グルメ大国・イタリアの成功例に学ぶ、「フードロス削減」に必要なこと|“MOTTAINAI”精神は、本家・日本よりイタリアが上だった!?
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グルメ大国・イタリアの成功例に学ぶ、
「フードロス削減」に必要なこと
“MOTTAINAI”精神は、本家・日本よりイタリアが上だった!?
日本の隣国の中国では、食べきれないほどの食事でお客様を迎えることが最大のもてなしとされています。
その中国で昨今、習近平国家主席の指示によって、
『光盤行動(お皿を空にする)』の運動が展開されている
ことをご存知でしょうか。
『光盤行動』とは、
「食べ物を残さず食べてお皿を空にする」
という取り組みのこと。
「フードロス=食品ロス(本来は食べられることができたはずなのに廃棄されてしまう食品)」に対して
世界的な削減への取り組みが求められる中、これは、食品の廃棄量でワーストレベルの中国が
国家を挙げて前向きに取り組む姿勢を示しているという画期的な出来事だといえるでしょう。
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13億人以上もの人口を抱える中国での食品廃棄量は相当なもの。
都市部の飲食店で1年間に出る残飯の量だけで、
3000万~5000万人の1年分の食料に相当する、
との調査結果も出ています。
しかし、実が日本もまた「フードロス=食品ロス」問題には本腰を入れて
対策を講じる必要がある国のひとつ。
なぜなら、国民1人あたりで計算すると、
日本は中国の2倍弱もの量の食べ物を廃棄しているからです。
参照:
なぜ? 中国で「食べ残し」禁止令(NHK)
事業系及び家庭系の食品廃棄物発生量、再生利用量の主要国比較(農林水産省)
日本はフードロスで世界ワースト6位という事実
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日本には、コンビニエンスストアを始めとする24時間営業のお店があり、
そこは種類も豊富な食材やお惣菜などが提供されています。
手ごろな値段で気軽に食事ができるカフェやレストランも多く、
私が現在住んでいるイタリアと比べるとまるで夢のような環境です。
しかし、フードロスの観点から見れば、
日本人1人あたりの年間のフードロス量・51キロに対して、
イタリアは36キロ。
日本はフードロスにおいて世界ワースト6位、
アジアでは1位という、なんとも不名誉な結果を残しています。
えっ、“MOTTAINAI精神”は、日本よりイタリアが上!?
2004年に、環境分野への功績でノーベル平和賞を受賞した、環境活動家で大学教授のワンガリ・マータイ氏が
提唱した「MOTTAINAI(もったない)」キャンペーン。
日本発祥の美徳が世界へと広まっていくことは
日本人としてとても嬉しい出来事でした。
しかし、“MOTTAINAI(もったいない)”のお膝元である当の日本は、
利益や効率化を求めることに熱心なあまり、
食そのものへのリスペクトが低下しているように感じます。
身近な例を挙げると、私が暮らしているここ、イタリアでは、
少し遅い時間に切り売りのピッツアを買いに行くと、
売れ残りそうなものがあれば「これも入れておくね」と
一緒に箱に入れてくれます(それも結構な量!)。
でも、これって日本のテイクアウトのお店ではあまり見かけない光景ですよね。
また私は地方都市に住んでいることもあって、
野菜や果物の直売所でも同様のサービスをよく受けます。
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無駄にするよりは、食べてもらった方がいい
という食べ物を大事にする、その気持ちがとても嬉しく、有難く。
イタリアでは企業数に占める中小企業の割合が非常に高いため、
(良くも悪くも)サービスに人間味が残っているのでしょう。
本来であればまだ食べられるものを、
賞味期限(美味しく食べられる期限)や形の悪さ、
ブランドイメージなどを理由に廃棄してしまうなんてもったいないことです。
また、日本の家庭から出される生ごみの22.2%を占めるのが
手つかずのまま廃棄された食品とのこと。
さらに、そのうちの4分の1が賞味期限前という事実に
どれほど不景気だといわれていようと日本の経済的な豊かさを
実感せずにはいられません。
食における“MOTTAINAI精神”は、
食事をこよなく愛するイタリアの方が進んでいるといえるでしょう。
参照:
食品ロス削減関係参考資料(消費者庁)
食品ロスの現状等のデータ(消費者庁)
官民一体となってフードロス対策に取り組むイタリア
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イタリアにおけるフードロスの内訳は、
