有害な海のマイクロプラスチックと農薬のことを台所から考えよう。『みつろうエコラップ』の作り方。
1 みつばちさん
こんにちは。「いつもがわくわく☆こどもてらこや」主宰の柳原里実です。
うちのちいさな庭に、何本かブルーベリーの樹を何本か植えています。
すると春先に小さいベルのような花が咲いて、みつばちがやってきます。ちいちゃいの、まんまるいの、大きいの、真っ黒なの、いろいろな種類がいて、みんなみつを吸うのだなあとはじめて知りました。
2 みつばちがいなくなるとはちみつが食べられなくなるだけ?陸の問題
「みつばちが世界的に減少している」
「みつばちの絶滅は食料危機に直結する」
はじめて耳にしたのは、ずいぶん前にベニシア・スタンリー・スミスさんの講演会のお手伝いをさせていただいた時のことでした。それまで私の中で「みなしごハッチ」(1970-1971年放映)「みつばちマーヤの冒険」(1975-1976年放映)のキャラクター、かわいいイラスト、または「はちみつ」を分けてもらっているくらいの存在で、世界的な問題と関係があるとは衝撃的でした。
大ホールのスクリーンに映された、みつばちや農業や世界の動きに関するデータを見ながらの対談は、心にせまるものがありました。
みなさんもご存知のように、みつばちはとても賢いです。
女王蜂を中心に役割分担のある社会を形成していること、栄養源である蜜と花粉を集めるために蜜源を記憶し、仲間に伝えられ再訪できること、
巣から蜜源までの方角には地球の丸さも計算に入っていること、そして、その巣は最少の材料で最大で最強のスペースを生み出すデザインということ…。
1990年代より世界各地で、みつばちの大量死が多発し、研究の結果「主原因はネオ・ニコチノイド系農薬」と化学的に判明。
直接殺虫するのではなく、みつばちが巣へ戻る能力が働かなくなるのです。
巣へ戻れないみつばちは死んでしまい、巣に戻る働き蜂がいなくなれば、巣は機能しなくなるのです。
本来は農作物の収穫量を上げるため、「人間にとっての害虫」を殺すために開発、
使用された農薬が思いがけず他の虫や微生物にまで作用し、めぐりめぐって、人に還ってきているのですね。
さて、みつばちがいなくなると何が困るのでしょう。
はちみつが食べられなくなるだけではありませんね。
世界の食料の90%を占める約100種の作物のうち、70種以上がみつばちの受粉によって生育しているそう。
みつばちがいなくなれば、それらは実にならず、収穫不可能になります。
しかし、それはひとが直接食べるものに限ったデータにすぎません。
みつばちが受粉に関与しているすべての植物がなくなれば、それを食べる虫がいなくなり、食物連鎖にしたがってより大きな生物、
そして動物が消えていくのです。飲食物だけでなく、衣服や生活雑貨に欠かせない木綿などの生産にも大きな打撃です。
その現状を受け、2018年9月、ネオ・ニコチノイド農薬の主要5種すべてを使用禁止にしたフランスを筆頭に、世界的に縮小の方向へ向かっています。
そして、過去記事でもご紹介しましたが、日本は反対方向に進んでいます。
ネオ・ニコチノイド農薬のメーカーが多く存在する日本では、2015年より主要4種の食品残留基準を大幅に緩和、
さらに同年と2017年に、新たに2種新規承認しています。
3 海の問題・マイクロプラスチックとのかかわり
海に目を向けてみます。過去記事でもご紹介したように、日本の海域からはすでに、
世界平均の27倍のマイクロプラスチックが検出されています。
昔に比べ、国民全体の水産物の摂取量が減っているとはいえ、海に囲まれている私たちにはやはり大きな問題です。
『太平洋ゴミベルト』は、現在太平洋に浮かぶ8万8000トンのプラスチックゴミの島。
さらに、毎年新たに投棄されている9万トンのゴミについて想うと、無力感にさいなまれます。けれど、それを回収するための壮大なプロジェクト”Ocean Cleanup Project”が開始され、2018年9月9日に、第1号の試運転が始動しました。
そして、私たちが、いま陸にいながらできることは、これ以上海へ流れるプラスチックを増やさないことですね。
いままで「無意識」に気軽に使っていたものを、「意識」するだけで変わります。
そのひとつは「食品用ラップ」。
そこで登場したのが「みつろうエコラップ」です。
はちみつを採取するときに、巣を構成しているみつろうを、布にしみ込ませてできるものです。
オーストラリアなどでは、家庭での手作りもされており、海外のサイトでは「bee eco wraps」「eco food wrap」「bee’s wrap」「sustainable beeswax wraps」「beeswax cotton wrap」「beeswax food wraps」「eco-friendly food wraps」などさまざまに呼ばれ、作り方が紹介されています。
自宅用に作り、使ってみると、とても使い心地がいい。
口に入れても安全なので、野菜や果物の切り口、おむすび、食器やカトラリーに、安心して当てられます。
ほどよい粘着性があって、手のひらで包み、その温かみで形を整えるとどんな形にもフィットします。
冷えればかっちり形を保持するので、袋やかごの役目も果たします。
