食品成分表改定でひじきの栄養が激減していることが発覚。なんと鉄分が9分の1に減ったって本当?ひじき輸入の知られざる現状や一般的な製法、味の違いについてお伝えします
誰もがびっくり!2015年食品成分表改定で、ひじきの鉄分が激減。
国産のひじきはたったの10パーセント程度
2015年、食に気をつけている方なら誰もが驚き、そしてがっかりさせられたニュースがありましたね。
ひじきの栄養素が激減してしまったとのこと。
ひじきを煮る時にはかつては鉄釜が使われていたのですが、近年では衛生面等を考慮してステンレス製に変わったために、
ひじきに含まれる鉄分の含有量が1/9にまで激減したというものでした。(改訂前は100gあたり55mgとなっていたのが、改訂後には100gあたり6.2mgにまで減る)
鉄分摂取と言えばひじきというくらい信用していたのに、と衝撃を受けた方は非常にたくさんおられたと思います。
かく言う私も、鉄分を始めとするミネラル摂取のつもりでひじきには非常にお世話になっていただけに、とてもがっかりしました。
「輸入ひじき」であれば、鉄分はさほど変わらないので安心?
この食品成分表改定に反発しているのが、日本ひじき協議会です。この協議会が確認した検査結果によれば、確かに国産ひじきは文科省の発表した6.2mgに近い7.7mgの鉄が含まれると認めてはいるものの、韓国産・中国産ひじきについては約47mg含まれ、従来の食品成分表に記載されていた55mgに近いと主張しています。
今後も、輸入ひじき・国産ひじきともに鉄含有量に関する研究を進めていくとのことですが、明確な結果はまだ発表されていません。
現在日本に流通しているひじきのほとんどが韓国・中国産(ほぼすべて養殖)であり、国産ひじき(すべて天然物)は10%程度です。
また、輸入ひじきの安全性について、中国の不衛生なひじきに関して報道するメデイアもありました。
すべての輸入ひじきが悪いと決めつけるわけではありませんが、
中国の海の工場排水による汚染(カドミウムなど)も大きな問題となっており、海の状態もよくわからず生産者の顔も見えない商品は心配になるのも当然です。
食に気をつけている方であれば、放射能汚染マップを確認した上で納得できる地域の国産ひじきを購入するケースも多いと思いますが、鉄分が激減したと報道されたあとでは購入をためらってしまいますよね。
ひじきの製法は、具体的にはどうなっている?
磯で刈り取ったひじきの加工方法は、・伊勢製法
・房州製法
この2つにほぼ集約されます。
しかも、輸入・国産問わず現在日本で流通しているひじきの8割以上は、以下のような伊勢製法だそうです。
1、春から初夏にかけて鎌でひじきを刈り取って天日干しし、加工業者の所に運ぶ。
2、ひじきは水戻しして水で洗浄し、塩抜きする。
3、蒸し上げる。
4、蒸し上がったひじきを再び乾燥させ、異物を取り除いて袋詰にして出荷する。
房州製法は、生の状態のひじきを茹でる(あるいは蒸す)という特徴があります。
加熱時に使われる釜がステンレス製になったのも鉄含有量が減った原因かもしれませんが、鉄釜であっても果たして「蒸す」という加工で鉄分含有量が増えるのかは疑問です。
実際に生ひじきを鉄鍋で煮た場合と、ガラス容器で煮た場合の鉄分含有量が10倍も違ったという実験が存在します。
★煮ひじきの食文化的考察(広島大学)やはり鉄製の容器で長時間煮るということがキーポイントだったんですね。
しかし、ただでさえ流通量が少ない国産ひじき。
その中のほとんどが「ステンレス製の釜」で「蒸されて」いることを考えると、鉄釜で茹でられたひじきなんてほとんどお目にかかれないのではと思ってしまいます。
本当に栄養豊富でおいしいひじきはどこにある?
