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現実になりつつある、日本への移民流入。いま移民問題に揺れるイタリア在住ライターが、「異文化との共生」への近道を提言します!

現実になりつつある、日本への移民流入。
いま移民問題に揺れるイタリア在住ライターが、
「異文化との共生」への近道を提言します!

少子化による労働者不足への対策として、
改正された出入国管理法が2019年4月に施行されました。

改正出入国管理法では、国内の人材不足解消を目的として
「特定技能」と呼ばれる在留資格を新設。

「特定技能」には1号と2号の二種類があり、
いわゆるブルーカラー分野への就労が認められる1号の資格を得ると
最大5年間日本で働くことが可能になります。



表の出典:『外国人雇用の教科書』

コロナウイルスのパンデミックを受けて状況は変わってしまったでしょうが、
当初は5年間で約34万5000人の外国人労働者の受け入れを見込んでいたとのこと。

似たような文化・習慣・宗教観を持つ人たちが多数を占める日本は、
同法の改正により大きな変革期を迎えると言えるかもしれません。

もしかしたら、移民問題は多くの日本人のみなさんにとっては
まだ、それほど身近なものではないかもしれませんが、
実はすぐそこまで迫った現実です。

そこで今回は、今後の移民流入に伴って、
私たちに必ず求められるであろう
異文化交流を超えた「異文化との共生」について、
移民問題に揺れるイタリアの事例をご紹介しながら
考えていきたいと思います。

移民への対応に揺れるイタリア

日本の在留外国人の数は年々増え続けており、
2019年の段階では、10年前と比べて50万人以上多い
約293万人の外国人が中・長期で日本に在住しています。


イタリアも日本と同様にその数は増加しており、
1997年に100万人だった在留外国人が2008年に300万人、
2019年には530万人を超えました。

イタリアの人口は日本の約半分ですから、
急激に多文化への対応が求められていることがお分かりいただけると思います。

こうした中で、大きな課題となっているのは、非正規滞在の移民への対応。
アフリカ大陸に最も近いヨーロッパの国家・イタリアにおいて、
選挙でも議論の争点となっています。

参照:令和元年6月末現在における在留外国人数について(法務省)

そもそも移民と難民の違いは?

移民と難民という言葉は時に混同されることがあるようですが、

難民とは、自国に留まると迫害される恐れがあるなど、
命の危険があって自国外に逃げることを余儀なくされた人々。
難民には国際的な保護を受ける権利があります。

一方、移民とは、母国を離れ、国境を越えてきた人たち。
つまり、日本を離れて夫の母国であるイタリアに移住してきた私も移民であり、
貧困や政情不安などで母国を去らざるをえないと感じて国境を越えてくる人も
同じ移民に区分されます。


イタリアをはじめとするヨーロッパで大きな問題となっている移民とは、
より良い暮らしや仕事を求めて、主にアフリカや中東から
豊かな欧州を目指してきた人たち。

この記事では、リスクを冒しながらも地中海を船でイタリアに渡ってきた人々を、
便宜上「移民」と称すことにします。

参照:REFUGEES, ASYLUM-SEEKERS AND MIGRANTS(Amnesty International)

移民受け入れ賛成派と反対派、それぞれの理由

イタリアでの移民の受け入れには、賛成派と反対派で大きく分かれています。

2019年に保守政党が提案した
「海軍を使用して人道援助船のイタリア入港を阻止する」案について、
保守政党を支持する市民はもとより、
政府の中核に位置する左派政党の支持者53%も
大筋で賛成とする調査結果が出ました。

このような世論の中、移民を受け入れるべきと主張する人々の理由は何でしょうか。

参照:Migranti, la maggioranza degli italiani è favorevole al blocco navale(Il Giornale)

賛成派の理由:人道的な見地から肯定

受け入れに賛成する人々の意見は、
「いま目の前にある命を救うべき」という人道的な観点に集約されます。


イタリアへの移民のほとんどは地中海を渡ってきます。
船に乗っている移民は「誰かが受け入れなければ死が待つのみ」という状況に陥ります。

小さな船に押し込められた人々を見たら、誰もが、そのまま放っておけ、とは思えないでしょう。

反対派の理由:経済的負担と治安への懸念

しかし、カトリックの総本山バチカンのお膝元でありながら、
イタリアには移民受け入れに賛同できないとする人々が少なくありません。

反対大きな理由は、経済的負担治安の2つでしょう。

移民受け入れに伴う経済的負担

EUの難民受け入れ手続きを定めた「ダブリン規則」は
移民が最初に入ったEU加盟国が手続きを担うとしています。
このため、海に面したギリシャやイタリア、スペイン、
そして陸続きの東ヨーロッパの国々から不満の声が上がっています。

救助や宿泊施設、食事など、移民受け入れ伴う費用は
経済的に苦しいイタリアにとって少ない額ではありません。

この規則は廃止の方向で動いていますが、
イタリアが大きな負担を強いられる現状のルールが存続する間は、
移民の受け入れに反対するという人たちがいます。

参照:難民申請、現行ルールは「廃止」 新協定を来週提案―欧州委員長(時事通信社)

移民受け入れに伴う治安の悪化

母国に戻れば命が保証されないとする難民については
多くの人が受け入れに賛同しています。

一方で、より豊かな生活を求めてイタリアに渡ってきた人は、
これとは別に考えるべきだと主張する人も。

イタリア政府に保護された移民は難民認定申請をしますが、
そのほとんどが却下されるとのこと。
しかし、強制送還となる前に逃れ、不法にイタリアに残る移民も多く存在します。


当然正規の仕事にはつけないことから、違法な仕事を請け負い、
犯罪をおかし、治安が悪くなるというパターンは残念ながらよくあること。
イタリアにおいて、外国人犯罪者は全体の32%を占めます。

また、移民の家族から生まれてきた子どもが十分社会に溶け込めず、
非行に走るという悪循環に陥りやすいといった問題も発生します。

いずれにしても、イタリアの移民問題は政治の介入なしには解決することができない、
大きな問題になっています。

参照:Sicurezza, Gabrielli: calo dei reati, uno su tre commesso da stranieri(Il messaggero)

日本ではより楽観的でもいい?

