近年明らかになるシルクの素晴らしい効能の数々。衣類だけでなく食や医療まで。石油由来の製品に代わるシルクが秘める大きな可能性とは。
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なぜ今シルクなのか
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このところ、シルク(絹)を使ったさまざまな商品を見かけるようになりましたね。
「シルクプロテイン」という言葉もよく聞かれるようになり、
シャンプーやリンス、下着、サプリメント、そしてスイーツにまで、
シルクを使ったあらゆる商品が誕生しています。
IN YOU Marketでもシルクの化粧品、毛布をご紹介しています。
しかし、「どうしてそんなにシルクが注目されているの?」
と感じている方はまだまだ多いはず。
カイコの繭が絹織物の原料としてしか見られていなかった時代は「糸の品質」ばかりが重視され、機能についてはまったく研究されていませんでした。
ところが、いざその機能を研究してみると、想像をはるかに超える、数多くの効能・メリットがあることが明らかになってきたんです。
そこで今回は、なぜ現在シルクがそれほどまでに多様な分野で注目を集めるようになってきたのか、
その理由を詳しくお伝えします。
はるか昔から続く、シルクの長い歴史
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養蚕(カイコを飼育し、その繭から生糸を作る事)の始まりは、
5000~6000年前の古代中国と言われています。
しばらくの間、シルクは中国の皇帝や貴族たちが独占していたため、
国外に持ち出すことを禁じられていましたが、紀元前4世紀ごろには中近東を通って地中海諸国に伝わったといわれ、
やがてこの交易路は中国の長安(現在の西安)からコンスタンチノーブル(現在のイスタンブール)まで続くシルクロードとなりました。
最初、絹織物の生産は中国からもたらされた生糸を使ったものでしたが、
6世紀になってようやく、中近東からヨーロッパまで広く養蚕・製糸が行われるようになり、それぞれの地で独自のシルク産業が発展していくこととなりました。
日本のシルク、その興隆と衰退
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日本では、すでに弥生時代にはシルク製造の技術が伝わっていたとされていますが、
品質はまだ中国産にははるかに及びませんでした。
品質が改善しはじめたのは江戸時代に入ってからのことで、
鎖国をしていたことや藩の財政が逼迫していたことなどから、各藩は桑の栽培・養蚕・絹織物生産を奨励しました。
江戸時代中期には、ようやく中国産と遜色ない品質までこぎつけました。
そのため、明治に入ると養蚕・製糸業は、
日本の近代化のために重要な基幹産業として位置づけられ、
大正時代あたりまでは主要な外貨獲得源となり、
1909年には、日本の生糸生産量はついに清(中国)を追い抜き世界一となりました。
全国の農村では貴重な現金収入となるため、家の周囲に桑を植え、
養蚕をしていた農家が非常に多くありました。
カイコは完全に家畜化された虫であり、箱から逃げるということがなく、野生に放しても
桑の葉から落下するか、鳥に食べられるかして命を落とすほど。
そういう性質もあってか、家の中のわずかなスペースまでびっしり蚕が飼われ、
「おかいこさま」「オシラサマ」と言って大切にされました。
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良質な繭は業者に買ってもらい、品質の悪い繭は自分の家で糸に紡いで、
娘の花嫁衣装用の布を織ったという記録も残っています。
ところが太平洋戦争によって主要輸出先であったアメリカとの貿易が途絶え、
戦時中と戦後の食糧難のために桑畑は田畑になってしまったため、
戦後の繭の生産量は激減しました。
それでも食糧不足の際には、蚕の蛹を食べて餓死を免れた人々も少なくなかったといいます。
戦後、歴史あるシルクを捨てて石油に依存してきた日本
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戦後の日本は、服装の洋装化や都市と農村の賃金格差、若い労働力の都市流出などで、
日本の養蚕・製糸業は壊滅状態になってしまいました。
しかし、本来は需要があれば産業は復興するもの。
戦後の日本政府は蚕糸業復興政策を打ち出しましたが、
結局かつての勢いを取り戻すことはできませんでした。
それは、石油化学工業の台頭が大きいと思わざるを得ません。
日本との戦争の開始前にはすでにストッキング材料として、
「ナイロン」を開発し終えていたアメリカ。
世界はシルクに戻ることはなく、その流れに乗ってしまいました。
日本も、シルクの長い歴史をあっさりと捨て、石油に依存するようになりました。
燃料としてはもちろん、衣服、家具、生活雑貨、化粧品や食品添加物にまで、
暮らしの中のありとあらゆるものが石油から作られるようになっていますね。
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なぜ石油製品がここまで普及するようになったのでしょうか。
1、安価だから。
2、天然の原材料と違って、安定供給できるから(人為的な要因は除く)
