中的に資金を投下する企業は、生物多様性を保護することにはあまり関心がありません。
かのモンサントも、ゲノム編集、クリスパー技術を用いた作物の開発にすでに乗り出しています。
★モンサントとToolGen、CRISPRプラットフォームのグローバルライセンス契約合意を発表
★モンサントとペアワイズ、遺伝子編集を使った農業分野のイノベーション推進に向け、共同研究開発を発表
遺伝子組み換え作物によって、世界の食糧問題は軽減したでしょうか。
小規模農家ではなく、目先の利益のために大規模農園の経営者の方を向いてビジネスをしてきたアグリビジネス企業は、この新しい技術でも同じ轍を踏むのでしょうか。それよりも何よりも、その作物を利用してこれらの企業を潤わせているのは誰でしょうか。
結局は、紛れもなく今これを見ている、あなた方、消費者なのです。
「食」という観点から、私たちができること。
遺伝編集技術はもはや生活のさまざまな分野にわたって研究されていますが、食という観点から私たちができることはまだあります。このような技術で作られた食品を買わない、生態系を痛めつけない方法で作られた食べ物を購入するということはもちろん大切です。
それに加えて、もっと私たちの食べるものに関して興味を持つことが大切です。
在来種、固定種についてもっと探そう、知ろう。
F1作物や遺伝子組み換えが危険だとは感じていながらも、在来・固定種についてはよく知らないというケースもあります。
作物の品種について調べてみるのも面白いことであり、お子さんがいれば一緒に学ぶことはとても価値があります。
自分の住む地方に伝統野菜や地豆などはあるかどうか調べてみてください。
それらを買い続けることはとても大切です。買う人がいなくなれば、栽培する農家もなくなります。
聖護院大根、加茂なす、下仁田ネギなど伝統野菜、郷土野菜はもちろんF1ではありません。
しかし、伝統野菜のように見えて実はF1という品種も存在しますので、品種の名前など表示をチェックしましょう。
また、「ホームセンターで買う苗やタネなんてどうせF1ばかりでしょ」
「普通のスーパーなんてF1野菜しか置いていないに違いない」と思い込むのはまだ早いかもしれません。
スーパーによっては慣行栽培、F1種が殆どのところもたくさんありますが、私も以前地元のホームセンター数件と花屋、直売所の置き種コーナーなどを回ってみたのですが、意外にも大手種苗会社の固定種の商品が見つかりました。
そして、F1種よりも価格が安いのです。
タネの袋に○○交配(○○にはメーカーの名前などが入ります)と記載してあればF1です。
そうでないものには○○育成と書いてあったり、裏面に固定種との説明書きがあったりします。
レタス類、豆類、ごぼう、シソ、ゴーヤ、モロヘイヤ、オクラ、シュンギク、ツルムラサキ、オカヒジキ、ラディッシュについては、
回ったどの店も固定種でした。かぶや大根、キュウリはほぼF1種ですが、わずかに固定種も見られました。(トマト、ナス、西洋かぼちゃなどおなじみの野菜はF1種ばかりです。)
とはいえ、日進月歩で研究が進んでいますし、品種は少ないながらもF1レタスやF1のサラダ用ごぼう、
大きな葉のF1シュンギク、大ぶりのF1ゴーヤなども存在しますので、種苗メーカーのサイトなどで、チェックしましょう。
店舗やネットショップを調べて品種を少しずつでも知っていけば、買い物する時も見方が変わってきます。
たとえば、私の利用している直売所では、シールに品種名を印刷して商品に貼って、特徴の説明書きを添えてくれる農家が増えました。
アピールすることが目的だと思うのですが、そのシールを見ればF1種なのかどうかがわかります。
在来種・固定種の作物を大切に育てて残していこう。
心ある農家を応援すると同時に、問題意識を持った人ひとりひとりが、現在残っている在来種・固定種を育てて種を守っていくことも大切です。
都市にいても菜園をしようという動きが世界のあちこちで見られますが、日本も例外ではありません。
ラディッシュや葉物野菜は省スペースでも簡単に始められます。
家庭菜園を通じて自然に対する関心を高めることもできます。
地元の食文化を継承し、味覚を鍛えよう。
年輩の方々からよく言われることですが、人為的に作られた近年の野菜と昔ながらの野菜とでは、おいしさがまったく違うのだそうです。
うまみや風味はなくなり、水分だけのきゅうり、うす甘いだけのにんじんやトマト、苦くはないが間の抜けたような味のピーマンやほうれん草など、
安価であることや食べやすさを提供してくれることに慣れてしまって、本当のおいしさを知らないというのです。
多様な地元の作物を知り、まともな味覚を取り戻し、それぞれの地元の食を大切に受け継いでいくことは、将来に多様な作物を残していくことにもつながり、世界レベルでの飢饉に巻き込まれる事態は回避されるでしょう。
結局は一人ひとりの選択が問われています。
人間にとって便利な技術は、使い方次第で善にも悪にもなる諸刃の剣です。
仏教では、このような考えがあります。
「あらゆるものはすべて意味があり、相互に関わり合って存在している」
この世にあるものすべてがお互いに絶えず因になったり縁になったり、生まれたり滅したりしながら安定して調和した1つの世界を形作っている、
何か1つが欠けても安定しなくなる。という考え方です。
地球上には何千万という生命が存在していると言われています。
おびただしい数の生物が複雑に関係しあって安定した生態系を保っているということを考えれば納得がいきます。
植物1つを取ってみてもそこには生態系が存在し、菌類や虫や鳥など多様な生物が関わり合い支え合って生きています。
このような自然界における複雑な関係性は、まだまだ知られていないことの方が多いです。
DNAの塩基配列にしても、最初から最後までトータルで俯瞰した時に、その配列になっている理由や意味が必ずあるはずです。
しかし、どんなに反対者が多くなろうとも、一度動き出した研究を完全に止めることはもうできないでしょう。
ゲノム編集の食品も、規制が緩ければ2019年には店に並ぶのではという予測もあるくらいです。
感情的に毛嫌いしたり決めつけたりするのではなく、知る努力を重ねた上で自分は何を選ぶのか、自分の生き方の質まで問われてくる問題です。
結局は私たち一人ひとりがどのような道を選択するかにかかっています。
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