悪者になりつつある小麦は完全に排除すべきなのか|古代小麦を栽培して感じた、本来の小麦の姿と小麦粉アレルギーの関係性
1 青い麦に花咲く季節
こんにちは。『いつもがわくわく☆こどもてらこや・おとなてらこや』主宰の柳原里実です。小さなてらこやはたけでは、緑鮮やかなの麦の穂が風に揺れています。
これは、昨年の秋、粒をぱらぱらまき、土の上を歩いて押さえた古代麦の穂。
芽が出て、冬の間は地面に張り付いたままだった麦は、あたたかくなるにつれ、ぐんと背をのばしました。
そしていまの季節は、小さな花がたくさん。近日中にこどものみなさんと「古代麦のお花見」をする予定です。
今後の目標は、こどものみなさんと、手で収穫し、脱穀し粉にひき、さまざまな小麦料理をつくること。
茎で、北欧の飾りヒンメリも作り、それよりまず、
飲み物を飲むstraw(ストロー)として、ドリンクを飲んでみたいものです。
そのためのドリンクももちろん、こどものみなさんと手作りしようと思っています。
ちなみに1年を24に分けた二十四節気を、さらに3つずつに分割した七十二候では、
「小満」の末項、つまり今月末が「麦秋至(むぎのときいたる)」です。
俳句などの季語の「麦秋(ばくしゅう)」「麦秋(むぎあき)」「麦の秋(むぎのあき)」は、
「秋」という文字が入っていますが、時期は「初夏」。
鮮やかな緑の中、小麦の畑だけが黄金色に染まる時期もまもなくです。
2 こうして小麦は食べられる。
小麦の歴史と世界の食卓
「小麦」は、「とうもろこし」「米」と並んで「世界三大穀物」のひとつ。世界の全人口の約1/2が主食としています。
小麦の殻を取り除き、粉にした「小麦粉」の主な栄養分は、でんぷんとタンパク質。
中でも「グルテン」というタンパク質は小麦独自のもので、
胚乳から生成されるグルテニンとグリアジンが水を吸収することで網目状につながってできるもの。
ご存知の通り、小麦粉に水を加えて練ることで出る粘りや弾力です。
パン生地がふくらみ、うどんにコシが出るのもグルテンのおかげ。
生麩(ふ)はグルテンそのもの。焼いて田楽、揚げて揚げ出し、
餡をくるんで麩まんじゅうと、しっとりもちもち美味ですね。
さて、「小麦」と聞いて思い浮かぶ言葉の中に、
「アレルギー」「グルテンフリー」などが加わるようになって久しいようです。
「地産地消」の風潮もあいまって、小麦食品にネガティブなイメージが先行することもあるようですが、
少し整理しておきたいと思います。
小麦の栽培は約1万年前。
ヨーロッパからアジアまで大陸を中心に、広い地域で長い歴史があります。
約5000年前に誕生した「パン」は、こねておいた生地が、
あたたかい気候により自然に発酵してふくらんだのがはじまりと言われています。
その他の食べ方もさまざま。
小麦をそのまま使うか否か、発酵させるか否かなどにより、以下のように発展してきました。
(1)[そのまま] [煮る] …麦粥など
(2)[粉にひく] [練る] [茹でる] …パスタ・麺・うどんなど
(3)[粉にひく] [練る] [蒸す] …餃子・シュウマイなど
(4)[粉にひく] [練る] [焼く] …トルティーヤ・クレープ・パンケーキ・パイ・クッキーなど
(5)[粉にひく] [練る] [発酵させる] [蒸す] …マントウ・まんじゅうなど
(6)[粉にひく] [練る] [発酵させる] [焼く] …ナン・パン・ピザなど
(7)[粉にひく] [練る] [発酵させる] [茹でる] [焼く] …ベーグルなど
(8)[粉にひく] [練る] [揚げる] …フリット・てんぷらなど
(9)[粉にひく] [練る] [発酵させる] [揚げる] …ドーナツなど
その他、フリットお好み焼きやてんぷらなど、他の食材と組み合わせる調理もたくさん。
パンや菓子の世界ではさらに細かい多様なアレンジが。
小麦は完全に排除すべき?
ここで再度、小麦に対する「ネガティブなイメージ」に注目しましょう。
もし、「本来の小麦」がからだに不調を起こす食材であれば、歴史の最初の時点で排除されているはず。
これほど広範囲で長い歴史を持ち、いまなお継続して食されているという事実が、
「本来の小麦はいのちの継続に欠かせない大切な食料である」ということを物語っています。
では何がネガティブな現状を引き起こしているのか。
その理由を考えるためには、「本来の小麦」について知る必要があります。
3本来の小麦「古代小麦」とは?