日本の場合、これから単純労働に就く外国人が増えるといっても、
日本語の試験が課せられる場合もあり、そもそもビザの取得が前提です

そのため、急激に治安が悪化するのでは、と杞憂する必要はないように思います。

実際に、「平成30年版 犯罪白書(法務省)」によると、
在留外国人が増加している一方、外国人の刑法犯は減少しています。

あまり気負うことなく、異文化を楽しみながら「相互理解」を
図ることができる可能性はイタリアよりも高いでしょう。

とはいえ、冒頭で挙げた特定技能1号ビザで今後入国してくる人々は
家族の帯同が認められないことから、打ち解ける相手もおらず、
疎外感を抱き仕事に身が入らず...
といった負のパターンに陥ってしまうことも十分考えられるため、
受け入れ先となる自治体や雇用する企業の側には十分な対策が必要となってきます。

参照:平成30年版 犯罪白書(法務省)

異文化との共生のポイントは、
一方通行にならない関係を築くということ

入国してくる時点で正規のビザを手にしている外国人がほとんどの日本では、
政府が状況を把握し、対策を立てやすい状態にはあります。

しかし、外国人との共生には、実際に、彼らと隣り合って市民の努力が不可欠です。

受け入れる日本(人)側が、「ここは日本なのだから日本の習慣に従えばいい」という
態度を押し付ける一方だと、軋轢が生まれるだけです。


しかし、支援や情報の提供だけでは
相手が何をどういう理由で理解できないのかを把握することができず、
また、与えるだけでは自尊心を傷つけることに繋がるかもしれません。

そこで、イタリアにおいて「異文化との共生」を図るためになされている
試みのひとつをご紹介します。

家庭に難民を迎えよう!

NPO法人「Refugees Welcome Italia」は、
イタリアの家庭が難民や移民を受け入れることにより、
お互いに大きなメリットが生まれる、と主張しています。

難民の受け入れに賛同するイタリア人が多いといっても、
イタリア人との交流は限られており、
日常生活の様々な場面で慣習の違いから軋轢が生じることも珍しくはありません。

そのため、同法人は難民や移民をイタリア人家庭に住まわせ、
言語・文化・習慣に親しませよう
という活動をしています。


確かに、イタリアの言葉や文化、習慣、生活にまつわる、
こまごまとした、しかし重要なものごとの理解するには、
イタリア人家庭の中で暮らすことが最高の方法であることは
間違いないでしょう。

受け入れ家庭にもメリットがある

受け入れるイタリア人家庭側も、「難民や移民」としてではなく、
「一人の人間」として接することで、
異文化を理解し、「難民・移民」=危険な人々という色眼鏡を
外すことができます。

たとえば、ローマに住む一人暮らしのジョヴァンナさんは、
Refugees Welcome Italiaを通じて
パン職人を目指すマリ共和国出身の22歳の男性を数週間の予定で迎え入れました。

その共同生活は予想に反して1年が経過。
料理への情熱という共通点が、世代も性別も異なる二人を結びつけました。


二人は政治やジェンダーなど多くのことについて議論をし、
当然意見が分かれる時があるものの、
決して相手へのリスペクトを忘れることはないといいます。

日本では家庭を小コミュニティに置き換れば実行が可能

しかし、若い学生であればホームステイ感覚で招き入れることができても、
全く異なる習慣を持つ成人の外国人と一緒に暮らし始めることには
イタリアでも日本でも抵抗を感じる人は多いでしょう。

また、日本では(イタリアと比べて)家が手狭であるという問題もあります。

そこで、日本では移民を共同生活者として受け入れる空間を
「家庭」から「地域・町内会・会社」などの
小さなコミュニティに置き換えて
みてはいかがでしょうか。

例えば、週に1回でも一緒に料理を作る機会を設けるだけで、
各国の調理の仕方、ゴミの分別方法、食事作法など
お互いに多くのことを学ぶことができます。

お正月など日本人にとって非常に意味ある日を一緒に過ごすことも
理解を深める上で大きな効果があるでしょう。

移民という多様性を受け入れることで、
私たちの暮らしはもっと豊かなものになる

日本もイタリアも、高齢化社会であり少子化社会です。
移民を受け入れることで文化の衝突が起こる可能性がある一方、
労働力が増え、社会が潤うという側面もあります。

仕事を求めてくる人々と受け入れ側の国の双方が
メリットを得られるようにするためには、まずは法整備などの政府の働き、
そして、移民と市民両方の努力が必要不可欠です。


文化や個人の差は、この世界を面白く素晴らしくするためには
必要であると、イタリア人と結婚して現地に暮らす日本人の私は
思います。


もし「異文化との共生」が時代の要請することであれば、
それを受け入れ、より深みのある本質的な暮らしの実現に役立ててみませんか。

日本人、イタリア人、世界人、
全てを混ぜ合わせ、世界を美味しくしていきたいものです。

参照:
Refugees Welcome Italia
現代イタリアにおける移民問題をめぐる諸論点

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