種子法廃止の次に日本に広がるモンサント法の波。日本のオーガニック農家が姿を消す日は近い!?
種子法廃止の次に日本に広がるモンサント法の波。
日本のオーガニック農家が姿を消す日は近い!?
2018年4月。たった十数時間の審議を経て、種子法が廃止となりました。
数ある日本の固有種・在来種を守ってくれるものは無くなり、
私たちの食卓には、様々な技術によって生まれた農産物が自由に出入りできる扉が開いたのです。
種子法廃止により、多くの農業関係者が不安な日々を過ごしていますが、それは、私たち消費者も同じです。
日本の農産物を守る壁が取り払われた今、押し寄せる海外勢によって、日本の農業が危機にさらされているのです。
2019年のTPP発行を目前に控えた今、押し寄せる海外勢の脅威とはどのようなものなのでしょうか?
そして、私たちの食卓は?
オーガニック農家は?
私たちにできることは、まだ残っているのでしょうか?
種子法廃止の陰に隠れて着々と進められる
自家採種禁止品目の拡大
種子法は、国民への安定した食糧供給を目的とした、
農産物の種を守る法律でした。
今回の廃止は、ごく一部の人しか知らない中で、
時間をかけて進めてきたプロセスの一旦にしかすぎません。
日本農家の危機は、もう40年も前から静かにスタートしていたのです。
そもそも種苗法とは?
種苗法とは簡単に言うと、植物の特許制度です。
1947年に制定された農産種苗法がもととなっており、
戦後の食糧危機のなか、
不良品種の取締りや優良品種の育成を目的とした法律でした。
それをもとに現在の種苗法が誕生したのです。
種苗法では農産物や園芸植物の新品種開発者の保護をより強化し、
開発者にその種苗の販売権などを独占できる権利を与えています。
そこでその独占権を有し、その品種の育成者として登録された人をさらに保護するために、
育成者権が生まれたのです。
もし第三者が無断で登録品種の種苗を生産などした場合には重い厳罰が与えられます。
そこまで厳しくする背景には、農産物を知的財産とする考えの強まりにあります。
出典:小林正『種苗法の沿革と知的財産保護』(Ⅰ農産種苗法の制定)
種が「守るもの」から「稼ぐもの」へと変わった種苗法の存在
優良な農産物の種を特許技術として、その侵害の防止を進める種苗法。
そこでは、種は貴重な「収入源」です。
その技術(種)を販売し、ロイヤルティを得るという構図ができあがっています。
種を特許技術であるとしたら、自家採種は無断使用・特許侵害にあたりますよね。
そのため、日本では1998年を皮切りに、
種の自家増殖(採種)の取締りを強化するため、増殖禁止品種を定めていったのです。
1998年時点で23品種だった登録は、
2017年12月時点で、289種まで増え、追加予定品種を合わせると、
357品種までになっています。
357品種の中には、キャベツやきゅうり、人参など…
私たちにおなじみの食材の名前が並んでいます。
なぜ日本はここまで急ピッチで、種のロイヤルティビジネスの後押しを進めるのでしょうか?
出典:農林水産省 食糧産業局『農業者の自家増殖に育成者権を及ぼす植物種類の追加について』
世界の農業市場掌握を狙う
種子法廃止を進めた大企業の存在とUPOV条約
種苗法における、自家採種禁止が急速に進んでいるのには、UPOV条約の存在があります。
UPOV条約(植物の新品種の保護に関する国際条約)は、
新品種の種苗の商業的販売を目的とした生産・販売などにおいて
育成者の事前承諾を必要とすることを決めたものです。
日本はこの条約に、1982年に加盟しています。
種苗法の誕生は、このUPOV条約への加盟のための準備だったのです。
しかし、日本が肝いりで加盟したUPOV条約により、
世界の農業は混乱と不安に陥っています。
大企業からの所有権主張で生まれたUPOV条約
UPOV条約が誕生した背景には、大企業が品種の知的所有権を主張したことがあります。
種子の登録制度により、政府が認めた種子を無断で増殖(採種)、流通することを禁止しており、
UPOV条約に加盟した国では、自家増殖(採種)禁止法案が国内で次々決定されています。
UPOV条約の登録品種となるためには、
多額の登録料と登録を継続するための年間料を必要とするため、
小規模農家には登録が難しくなっています。
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> 商品の詳細はこちらそのため、品種の育成者として登録されているのは、大企業が大半です。
加盟国の農家は、登録品種の種を大手種苗企業から購入するしかなくなっているのです。
世界でUPOV条約による混乱が続いている!
