春の過ごし方を間違うと1年中不調になりかねません。東洋医学から見た、肝を整える方法と春の養生法とは?
今の時期、散歩をするとたんぽぽや菜の花の黄色が道を明るくしてくれます。
見ているこちらの心までなんだかうきうきとしてきますね。
春の過ごし方を間違えると、一年を通して病気がちになってしまう!?
さて、春にどんなものを食べて、どんな生活を送ることによって、快適な生活を送るのか・・・。
この時期はお花見や新人歓迎会、送別会などイベントが目白押しで、外出する機会も増えていると思います。
東洋医学では、春と同じグループに属しているのが肝であり、春に働きが活発になります。
しかし、この肝がうまく働かないと様々な不調が現れます。
肝というと一般人が真っ先に思い浮かべるのは「肝臓」だと思いますが、
東洋医学では「肝臓」単体を指している訳ではありません。
東洋医学で春は「発生」の季節で、すべてのものが芽生え天地間の万物は生き生きと栄えると考えられています。
ですから五行の表で春は、のびのびと成長を表す「木」に属しています。
五行についてよくわからないという方は以下をご覧ください。
不調を見れば食べるべきものがわかる!陰陽五行説で見る、状態にあった体調管理方法。
あなたの体質は肝・心・脾・肺・腎タイプのうちどのタイプ?東洋医学「五行」で自分の弱みを知ってツボと食べ物を取り入れよう。
では、肝は具体的にどんな働きをする役割があるのでしょうか?
肝の働き① 疏泄により体表を防衛
肝は血液の量を調節することによって感情のコントロールや気のめぐりを好調にする、疏泄(そせつ)という重要な役割を持っています。春は新しい生活が始まったりと、緊張やストレスを感じやすい季節でもあります。
この緊張やストレスが肝の働きを強め、気の巡りを悪くして「気滞」という気の渋滞が起こります。
気が渋滞すると精神が安定せずに怒りやすくなったり、イライラしたりします。
気が巡らず熱がこもり、頭痛、のどの痛み、耳鳴り、不眠などの症状も出てきます。
精神が安定しないと陽気の巡りが悪くなり、外からの邪気も侵入しやすくなってしまいます。
陽気とは、体の外を防衛しているものです。
陽気の巡りをよくし邪気から守るためにも、精神を落ち着かせる肝を安定させることが大事です。
自然からの邪気(風、暑、湿、燥、寒)は病気のもとであり、春の邪気は風邪(ふうじゃ)です。
そして肝は風邪にとても弱いです。
風邪が体内へ入ると熱を生じ精血が消耗され、血を貯えている肝がダメージを受けます。
肝の働き② 血を貯める蔵血
肝には血を貯める蔵血の働きもあります。
血は全身の組織や器官に栄養を与えています。
血が不足してしまうと体の潤いが失われていき、かすれ目、ひきつり、月経異常、立ちくらみなどが起こります。
皮膚が乾燥してしまうと、その部分から邪気が侵入しやすくなります。
個人的な話ですが、二月の初め付き合いでカキ小屋へ行きました。
私はカキが食べられないので、お味噌汁くらいしか食べれなかったのですが…
数日後吐き気と微熱が出ました。おそらくとても寒かったために風邪が体内に侵入してきたのだと思われます。
その後眠れない日が続き、二月終わりには頭痛と高熱に二日間うなされ、3月に入った今はのどが痛みます…。
体内からうまく風邪を出し切れていないようです。
このように、一年の始まりの春に風邪に侵されてしまうとのちにバランスをとることが難しくなり、その後もひきづりやすくなり、
一年中かぜをひきやすくなるので注意が必要です。
風邪は万病の元
風邪は移動し変化しやすいので、鼻水やのどのかゆみ等の花粉の症状や発熱、頭痛等のかぜ症状のほか、皮膚に風邪がうつると発疹やかゆみが出てきます。
もし、経絡を通して奥へ入ると五臓六腑の風となります。
漢方の基礎となる三冊の本の一つ『黄帝内経(こうていだいけい)』にはこう書かれています。
肺風は、ときどき咳をして息が短く夜には症状がひどくなる。
しかし、昼間はあまり症状が現れない。
心風は、唇の皮が乾燥し、怒りっぽい。ひどい時は声が濁る。
肝風は、気分が沈み、悲観がちである。ときどき怒り、異性を嫌う。
脾風は、身体が重たくて食欲はない。
腎風は、顔がむくみ、腰が痛く、排尿が渋い。
胃風は、首によく汗をかく。食欲がなく痩せるのに腹部が膨らむ。
冷たいものを食べるとすぐ下痢をする。
冷えにあたると症状がひどくなる。
引用:まんが 黄帝内経―中国古代の養生奇書 張恵悌
他にも、脳風、目風、首風、泄風などがあり、風は万病のもとと考えられています。
先に記したように風邪は体中を移動し変化するので、対策をとらないと思いもよらぬ病になってしまうかもしれません。
春の養生が、一年を健康に過ごすためにとても大切なことがわかりますね。
季節の変化に応じて生活をすると、自然からの邪気を避けることができる
先ほども紹介した『黄帝内経』に、春の過ごし方について書かれています。
夜更かしをしてもかまわないが、朝は早く起きる。
朝、庭をゆったりと散歩し、髪の結びをほぐして、体をのびのびと動かす。
