国内で急速に進む脱プラスチック…が、代替素材への移行が環境負荷を減らすとは限らない新事実!
プラスチックによる地球環境の破壊が次々と明らかにされ、
世界中で急速に脱・プラスチックへの取り組みが講じられています。
IN YOUでもこれまで数々のプラスチックによる環境汚染や人体への影響についてご紹介してきましたので、
これを読んでいるみなさんも、現在のプラスチックを取り囲む世界の動きを固唾を飲んで見つめている方も多いのではないでしょうか。
日本においても、マイクロプラスチックの海洋汚染が世界中で報じられた今年に入り、
次々と企業や政府が脱・プラスチックのための様々な取り組みを発表してきました。
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はたして、加速する代替品の開発合戦を前に、
私たちはこれ以上の環境汚染を食い止められると安堵してよいのでしょうか?
プラスチックで覆いつくされた私たちの生活が、
そっくり丸ごと「自然に優しい」代替素材になったからといって、すべてはハッピーエンドで終わるのでしょうか?
今回は、「プラスチック=諸悪の根源」論に対して各国から異論が噴出している事態を見ていくとともに、今後日本が進むべき道を考えていきましょう。
プラスチックのない世界は地球にもひとにも本当に「優しい」世界なのか?
スターバックスにマクドナルド、セブンイレブンにガスト…
この数ヶ月で脱・プラスチックストローを発表した企業は急激に増えました。
それと同時に、化学メーカーがこぞって代替ストロー用素材の開発を次々と発表し、
国境を越えて、各国でも新素材開発への投資合戦が繰り広げられています。
海に流れたプラスチック素材に命を奪われた海洋生物の姿を見ていると、
「プラスチックなんてものが存在しているからいけないんだ!」と、
環境へも生物へも人へも、すべての諸悪の根源はプラスチックにあるような気持ちになりますよね。
そう思うことは全くおかしなことではないでしょう。
事実、海洋に漂うマイクロプラスチックは年間3億トンという量で増え続け、永久に分解されることはないのですから。
でも、この地球全体で起こっている環境破壊は、プラスチックがなくなれば、本当にすべて解決するのでしょうか?
勝機が確約されたプラスチックに代わる新素材マーケットを目の前に躊躇する化学メーカー
飲食店を中心に広がるアンチ・プラストローの流れに戸惑いを隠せない人たちがいます。
それは、目下代替素材の開発に追われる化学メーカーの人たちです。
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これだけ多くの飲食店がプラスチックストローの廃止を急ぐ中、
代替品として新素材のストローが採用されれば、企業の増収益は約束されたようなものです。
そのような美味しい話を目の前に、当事者が二の足を踏んでいるのはなぜなのでしょうか?
それは、プラスチックを知り尽くしているからこそ起こる、
「本当にプラスチックをなくしちゃっていいの?」という懸念を拭うことができないからです。
プラスチックから代替素材への移行は環境負荷を増大させる!
イギリスの環境評価団体であるTrucostによる調査では、
これまでの使用方法や普及範囲を保ったまま、プラスチックをそのまま代替素材に変えた場合、
環境負荷は現状の4倍近くまで増大すると発表しています。
軽くて強度のあるプラスチックは、様々な形へと容易に使用することができるため、
製造から運送、廃棄、回収に至る一連の過程にて消費されるエネルギーや使用される資源量、そして廃棄物重量において、軽減化に貢献しています。
現在使用されているプラスチックのすべてを紙やアルミ、ガラスに変更した場合、
製品の物流コストや保管コストはもちろんのこと、
回収やリサイクルにおいてもプラスチックよりもコストや手間、消費エネルギーは増え、温室効果ガスの排出量も増加してしまいます。
また、別の調査では、プラスチックを使用しない場合、廃棄物量は30%増えると報告されています。
既存の素材の代わりにプラスチックを使用することで得られる削減効果は
製品の素材重量 約5000万Kg減
製造に必要なエネルギー 80%減
地球温暖化への影響 130%減
このように、プラスチックは環境負荷の抑制に役立っているという一面があるのです。
既存の素材に置き換えるだけでなく、現在世界中で開発が進められている新素材に関しては、
まだ具体的な環境への負荷は確認ができていません。
しかし、このような原材料調達から製造、運送、保管、廃棄、回収に至る一連の流れで、
費用も環境への負荷も考えてた代替対策を講じなければ、
脱・プラスチックを宣言しただけで、結局、人々の生活も不便になり、かつ、環境負荷も増えるという、最悪の事態が起こりかねるのです。
出典:American Chemistry Council「Study from Trucost Finds Plastics Reduce Environmental Costs by Nearly 4 Times Compared to Alternatives」
出典:Sustainable Brands「Plastics’ Effect on Waste: The Answer Might Surprise You」
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代替素材のコストを考えず脱・プラスチック計画がとん挫する可能性大の日本社会
化学メーカーにとってはプラスチック代替素材にまつわる苦い思い出があります。
過去に生分解性プラスチックの開発事業に投資した国内化学メーカーは、
国内需要が伸びなかったことから、数年で撤退しています。
生分解性プラスチックを使用した製品開発には、まだまだコストがかかります。
原材料費も開発費も、製造コストも、プラスチックよりも高いことは確実です。
飲食店が次々と発表しているプラスチックストローの廃止も、
プラスチック製のストローが1本1円程度なのに対し、従来の紙製のストローにすれば4~5円になります。
新素材になればさらに高くなるでしょう。
日本国内だけでも年間何十億杯というコーヒーを販売するコンビニコーヒーで計算しても、
相当額の負担が企業には生じます。
今のところ、各飲食店とも価格は据え置きの姿勢をとっていますが、
はたして、この代替素材分の負担を企業は二つ返事で受け入れることができるのでしょうか?
脱・プラスチックストローを宣言した手前、新素材ストローを目の前に、各企業がどのような舵取りをするのか、とても気になります。
出典:日本経済新聞(2018年10月4日付)「廃プラ根絶物語 3」
日本人が使い捨て文化から脱却しない限り環境破壊は止まらない!
新しい技術を目の前にしたとき、人はいつでも、その力を試してみたいという心躍る衝動を抑えることができませんでした。
プラスチックが悪者扱いされ、「環境に優しい」素材の開発・商品化に光を見た開発者や企業は、猛然と光の指す方向へと突き進んでいます。
けれど、いくら新しい素材が生分解性でも、植物由来であっても、
それを使う人間たちの心が変わらなければ、素材の違うごみが世界を覆うだけです。
私が今、この世界で巻き起こる脱・プラスチックの流れを恐れとともに見つめてしまうのは、
プラスチックに代わる新素材の台頭が人々の使い捨てをさらに助長してしまうのではないかと思うからです。
日本はリサイクルもごみ削減も、先進国の中では大幅に遅れている国です。
「ごみを捨てる」ということに対しての倫理観が低いままの、ゆるくあやふやな体制や規制の中で、
新素材への移行によって、「これでOK!」みたいな感覚が広まってしまい、
そもそもの大量生産・大量消費型社会への問題意識が薄らいでしまうのではないでしょうか?
日本がこの脱・プラスチックの流れの中で、根本にある問題に直面し、誠実な対応をとっていけるよう、
これからも各国の進捗とともに、みなさんにもお伝えしていきますね。
まずは、ごみを減らすこと!ここからですよ!
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