55%が事業系、残りの45%が家庭から出されるもので、
この割合は、実は日本も同じです。
そしてイタリア環境省は民間組織と協力して、
事業系廃棄物の削減に向けての法律整備、
家庭系廃棄物については意識向上キャンペーンを実施することで、
フードロス削減に取り組んできました。
食品の再利用を加速させる法律を制定
イタリアでは2016年9月に、食品および医薬品の寄付を容易にすることを目的とした「廃棄規制法」が施行されました。
それまでにも、貧しい人々に食料を無料で提供するために、
食品を再利用する法律はありました。
しかし、この新しい法律はフードロス削減に焦点を当てたものです。
それまでは販売期限をわずかに過ぎただけの食品でも、
寄付をすることは法律違反として処罰されていました。
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しかし、新しい法律の下ではこうした規制が緩められたほか、
企業に必要な寄付手続きを簡素化し、
寄付をすればするほど、支払う「廃棄税」が低くなるようにシステム化。
農地からでる農産物のロスについては、
慈善団体らが直接農家を訪れ、収穫作業の段階から対応することで、
農業従事者が収穫や箱詰めといった作業に煩わされることなく
余剰作物を寄付することが可能になりました。
また、慈善団体は農作物をそのまま提供することはもちろん、
例えば、リンゴからアップルパイを作って提供するという行為も
新しい法律の下で許されるようになりました。
フランスが先に制定した罰則を伴う同様の法律とは異なって、
イタリアでは優遇により、より良い行動を奨励することを目指して
法整備が行われました。
南北で異なるイタリアの食文化、“エコフレンドリー”では北部に軍配!
家庭から出るフードロスについては、キャンペーン活動が盛んに行われました。イタリア北部と南部では文化や食習慣が大きく異なり、
実は、フードロスへの意識もまた違います。
私のイタリアの家族は、ほとんどがイタリア中部や南部にルーツを持ち、
特に南部出身の家族に招かれると、
人数分以上のお料理が何皿もテーブルに並び、
「マンジャ、マンジャ(食べて、食べて)」の掛け声がかかります。
余った食べ物はタッパーにつめてもたせてくれますが、
やはり食の好みやこだわりもあり、
脂身が多いものや、白砂糖の多いデザートなどは
食べきれず無駄にしてしまうことも。
おそらく招いた家庭でも、残ったものを全て食べきれずに
廃棄することもあるでしょう。
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一方、北部の街ボローニャ出身の親戚女性宅では
必要以上の量の食事は出てくることはありません。
もちろん、食べ足りない時には、リクエストすれば快く出してくれますが
いわなければそのまま食事終了となります。
これが北部の人は冷たいと南部の人に言われてしまう所以でもあるのですが、
効率的で無駄の少ない食品使用と言えます。
イタリアのフードロス対策において大きな役割を果たし、
政府と提携してキャンペーン活動を行っている社会的企業「Last Minute Market」は
そのボローニャ市で生まれました。
食べ物や薬の廃棄量ゼロを目指す、
イタリアの社会的企業「Last Minute Market」
前述した法律「廃棄規制法」が施行される3年前のこと。イタリア環境省が食品廃棄物防止計画の策定に着手した時、
協力を求めたのが「Last Minute Market」でした。
Last Minute Marketは、ボローニャ大学のアンドレア・セグレ教授が
1998年に実施した調査から派生した社会的企業。
廃棄量ゼロを目指して、
食品や未使用の医薬品の再利用を促進するための活動を
イタリア国内で積極的に展開しています。
知ることで変わったイタリア人の意識
Last Minute Marketが行っているキャンペーン「Spreco Zero(廃棄ゼロ)」には、首都ローマやミラノ、ナポリ、フィレンツェ、ボローニャと言った大都市を含め
800にもおよぶ地方自治体の首長が賛同し、署名しています。
政府や民間企業が行う、こうしたキャンペーンなどを通じて
イタリア人の食品廃棄に関する意識は大幅に変わりました。
多くの人々はそれまで、フードロスのほとんどは
ビジネス活動から生まれるものであり、
家庭からの廃棄量はほんのわずかだと考えていたのです。
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6年前には、2人に1人が「毎日食べ物を無駄にしている」と認めてはいたものの、
2019年にはその数が人口のわずか1%まで減少。
「過去1年間に食品の無駄を減らした」と答えた人は、