国産ひじきと言えば、長崎県、三重県、大分県などが有名ですね。
しかし実は、北海道の大部分と日本海側などを除けば、ひじきが採れる地域は日本中に広く分布しています。
→国内産ひじきの採れる場所(日本ひじき協議会による)注目すべきは、日本中に点在する小さな漁師町です。
小規模にひじき漁をして地元の民宿で出したり、地元の小さな漁協や土産物屋、道の駅などで販売しています。
こういった場所では、昔と変わらず今でも鉄製のドラム缶や大きな鉄釜で数時間じっくりとひじきを茹でていますので、食品成分表が改訂されても影響は出ないといいます。
私も数年前まではこんなことに気づかなかったのですが、ある年海水浴に出かけた時にお世話になった民宿で出されたひじきの煮物がびっくりするほどおいしいことに衝撃を受けました。
おかみさんに、
「ひじきの煮物がびっくりするほどおいしかったです。何か作り方に秘密があるんですか?」
とたずねてみたところ、
「すぐそこの浜で、春にご近所総出でひじき刈りをする。昔から変わらず鉄のドラム缶で6時間じっくり煮る。だからこの地域のひじきはとてもおいしい。よそのひじきは食べられない。」
このように、とても誇らしげに話してくれたのでした。
どこに行けばここのひじきが購入できるのかをたずねたところ、隣町の漁協を教えてくれました。(民宿のオーナーから直接購入できる場合もあります)
また、同県内の別の地域でも、それぞれひじき漁をして地域の人たち総出で鉄製ドラム缶もしくは五右衛門風呂のような鉄釜で大量に茹でていることがわかりました。
「ドラム缶を上下2つに切って、かまどと釜に分ける作業も自分でやる」
「鉄が溶け出してひじきに移るからうちのは栄養がたっぷり」
「ガスの火で茹でてもおいしくならない。薪を使うからこそおいしくなる」
「○時間(地域によって異なる)じっくり茹でるからふっくらやわらかくなる」
「かたいひじきなんておいしくない」
「市販のひじきはもそもそして食べられたものではない」
これまでひじき漁をされている複数の方にお話をうかがいましたが、どの方も自分たちのゆでるひじきのおいしさや栄養について誇りを持っておられ、とても嬉しそうにお話をされている様子が印象的でした。
天日干しや茹でる時間など、ちょっとした違いによって完成したひじきの食感などが違ってきます。それは食べる人の好みだと思います。
ある漁師町の民宿では、あまりのひじきのおいしさに感激して、毎年ひじきの時期になると一気に100袋注文されてご近所で分け合うというお客さんもおられるそうです。
漁協のひじきと市販のひじきを比較。
ここで、とある小さな漁港の漁協直売所で購入した地元産ひじきと、一般的なスーパーで販売されているひじき(中国産)を比較してみました。見た目を比較すると?
左側が一般ひじき、右側が漁協で購入したひじきです。
芽ひじきだとかそういった形状はさておき、写真ではわかりづらいですが漁協のひじきは非常に濃い黒です。「漆黒」という言い方がふさわしいです。髪の毛で例えると、色素の薄い黒髪と濃い黒髪くらいの違いというとわかりやすいでしょうか。
水で戻した時の感触は?
こちらは一般ひじきです。キュッと締まって固い感じを受けます。
重量は8倍弱に増えました。
戻した水はかなり黒いです。
少し味見してみると生臭くて苦みがあります。
こちらは漁協ひじきです。
つやがあり、プリッとした弾力のようなものを感じます。思ったより太かったです。
重量は約10倍に増えました。
戻した水は細かいひじきが沈殿し、一般ひじきと比べてかなり澄んでいます。
少し味見してみると生臭さも苦さもなく、海の風味がしてそのまま飲んでも違和感がない感じです。
(注意:無機ヒ素の問題がありますので飲まないでください)
漁協ひじきで煮物を作ってみます。
シンプルに、干ししいたけ、油揚げ、ひじき、いんげん、にんじんを重ね煮の方法で作ります。
味付けは、塩と有機しょうゆのみです。油は使いません。
火が通って、味付けをしたひじきです。
混ぜていると、スプーンを持つ手になんとも心地の良いふっくらした感じを受けます。
いい香りが漂ってきます。
我が家では3歳の小さな子から小学生、中学生、大人までみんなが喜んで食べます。
食べごたえがある
ごはんに合う
柔らかい
もそもそしない
変なクセや苦味がない
味がよく染みている
など、色々な感想があります。
私が思うに、水で戻した段階ですでにふっくら柔らかく、クセもないので、味をつけた時にひじきはひじきのおいしさ、にんじんはにんじんのおいしさといった具材ごとの味わいがしっかり残っていて、「なんとなくひじきの生臭い苦い感じが煮物全体の味になってしまった」ということが一切ありません。
おいしいしょうゆを使えばその分おいしさはアップします。
一般ひじきで作った煮物は?
