「やらなければならないこと」から「しないこと」へ。3ヶ月先も会食で埋まっていないと不安だった元ベンチャー経営者が語る農家一年生小太郎の「しないこと」革命。第二の緑の革命を始めませんか?
Things to do???
「やらなければならないこと」から「しないこと」へ
会食は先3ヶ月埋まっていないと不安、予定は毎日びっしりが当たり前
過去、私はベンチャー企業の経営陣でした。
ITベンチャー経営者時代は、「Things to do」しなければならないことのチェックボックスに
チェックを入れなければ満足感や達成感がない日々。
手帳も1週間が1ページや、1ヶ月が1ページのようなものではなくて、1日分が見開きのような手帳です。
予定もびっしりで、会食の予定は3ヶ月先まで埋まっていないと不安でならないような日々でした。
しかし、渋谷での宴席の最中に大病に倒れて、その手帳には余白が続きます。
闘病とリハビリの毎日、「なぜ生まれてきたのだろう」「これからなんのために生きていこう」と
ベッドの上で自問する日々が続きました。
暴飲暴食の反省と、そんな中でも最大限に気を使ってくれていた嫁さんへの贖罪が、
「生きることは、食べること」「食」にこだわって生きていく決断への後押しでした。
そうと決まれば、ITベンチャーの経営権をすっぱりと仲間に譲り、農家への道を探り始めました。
自然農を志すことは運命でした
自分の身体のことを考えると、市販のものが信用できなくなってしまった
まず、書物から入る。
これは、父を早く亡くし、
相談する相手がいない自分がどうしたら上手くやれるのかと考え、編みだした方法です。
とりあえず「図書館背表紙ツアー」(私と読書へリンク)をして、気になるテーマと自分に語りかけてくる本を借りて読みまくりました。
分野は現在農業の問題点から土壌の健康までと幅広く、ITベンチャー創業前夜より熱心かつ真剣に読みまくりました。
『植物は<知性>を持っている』の衝撃
緑の惑星「地球」は文字通り植物の星でした。「地球上のバイオマス(つまり、生物の総重量)のうち、
多細胞生物の99.7%は人間ではなく植物が占めている。人類と全ての動物を合わせても0.3%にすぎない」
出典:『植物は<知性>を持っている』ステファノ・マンクーゾ+アレッサンドラ・ヴィオラ著
「微生物が作る世界 肥満、アレルギー、じゃがいも…みんな微生物が作り出していた!
植物の根と、人の内臓は、豊かな豊かな微生物生態系の中で同じ働きをしている」
出典:『土と内臓 (微生物がつくる世界)』デイビット・モントゴメリー+アン・ビクレー著
これらの本が、私たち夫婦が自然農を強く志すきっかけでした。
文字通り、自然に生かされているだけなんですね。
その自然を人間はなんと軽んじて台無しにしてきたか…。
映画「かもめ食堂」が語りかけてきたもの
「しないこと」の大事さに気づく
そんな時に嫁さんと一緒に借りて見た「かもめ食堂」。
競争の中にいて、競わなければ我慢がならない私の生き方が、大病を引き起こしたと心配した嫁さんが選びました。
フィンランドを舞台にした映画での一節に、年上のひとり旅の女性と、異国でひとり、食堂を始めた主人公の女性とのやりとり。
「いいわねやりたいことをやっていらして」「やりたくないことはやらないだけです」
Things to doやらなければならないことよりも
「しないこと」の大事さを知りました。
引用:映画「かもめ食堂」
小太郎の自然農宣言「しないこと」レボリューション
人生と自然農園でのパートナーである嫁さんと相談して「自然農宣言」を決めました。
そして、僕自身が、自然農宣言を決めたのでした。
僕の「自然農宣言」
僕の自然農宣言はこうです。
○農薬を使わない
○肥料を使わない
○除草剤を使わない
これが絶対に「しないこと」です。
そして
環境にダメージを与えない
自家採種のシードバンクになる
同じものを食べる
など
古くて新しい、「農家ニュータイプ」の誕生です。
自然農法の実際
そもそも、現在の工業的農業はJAさんから「タネ」を買うことから始まります。
この時点で、すでに持続可能ではありません。
「有機」の落とし穴もあります。
動物由来の肥料であれば、発酵が完全に終わっているものでないと硝酸態窒素が残留し生命の危険につながります。
肥料袋を見ると「完熟肥料」という表記をよく目にします。
食品表示法とは関係ないので、何を書いても良いとの料簡でしょうか。
完熟=完全発酵と誤解します。
「連作障害のウソ」。
これも「土をつくる」という表現の肥料のただの販売促進です。
自然農法では、自家採種が基本です。
それは、植物自身がその土地の特性を遺伝子レベルで次世代につなぐために最適な種子を作っている。
DNAをダイナミックに書き換えているとも言えます。
ですから同じ場所で、2世代目、3世代目のものの方が丈夫で美味しいものが収穫できます。
知り合いの農家から分けてもらったお野菜が美味しいのは理由があったのです。
自然農という破壊的なイノベーション
「何も」入れないという明確なメッセージが大事だと思いました。
「今だけ、金だけ、自分だけ」
多くの組織や人々はこう陥りがちです。
悲しいことに、JAさんの指導で作物を作り、農薬の量に不安を感じながらも「バレなきゃいいだろう」「この位は大丈夫」説明責任無い農家が多いのも事実なのです。
ですから、私たちは、固定種を探すことから始めました。
