衣服と食べ物の意外な関係。ポップカルチャーやファストファッションの流行から考える今後の食の課題とは?
You are What you eat.
わたしたちはきのう食べたものからできている。
「食は人なり」と訳されるこの言葉。
私たちが食べ物を通して取り込んだ栄養は、からだの血となり骨となり、
紛れもなく、今日の私たちができあがっています。
この英語のことわざには深い意味があり、文化的な背景から個性までを含めて、
食べる物は食べる人を表すとされています。
今回は、ファストファッションや世界的にも注目される日本のポップカルチャーといった
流行現象を通して、日本のあるべき食の未来を考えてみました。
食べ物と流行現象
添加物だらけの食事とファッション
あなたは毎日何を食べていますか?
大量生産されたお菓子にお弁当、カラフルに色付けされた人気のスイーツ、
ファーストフード店のハンバーガーにコンビニのから揚げ。
レンジでチンするだけのお惣菜、人工的なエサで育った動物のお肉に
ワクチン接種済みの鶏から生まれた卵。
これらの食品に含まれる実に様々な化学物質を、
私たちは知らず知らずのうちに毎日のように食べています。
この記事の筆者である私は、添加物を極力取らない生活を始めて4年目になります。
食生活を変えると、からだの変化はもちろんのこと、不思議なことに、
それまで感じていた漠然とした不安や苛立ちなど心の不快な症状がすべて消え、
性格が明るく前向きになりました。
急に環境の良い場所に引っ越しをしたくなり、
最近では自然素材でできた衣服やインテリアを自然と選ぶようになってきました。
味覚も繊細になり、大好きだった市販の甘いお菓子が美味しく感じなくなった頃、
待ちゆく人々の姿にも違和感を感じるようになりました。
あなたは毎日、何を着ていますか?
街中には、世界からも注目されるカラフルでポップなファッションに身を包んだ若者や
化学繊維で大量生産されたファストファッションでお手軽なお洒落を楽しむ大人たちが溢れています。
これらのファッションは、前述した食べ物になんだかとても似ている気がします。
食べ物は人のからだだけでなく性格や好みにまで影響を与えているとするならば、
日本のファッションシーンにみられる流行現象にも影響しているのはないでしょうか?
食とファッションの30年
1970年は食品添加物のビッグバン
近代日本の「食」の大きな変化は高度経済成長期である1970年代初頭に集中しています。
1970年 大阪万博にKFCが出店
1970年 大手メーカーが本格的にスナック菓子の量産化を開始
1971年 マクドナルドが銀座に第一号店をオープン
1971年 ガム・キャンデー・チョコレートの輸入が自由化
1971年 日清カップヌードルが大ヒット商品となる
1974年 セブンイレブンの1号店が東京都江東区にオープン
大阪万博が開催され、日本中が外国の文化に柔軟になっていた1970年。
米国発のお馴染みのファーストフードやコンビニチェーンが日本に相次いで進出しました。
時を同じくして、お菓子の輸入が自由化されることで競争が激化。
お菓子が大量生産される時代が始まりました。
流行に敏感な若者たちは、
保存料を使って長持ちするように加工された安価なハンバーガーやチキンをほおばり、
子どもたちはカラフルな着色料で彩られたお菓子をコンビニエンスストアで
いつでも買えるようになりました。
コストを可能な限り抑えた米国発の大量生産の美学が「食」の世界に及び、
添加物いっぱいの食べ物が日本中に広まっていく歴史の幕開けです。
1970年はまさに日本における食品添加物のビッグバンと言えるでしょう。
食べ続けて「30年」のタイムラグ
1970年の食品添加物のビッグバンから30年がたった2000年。ファッションシーンにも大きな変化がみられるようになりました。
2000年 ユニクロがフリース2600万枚を完売
2003年 ZARAが銀座と六本木ヒルズに新たな店舗をオープン。急激な売上の伸びを記録。
2008年 H&Mが銀座に日本1号店をオープン
2009年 「ファストファッション」「しまラー」が流行語に
2010年 経済産業省によりクールジャパン戦略の開始
2011年 きゃりーぱみゅぱみゅの原宿KAWAIIが世界的な話題となる
