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食品添加物の「人工」や「合成」の表示がなくなる!? 今回の制度見直しで見落としてはいけない、最重要ポイントとは

食品添加物の「人工」や「合成」の表示がなくなる!?
今回の制度見直しで見落としてはいけない、
最重要ポイントとは


今年の6〜7月、食品添加物に関する表示制度の見直しで、巷をにぎわす報道がありました。

・「人工」「合成」を削除、改正食品添加物表示制度が16日施行(Wellness Daily News
・消費者委員会、添加物の表記で「人工」「合成」を削除 食品表示の基準を改正へ(マイナビニュース
・食消費者誤認の観点から食品の「人工」「合成」表示を削除(NET IB News

いきなりこのような情報が耳に入れば、国民が不安になるのは当然です。
Twitter上でも、こんな懸念の声が飛び交っています。

 

 

国は「消費者誤認の観点から改正する」といっているにも関わらず、
消費者には不安が残った今回の騒動。

本記事では、この一件について、食品添加物の表示制度の歴史を遡り、
国そして消費者それぞれの立場から解説をしたものです。

正直、この件については「賛成派」と「反対派」に意見が真っ二つに分かれることでしょう。
この記事をお読みいただき、皆さんがご自身のご判断の材料にしていただければ幸いです。

【背景を探る】
食品添加物の表示制度は、時々刻々と変化する


まず皆さんに知ってもらいたいことは、
一度決められた制度であっても、時が経てば変わることがある、ということです

例えば、食品添加物でいうと有名なものが「アカネ色素」。

かつてはハムやかまぼこの着色に使われていた食品添加物ですが、
後に「発がん性や遺伝毒性が認められ、1日の摂取許容量を設定できない」として、
現在は使用が禁止されています


参考:食品添加物「アカネ色素」を既存添加物名簿から消除することについて(厚生労働省)

国が大丈夫だと認めて使用が許されていた添加物が、ある日突然、使用禁止となる事実

だからこそ、食品添加物は怖いのです

かつては必要だった
「人工」や「合成」の表示

さて、話を本題に戻しましょう。

今回の表示見直しの内容は、
着色料や保存料そして甘味料の表示から「人工」や「合成」を削除するというものです。

法律に関するこのような問題を調べる時は、
改正前はどうなっていたのかをチェックすることがとても大切です。

そこで、今現在のみならず、その経緯にも目を向けてみることにします。

 


 

出典:食品添加物表示制度をめぐる事情(消費者庁)を基に著者が加工したもの

上の画像の表は消費者庁から引用して、私が加筆を行ったものです。

これを見ると、昭和63年(1988)頃までは、
今回、削除が決まった「人工」や「合成」を表示するようになっていました。

その理由は、当時、食品添加物に関する事故が相次ぎ、化学合成された食品添加物に対する
国民の目が厳しくなっていたから
です。

ここは大事なので、もう一度言いますね。

昭和63年(1988)頃までは人工甘味料、合成着色料、合成保存料と表示する必要があった

翌年(1989)の法律改正で消えた、
「人工」や「合成」の表示

ところが、昭和64年/平成元年(1989)に食品表示の大幅な改正が行われ、
「合成」や「人工」に関わらず、使用した全ての添加物を詳しく表示することになりました


ちょっと難しいですね。

例を挙げると、以下のような感じです。

・合成着色料・・・・・・・・・・・・・・・・・☓(不適切な表示)
・着色料(青色1号)、クチナシ・・・・・・・・・○(適切な表示)

上記のように、「合成」とは書かずに、使用された添加物の具体的な名称が
記載されるようになった
のです。

物質名を表示させることで、
消費者の誤認をなくしたかった国

国が、このような食品表示の大幅な改正を行った理由は、以下のとおりです。

・「合成・人工」なら危険で、「天然」なら安全、という消費者の誤認を抑止できる
・当時、国自体の審査が「合成・人工」に対しては厳しかったが、
「天然」には対しては緩かったというアンバランスを是正できる

事実、先程、私が例として挙げた「アカネ色素」は植物の根から作る天然着色料です。
そこで国は、消費者を守るために法律を改正して、「人工」や「合成」の表示を削除したのです。

物質名表示となって喜んだのは企業

ここまでお読みになって、皆さんはどう思われましたか?

確かに、「合成・人工」=危険で、「天然」=安全とは一概に言えず、
国が添加物の表示から「人工」や「合成」を削除した理由にも一理ありますよね。

但し、実際の製造現場や消費現場まで落とし込んでみると、そう問題は単純ではありません。

食品を製造する企業にとって、この変更は恐らく吉報だったはずと思います。

なぜなら、人工甘味料、合成着色料、合成保存料といった記載がなくなることで、
消費者から「(甘味料や着色料、保存料などの)添加物は危険だ」という誤解を解くことができるからです。

要するに、「合成」や「人工」の表示をしなくてよくなったので、
食品を売りやすくなった
のです。

しかし、物質名表示は消費者を一層不安にさせた

一方、食品企業とは逆に、実際の消費者は不安になりました。

消費者からすれば、今まで「合成」や「人工」表示で購入の有無を判断していたのに、
それができなくなってしまったからです。

※消費者心理としては「合成」や「人工」と書いてある食品を買いたくないですよね。

例えば、です。

以下の2つの食品で皆さんなら、どちらを選びますか?
なみに、食品の着色料も「合成」の記載がないだけで、実際は、合成着色料です。
食品A:「合成着色料」
食品B:「着色料(青色1号)、クチナシ」
きっと、多くの方が食品Bを選ぶはずです。
なぜなら、食品Aの「合成着色料」の名称には危険なものが含まれていそうなイメージがあり、
心理的な抵抗がありますよね


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今回の「人工」や「合成」の表示削除は
大した問題ではないと、私が考える理由


実は、今回改正された食品添加物の表示制度の見直しは、
さほど大きな問題ではないと私は考えています。

その理由は以下の2つです。

①既に(1989年に)「人工」や「合成」は使用しなくなっているから
②現状は、企業が無添加表示のためだけに「人工」や「合成」を使用しているから

各理由について、さらに詳しく見ていきましょう。

①既に(1989年に)「人工」や「合成」は使用しなくなっているから

なぜ、1989年の改正で「人工」や「合成」を使用しなくなったのに、
今頃、また議論されるのか?