小麦は、生物学的に「一粒系」「二粒系」「普通系」の三種に分類されます。
[一粒系:ヒトツブ小麦]
・最も古くから栽培されていた品種・交配や品種改良がされていない
・栄養価が高く、抗酸化作用が強い
・体内で消化吸収されやすい
・グルテンの含有量が少ない
[二粒系:エンマー小麦など]
・ヒトツブ小麦と野草が自然交配して生まれた品種・数千年前から生息しているといわれる
・交配や品種改良がされていない
・栄養価が高く、消化しやすい
・グルテンの含有量が少ない
[普通系:スペルト小麦]
・9000年以上前にヨーロッパで栽培されていた・交配や品種改良がされていない
・栄養価が高く、吸収されやすい
・グルテンの含有量が少ない
・フルクタンの含有量が少ない
*上記について、グルテンの含有量が少ないとされる品種も「グルテンフリーではない」ので、
セリアック病、グルテン不耐性、小麦アレルギー、グルテン過敏性などの場合は避けましょう。
こういった麦本来の高栄養に加え、厚い皮殻(ひかく)により、
天候の変動、土壌条件、物理的に虫の混入を避けられるなどの能力の高さも特徴。
それにより、化学肥料、除草剤、殺虫剤、農薬などが必要なし。
そもそもそれらが開発されたのは、彼らの長い歴史からすればごく最近の出来事。
それらが存在しない長い間、自分たちの力で生き延びてきたのです。
それら古代麦をいただくことは、その力強い栄養とエネルギーを取り込むとなのです。
4現在流通している「小麦」とは?アレルギーとの関係
しかし、現在わたしたちが口にしている大半の「小麦」はそれらとは異なるものです。世界で流通しているもののほとんどは、「普通系:パンコムギ」という種類。
・収益を上げるために、収穫量を上げようとし、肥料を加える
・それにより背が伸び倒れやすくなるため、背丈がのびないように手を加える
・収穫効率を上げるため、背丈のばらつきをそろえる品種改良を加える
・脱穀効率を上げるため、皮殻が剥きやすくなるよう品種改良する
など、数百回ともいわれる品種改良がなされています。
また、原種では穀物の内部に含まれている栄養素が、
パン小麦の場合表皮と胚芽に含まれるため、
製粉の工程で除去されてしまうのです。
そして、度重なる品種改良の際に、グルテンの構造が大幅に変化。
それに伴い、グルテン過敏症、グルテン不耐性、遅延フードアレルギー、セリアック病の発症が、
爆発的に増えたといわれています。
さらに、海外からの輸入時には、
長期間の搬送中の虫やカビを防ぐという理由でなされる、
日本では禁止されている「ポストハーベスト(収穫後の)農薬」についてもご存知の通りです。
元々原種の小麦は、どの動植物にも言えますが、自らの力で育つようにできています。
そこにわたしたちが、「過度の利潤性」を追求しはじめることで、本来必要ないものが加えられ、
それによって生じる問題に対処するためにまた別のものが加えられるのです。
小麦粉にせよ、小売店や飲食店の小麦粉食品にせよ、
わたしたち消費者が、大量に供給された商品をいつでも手にしたいと考え、
またそれらをできる限り安価で手に入れたいと思う限り、状況は変わらないでしょう。
なにを感じ、なにを選ぶか。
消費者の選択で 未来の食が変わります。
5無理のない選択が自然な状態を育む
てらこやはたけに蒔いた小麦の種は、袋には「スペルト小麦」と表記されていたのですが、出穂してみると野毛が長く、「エンマ―小麦」の可能性があります。
まだまだ分からないことが多く、ゆっくりと勉強中です。
自分のいる地域の気候に適した植物を食べることで、その時の身体に必要な栄養とエネルギーを頂きます。
海外からの輸入時に必要な農薬も不要で、輸送にかかる燃料を使いません。
その時期に身体が必要なものをいただくことで、身体が楽になり、医療費も少なります。
農家さんが、散布する農薬に自ら身体的影響を受けることがなくなります。
地元のオーガニック農家さんから購入することで、その活動を応援することにもなります。
自然に沿った小麦を、暮らしをより豊かにするものとして頂けるといいなと考えています。
さわやかな皐月をどうぞすこやかにお過ごしください。
[参照:厚生労働省横浜市立大学木原研究所HP/京都大学農学部NP/消費者庁HP/食物アレルギー診療ガイドライン2016ダイジェスト/製粉協会HP/西尾製粉株式会社HP/日本製粉株式会社HP/日清製粉株式会社HP/昭和産業株式会社HP]
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