「竹害」って知ってますか?里山を守る小さな一歩『竹の花入れのつくり方』
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1 和のイメージ「竹林」を脅かす「竹害」
こんにちは。「いつもがわくわく☆こども・おとなてらこや」主宰の柳原里実です。
さて「竹林」と聞いてどんな風景を浮かべられますか?
美しい緑の竹のなす、しなやかな垂直のライン。
足元一面を覆う、竹の落ち葉。
ゆるやかなカーブを伴い、景色に溶けゆく静かな小道。
それを縁取る竹垣。
見上げればはるか上には、緑の葉が天蓋のようにやさしく空を覆い、時折ざあと空間を包むざわめき…。
日本で一番有名な竹林と言われている、京都嵯峨野(さがの)の竹林の道は、まさにそんなイメージ。
「竹林」と検索すると嵯峨野の風景がトップに出るので、
行かれたことがない方も、ご覧になったことがあるかもしれません。
日中のみならず、12月のライトアップに時期には夜間も、国内外からの観光者の数が大変多い場所。
ちなみに、竹林の葉のざわめきは、
未来に残したい音として『日本の音風景100選』(1996年・環境省)に選ばれています。
ところが、同じ竹でも、全国的に問題になっていることがあります。
それは「竹害(ちくがい)」。
「竹が、隣接する植林地のみならず田畑や住宅地にまで侵食し、被害を及ぼしている」というものです。
メディアでも取り上げられているのでご存知の方もおられるでしょう。
竹の緑が美しい里山の風景の中にも、気をつければ、手入れの行き届いた竹林と、
雑木林に侵食している竹藪があることが見て取れます。
「竹害」という言葉は、竹の存在が害であるかのような印象を与えますが、
竹の性質とわたしたちとの関わり方に想いを巡らせれば、そうではないことがわかります。
では竹の性質を見ていきましょう。
2 見て触れて竹の特性を探そう
今回使用する竹は、地主さんが他市に転出されたため、手入れが難しくなった竹林から分けていただいたもの。
特徴を探しやすいように、同じく身近な材である「木」と並べて、
こどものみなさんに自由に意見を出してもらいました。
(1)「空洞がある」
まず出たのがこの特徴。
「竹といえばパイプ状」というのは、当たり前のようで、考えてみれば実に不思議な形。
国内外で広く深く竹の知識の伝授をされ、世界竹会議で受賞もされている農学博士・渡邊政俊氏によると、
この形状は、力のかかる外側だけに木質部を用い、できるだけ少ない量で身体を支えている形なのだそう。
この空洞のおかげで、昔から筒、樋などに利用されてきました。
(2)「節がある」
次に出たのが節。渡邊博士によると、そのおかげで竹に弾力があるのだそう。
単なるパイプ状では、ねじれたり割れたりするところを、節が一定間隔に補強する役目になっているとのこと。
節のおかげで、入れ物、器などさまざまに利用できます。
(3)「緑色」
切り立ての緑色から、長期間使用する竹製品をつくる際の、
油抜き作業を経て、白っぽい色になる。
以前、かご編みを教えてくださった師匠の教室では、
機材を使わずだれでもできるよう半年間天日干しで工夫されていました。
多くの竹が緑の中、「キンメイモウソウ」など「黄金色」に見える変わり種の竹もあるそう。
(4)「すぐ伸びる」
竹の成長は早く、世界的な竹の研究者・上田弘一郎博士の研究によると、1日で121㎝(真竹)、119㎝(孟宗竹)伸びたという記録が発表されています。
最古の古典文学『竹取物語』では、かぐや姫の成長について以下のように記されています。
「三月(みつき)ばかりになるほどに、よきほどなる人になりぬれば、
髪上げなどさうして、髪上げさせ、裳(も)着す。」
3か月くらい経つころには、一人前の女性になったので、髪を結いあげる儀式を手配し、
成人の儀式である髪上げをさせ、成人の儀式の裳を着せたというのです。
植物の竹が、筍から成長し、光合成を始める2~3か月後と一致していますね。
竹にはさらにユニークな特徴がありますが、
上記のような特徴から考えられる竹林問題の原因と対策をみてみましょう。
3 竹林問題の原因といまここでできること
(1)竹林問題の原因
実は、現在「竹林問題」の中心をなしていると言われているのは、外来種の「孟宗竹」。食用として、実が厚く甘みもあり、最もおいしいとされる種です。
国内に持ち込まれ1950年代頃までは管理された竹林にて栽培されていました。
ところが、安価な輸入の筍や竹材に押され、国内での生産が経済的に成り立たなくなると、
後継者が減り、その結果放置される竹林が増えてしまったのです。
里山で、繁殖力の強い孟宗竹への対策がなされなければ、前述のような問題になるのは自然な流れです。
以前、ご実家が安土桃山時代から続く竹工芸の老舗である師匠から、
ざるの作り方を教えていただきながら、竹を取り巻く状況の原因についてお話を伺いました。
・建築様式の変化で、竹材の需要が大幅に減少した
・生活様式の変化で、竹製品の利用が減少している
・プラスチックなど、竹に代わる材質が主流になっている
・竹製品は安価で輸入されている
・国内の職人が竹製品では生計が立てられない