ファーストフードやコンビニが登場してから30年がたったころ、
世界保健機関(WHO)によりファーストフードと肥満との関係性がレポートされ、
癌や糖尿病との関係性も指摘されるようになりました。
そんな社会問題と時を同じくして
2000年代前半にファストファッションが流行。
私たちは糖や脂肪を身体に溜め込むかのように、
クローゼットの中に安価な洋服を溜め込むようになりました。
2010年代には日本のポップカルチャーが世界的に注目されるようになり、
「キャンディー」や「ケーキ」といった、お菓子のモチーフが象徴的に取り入れらたファッションが
話題を呼んでいます。
この30年というタイムラグ。
1970年に産まれた子どもたちがちょうど30歳になった頃。
ファーストフードやコンビニのお菓子を食べて育ち、
添加物いっぱいの食事に慣れ親しんだ子供たちが大人になり、
社会的に安定する時期と重なるのです。
1970年代にファーストフードを初めて食べた世代が主にティーンエイジャー以上の世代、
コンビニのお菓子を初めて食べた世代がそれよりも10歳年下の小さな子どもたちの世代、
と考えると、ファストファッションとポップカルチャーの流行に
10年のスパンがあることも偶然ではないように思えて仕方ありません。
101人目のニューカルチャー
生物学者のライアル・ワトソンが提唱した、「100匹目の猿現象」という興味深い逸話があります。
宮崎県のある島に生息するニホンザルがある日突然、芋を洗って食べるようになりました。
それを真似した猿が群れの中で100匹目になったときに、その行動が島全体の猿に広がり、
さらに島から遠く離れた場所の猿の群れにまで伝播したのです。
この話はあくまで逸話ですが、物理学の世界に「同期」と呼ばれるよく似た現象があります。
メトロノームを複数並べたときに、バラバラに動いていたはずの振り子が次第に足並みを揃え、
遂にはカチカチとすべて同じタイミングで動くようになります。
この伝播の現象は科学的にも証明されており、
カエルの合唱や蛍の同時発光など自然界ではごく当たり前に見られる現象とされています。
1970年代以降、ポップでファストな嗜好をする人々が徐々に増え、
30年の時をかけて一定数に達したときに、現代のポップカルチャーとして伝播した。
現代、日本におけるファッションの流行は、
1970年の添加物のビッグバンから始まった同期現象とも考えられます。
あなたが添加物いっぱいの新商品を口に含んだ100人目になったときに、
別の場所で101人目の誰かがポップな格好に身を包み、
カラフルなファッションを楽しんでいるかもしれません。
衣服と食べ物の意外な関係
食が衣服に与える影響
マクロビオティックでは、食べ物を内に向かう重力のエネルギーである「陽」と外に向かう遠心力のエネルギーである「陰」のエネルギーで考えます。
一般に地球の赤道付近では、自転により生じた遠心力が強いために「陰」のエネルギーが強く、
赤道から離れた地球の極では重力の影響が強いために「陽」のエネルギーが強いとされます。
より極に近い西洋の国々では、お肉、パン、チーズなどの食べ物が伝統的に食べられてきました。
塩気が強いそれら陽性の食べ物は、内に向かう重力の力のように、
細胞の浸透圧を上げ、からだの組織をきゅっと引き締める性質を持っています。
西洋の伝統衣装である洋服はボタンで袖や襟をしっかり留め、
そのフォルムは身体にきゅっと密着したつくりになっています。
また、西洋にはtie(結ぶ)の文化があり、ネクタイ、ベルト、コルセット、指輪といったように
身体を必要以上に締め付ける文化もあります。
一方で赤道付近の国々では、香辛料や砂糖など、身体の細胞を緩ませリラックスさせる
陰性の食材が伝統的に食べられてきました。
彼らの伝統衣装はインドのサリーやタイの僧侶の衣のように
織物をからだに巻きつけていたりと開放的なフォルムが多いのが特徴です。
マクロビオティックの第一人者である久司道夫氏は「人は食べたものになる」と語っており、
昔の人々は、まさにその地域の食べ物とそっくりなファッションを自然と着ていました。
では私たちの住む国、日本はどうでしょうか?
日本人の伝統衣装である「和服」。
その姿に日本の食の未来を考える重要な鍵がありそうです。
日本人のあるべき食の姿とは?