ここまでお読みになった皆さんは、きっと、こう思ったはずです。

ちょっとややこしい話ですが、これは法律から法律への引き継ぎの問題が関係しています

かつては、食品添加物の「人工」や「合成」関係については「食品衛生法」という法律の所管でしたが、
それが現在は、「食品表示法」という法律の食品表示基準に引き継がれています


この引き継ぎの過程で、1989年以前に、
「合成」や「人工」を記載するように、としていた名残りがのこってしまいました。

要するに、実際の表示上は削除されることになっているのですが、
法律上にはまだ、「人工」や「合成」の文言が残っているチグハグ感があったのです。

今回の改正は、このチグハグ感を正すためのものなのです。

いきなり、食品添加物の「合成」や「人工」が削除されるようになったという訳ではないのです。

②現状は、企業が無添加表示のためだけに「人工」や「合成」を使用しているから

実際の食品製造・販売の現場では、
「人工」や「合成」の表示は、無添加表示のためだけに使用されています


要するに、企業が他製品との差別化のために、
「合成保存料不使用」などとパッケージに記載してあるだけです。

しかし、「合成保存料不使用」と記載があっても、
別の日持ち向上剤が含まれている可能性もあります。

ところが、消費者は「合成保存料不使用」と記載があると、
安全なものだと錯覚してしまいますよね。

したがって、今回の改正の目的が
「消費者の誤認を防ぐ」というのは本当のことです。

国が、消費者の不利益になり得るような「『人工』や『合成』表示の削除」を決めた訳ではありません

上記2つの理由から、今回の改正は私達消費者にとってそれほど
大きな問題とは言えない
だろうと私は考えているのです。

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ただし、表には出てこない、39件の反対意見あり!
国の検討委員も無条件で賛成なわけではない


とはいえ、今回の件で多くの国民が不安にかられていることは事実です。

各メディアの報道を見ていると、今回の改正で皆がハッピーエンドのような伝え方になっていますが、
決してそのような訳ではありません


国が何か制度を変更する前には、国民に対して意見(パブリックコメント)を求めます。

この「人工」や「合成」の表示の削除に対しては、
賛成の意見が82件、反対の意見が39件あったようです。

全体の3割近くは反対していることになります

結果の詳細は、「食品表示基準等の一部改正案に関する意見募集の結果について」を御覧ください。

また、改正にあたり委員会でも十分な議論がされていますが、
委員全員が無条件で賛成しているわけではありません

どのような反対意見が集まったのか?

実際の反対意見を、公表された資料からいくつか紹介しておきます。

 

・人工・化学合成等の表記は残してください。
私は必ず表示を見ますが、その物の内容が知りたいから見るのです。

・改正に反対します。海外では禁止されている添加物が使われているなかで、「人工」、「合成」の文言まで無くなれば、本当に安全なものはどれなのか分からなくなり、購入する際に判断しづらくなります。

・消費者のし好にあわせ、食品添加物をできる限り使用しないで商品を生産する事業者もあり、
それらの事業者は、その技術力を消費者に伝達する方法として、
「人工○○不使用」や「合成○○無添加」の表記をしているものと考えます。
これらの表示を完全に禁止すれば、消費者の選択の幅が狭まり、食品業界の発展の妨げになる可能性があることから、「人工」「合成」の表示を単に禁止するルールづくりではなく、消費者に誤認を生じさせないような表示のルールづくりが必要であると考えます。

出典:食品表示基準等の一部改正案に関する意見募集の結果について

このように多くの国民は、購入の際の選択の幅が狭まってしまうことに反対しています
反対意見を一つ一つ見ていくと、日本の添加物使用の緩さなどの
実態をよく知っている方のコメントも寄せられています


これらは今回の「人工」や「合成」を削除するために集められた意見ではありますが、
日本の食品添加物行政に国民の声を反映する上でのよい材料にもなると私は思います。

「よく検討する必要がある」と言った委員の真意は?

最後に、制度改正のための会議(消費者委員会食品表示部会)に出席していた
渡邊委員が発言した言葉を紹介します。

なお、以下にこの会議の議事録のリンクを以下にはっておきますので、
ご興味のある方はご覧ください。

>>消費者委員会 食品表示部会第59回議事録

<渡邊委員の発言>

今回の義務表示の中で「人工」「合成」を外すということについては賛成です。

ただ、ガイドラインでこれからどういう検討をするかというのはありますけれども、
全ての場面で本当に外していいかどうかというのは、よく検討する必要があると思いますので 、、、。

全ての場面で本当に外していいかどうかというのは、よく検討する必要があると思いますので」。

私はこの会議に出席していた訳ではなく、あくまでも議事録からしか言葉を拾っていないため、
委員のこの、含みを残した発言の真意が気になっています。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

さて皆さんは、食品添加物の「人工」「合成」を削除することについて、
「賛成」ですか?それとも「反対」ですか?

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