国際中医学薬膳師が勧める「桑の実」の秘められた効能とは? 栄養満点な健康食材「桑」の栄養を効果的に取り入れる方法。
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今は見かけなくなった桑畑。
「桑」という植物をご存知でしょうか。
見たことはないけれど、蚕をイメージする、
という方が多いのではないかと思います。
蚕は、ご存じのとおり、シルクの原料となる虫ですが、
蚕のエサとして、古来から栽培されてきたのが、桑の木です。
養蚕のため、古くから桑畑が作られ、
日本人にとって、桑畑はとても身近なものでした。
桑畑は地図記号にもなったほどで、
“養蚕業が最盛期であった昭和初期には、
桑畑の面積は全国の畑地面積の4分の1に当たる71万ヘクタールに達した”
というほど、各地に作られていたそうです。
しかし、養蚕業が衰退した現代、桑畑は次々と姿を消し、
残念ながら、桑畑を見かけることはほとんどなくなってしまいました。
数年前には地図記号も廃止され、
桑の木は、桑畑の名残が残る山あいや、
山に自生しているものを、たまにみかけるくらいになりました。
でも、ちょっと待ってください。
古き良きもの、と済ませてしまうにはもったいない!
“お蚕様”の餌となっていた桑の木。
実は、人間にとっても、すばらしい栄養成分を持った植物なんです。
その栄養成分から、1本まるごと生薬の原材料となってしまうほど。
知らなきゃもったいない、
桑の効能と食べ方についてご紹介します。
桑の木は1本まるごと生薬となる
地図記号にもなるほど、各地に作られていた桑畑。
養蚕技術は、中国から伝わったものだそうですが、
中国では、起源前からすでに養蚕が行われており、
蚕のエサとして桑が栽培されていました。
そして、その効能にも注目し、
本当に古くから、さまざまな症状の治療薬として、
桑が活用されてきたようです。
桑の木は、1本丸ごと生薬、と言ってもよいほど、
実をはじめ、葉、枝、根茎に至るまで、
生薬として利用されています。
例えば、根の皮は「桑白皮(そうはくひ)」と言い、
止咳効果や利水作用で肺熱による咳や喘息、
むくみ、尿量減少などに効果があるとされています。
若い枝は「桑枝(そうし)」と言って、
関節痛や手足のしびれ、むくみなどに効果的です。
葉は「桑葉(そうよう)」、
果実は「桑椹(そうじん)」と言いますが、
こちらも、食材としてはもちろん、
乾燥させて生薬としても、さまざまな効能を持っており、
桑の木は、本当に万能な植物と言えそうです。
桑の実はそのまま食べてもおいしい
童謡「赤とんぼ」にも出てくる桑の実。
桑の実は英語でマルベリー (Mulberry)といい、
早いところでは6月頃から収穫時期を迎えます。
実はラズベリーのように赤黒く、
黒くなればなるほど甘みが増します。
赤い実は酸味がとても強いので、
できるだけ黒くなってから食べるのが良いでしょう。
そのまま食べても、甘酸っぱく、とてもおいしいのですが、
一度熟してしまうと足がはやいので、収穫時期が短く、
スーパーなどではあまり見かけないのが、残念なところ。
昔は近所でとれた桑の実を、そのまま食べていたのでしょうね。
うらやましい限りです。
私の住んでいるところでは、たまに産直などで見かけますが、
出会ったらすぐに購入!
本当に、出会いは突然訪れます。
今は、冷凍などでも購入できるようですが、
あの童謡「赤とんぼ」にも登場して、
日本古来から、夏を代表する果実だった桑の実。
もし生の桑の実に出会ったら、
ぜひ、一度、旬の味を試してみてほしいと思います。
桑の実のパワー。その有効成分とは
では、そんな桑の実の有効成分を見てみましょう。
桑の実は、カリウム、鉄、カルシウム、ビタミン類、などを多く含んでいます。
カリウムは、体内の余分な塩分を排出してくれますし、
鉄やカルシウムは、健康な体を作るうえで、
無くてはならない栄養素ですね。
そして、この中でも、特にビタミンCの含有量は多く、
免疫力の向上や美肌効果があるとされています。
また、桑の実には、アントシアニンという、
抗酸化成分のポリフェノールが多く含まれます。
アントシアニンとは、
ブルーベリーやブドウに多く含まれているポリフェノールの種類で、
疲れ目を予防したり、視力の改善に有効とされています。
桑の実を食べる理由
薬膳的効能は?