これは、あらゆるものを包める「風呂敷」、あらゆる体型にあわせられる「カンガ」「サリー」のようだと感じました。シンプルで原始的なものほど、包容力が大きいように思います。
私が家族と使っていて、『みつろうエコラップの好きなところ』は以下の点です。
〇使っている時に「かわいい」から
〇使っていない時にも視界に入ると「うれしい」から
〇「日常」「暮らし」が「豊か」な感じがするから
〇「がんばらず」「無理なく」環境につながれるから
〇「いま・ここ」で実践できるから
『正義感』で『正解・不正解を押しつける』と、自分も周りも疲れますものね。その都度、より居心地よい在り様へとゆったり移行したいものだなあと思っています。
4 みつろうエコラップの作り方
こどもてらこやのみんなと作ることになり、その前に「日本にみつろうエコラップを広めてほしい」と託された方々が主催の会に行かせていただきました。
奈良の素敵な養蜂家さん「みつばちおじさん」のお話会です。みつばちの賢さ、養蜂の歴史、みつばちの性格、みつばちと旅をした思い出、人間の性格との関係、昨今の養蜂の状況など、お話がつきません。
とつとつとかつ朗らかな語り口には、長年の実体験だけでなく、みつばちを愛し、愛される「みつばちおじさん」のお人柄が本当によく表れていて、また、広く長い視野を基盤に、循環的暮らしの手作りや学びの機会を提供されている主催のみなさまのおかげさまで、とても豊かな時空間でした。
さて、こどもてらこやのみんなとも、海の話、陸の話を共有して、いよいよエコラップ作りです。
<材料>
・オーガニックコットン(20cm*20cm / 25cm*25cm など自由に)
*木綿の栽培過程で使用される農薬について、確認できる布が手に入るといいですね。・みつろう
*市販の精製されたものは、ほぼ透明なので、布の色や柄がそのまま出やすいです。*養蜂家さんから購入するなど、未精製のものは、濃いはちみつ色になります。
・ホホバオイル
*みつろう:ホホバオイル=1:0.2くらい。*なしでもできますが、固く折り目がつきやすい仕上がりに。
*抗菌力アップ。
*海外の市販製品には、吸着力をさらに高める天然樹脂が配合されているものが多い。
<道具>
・新聞紙
*特にお子さんとされるときには、多めに、厚く、広く敷いておくと安心です。「新聞紙の余裕は こころの余裕」・クッキングシート
*布より大きめに。*うちでは長めに切って、挟むように使っています。
・アイロン
*万一アイロンにみつろうがついたときは、アイロンを温めて、ウエスでしっかり拭き取りましょう。<作り方>
(1)好みの布を選びます。
(2)新聞紙、クッキングシートの上に布を置き、みつろうをぱらぱらと置きます。
*市販されているのは、粒状なのでそのまま使えます。*みつろうが大きな塊の場合は、捨ててもいい空き缶にいれ、湯煎で溶かすと扱いやすいです。
*溶けたみつろうを、直接布に垂らすこともできます。
*バットに、縁まで高く折ったクッキングシートを敷き、溶けたみつろうを薄く流すとすぐに固まります。好みの大きさに、手で簡単にぱきぱき折ることができます。
(3)クッキングシートをかぶせ、高温のアイロンで溶かします。
*ぎゅうぎゅう押すとみつろうがしごかれて薄くなってしまうので、アイロンの重みだけでゆっくりのんびり溶かして延ばしましょう。(4)クッキングシートを開いてみて、布全体にしみ込んでいればできあがりです。
*薄いところがあれば、追加のみつろうを乗せてまた溶かしましょう。<取扱い方法>
〇包むのはみつろうにやさしいものを。
みつろうを溶かすような、酸性の強いもの(梅干し、強い柑橘類、パイナップルなど)、温度が高いもの(熱々のごはんや料理など)、使用後に熱湯消毒が必要なもの(肉・魚など)〇洗うのはお水で。
みつろうの融解温度は65-70℃。熱湯がかかると溶けてしまいます。排水口に流れていくと、中で温度が下がって固まり、下水管の壁について固まってしまうと困りますね。エコラップのみつろうが薄くなってきたら、またみつろうを溶かし塗ると粘着力が復活します。
何らかの形で、最後まで使ってあげたいですね。
〇洗剤を使うなら優しいものを。
洗浄力の強い洗剤はみつろうを溶かすことも。海につながっていますものね。〇乾かすのは自然乾燥で。
今の季節なら縁側の日差しもきっと大丈夫。真夏の直射日光は避けたいですね。5 さいごに
近所の養蜂家さんの未精製みつろうからできたラップは「甘いにおい」。こどものみなさんも、くんくんかいでいました。「正しさ」や「正義感」で発せられる言葉や行動は、なんだかこころがざわつくことも。肩の力を抜いて、心地よい選択をしていきたいものだなあと感じています。
どうぞこころとからだゆるむ秋の日をお過ごしください。
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(参考:一般社団法人日本養蜂協会HP/BBC HP ”What would happen if bees went extinct?” 4 May 2014/ナショナルジオグラフィックHP)
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