つまり、春に芽生えた万物と同じように、心身ともに生き生きと陽気を発生させる。
天地間の陽気を胸いっぱいに取り込み、体内の陽気を大事に育てる。
これは春の「発生」に相応する養生法である。
これに背くと、春によく活動する肝気が傷む。
引用:まんが 黄帝内経―中国古代の養生奇書 張恵悌
朝早く起き散歩をすることで陽気をひきだし、体を締め付けているものをゆるめリラックスすることで肝の働きを正常にすることができます。
東洋医学で陰は体の奥で生命力である精気を貯え、陽は体の外を守り筋肉を強くしていると考えます。
四季の変化に適応し、陽気が正常に働くことができれば、筋肉や皮膚は強くなり、風邪が体に入ることはできなくなるでしょう。
春の養生法:「その時の体の様子に合わせて食材を選んでみよう」
食べ物では、まだ寒さが残る春分までは辛温解表類の食材をとります。
辛味に属し、体を温め発汗作用があるため、寒い冬に中へと閉じこもっていた陽気を体の表へと出し、風邪の侵入から守ります。
ネギ、紫蘇、生姜などがあります。
春分を過ぎると、辛涼解表類の食材をとります。
体を冷やす性質があるので、精神的不安や怒りっぽいなど肝の働きが強い時にもお勧めです。
菊花、薄荷(はっか)、葛などです。
ただし、薄荷は効能が強いため妊婦の方、授乳中の方は摂取をしないようにしてください。
この時期は
①肝の働きを強める、もしくは鎮めて肝を正常に保つための食べ物
②気を補い気を巡らせる働きのある食べ物(疏泄を促すため)
③不足した血を補う働きのある食べ物を心掛けて摂取しましょう。
肝の働きを強める
酸のものをとると肝の働きを強めることができます。
気分が上がらない、不安なことがある、生理不順という時は肝が弱まっているので酸味のある食材をとって、肝の働きを高めましょう。
逆に怒りっぽい、のぼせるなどという時は肝が強まっているので避けたほうがよいです。
ただし、酸味のあるものをとりすぎてしまうと、脾の働きを弱めてしまうのでとり過ぎに注意します。
肝の働きを鎮める
目が充血している、のぼせている、怒りっぽいなど肝の働きが強すぎる場合は、熱を取り除いてくれる清熱類の食材をとります。
白菜、セロリ、セリ、きゅうり、トマト、メロン、りんご、豆腐
熱を冷ますということは、寒性、涼性の性質があるので、冷え症の方、下痢気味の方、妊婦の方は摂取の際に気を付けてください。
このタイプにオススメの食材:農薬不使用のモリンガ
気を補う
気を補うことで臓腑の働きを向上させる食材を補気類といいます。肝に不調があると、肝と相克の関係である脾に影響を及ぼします。
そのため、補気類をとることで脾の働きをたすけます。
蜂蜜、いんげん豆、干しシイタケ、キャベツ、カリフラワー、ジャガイモ、カボチャ、さつまいも桃、もち米、粟、イワシ、ウナギ、鶏肉
このタイプにオススメの食材: 生蜂蜜
気を巡らせる
補気類をとりすぎると、気が滞って気滞になるおそれもあるので、気を巡らせる働きのある理気類も一緒にとりましょう。
理気類には、玉ねぎ、そば、らっきょう、えんどう豆などがあります。
血を補う
血を補う食材である養血類、津液と血液を補う滋陰類もとり、肝の働きを安定させましょう。養血類には、ほうれん草、人参、落花生、ぶどう、ライチ、イカ、タコ
滋陰類には、小松菜、アスパラガス、胡麻、百合、イチゴ、卵、豚肉、チーズ
このタイプにオススメの食材: オーガニックにんじんジュース、有機ゴマ
すでにかぜをひき、咳や痰が出る時は
先ほども言いましたが、私はこの記事を書いている時に
のどが痛く、痰も出て、頭はぼーっとのぼせている状態でした。
何かいい食材はないかと調べていると、痰を止める働きのある食材がありました。
化痰止咳平喘類(かたんしがいへいぜんるい)といい、水の代謝に関わる臓器である肺、脾、腎のどれかに問題があるために痰が出ると考えます。
泡のような痰は寒性、黄色の痰は熱性、白色の痰は湿性と種類があります。
寒性のものには、からし菜やマスタードなど温性のもの
熱性のものには、のりや昆布、海藻類など寒性のもの
どちらもとり過ぎには注意が必要です。
寒性にも温性にも属さない平性の豆乳は臓器を刺激せず、喘息やむくみ、体の疲れをいやしてくれます。
さっそくわかめを味噌汁に入れたり、痰熱による咳を和らげる働きのある食材のビワの葉茶。
(ビワはまだないのでビワの葉も同じ効果あり)を飲んだり、セロリを塩漬けにして食べたりと対策をしました。
すると痰がほぼ出なくなり、のぼせていた頭もすっきりしています。
春は立春から立夏までの約三か月です。
春が始まり、雪が雨へと変わり、虫たちが土から這い出て、ツバメたちが飛んできて、田畑へ雨が降る…
立春、雨水、啓蟄、春分、清明、穀雨と経過していきます。
まさに陰から陽へと移りゆく季節です。
そんな季節の移り変わりに、身体もついていくのに一生懸命です。
持ち主である私たちが、身体の声を聴いて食べ物や気持ち、環境を整えてあげたいですね。
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