全体の70%にもおよびました。
Last Minute Market創始者のセグレ教授も、
「この10年間で大きな進歩がみられた」と語っています。
新型コロナウイルスにより、
消費者の意識にはさらに大きな変化が
こうした中、新型コロナウイルスの感染拡大によるパンデミックが起こり、フードロス問題には良い意味での影響がありました。
ボローニャ大学の調査によれば、
3ヶ月にもおよぶ厳しいロックダウンの間、
57.6%の人々が以前より多くの食費を費やしたにもかかわらず、
これまでより無駄なく食品を消費したと答えた人が51%を超えました。
また、消費者の47.2%が「買い物リスト」を作るなどして
計画的な購入を心がけたとの回答。
この期間に多くの人が
「いかに効率よく買い物をし、効果的に食品を使うか」
に心を砕いたことは想像に難くありません。
経済が今もなお停滞しているイタリアでは、
多くの家庭が、今後もこの習慣を続けていることでしょう。
私たちにできることは、苦い経験から得たものを、
より良い未来を創る力へと変えていくことだと思います。
参照:
Il lockdown mette ko lo spreco alimentare degli italiani(La Repubblica)
経済・環境・家計に大きな負担となる、
フードロスを減らそう!
EU(欧州連合)の中でもフードロス問題には特に積極的に取り組んでいるイタリアですが、それでもまだGDPの0.88%(150億ユーロ)に換算される食べ物が廃棄されており、
改善の余地は大いにあります。
食べ物が産地から消費者の手に届くまでには、
生産にかかる労力はもちろん、輸送費や人材費など多くの経費がかかります。
流通の過程での廃棄にかかるコストも料金に含まれるため
消費者はその分上乗せされた料金を支払い、
更に自ら廃棄することでお金を無駄にしています。
そして、ごみ焼却には税金が使われます。
フードロスは、経済的にも環境的にも家計的にも大きな負担を与えるものなのです。
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現在、日本では“Go Toイート”キャンペーンで景気回復を図っていますが、
お金を使う(使わせる)だけではなく、無駄を省くことで経済的効果をもたらし、
私たちの生活の質を高めることもできます。
そんな日本では、捨てるはずだった食べ物を必要とする人たちに販売する
「フードシェアリングビジネス」が次々と立ち上がり、
企業の努力でフードロスを削減しようとする動きが広まりつつあります。
例えば、アプリを通じて、食品販売店が廃棄予定の食品を出品し、
消費者が毎月定額料金を支払うことで、出品された商品を購入することができるという
面白い試みもるようです。
飲食店を対象とした同様のアプリもあり、この先期待される事業ではありますが、
大手企業は参入を見合わせていることから、
利便性・サステナビリティという観点からすると
課題も多いといえるでしょう。
農作物の廃棄に関しても、
農林水産省が廃棄より寄付が利益があるよう会計上のメリットを明示し、
寄付に際して配送費の補助金も出していますが、
実際の作業負担は農家や、品質には問題がないにもかかわらず市場で流通出来なくなった農作物の
寄附を受けて生活困窮者などに配る「フードバンク」の努力頼みです。
法の整備など、政府の介入によって、
利益にならない分野にも企業・団体が参加しやすい仕組みを作っていくことが求められます。
私たちの生活がウイルス1つで大きく変わりうると実感した今だからこそ、
これまでの慣習や社会の在り方を一度疑い、
長期的視野に立った新たな施策の実施が求められているのではないでしょうか。
そのためには、なによりも「MOTTAINAI(もったいない)」と感じる心を
行政や企業も含めて取り戻すことが大切だと考えます。
参照:
Disposizioni concernenti la donazione e la distribuzione di prodotti alimentari e farmaceutici a fini di solidarieta’ sociale e per la limitazione degli sprechi
Last Minute Market
Lo spreco alimentare vale 15 miliardi di euro: quasi l’1% del Pil italiano(Il Sole 24 ORE)
食費が激減!? “食品ロス”だけで暮らしてみた(NHK)
食品ロス「もったいない」寄付広がるが… 手も時間もない(日本農業新聞)
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