・竹材生産者と製作者の高齢化が進み、後継者不足である
そういったことで、生活道具よりも、高い技術と美的センスと確かな技術に見合った対価を得られる、
茶道具や一点物などの工芸品を作るようになったとのことでした。
(2)いまここでできること
いま再び、きちんとつくられた生活道具を、正当な対価で扱うお店も増えてきたように思います。世界竹会議にも招待されている竹専門店さんをはじめ、
地域で日々竹林問題に取り組んでくださっている団体やボランティアの先輩も多数です。
また、竹材そのままではなく、パウダーや繊維など、新しい形での竹の利用も発信されています。
農学博士・渡邊氏によれば、竹の浸食を防ぐ方法は、春先に望まない場所に出てきた筍を取るだけ。
鎌で切るか、蹴る「タケノコの蹴っとばし法」と称される方法です。
とてもシンプルで、竹に敬意を払いつつ、共存する方法。
輸入物の筍が市場の8割を占める現在、国産の筍を選ぶこともひとつです。
春には食用に、冬には生活の道具の材料として定期的に適度に間引くことは、
循環的な暮らしを営み、健康的な里山保全につながります。
では、こどものみなさんと簡単にできる花入れの作り方をご紹介します。
4 さまざまな竹の花入れのつくり方
花入れの素材といえば「金(かね)・金属」と「焼き物・陶器」だった茶の湯では、武野紹鷗(たけのじょうおう)や千利休(せんのりきゅう)たちによって、
「わび・さび」を重んじられるようになってから、「竹」も広く用いられるようになりました。。
好きなデザインを考え、作ります。
丸くてすべりやすいので、しっかり押さえて加工しましょう。
また、そげが刺さらないように注意。
みなそれぞれの形になったので、分類してみましょう。
(1)方向:縦 設置方法:置く 道具:のこぎり
一番シンプルに竹の特徴が生かされた形で、ひと節分あればできます。切り口は、水平でも、斜めでもOKです。
のこぎりは、引くとき以外は力を入れず、ゆっくり前後させると、歯がたわまずにまっすぐ切れる。
ちなみに、前述のかぐや姫の誕生シーンでは、
おじいさんが竹をこの形に切って発見するイラストを目にすることもありますが、
竹取物語の原文には、
『あやしがりて、寄りて見るに、筒の中光たり。
それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり。』とあり、
竹を切ったという描写はありません。
ひもや木工用ボンドを用い、細い竹筒を数本ずつ組んだり、
太さの異なるものを組み合わせるのもおもしろい。
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> 商品の詳細はこちら(2)方向:縦 設置方法:掛ける 道具:
のこぎり・のみ・木づち・ドリル(キリ)・ひも
床の間の「床柱(とこばしら)」の釘にかけるタイプ。
茶道では、基本の形は「一重切(いちじゅうぎり)」で、花を挿すための「花窓」がひとつ。
利休作の「園城寺(おんじょうじ)」のように、花窓は後方までしっかり切られ、上の節は抜かれている。
上下の辺をのこぎりで切り、左右の辺のはじまり部分にのみを打ち入れると、
ぱきりとまっすぐに裂け目が入り、窓のように取り外せる。
背面に、ドリルなどで穴を開ける。ひもを通しておいてもよい。
複数の節に、複数の花窓をあけると、動きのある活け方を楽しめる。
ちなみに、作成途中のSちゃん、Fちゃんの花入れには、
ちいさな穴がたくさん開けられており、中にあかりを仕込むと灯るしくみだそう。
(3)方向:横 設置方法:置く 道具:のこぎり・のみ・木づち
窓の開け方は上記の通り。下から3つ目の花入れのように、輪切りした半円の竹の背を薄く削り、
平らに削った底に木工用ボンドでつけると、足ができて安定する。
一番下のように、穴を一方に寄せると、アシンメトリー(非対称)の活け方を楽しめます。
左端を下にして立てれば、縦形の花入れとしてもGOOD!
直接水を入れて活ける他、オアシス、グラス、そば猪口などに活けてから乗せてもOK。
また、土を入れれば、和の植木鉢にも。
その場合は、径の太い竹を使う方がよい。
(4)方向:横 設置方法:掛ける 道具:のこぎり・のみ・木づち・ドリル(キリ)・ひも
なめらかにし、やわらかいたわしで汚れを洗い落としたらできあがりです。
両端に穴をあけて、ひもを通すとかけるタイプに。
節は複数でもOK。
両端の切り口は、写真のようにまっすぐでも斜めでもOK。
かけずに、直置きでも使える。
5 暮らしの中に活かしてみる
竹の特徴に寄り添ったさまざまな花入れ。最後に、ささくれでケガをしないよう紙やすりでなめらかにし、
やわらかいたわしで汚れを洗い落としたらできあがりです。
旧暦新年にふさわしいまっさらな緑色が、
時の流れと共に色が落ち着いてゆくのもいいものですね。
次回は季節の花を活けてみます。
暮らしのなかに、ほんの少しの自然。
どうぞこころもからだもすこやかな日常を。
参考:東京国立博物館HP/農林水産省HP/農林水産省林野庁HP
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