そして、二世代以降その土地に最適順応し、脈々と子孫を残していけるような連環を目指して活動しています。
無農薬、無施肥、不耕起栽培、自家採種を心掛けます。圃場に生える雑草も天然のマルチとして活用します。
これは、除草剤も、農薬も、肥料も、化石燃料を使うトラクターも、
除草剤に耐性のあるという交配種の種も必要としません。
歴史に学ぶまでもなく、一握りのものたちが、一握りのものたちのために既得権益を守る規制を当然のように運用していますが、
その限界が来たときにそれは決壊します。一握りのものたちが、一握りのものたちのために、土から種子、小売まで独占している農業も例外ではありません。
私たちは、農業を取り巻く現状だけを見て始めたのではありません。
アトピーに苦しむ子供達、アレルギーに悩む現代人、医療の闇、
食品メーカーの非道、二人に一人ががんに罹患するという異常事態などの社会の病巣を見て、原点回帰として始めたのです。
一握りのものたちからの反証、妨害や中傷など想像できますが、ひとも自然の連環の中の存在でしかありません(もちろん一握りものたちも)。
自然にありたいという根本を突き詰めて行くことが大事です。
この革命は、イノベーションというと、足したり、掛け合わせたり、融合させたりでしたが、「ひき算」というところが凄い。
今まで、除草剤、農薬、肥料、耕耘などがいらないということですから、「しないこと」レボリューションにぴったり。
必要ないものをやめていきましょうというパラダイムシフトです。
古くて新しい農家ニュータイプです。
「Fact 1 st ,Fact Drive」小さくともやってみる、やり続ける。
除草剤、農薬、肥料をやめれば、窒素過多という環境への負荷がなくなり、
酸性雨も淡水のアオコも海の赤潮もなくせます。
私は微力ですが、全ての力を持って一握りのものたちが、
一握りのものたちのために人々の健康を人質にとるようなあこぎな生産と消費の社会構造を、
「自然農法」という破壊的なイノベーションで根底から変えるつもりです。
この読者は日本希望だと言い切ります
「食」や「生活」をおろそかにしないから「IN YOU」を読んでいる
スローフードの先輩イタリアでは、「おいしい、きれい、正しい」を
野菜選びの基準にしていると聞きます。「食べることは農業的行為である」とも。
緑の革命リターンズ
私たちが起こす第二の緑の革命
1960年代に、世界を覆う飢餓と貧困の解決のために、
効率を重視した機械化工業的農業で生産量を増やすことが第一だとの「緑の革命」が起こります。
ノーベル平和賞受賞者も出しましたが、結果は飢餓も貧困もなくならずに、
大手機械メーカーと大手種苗会社、大手肥料会社の独り占めと遺伝子組み換え容認への雪崩のような加速、結果として回復困難な土壌、海洋汚染だけでした。
この反省から国連は「国際土壌年」「国際家族農業年」へ舵を切りました。
土壌の健全性が地球の持続可能性にはなくてはならないものだとの決意です。
そして、これは私たち生産者と皆様方生活者さんが力を合わせて進めるべき「緑の革命リターンズ」の幕開けです。
「あきらめたらそこで試合終了ですよ」
状況は極めて不利です。
国家、行政、JA農協、農家の意識など四面楚歌です。
ですが、「あきらめたらそこで試合終了ですよ」(湖北バスケ部 安西先生 スラムダンク)なんですね。
あきらめなければ道は開けます。
一人ひとりができることに向き合い、今日から始めることしかありません。
ご自分の「しないこと」を考えてください。
私は自然農宣言以外に、マイクロプラスチックの環境汚染が心配なのでペットボトルとビニール傘をやめて、その代わり、タンブラーと折りたたみ傘にしています。
なんの不自由もありません。
コンビニでお弁当も買いません。
プラスチックのお弁当箱もレジ袋も無用です。
嫁さんが作ってくれた保温容器のお味噌汁とおにぎりが今日のお昼でした。
後は、「競うこと」「争うこと」もやめました。
大事なことなのでもう一度。IN YOU読者の皆さんはこれからの日本の「希望」です。
自分の生活に向き合い、オーガニックな食品だけではなく、生き方も整えていかれようとしている。
私たち作り手である生産者は、目の覚めたものから改善し始めています。
農家3.0とでも言うべき革命的な変化です。
学ぶべきは海外に多くあります。学ぶ姿勢があれば言語の壁はITで簡単に超えられます。
そして、国連などとも連携が始まっています。
世界の最先端では、「窒素固定細菌」の研究で化成肥料が不要になっています。
次は、買い手である皆さんの「買い物は投票だ」という意識です。
大変期待しています。
さぁ、はじめようではありませんか。
ご一緒に「緑の革命リターンズ」。
近江商人の「三方良し。売り手良し、買い手良し、世間良し」に学びましょう。
生活者は、安心安全な食べ物で、健康を維持する。
生産者は、理解してくれる方に買っていただける喜び。
世間は、土壌も海洋環境も改善できて持続可能な地球に近づいていく。
皆さんの日々の「買い物」が根本的な問題解決に直結しています。
きっと世界を飢餓と貧困から救うことができ、持続可能な地球を取り戻すことができます。
力を合わせれば、この社会は必ず変わります(それもとても良い方に)。
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