薬膳の世界では、どの食材にも、食性(温熱/平/寒涼)と、食味(甘/鹹/酸/辛/苦)、
また、帰経(どの部位や臓器に作用するか)が存在すると言われています。
桑の実の性味・帰経を見てみましょう。
【性味と帰経】
食性:寒食味:甘酸
帰経:心肝腎
寒性の食材は、体の熱を冷ます効果があります。
春や夏は暖かく、陽気が盛んになりますので、
余分な熱が体に溜まりやすい季節です。
夏に採れる野菜や果物には、体を冷やすものが多いと言われますが、
桑の実も、春夏に食べるにはぴったりの食材です。
桑の実を食べたい理由その1.「肝」を養い、「腎」を補う
桑の実には、肝や腎の働きを整える効果があるとされています。東洋医学で、肝は、血を貯蔵する臓とされ、
目や筋肉の健康管理も担当しています。
また、腎は、排尿機能を管理したり、
身体を作る源となる「精」(発育や老化、生殖機能)を司る臓で、
耳や髪の健康もコントロールしています。
桑の実は、体に必要な水分や、血を補い、
肝や腎の働きを整えるため、
貧血やめまい、不眠などを改善したり、
目のかすみや眼精疲労などの目に関する症状に効果的です。
また、補われた水分や栄養は、腸に潤いを与え、
便秘の解消も期待できます。
桑の実を食べたい理由その2.アンチエイジングや美髪に
漢方の本場、中国では、
桑の実には美髪や美肌効果がある、として、
古くから女性たちに愛されてきました。
東洋医学で、「髪」は、腎の働きで管理されていて、
その栄養は血によって補われる、とされています。
前述したように、桑の実には、
血を補う効果があり、これが髪への栄養となりますので、
美髪効果がある、というわけです。
桑の実は乾燥させると「桑椹(そうじん)」という生薬となりますが、
若い方に白髪が生える早期白髪の対策にも、
この桑椹が使われています。
また、腎は発育や老化を司る臓ですので、
腎の衰えは身体の衰え、つまり老化を意味します。
肝や腎を補うことで、
桑の実はアンチエイジングの効果も期待できます。
桑の実のおススメな食べ方
桑の実ジャムでアンチエイジング
桑の実は、一度熟すと足が早く、すぐに使い切ってしまわないといけません。
せっかくですので、長く食べれるように
ジャムにしちゃいましょう!
【材料】
・有機桑の実
・ココナッツシュガー
・有機レモン汁
鍋に材料を入れて、煮詰めるだけ。
パンに塗りたい方は少し固めに、
ヨーグルトにかけたい方は柔らかめにお好みで。
ケーキやパンを焼くときに練りこんでも美味しいですね。
大人な味、桑の実の果実酒
お酒を嗜む方にはこちら。
クコの実も入れて、眼精疲労の予防に。
【材料】
・有機桑の実
・有機クコの実
・ブランデー
・ココナッツシュガー
材料を容器に入れて、3週間ほど置きます。
ブランデー漬けの桑の実がお好きな方は、氷砂糖多めに、
ブランデーを楽しみたい方は、氷砂糖少な目が良いと思いますので、
こちらも、ぜひお好みで調整してみてください。
桑の葉で作る「桑菊茶」もおススメ
桑の葉は、桑茶、としても有名ですね。
昔は、緑茶がわりに飲まれていた地域もあるようです。
桑の葉で作られた生薬「桑葉(そうよう)」は、
熱症状の風邪、咳、充血や目のかすみの改善などに有効とされていて、
こちらもすばらしい効能を持っています。
春に出てきやすいのぼせや、
夏にかかりやすい熱症状の風邪などに、
効果てきめんな、薬膳茶「桑菊茶」をご紹介します。
【材料】
・有機桑の葉(乾燥)
・有機菊花
・緑茶
お湯を注いで蒸らすだけ。
菊花の香りでリラックス効果も期待できます。
冷え性の方は控えめに摂取する
美髪と美容に、アンチエイジングにも効果的な桑の実。
美味しいだけじゃない、
さまざまな効能があることをご紹介しました。
ただ、なかなか売っているのを見かけないのが難点…。
それでも興味がある、という方は、
桑の木を育ててみるもの良いかもしれません。
桑の木には、いろいろな品種があり、
家庭果樹用の苗もたくさん販売されています。
剪定などは必要ですが、
土壌も選ばず、比較的育てやすい植物です。
自宅のお庭に桑の実がなったら、最高ですよね!
ただ、桑の実は、体を冷やす効果が大きいので、
冷え性の方は、一度に大量に食べすぎないよう、注意が必要です。
最後に
栄養満点の「桑」。桑のパワーを借りることで、たくさんのイイコトがあります。
自分の身体に耳を傾けながら、
ぜひ桑を生活にとりいれてほしいと思います。
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