先程の煮物と同じ方法、同じ調味料と分量で作りました。
(いんげんが入っていない以外は材料も同じです。)
家族の感想は、
苦い
おいしくない
口の中でもさもさする
砂糖もプラスして味を濃くしないと食べられたものではない
このひじきは使わないでほしい
さんざんな結果でした。
かつてはこのような一般的なひじきを普通に食べていたはずなのに、久しぶりに食べるとおいしくないと感じるようです。
いかに漁師町のひじきが良質であるかがわかりました。
本当においしいひじきに出会ってしまうと、
普通のひじきは買わなくなってしまいます。
申し訳ないですが、お惣菜コーナーやコンビニ弁当のひじきの煮物は、食べ物ではないように感じます。
毎年夏に海に出かけたついでにどっさりと海藻類を買い込んでくるのもおすすめです。
ひじきに限らず、アラメ、フノリ、テングサ、アオサ、地ノリなど、
さまざまな海藻に出会えて食のレパートリーが増えるので、料理が楽しくなります。
気になるヒ素について
ひじきに含まれる無機ヒ素の問題について、心配な方もおられると思います。実際にイギリスではひじきを危険な食品とみなして国民に食べないように勧告していますが、農林水産省では、ひじきのヒ素を減らす方法を調査して公表しています。
乾燥ヒジキのヒ素を減らす調理法の調査結果(農林水産省)
水戻しするだけでも半分以上のヒ素が減り、ゆで戻しあるいはゆでこぼしすれば8割程度減ることがわかっています。
日本でははるか昔から日常的に食べられてきた食品でもあり、よほど摂りすぎない限りはそこまで不安になる必要はありません。
旅のついでに、おいしいひじきを探してみよう。
ひじきの産地は、意外とあちこちにあるものです。
WEBで地図を大きく拡大して、旅行雑誌にも載らないような小さな海水浴場、海辺の温泉を見つけるのも良い方法です。
ひじき漁について書いている個人ブログを片っ端から探してみるのも手です。
旅行雑誌やWEBサイトの口コミを見ているだけでは本当に有益な情報は得られません。
海の安全性は事前にきちんと確かめてください。
放射能の測定結果はもちろん、海の水質がAAであること、環境省の選定した「快水浴場百選」なども参考になります。ひじきはきれいな海で採れたものに限ります!
大きな旅館やホテルに泊まるよりも、料理自慢の地元の小さな民宿に泊まった方が断然面白いです。
野菜は無農薬・無化学肥料の自家栽培のものが当たり前のように煮物やお漬物となって出てきますし、フノリやアオサなどいまいち使い方のわからなかった海藻の食べ方も参考になります。色々と勉強になることが多いです。(普段はベジタリアン食の我が家ですが、こういう時は魚介類もありがたくいただきます。)
過疎化や温暖化問題。ご当地ひじきを食べれば危機感を持つ?
小さな海辺の町に出かけることは、良いことばかりではありません。
それぞれの町で高齢化・過疎化が猛スピードで進んでおり、私が訪れた場所でも「いつまでひじき漁が続けられるか…」とさびしそうに笑っておられる方もいました。真夏なのに、こんなにきれいな海があるのに、人があまりいない町が存在するのです。遊びに行く側としては空いている方がありがたいですが、よく考えてみるとどんどん人口が減ってこの国はどうなっていくんだろうとうすら寒い感覚すらおぼえます。
人がいなくなれば、治安も悪化し、外部から密漁者(漁業権が設定されている場所での無断採取は違法になります)がやってきて
海を荒らしていく可能性もないとは言えません。
また、近年は温暖化が進んで採れるひじきの量が次第に減っている地域も多く見受けられるそうです。
海水温が上昇すれば良質なひじきは育たず、海流が変化すると海水中の栄養分も不足するのです。
こういったことは、現地に行くからこそ聞ける話であり、遠方からのお取り寄せ状態ではなかなか実感はわきません。
このおいしいひじきをこの先もずっと大切にしたい。
原発再稼働は愚の骨頂。
自分にできることを毎日取り組もう。
さまざまなことを強く感じるはずです。
小さな海辺の町のひじきを食べることは幸せなことではありますが、
同時に避けては通れない大きな問題を目の当たりにすることでもあります。
ぜひ多くの方に、小規模なひじきの産地に足を運んでいただきたいです。
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