3、同じ品質のものを作りやすいから。品質が安定するから。
大量生産・大量消費の世の中で大規模な宣伝により人々を煽り、
あれこれ考えさせることなく、とにもかくにも消費をさせるためには、
石油製品はとても都合がよいものです。
しかし、IN YOU読者の皆様ならもうご存知の通り、
化粧品、添加物、プラスチック製品、肥料などに見られるように
石油由来の商品の弊害は、数多く指摘されるようになっています。
一度の暴露がたとえごく微量で、ただちに健康被害がないような製品であっても、
長年の蓄積によってどんな被害が現れるかは誰にもわかりません。
自分自身だけでなく、子供や孫、その子孫の代に現れてくる可能性も否定できません。
そのくらい歴史の浅い物質に、世界中の人々がどっぷりと依存した暮らしをしているのです。
このように、時間軸で捉えてみれば、あまりにも近視眼的な選択をしていると言わざるを得ません。
しかし、どんな製品であれ、
品質・安全性を大切に考え、本当に自分に合ったものを求める消費者が増えれば、
利益第一・大量生産・大量消費型の企業が存続することは不可能になります。
シルクも新しい選択肢の1つ。
ぜひそのたくさんある素晴らしい効能を知っていただきたいです。
近年大いに見直されているシルクの存在。
その分野は多岐にわたっています。
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まず前提として、いつまでも分解しない石油製品と異なり、
シルク製品は生分解性があり土に還ります。
溶かしたシルクに硬化剤を加えて固めるとプラスチックのようになるので、
石油製品の代替にできるのではないかとも言われています。
もちろん自然界に戻ります。
今のままでは石油はいずれなくなりますが、
今から100年、1000年、さらにその先を見据えた暮らしを考えれば、
シルクも大切な再生可能資源として見直す価値が大いにあります。
シルクは何からできている?
シルクは、・繊維状のタンパク質の一種であるフィブロイン
・フィブロインの周りを覆う、粘着質(膠質)のセリシン
から構成されています。
アラニン、グリシン、チロシンなど、人間の肌の成分に近い18種類のアミノ酸が
数百~数千も結合しています。
500人の肌ににゲル状シルクを塗布する実験を行ったところ、
誰一人として拒否反応を示さないほど、人の肌になじみやすいタンパク質であることがわかっています。
体内に入っても拒絶反応を起こさないですし、毒性もゼロ、炎症も起きにくいんです。
ゲル状シルクに菌を落としたところ、菌がタンパク質であるシルクを食べて増殖するかと思いきや、
菌はまったく増えもせず、かといって減りもしないという驚きの結果が出ています。
さて、このような驚きの性質を持つシルク。
どのような分野で使われているのでしょうか。
1、衣類の分野
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シルクというと、肌触りがとてもなめらかで品の良い光沢感があり、着心地も薄くて軽いので、
上品なドレス、あるいはパジャマや下着といったイメージが強いですね。
実はそれ以外にも多くの効能があるんです。
◆身にまとうだけで美容効果が期待できる。
先にお伝えした通り、シルクはその成分が極めて人の皮膚に似ていますので、
肌にとっても優しくなじみます。
シルクを身にまとうだけで、自然に肌にうるおいを与えてしっとりさせ、角質層のキメを整えるので、
保湿クリームは少量で大丈夫なんです。
◆敏感肌やアトピーの方にもおすすめ。
シルクに含まれるセリシンには抗菌作用、保湿作用が確認されており、
アトピーによる皮膚のかぶれが、セリシンを定着させた下着の着用によって劇的に改善が見られたという実験結果があります。
なので、肌に優しいシルクは、
赤ちゃん、肌が敏感な方、傷のある方などにもぜひおすすめしたいです。
◆冬は暖かく、夏は涼しく快適に過ごせる。
シルクは吸湿性、放湿性、保温性に優れた素材で
吸水性については綿の約1.5倍、放湿性については綿とあまり変わりません。
また、繊維の間に空気を多く含むことができ、熱伝導率が低くなっているため、
外気温に影響されにくく、夏の就寝中でも汗や蒸れを感じにくいです。
◆意外に丈夫。
シルクは細い糸で薄く織られているので、なんとなく破れやすそうなイメージがありますが、
実は繊維の中では強靭な部類なんです。綿や羊毛よりも強いと言われます。
2、美容の分野
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シルクの光沢を出すために水洗いする精錬作業に従事していた人の手が荒れることはなかった、
あるいは糸を紡ぐ女工の手がきれいだった、と言われるように、
シルクには肌を美しく保つ効果が期待できます。
◆うるおい、ハリのある肌に。
シルクには、セリンという保湿性のあるアミノ酸が多く含まれるため、
保水効果があると言われています。
また、シルクには「ヒト線維芽細胞」を増やす成分があり、
これによってコラーゲンをはじめとする美肌成分が増えることにつながります。
◆抗酸化作用を持つ。
セリシンには抗酸化作用があるため、メラニン色素の生成が抑えられる結果、
美白につながります。
また、皮膚がんを抑制する効果が期待できるとも言われ、
発ガン物質をマウスの皮膚に塗り、同じ場所にセリシンを塗布した場合、