UPOV条約の加盟国は、2018年1月時点で75か国。
これらの国において、大企業による育成権の独占が行われています。
そしてこれらの国々では、この条約による騒動が尽きません。
・政府が認定し農家に配布した種子がモンサント社の遺伝子組み換え種子だった(アフリカ)
・UPOV条約により、遺伝子組み換え農産物の栽培が始まった(ベトナム)
・UPOV条約による自家増殖(採種)禁止法案による農民の暴動(チリ、メキシコ、コロンビア)
また、2019年発行予定のTPPでは、このUPOV条約に従うことが必要と定められています。
そのためTPP参加国でも、
このUPOV条約の影響を懸念した農業関係者たちによる参加反対運動が盛んに行われているのです。
出典:有明国際特許事務所「UPOV(ユポフ)条約 加盟国一覧」
種子法廃止とTPP発行により大手種苗企業の独占が進む日本
このようにUPOV条約は、世界で種の所有権を独占している企業を支援するものです。
種子法廃止以来よく耳にする、「種を制するものは世界を制す」がいま現実となりつつあります。
アメリカでモンサント社が小規模農家を相手取り、訴訟を起こしていることは、度々報じられてきましたよね?
日本にも「品種保護Gメン」という調査員が全国に配置されており、
大企業の権利が侵害されていないかを見張っています。
また、大手アグリ企業開発の米を栽培している農家にも、
企業から派遣された調査員が栽培している農場のチェックにきています。
これまで日本各地の農村で当たり前のように見かけていた、
種苗の交換や農業仲間に種苗をおすそ分けなんていう光景も、もう見ることはできないのです。
企業による種子の独占が拡大したら、
農家は遺伝子組み換え種子を買わざるを得なくなる日が来るかもしれません。
そうなると、日本のオーガニック農家は消滅してしまうことになるのです。
出典:農林水産省『3.育成者権』
種が無いと作れない!TPP発行により日本のオーガニック農家が廃業の危機!
日本のオーガニック農産物の規定が、欧米に比べてあいまいな点が多いことはメディアでも報じられていますよね。
農産物の種についても、同じことが言えます。
EUではオーガニックの認定を受けるためには、その農作物の種も有機栽培でなければなりません。
一方日本はというと、原則種も無農薬としていますが、
「どうしても手に入らない場合」は例外として、
オーガニックでない種の使用が認められています。
JAS有機でも、認定の際に種の検査までは厳密に行っていないため、
「オーガニック」と名乗っていても、農薬で育った種が使用されていることも多いのが現状です。
2019年には日本のオーガニック認証も国際基準へ
TPPでは、食品の表示基準は自国内での基準ではなくて、
国際基準に合わせることとなっています。
そのため、これまでなぁなぁに容認していたオーガニック農作物の種についても、
国際基準である「種苗もオーガニック」に変更しなくてはならないのです。
でも、そのオーガニックの種苗ってどこで手に入れればいいのでしょうか?
農作物の育成権が大企業に独占されると
オーガニック種苗の行き場は無くなる!
農家が自家採種できなくなれば、
購入のほとんどはモンサントやデュポンといった大手アグリ企業からになるでしょう。
しかし購入できるのは、GM種子やゲノム編集種など彼らの最新技術を駆使した種ばかりになる可能性も高く、
農家はおのずとこれらの企業寄りの作物を作らざるを得なくなってしまします。
オーガニック農家のほとんどが、自家採種で種を調達しているため、あまり気にされないかもしれません。
しかし、自家採種も禁止、オーガニック種子しか使用できない、でも売っていない、となると、
何も育てることができず、廃業するしか道はなくなってしまうのです。
出典:久野秀二『世界と日本の種子ビジネスと地域農業の課題』
日本のオーガニック農家が生き残るためにはオーガニック種苗企業のふんばりが必要
種子法廃止は、種をめぐる世界規模のビジネス戦略のほんの一幕でしかありません。
オーガニックな食生活を求める私たちは、
安心してオーガニックな国産食材を手に入れ続けることはできるのでしょうか?
八方ふさがりのように見えるオーガニック農家の未来ですが、道は残されています。
それは、オーガニック種苗を生産・販売する企業が増えること。
先に取り上げた通り、育成者登録には費用がかかります。
その為これまで細々とオーガニック種苗や固定種、在来種の種苗を育ててきた農家が
単独で申請・登録することは、大変難しいのです。
育成者としての権利を持ちながら、より多くのオーガニック農家に開かれた種苗屋さんこそ、
日本のオーガニックマーケットにとって欠かせない存在なのです。
種子法廃止にUPOV条約、TPP発行と厳しい波に囲まれた農業ですが、
「日本の種を守るんだ!」という志を持った人はたくさんいます。
もっともっと日本の種の現状を知ること。
それが、私たちに今できるアクションなのではないでしょうか。
これからも日本の種を守るために、IN YOUでも応援していきましょう!
出典:山田正彦「タネはどうなる?-種子法廃止と種苗法運用で-」
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