和服からみる日本の食の姿
私たち日本のある場所は、東経139度44分、北緯35度39分。赤道と極のちょうど中間あたりに位置しています。
マクロビオティックでいう「陰」と「陽」のエネルギーがちょうど半々くらいの
中庸とされる地域にあります。
私たちの伝統衣装である和服にも、その中庸の性質はあらわれています。
袖や裾が直線に広がり、緩さがあるかと思えば、腰には帯がキュッと締められています。
緩さと締まりのちょうどよい、バランスのとれたフォルムをしています。
また、桜文や菱菊、唐草などの和柄や淡い色合いの日本の伝統色は自然をモチーフにしたものが多く、
奥ゆかしい美意識を感じます
程よいゆるさと自然のモチーフのファッション。
そんな衣服が伝統の日本には、四季のある地域ならではの多様な食べ物が存在します。
玄米や黍、粟などの穀物、海藻、白身魚、味噌、醤油、漬物、梅干し、大根、ごぼう、蓮根。
日本の伝統的な食べ物には、
身体の細胞にほどよい圧で作用する刺激の少ない優しい食べ物が多いのです。
現代のような成人病とは無縁だっと時代、
和服に包まれたその身体は自然体で細胞レベルで活き活きとしていたことでしょう。
毎日の食べ物を見なおそう!
ファストファッションの機能的で合理的なお洒落。世界からも厚い視線が注がれるポップで可愛いくどこか楽しいお洒落。
こうした流行は自然に起こったものであり、良いも悪いもありません。
しかしながら、次に流行するスタイルは、健康で身体を大切にできるような、
自分にも地球にも優しいファッションであってほしいと思うのです。
そのためには、自然に根差して生きていた頃の伝統食を今一度見直し、
発展させていってみませんか?
具体的にできることとして、まずは下記のようなことに気を付けてみてはいかがでしょうか?
一、「さしすせそ」の基本の調味料を本物に
買うときは成分表示をチェック。
カタカナや〇〇酸などの聞いたことのない成分は避けましょう。
自然素材だけで調味料はできます。
砂糖は白くない粗糖に。
塩はにがりの入ったものを選びましょう。
自然素材のものを選ぶと身体に優しいだけでなく、
毎日の料理がぐっと美味しくなります。
二、1日1杯。本物の出汁と味噌でつくったお味噌汁を飲む
お味噌汁は飲む点滴です。
出汁は顆粒出汁ではなく昆布や椎茸など自然のものから取りましょう。
一晩水につけておくだけでも意外と良い出汁がとれます。
三、玄米or白米に雑穀をまぜてみよう!
玄米は日本のスーパーフードです。
完全栄養食品とされ、理論上は玄米とごま塩があれば生きられると言われるほどです。
家族の好みなどで難しい場合は白米に雑穀をまぜてみましょう。
食後の眠気が驚くほどましになります。
四、週に1度は季節の食材で地産地消。伝統食を食べる日をつくる。
外国産の食べ物でなく、あなたの国、あなたの育った地域の食材を選びましょう。
その地域の旬の食べ物は、栄養価が高く価格も安いため一石二鳥です。
週に一度はお肉を避け、野菜中心の和食を食べることがお薦めです。
その時、ぜひ無農薬のものを選ぶようにしましょう。
五、毎日のお菓子に賢い選択を!
毎日食べるコンビニのお菓子よりも、
たまに食べる質の良いお菓子にシフトしてみてはいかがでしょう?
老舗のロングセラー商品には添加物をほとんど使っていない、
優秀なお菓子が意外と多くあります。
口がさみしくなったときは、ナッツや甘栗、干芋など自然のものを取り入れてみましょう。
あなたも日本の未来のカルチャーを創る大切な一人です!
1970年代の食品添加物のビッグバン以降、私たちの食べ物は大きく変わり、
ファストファッションや日本のポップカルチャーなどの流行現象が生まれました。
日本の伝統食を今一度見直し、私たちの未来の姿を一緒に考えてみましょう。
自然とともに生きていた頃と同じように、日本にもっとオーガニックの感覚が根付くと、
「ポップ」でない洗練されたファッションが世界から注目される日も来るかもしれません。
食とファッションの関係性を知った今、あなたはどのような未来を想像しますか?
自然の力が織りなす未来を見てみたくないですか?
あなたの食べたものがあなたをつくり、個性と成り、行動を変え、別の誰かに伝播する。
つまり、あなたがオーガニックを食べれば、それが誰かに伝播される。
What do you eat?
あなたは明日何を食べますか?
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