皮膚がんの発現が劇的に抑制される結果が得られています。
◆紫外線もカットしてくれる。
繭からカイコを出して紫外線を浴びさせると真っ黒に日焼けした上にすべて奇形となり、
その40%が死に至ったという実験がありますが、
このように、繭は中にいるカイコを紫外線から守る役割があります。
シルクは、紫外線のうち、肌に悪影響を与えるUV-B波とUV-C波を吸収することで、
紫外線を9割以上カットします。
以上のような効能から、化粧品の分野では特にシルク人気が高まっていて、
化粧水やファンデーション、口紅などさまざまな化粧品に配合されるようになりました。
3、医療に関する分野
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現在、再生医療の分野ではシルクに大きな期待が寄せられています。
強度があり、人間の肌に極めて近い成分で拒絶反応が起こりにくいため、
すでに外科手術ではシルク製の縫合糸がよく使われます。
高血圧などで弱くなった血管の再生、人工の角膜・皮膚・腱や、
コンタクトレンズなど、さまざまな開発も進んでいます。
IN YOU Marketベンダーによると、2012年から2015年にかけて鹿児島大学との共同研究で
「シルク軟膏による創傷被覆材の研究」を行った結果、
傷が治る期間が短くなった上に、跡も残りにくいという驚愕の効果が確認できたそうです。
4、食に関する分野
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◆メタボや大腸がんの抑制の可能性。
シルクのタンパク質はレジスタントプロテインであることがわかっています。
レジスタントプロテインとは、消化吸収されにくく、糖の吸収を遅らせ、
血糖値上昇やコレストレールの吸収を抑える作用のあるタンパク質のことです。
これにより、便秘を防ぐ、大腸がんを抑制するといった可能性が示唆されています。
◆ミネラルの吸収がよくなる
日本人の食生活で不足しがちなミネラルですが、
セリシンを添加したエサをラットに与えると、ミネラル分の吸収がよくなることがわかっています。
その他、
・シルクが認知症を予防する効果が期待できる
・天然で低アレルゲンの乳化剤になりうる
・食味がよくなる
など多くの研究結果があることから、シルクを食品に配合する研究が進んでいます。
すでにシルクパウダー配合のうどん、ケーキ、豆腐などが市販されています。
(参照)シルクプロテインセリシンの機能性と食品への応用
(参照)グルテンフリー米粉パンの物性と食味に及ぼす絹フィブロインおよびキサンタンガムの影響
養蚕業復活への取り組みも始まっている!
![](https://macrobiotic-daisuki.jp/cms/wp-content/uploads/1727460512d4596f11ca9c669ad081d6_s-e1549556526469.jpg)
世界文化遺産に登録された富岡製糸場のある群馬県富岡市では、
養蚕業を再生させたいと活動を始めています。
新たな養蚕業の担い手を育てて繭の生産を増やして製糸場で糸を引き、
高品質なシルク製品を生み出していくのが目標で、繭の生産量も増加に転じているようです。
群馬に限らず、養蚕を復活させたいという動きは全国各地で見られます。
★養蚕復活へ各地で取り組み 世界最大の無菌工場、後継者育成学校
IN YOU Marketにシルクパウダーとシルク毛布を出品しているベンダーさんも
自社製品の原料を地元の奄美で作り、養蚕業を復活させたいとの想いから、
桑畑を作るところから養蚕業の拡大に取り組んでおられます。
世界では何千年という歴史があり、
日本では、弥生時代から続いてきたとも言われるシルクの長い伝統。
戦後、石油製品を受け入れたことによって、
あまりにも短い期間で、この長い伝統をあっさりと廃れさせてしまいました。
「安くて早くて便利なもの」は、将来どのような結果になって帰ってくるのでしょうか。
長く受け継がれてきたものには必ず何らかの意味があります。
シルクについてこれほど多くの研究がなされ、
これほどまでに優れた効能がたくさん存在することが明らかになった現在、
消費者である私たちも、あらためてシルクの素晴らしさについて考え直す時期が来ています。
今こそ、石油製品の溢れる暮らしから、100年・1000年先を見据えた自然な暮らしへシフトしてみませんか?
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参考資料
★養蚕業再生へ 本腰の富岡市(朝日新聞デジタル)
(参照)シルクの知られざる力!~千年先を守る研究~
(参照)セリシンによるヒト線維芽細胞の増殖促進
(参照)セリシンの機能特性とその利用
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本物のオーガニックが見つかるオーガニックショップ
![silkworm cocoons in japan for yuki tsumugi](https://macrobiotic-daisuki.jp/cms/wp-content/uploads/Silkworm_cocoons_in_Japan_for_Yuki_tsumugi-e1549713602328.jpg)
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